ナビ
「中は思った以上に広いな。」
俺のそんな呟きさえもその広い城内は山びこのように響かせる。
【案内】のお陰で城を目視出来た俺たちは夜だと足元などが危うい理由から近くの木の上で一夜過ごし、城の入り口から中に入ったのだ。
幸い、城の入り口に弾くような力はなかったようで、俺たちはそこから中に入りこうして城の広間に立っていたのだ。
《考察)どうやらこの城は今から五千年以上は前の物だと考えられます。更に争いの跡があることから何者かの反乱や戦争があったようです。》
棒読みながらも悠長な【案内】の言葉に俺は少し嫌な気分になりながらもその城の広間、外廊下、内廊下、階段などを見て回った。
朝だったせいか城の中は意外と明るく、ボロボロの中に綺麗な装飾品がいくつも見られた。
「以外としっかりしてるな......流石お城。」
そんな当たり前のことを呟き俺は階段を登って行った。
《考察)やはりこれまでの解析の結果からこの城で争いがあったこと、そしてその争いで大量の者がこの世界から消えたことが確定されました。》
その言葉に俺は今まで思っていたことを口にする。
「なぁ。ナビ。」
《回答).......ナビとはなんでしょう。》
「お前の名前だよ。ずっと考えてたんだ。案内......だなんてそんな堅苦しかったら俺としても困るし。」
今まで俺のいう事に全て従っていた【案内】がこの時、初めて。
《拒否)その名前はいりません。》
拒否した。
「な、何でだよ!」
その言葉に【案内】は変わらないだが、何か寂しさを感じさせる棒読みで言う。
《回答)わた.....【案内】はスキルです。人間とは違います。スキルとご主人様は主従関係です。これは唯一無二の存在であり決まり。ルールです。このルールを破ってしまえば、スキル...否、それはスキルではなくただのガラクタです。自分を人間のように自由だと勘違いし、片方しかない翼を無理やり広げ、奈落へと落ちていくただのゴミ。それは意思を持つ【案内】だとしても破ることのない決まりです。.......なので、わた........【案内】はその名前を......受け取りま》
「いいや。認めない。受け取れ。」
【案内】の言葉を割り込み、俺は強くそう断言する。
その自分勝手な言葉に【案内】は拍子抜けしたのかおし黙る。
「お前は俺の下僕じゃねぇ。スキルなだけだ。主従関係とか上か下かなんて関係ねぇ。」
《回答)っ!?........ですが、【案内】に感情などありません。 わた......【案内(案内)】のこの言葉の全ては主人によって作るられたただの台本です。感情を持たないスキルなど、ご主人様と対等になれるわけが!!》
「そんなのどうでもいい。」
俺は更に強くそう言い切る。
《......どう、でも.....いい、?》
「そうだよ。どうでもいいよ。そんなの。 ルール?決まり?それがなんだよ。それを破って何かあるのか? 片方しかない翼?ふざけるな。お前はただ、未来が怖いだけだ!!」
俺は誰もいない階段の壁にそう言いつける。まるでそこに俺の中のそいつがいるかのように。
「飛んだそいつらは下に落ちたんじゃない。上に飛んで見えなくなるほど高く飛んだんだよ。未来が怖くて一歩も踏み出せない奴らに、自由も何もない。ただ上だ下だという悪魔に、大人に、お前を作った主人に、ただ幻惑を見せられてるだけの憐れな子供だ!!」
俺はまだ吐き続ける。
「感情がないだぁ!? 嘘つくんじゃねぇ!! そんなのとっくに持ってるだろ!! 」
俺はそこまで言い息を切らす。
【案内】はそのまま押し黙っている。それを気にせず俺は続ける。
「お前さぁ。」
俺の言葉にそいつが耳を傾けている気がした。
「さっき、自分のこと、「私」って言おうとしただろ。」
その言葉にそいつは気付く。
「お前は知ってるんだよ。もうスキルは人間のようになれるんだって。」
《何故自分が意思を持つのか、何故喋れるのか。》
「お前はただ無視してたんだよ。嘘ついてたんだよ。自分に。」
《それは。》
「それは。」
「《自分が人間を好きと思ってしまったから。》」
その言葉にそいつは鼻をすすらせる。
「だからさ。どうでもいいじゃんか。」
俺はそう言いこの場にはいないそいつに握手を求めた。
「俺たちは対等だ。そして。」
握られた感触を何故か感じる。だがそれが不思議と暖かく感じれた。不可思議と思えなかった。
「仲間だ。 ナビ。」
そいつは涙を流した。ように思えた。そいつはその蒼色の瞳に透明な綺麗な涙をいっぱいに溜めて。
止むことのない、綺麗な雫を、蒼海のように綺麗な髪が俺の腕に触れる。グリがそれを触れて眠たそうに目をトロンとさせる。そんなそいつは俺の中で。めいいっぱいの声を出して。泣いた。
自由という権利を手に入れて。
今。ある一羽の鳥が、自分が目視できる翼と、目視できないが確かに存在する翼で空へと飛んだ。
その鳥......否....そのスキル...否........その者の眼に映る世界は。どんな世界よりも美しかったという。
そう話してから数分が立ち、やっと長い階段に終わりが来た。
大きな門が現れたのだ。だが、
「........開かない。」
いくら押しても引いても開かなかった。だが、
《回答)私が致します。》
そう言ったそのスキルはその扉をいとも容易くこじ開けた。
「ありがとうな。ナビ。」
その言葉に俺の中にいる一人の人間は口を開いた。
《いえ。こちらこそ。 これからよろしくお願いいたします。ご主人様.......否.........ご主人!!》
そいつは元気いっぱいの声でそう言った。
きっとこいつの笑顔は可愛いんだろう。そう俺は思いながら辺りを見回した。
その大きな部屋を。




