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俺、悪役騎士団長に転生する。  作者: 酒本アズサ


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244/273

244.

「ここは……どこだ」



 転移した先、そこは山の麓で明らかに気温が変わっていた。

 エルドラシア王国は常夏の国だったが、エルフの里は山の上だったからか涼しかったものの、陽射し自体は強い。

 今いる場所は明らかに陽射しが和らいでいる。



「ここは黄鱗(おうりん)帝国の端になります。ここから南に行けば行くほど涼しくなりますよ」



 俺の呟きに藍がすぐに答えてくれた。

 地球でいうところの赤道はエルドラシア王国より少しラフィオス王国側にあるため、黄鱗帝国は南半球にあるという事だ。

 ちなみに今見えている景色のほとんどが山だ。



 山脈を下りたはずなのに、周りに山ばかりある。

 すぐ近くを幅五メートルほどの川が流れており、その左右に石がゴロゴロしている河原がある状態だ。



「ここから人が住んでいる場所までどのくらいかかるかわかるか?」



「そうですね、十日も歩けば到着するのではないでしょうか。ただ、エルフが最後に黄鱗帝国に来たのは数百年前ですから、現在はどうなっているか不明です」



「数百年も経てば王朝が変わっていてもおかしくない年月だからな。もう少し近くに人里ができている事を祈ろう」



「主殿、妾とジェスは一度巣に戻ろうと思う。念話で少々黒が拗ねておってな。それに……この国は何やら嫌な感じがする。人里まで主殿達を乗せて飛ぼうかとも思ったが、やめておいた方がよさそうだ」



 そう言ってジャンヌは地面を見つめた。

 本能が何かを訴えているのなら、それには従った方がいいだろう。



「わかった。手紙を書きたいから少し待ってくれるか?」



「あいわかった。その間に探知魔法でどちらに向かえばよいか調べておこう」



「助かる」



「団長! オレにも便箋くれよ! アルノー達に手紙書くからさぁ!」



 シモンが手紙を書くなんて珍しいな。

 やはり普段一緒にいるジュスタン隊のみんながいないのは寂しいのかもしれない。

 書き損じをするかと思い、便箋を五枚と予備のペンを渡すと、近くの岩を机にして手紙を書き始めた。



「時間がかかるだろうから、休憩していてくれ。四通は書く必要があるからな」



「わかりました。ごゆっくりどうぞ」



 藍は頷くと、川の方へ歩いて行った。

 ジャンヌとジェスは岩に座って、笑いながら話している。

 俺も陛下とアナベラの分は丁寧に書き、第三騎士団とエルネストの分は急いで書いた。

 四通書き終わったと同時に、シモンも書き終わったようだ。



「ジェス、これはアルノーに渡して、みんなで読むように言っておいてくれ」



「わかった!」



 シモンはまるで俺に手紙を見られたくないかのように、すぐにジェスに預けている。

 何を書いているか心配になるが、さすがに中身までチェックするのはプライバシーの侵害だろう。

 俺もジェスに四通の手紙を預けた。



「宛名を書いてあるから、誰に渡すかわかるな? 陛下とエルネストの分は王城の門番に渡しても構わないぞ。第三騎士団の分はオレールでもリュカでもいいし、何なら文官に預けても構わない」



「うん! あとはアナベラだね、任せて!」



「ああ、うん……こほん。返事はこっちに戻る時でいいから受け取ってきてくれ」



「い~な~、オレも婚約者とイチャイチャな手紙のやり取りしてぇな~」



「全員の返事だからな! 別にアナベラだけじゃない!」



 シモンの茶々につい反論した。

 そう、アナベラとの手紙も甘い会話が書いてあるわけでもないし、イチャイチャではないんだ!



「ジュスタン、耳赤いよ? どうしたの?」



「何でもない。それじゃあ頼んだぞ。黒にもよろしく伝えてくれ」



 純粋なジェスの心配そうな表情に、頭を撫でた。

 とりあえず声を殺して笑っているシモンは、ジェスが行ってから覚えていろ。

 俺手製の最後のパンの包みをジェスに渡すと、嬉しそうに胸元に抱えた。



「では主殿、妾達は行くが、必要であれば念話で呼んでくれればよい。少々遠いが、主殿の大体の位置がわかっておるから問題なかろう。まぁ、藍がおれば魔法で大抵の事は解決できよう。あちらに向かえば五日ほどで集落に到着するはず」



「じゃあね、ジュスタン、シモン、藍」



 そう言うと、二人は転移魔法でラフィオス王国へと戻って行った。

 俺の癒しが……。

 この先シモンと藍の三人なのかと思うと、気が重い。

 ジェスと従魔契約する前は、第三騎士団の部下達という男臭い集団が当たり前だったというのに。

 まだシモンと二人の方が気を遣わなくていいから、楽だったのだが。



 ジャンヌが最後に教えてくれた方向は、先の見えない川沿いの石の道。

 時々大きめの岩があるところを見ると、今いる場所は比較的上流なのだろう。



「さて、とりあえず集落で情報収集するか。歩くぞ」



「はい」



「へ~い。五日かぁ、できれば集落で馬が手に入るといいんだけどなぁ。帝国っていうくらいなんだからデカい国なんだろ?」



「そういえばシモンは地図を見てなかったな。ラフィオス王国の五倍近い国土だぞ。半分近く山なせいで、人の住める場所だけなら三倍もないが」



 萌が魂の定着状態を確認すると言って引き止められている間に、数百年前に手に入れたという黄鱗帝国の地図を見せてもらった。

 多少変わってはいるだろうが、人が住める場所の候補がわかるだけでもありがたい。

 ラフィオス王国民からしたら、遠すぎてエルドラシアから向こうの国には直接の交流がないからな。



 こうして数日間の強制キャンプ生活が始まった。

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