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完璧な生徒会長は、平凡な俺の「声」がないと眠れないようです。  作者: Takayu
第5章:雪解けの季節と、甘すぎる冬の誓い
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第119話:世界で一番甘いチョコレート

夕日が差し込む、誰もいない生徒会室。

俺の目の前には、大きめのパーカーとエプロン姿の奏羽が、手作りのトリュフチョコを唇に咥えたまま、背伸びをして顔を近づけてきている。


「……っ」


俺の心臓が、早鐘のように激しく打ち鳴らされる。

逃げ場はない。いや、逃げる気など微塵もない。

俺は彼女の細い腰に手を回し、ゆっくりと顔を近づけた。


唇が触れ合う瞬間、カカオの甘い香りがふわりと広がった。

俺がそっとチョコを口に含むと、奏羽はそのまま唇を離さず、深く、甘く、熱いキスへと移行してきた。


「……んっ……ぁ……」


チョコレートが溶けていく感触と、彼女の柔らかな舌の感触が混じり合う。

口の中いっぱいに広がるのは、チョコの甘さなのか、それとも彼女の愛情の甘さなのか、もう俺には判断できなかった。


「……ぷはっ……」


長い口づけの後、奏羽は俺の胸に顔を埋め、荒い息を繰り返した。

その顔は、夕日のせいだけではなく、茹でダコのように真っ赤に染まっている。


「……湊くん。チョコ、美味しかった……?」

上目遣いで、恥ずかしそうに聞いてくる。


「……ああ。俺の人生で食べた中で、一番甘くて美味しいチョコだった」

俺が正直に答えると、奏羽は「えへへ」と幸せそうに笑い、俺の服の裾をぎゅっと握りしめた。


「よかったぁ……。これ、お家で何回も練習したんだよ。……指、いっぱい火傷しちゃったけど、湊くんが美味しいって言ってくれたから、全部報われたの」

「奏羽……」


俺は、彼女の絆創膏だらけの指先をそっと取り、一つ一つに軽くキスを落とした。


「俺のために、本当にありがとう。……でも、来年からは絶対に一緒に作ろうな。お前が怪我するのは、やっぱり俺、嫌だから」

「……うんっ。約束する」


俺たちは再び強く抱きしめ合い、生徒会室の静かな空間で、互いの体温と鼓動を感じ合っていた。


「——コホン」


その時、背後からわざとらしい咳払いが聞こえた。


「……っ!」

俺と奏羽が慌てて身体を離して振り返ると、そこには腕を組み、冷ややかな視線を送ってくる一条副会長(零さん)と、ニヤニヤ笑っている書記の結衣が立っていた。


「れ、零さん……! 結衣ちゃんも……!」

「全く……。鍵もかけずに白昼堂々と、風紀もへったくれもあったものではありませんね」

零さんが眼鏡を押し上げ、ため息をつく。


「いやー、ごちそうさま! 会長のあの『口移し作戦』、私が入れ知恵した甲斐があったわー!」

結衣が親指を立ててウィンクをしてきた。


「ちょ、結衣ちゃん! 言わないでって約束したのに……っ!」

奏羽は顔から火が出るほど赤くなり、俺の背中に隠れるようにしてしゃがみ込んでしまった。


「お前が入れ知恵したのかよ……」

俺が呆れてツッコミを入れると、結衣はケラケラと笑った。


「だって、あの二人の純情っぷり見てたら、少しは背中押してあげたくなるじゃん? ……それにしても、風森くんも隅に置けないねぇ」

「うるさい」


「……さて。イチャつくのはそれくらいにして、片付けを始めますよ。チャリティー販売の売上計算がまだ残っていますからね」

零さんの鶴の一声で、バレンタインの甘い時間は強制終了となった。


 * * *


その日の夜。

マンションに帰宅した俺たちは、翠がリビングでテレビを見ている横で、二人並んでコタツに入っていた。


「……そういえば、湊くん」

コタツの中で、奏羽が俺の手に自分の指を絡ませながら、小さな声で聞いてきた。


「ん?」

「来月はホワイトデーだね。……湊くん、わたしに何お返ししてくれるの?」

「気が早いな。……でも、楽しみにしてていいぞ。お前の期待を裏切らないもの、用意するから」


俺が自信ありげに言うと、奏羽は「ほんと!?」と目を輝かせ、俺の肩にこてんと頭を預けてきた。


「……じゃあ、わたし、ホワイトデーまでずっと、良い子にして待ってるね」

「ああ」


コタツの温もりと、甘いチョコレートの余韻。

俺たちの冬は、バレンタインという一大イベントを経て、さらに深く、そして温かく過ぎていくのだった。

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