今後
「さて.........こいつどうしよう。」
俺はため息と一緒にそんな声を漏らした。
俺の前に立っているのはそこらへんの山などが小さく見えるような大きな鹿だった。
この鹿は【案内】が見つけた鹿のようで【案内】曰く、害はないらしい。こんなに大きいのに害はないって....何のために大きくなったの?
そんな疑問をつけたいが、今はそれよりこの大きいのをどうするかだ。
こんなに大きいやつが俺の周りを歩いてもらったら俺が潰れる。
しかし何故かこの鹿、俺の跡をついて来ているのだ。確実に。
俺が歩くとその地響きが俺に近付き、俺が止まるとその地響きも止む。
それの繰り返しをすれば流石の俺も鹿がついて来ていることは分かった。
そして俺はこの大きな鹿をどうにかしたかった。
理由はモンスターに襲われること。
俺はあまりモンスター.....というか生物と争いをしたくない。
前の世界の時のじいちゃんの教えからかもしれないが、俺は世界を平和にしたかった。
前の世界では権力という俺が持たないものが支配していた世界だった。
もしこの世界で俺が世界を支配できるとしたら、あの時にいた子供みたいな者がいる世界を作りたくない。
俺はこの世界での目標をこれに決めた.........
......さて話がずれたが、そういうことで俺はこの大きな目立つ鹿をどうにかしたかった。のだが、
「うん。諦めよう。」
諦めた。理由?そんなの
「出来るわけないわ。」
だって仕方がないじゃん?大きいのは変えられないんだから。
それとも何か?俺がこんな状況にぴったりの能力でも持ってればよかったのか?
俺がそんな思考を目をつぶって繰り返していると、ふと
チョン。
と、俺と腕に何かが触れた。
俺はちらりとそちらを見る。と
「パフン。」
「へ?」
小さいツノを生やした肌色で蒼く澄んだ目をした生き物がそこにいた。
なんか小さい鹿がいるんですけど........あいつの子供?
そんなアホな考えを持ち空を見上げると。
「.....あれ?あいつは?」
あの大きな鹿は消えていた。跡形も残らず。
俺は固まった表情のままいつのまにかあぐらをかいた俺の足の中に入り、人形サイズのその鹿は俺を見つめていた。
「........お前.......小さくなった?」
それを聞くとまるで返事をするかのように、「パフン!」と鳴き鹿は俺の体にくっついた。
「えっと、【案内】。これは一体な...」
《召喚物の小型化に成功致しました。ご主人様。》
「お前か原因は。」
どうやらこの小さくなったり突然現れたりしたこの鹿は【案内】の持つスキルの一部だったようだ。
【召喚】......自分のマナを消費しそのマナの量と対等の生物または物質を消費者の僕又はペットなどのようにすることができる。なお、その召喚したものは消費者の自由にサイズや形を変えることも可能。だがその操作をするためには召喚する時の二倍のマナを消費する必要がある。
自分の好きな物をマナを払えば目の前に出すことができるというすごいスキルだった。
というかこの世界では生き物がスキルを持つというのを聞いたけど、スキルがスキルを保持しているのはどういうことなんだ?
そう思って聞いてみたが。
《回答)いけませんか?》
いや、別にいいよ!?けどさ、なんかチートみたいだなぁって......
《否定)このスキルは【案内】のスキルであるのと同時に、ご主人様のスキルでもあります。》
「ん?それってどゆこと?」
《回答)ご主人様が持っている【案内】。これにはある能力が組み込まれています。》
....ある能力?
そう思い俺は【案内】が出したのであろう、パソコンのウィンドウのような突然現れた板をよく見る。
そこには【案内】から聞いた【案内】の説明と、聞いていないものが載っていた。聞いていないもの....それは。
【相互】......このスキルを持つ者同士のスキルを共有することができる。さらにどちらかがスキルを習得、又は進化させた場合、もう片方の者にも新たなスキルがランダムで習得、又は進化される。このスキルが無力化されることはない。
そんなことが載っていた。.......つまり。
「これって、俺がスキル習得したら【案内】も違うスキル一つ習得したことになるの?」
《肯定)その通りです。》
「チートじゃん!!」
俺はそこで初めて【案内】がとてつもない能力を持ったスキルだということを理解できた。
「パフ?パフパフ!!......パフ.......パ........スー....スー....」
腕の中で抱かれるのが心地良いのか、この鹿、グリ(名付けた)は俺の腕の中で喜んで鳴いたのち、速攻で寝た。
先ほどから、起きてはこれの繰り返しをずっとやっており、俺は少し面白いな。と眺めながら足を動かしていた。
あれから結構歩いているがなかなか森の出口へと辿り着かない。
そろそろ【案内】が迷子になっているのではないかと心配になってきた。
《回答)いえ。問題はありません。》
そう言っているものの【案内】の声は何やら不安げな低い声を出していた。
そうこうしている間に火は沈み、俺たちは仕方がなく野宿をすることになった。
木の枝をロープの鞭で切り、何本か持ち、何故か木が開けていた場所を見つけたのでそこに貯める。
あとは火をつけるだけなのだが、そこで俺は気付いた。
「.....火ってどうやって起こすの?」
《謝罪)申し訳ありません。》
俺の言葉に【案内】が即答する。
「あ、いや謝んなくていいよ!!というかそこに気付いてなかった俺が悪いんだし。」
俺はすぐに【案内】を抑えた。
すると、
「パフ。」
そんなグリの声が後ろから聞こえてきた。
「グリ?何してるの?」
そう言いながらグリを見ると。
「パフ!パフ!パフ!」
何かグリが変な行動を取っていた。
グリは小さなツノを前に突き出し、そのまま突進すると何もないところで反対方向に飛ばされたのだ。
その動きが俺の目には何か見えないものにぶつかったように見えた。
「大丈夫かグリ!!」
「パフ.....パフ!!」
グリは俺が気付いたことが分かると嬉しそうに尻尾を振り俺の腕に乗った。
ずしっときたグリの体重が地味に重い。いつか計ってみようとグリを見て少し思ってしまった。
さて、そんなことはさておき、
「【案内】!!ここに何かあるぞ。」
《考察)どうやら見えない建物が存在しています。あるいは建物が何らかのスキルによって隠されています。》
「隠されてる?」
俺は先ほどグリがぶつかって弾かれたところに向かう。
直後。
「!?」
俺の体が何故か反対側へと吹き飛ばされた。
「いてて。グリ。大丈夫か?」
「パフ!!」
どうやらグリは無事なようだ。まぁ俺の腕の中にいたからな....
《報告)やはり何らかのスキルである建物が隠されて、さらに近付いた物を吹き飛ばす力があるようです。【案内】のスキルで解析します。》
「あぁ。分かった.....というよりそんな能力もあったんだね.......」
《回答)いけませんか?》
あっ。いえ。大丈夫です.......
そして数分後、俺たちの前に突如大きな城が現れたのだった。




