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完璧な生徒会長は、平凡な俺の「声」がないと眠れないようです。  作者: Takayu
第5章:雪解けの季節と、甘すぎる冬の誓い
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第101話:恋人たちの朝と、近づく聖夜の足音

冬の冷たい空気が窓ガラスを叩く朝。

俺は、右腕に感じる確かな温もりと、規則正しい寝息の音でゆっくりと目を覚ました。


「……んぅ、湊くん……」


毛布にくるまり、俺の胸に顔を埋めている奏羽。

昨日、遊園地でのデートを終え、彼女は「眠れないから」という不眠症の治療の口実を捨て、「好きだから一緒に寝たい」と俺のベッドに潜り込んできた。

つまり、今の俺たちは正真正銘、互いの愛情だけで寄り添い合う「恋人同士」として、この朝を迎えているのだ。


「……おはよう、奏羽」


俺が彼女のサラサラとした黒髪を撫でると、奏羽はゆっくりと長いまつ毛を震わせ、目を覚ました。


「……ん、おはよう、湊くん」

「よく眠れたか?」

「うん。……すっごく、よく眠れた。湊くんの夢、見たよ」


奏羽はとろけるような笑顔を浮かべ、俺のパジャマの胸元に顔をスリスリと擦り寄せてきた。

親公認の同棲生活が始まってからずっと甘えん坊だったが、恋人としての自覚を持った彼女の「甘え」は、もはやストッパーが完全に吹き飛んでいる気がする。


「……よし、起きるか。翠がまた『朝から当てつけがましい』って怒り込んでくる前に」

「むー。翠ちゃん、最近ちょっと過保護だよね。わたしの方が湊くんの彼女なのに」


奏羽は不満そうに唇を尖らせたが、渋々といった様子で俺の腕から離れ、ベッドを抜け出した。


 * * *


「おはよー。……はぁ、今日も朝から砂糖を吐きそうな空気ね」


リビングのダイニングテーブルでは、すでに着替えを終えた翠が、トーストを齧りながら呆れたような視線を送ってきた。

俺と奏羽が、無意識に手を繋いだまま寝室から出てきたからだ。


「おはよう、翠ちゃん。今日のご飯はわたしが作るね!」

「お、珍しいじゃん奏羽さん。じゃあ期待して待ってるね」


奏羽は嬉しそうにキッチンへ向かい、俺の大きめのエプロンを身につけた。

目玉焼きを黒焦げにしていた頃から比べれば、彼女の料理スキルは飛躍的に向上している。最近は簡単な朝食なら一人で作れるようになっていた。


「……で、お兄ちゃん」

翠が、コーヒーを啜りながら声を潜めてきた。


「なんだよ」

「カレンダー、見てみ?」


翠に顎で示され、俺は壁掛けのカレンダーに目を向けた。

期末テストが終わり、現在は十二月の中旬。そして、来週の週末には赤い丸印がつけられている。


「……クリスマス、か」


「そう。お兄ちゃんと奏羽さんにとって、晴れて『本物の恋人』になってから迎える、初めての一大イベントでしょ。……何か計画立ててるわけ?」

「計画って……いや、まだ何も」


俺が正直に答えると、翠は「はぁ」と今日一番の深いため息をついた。


「あのねぇ。奏羽さん、お母様が厳しかったから、今まで『彼氏と過ごすクリスマス』なんて経験したことないはずだよ。絶対にめちゃくちゃ期待してるって。……彼氏なら、ちゃんとリードしてあげなよ」


「……」

翠の言う通りだ。

遊園地デートの時も、彼女は「こういう場所は初めて」と目を輝かせていた。なら、クリスマスという特別な日も、彼女にとっては未知のキラキラした世界に違いない。


「……お待たせ! ベーコンエッグとサラダだよ!」


キッチンから、エプロン姿の奏羽がフライパンを持って戻ってきた。


「おお、美味そうじゃん。ありがとな、奏羽」

「えへへ……。あ、そうだ、湊くん」


奏羽はエプロンを外し、俺の隣に座ると、少しだけモジモジしながら上目遣いで俺を見上げてきた。


「あのね。来週の週末……クリスマス、なんだけど」

「ああ、そうだな」


「その、もしよかったら……一日中、わたしと一緒にいてくれないかな? ……ダメ?」


翠が「ほら言わんこっちゃない」という顔で俺を見ている。

断る理由なんて、あるはずがなかった。


「ダメじゃないよ。むしろ、俺から誘おうと思ってたところだ」

「ほんと!? やったぁ……!」


奏羽はパァッと顔を輝かせ、俺の腕にギュッとしがみついてきた。


「じゃあ、わたし、色々と計画立てるね! ケーキも手作りしたいし、プレゼントも……あ、でも湊くんは何が欲しい?」

「俺は、お前が隣にいてくれればそれでいいよ」


俺が素直な気持ちを口にすると、奏羽は茹でダコのように顔を真っ赤にして、「み、湊くんのバカ……朝から心臓に悪いよ……」と俺の肩に顔を埋めた。


「……はいはい、ごちそうさま。クリスマス当日は、私は友達とパーティーするから、夜まで帰らないでおいてあげる。……せいぜい、二人で甘い夜を過ごしなさいな」


翠がニヤニヤしながら立ち上がり、自分の食器を片付け始めた。

その言葉に、奏羽はさらに顔を赤くして俺の腕に顔を隠してしまう。


恋人同士になって初めて迎える、冬の一大イベント。

完璧な生徒会長と過ごす、特別なクリスマスに向けて、俺たちの甘くて少し騒がしい準備期間が幕を開けようとしていた。

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