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完璧な生徒会長は、平凡な俺の「声」がないと眠れないようです。  作者: Takayu
第5章:雪解けの季節と、甘すぎる冬の誓い
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第113話:福袋の戦利品と、妹の鋭い尋問

「ただいまー! いやー、今年の福袋争奪戦も激しかったわー!」


初詣から帰宅し、コタツで冷えた身体を温めていると、両手に大量の紙袋を抱えた翠が嵐のように帰還した。

その顔は達成感に満ち溢れており、まさに「戦場から生還した戦士」の趣だ。


「おかえり、翠。お前、それ全部自分の服か?」

「当たり前じゃん! イギリスじゃこういう可愛い服買えないんだから。……あ、でもこれ、奏羽さんにお土産!」


翠は紙袋の中から、小さな包みを一つ取り出し、コタツで俺の肩に寄りかかっている奏羽に差し出した。


「えっ? わたしに?」

「うん。服屋の福袋に入ってたんだけど、私にはちょっとデザインが大人っぽすぎるから。奏羽さんなら似合うかなって」


奏羽が遠慮がちに包みを開けると、中から出てきたのは、落ち着いたボルドー色の、少し透け感のあるネグリジェ風のルームウェアだった。


「「……ぶっ!?」」


俺と奏羽は、同時に声を上げて固まった。


「み、翠ちゃん……これ、その……ちょっと、大人っぽすぎないかな……?」

奏羽が顔を真っ赤にして、布地を指先でツンツンと触る。

どう見ても、高校生が普段着るような代物ではない。どちらかといえば、「彼氏を誘惑するための勝負服」といった趣だ。


「そう? 奏羽さんスタイルいいし、絶対似合うよ。……それに、お兄ちゃんもこういうの好きでしょ?」

翠がニヤリと悪魔のような笑みを浮かべ、俺に視線を向けてくる。


「ば、バカ言え! お前、中学生のくせになんてもの買ってきてるんだ!」

「だって福袋に入ってたんだもん。……あ、もしかして、お兄ちゃんたち、もうそういう『大人な関係』に……」


「してない!!」

俺は全力で否定した。

確かに最近、キス以上の甘い空気になりかけることは多々あるが、俺の理性がギリギリのところで踏みとどまっているのだ。凪瀬夫人からの「風紀を乱すな」という条件もあるし、何より奏羽を大切にしたいからこそ、軽はずみな真似はできない。


「ふーん……。まぁ、お兄ちゃんはヘタレだもんね」

翠は呆れたように肩をすくめ、自分の戦利品の整理を始めた。


「……湊くん。わたし、これ着てみようかな」


隣から、小さな声が聞こえた。

見ると、奏羽がそのボルドー色のルームウェアを胸に当て、上目遣いで俺を見つめている。


「お前なぁ……! 翠にそそのかされるな。そんなの着て出てきたら、俺がどうなるか……」

「湊くんが、どうなるか……知りたいな」

「……っ!」


小悪魔のように微笑む孤高の生徒会長。

俺は頭を抱え、コタツの天板に突っ伏した。


 * * *


その日の夜。

翠は「疲れたから寝るねー」と早々に客間へ引き上げた。

俺はリビングのテーブルで、三学期に向けた予習(零さんの冬休み課題)に取り組んでいた。


「……湊くん」


背後から、静かな声がした。

振り返ると、そこには——翠からもらった、あのボルドー色のネグリジェ風ルームウェアを着た奏羽が立っていた。


「……っ!!」


俺は持っていたシャーペンを落としそうになった。

透け感のある生地から、彼女の雪のように白い肌と、華奢な肩のラインが微かに透けて見える。

普段の「俺の大きめパーカー」という無防備な可愛さとは全く違う、艶やかで危険な魅力が、そこにはあった。


「ど、どうかな……? 変じゃない……?」

奏羽はモジモジと裾を握りしめ、顔を真っ赤にして俯いている。


「変じゃない……というか、似合ってるけど。……でも、それは反則だろ」

俺は視線のやり場に困り、必死に壁のポスターに目を向けた。


「……反則で、いいの」


奏羽はゆっくりと俺に近づき、俺の膝の上に座り込むようにして、俺の首に腕を回してきた。

甘いシャンプーの香りと、彼女の体温がダイレクトに伝わってくる。


「……湊くん、お正月のおみくじ……覚えてる?」

「『恋愛:迷わず突き進め』、だろ?」

「うん。……だから、わたし、今日は突き進むね」


彼女の熱い吐息が、俺の首筋にかかる。

俺は彼女の細い腰に手を回し、その柔らかい感触に息を呑んだ。


「……奏羽、お前、本当にわかっててやってるのか?」

「わかってるよ。……湊くんのこと、もっとドキドキさせたいもん」


彼女の潤んだ瞳が、至近距離で俺を捕らえて離さない。

冬休みの夜。

妹からの予期せぬプレゼントが引き金となり、俺の理性の防波堤は、今夜こそ本当に、音を立てて崩れ去ろうとしていた。

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