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完璧な生徒会長は、平凡な俺の「声」がないと眠れないようです。  作者: Takayu
第5章:雪解けの季節と、甘すぎる冬の誓い
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第109話:冬休みの魔物と、お姫様のコタツデビュー

クリスマスが過ぎ、学園は本格的な冬休みへと突入した。

連日の厳しい寒さに対抗するため、俺はリビングのクローゼットの奥から、実家にあった折り畳み式のコタツを引っ張り出してきた。


「よし、これで完成だ」


厚手のコタツ布団を掛け、電源を入れ終えると、少し離れた場所からその様子を不思議そうに眺めていた奏羽が、おずおずと近づいてきた。


「……湊くん。これ、何?」

「コタツだよ。布団の中にヒーターが入ってて、足元を温める日本の冬の定番器具だ」

「コタツ……初めて見た。お家には、床暖房しかなかったから……」


(……やっぱり、お嬢様だな)


俺は苦笑いしながら、「騙されたと思って、入ってみろよ。温かいから」と、コタツ布団をめくって促した。

奏羽は少し緊張した様子で、ゆっくりとコタツの中に足を滑り込ませた。


数秒後。


「……っ!!」


奏羽の目が、驚きに丸くなった。


「な、なにこれ……! すごくあったかい! 足が、ぽかぽかする……!」

「だろ? 一度入るとなかなか抜け出せなくなる、冬の魔物だ」


奏羽は「すごぉい……」と感動したように呟き、そのままズリズリと身体を滑り込ませて、胸元までコタツ布団を被った。

俺のパジャマパーカーを羽織り、コタツの中で完全に丸くなっている姿は、まるでお気に入りの巣を見つけた子猫のようで、たまらなく愛らしかった。


「お、お兄ちゃん。……奏羽さんが、完全にコタツの魔力に負けてるんだけど」

客間から出てきた翠が、コタツと同化しつつある奏羽を見て呆れたように笑った。


「しょうがないだろ、初めてなんだから。……翠、お前も入るか?」

「入る入る! 冬はやっぱりコタツにみかんだよねー」


翠も嬉しそうにコタツの反対側へ滑り込み、テーブルの上に置いてあったみかんを剥き始めた。


「……湊くん」

コタツの温もりに蕩けきった顔の奏羽が、コタツ布団の下から俺のパジャマの袖をぎゅっと握りしめてきた。


「ん? どうした?」

「……こっち、きて?」


彼女は自分の隣のスペースをポンポンと叩いた。

翠が目の前にいるというのに、彼女の「湊くん成分」を求めるおねだりは止まらない。

俺は仕方なく、彼女の隣へと滑り込んだ。


「……んんっ」


座った瞬間、奏羽は待ってましたとばかりに俺の腕にギュッとしがみつき、俺の肩に頭を預けてきた。

さらに、コタツの中で、彼女の白くて細い足が、俺の足にそっと絡みついてくる。


「お、おい奏羽……近いぞ」

「だって、コタツの中、広いから……湊くんともっと、くっつきたいんだもん」


彼女の熱い吐息が、首筋にかかる。

コタツの温もりと、彼女の体温。

ダブルの熱に当てられて、俺の心臓は再び早鐘のように打ち鳴らされ始めた。


「……あーあ。お兄ちゃんたち、コタツの中でもイチャイチャするわけ? 私、目の前でみかん食べてるんだけど」

翠がジト目で俺たちを睨むが、奏羽はコタツ布団に顔を半分埋めたまま、幸せそうに微笑んだ。


「いいの。……わたし、今年の冬休み、ずーっとこのコタツの中で、湊くんとくっついてるって決めたから」

「……受験生の妹の前で、そんな自堕落な宣言しないでよ」


翠の不器用なツッコミをBGMにしながら、俺は奏羽の頭を優しく撫でた。


不眠症で夜を恐れていた彼女が、今はこうして、俺の隣で世界で一番暖かくて甘い冬の時間を過ごしている。

これから訪れる大晦日やお正月。

俺たちの冬休みは、この小さなコタツという名の特等席で、どこまでも甘く、穏やかに過ぎていくのだった。

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