S3-06 言葉。
観測者
[ようこそ、主婦転の世界へ。]
[これは、映像脚本型小説です。]
[新しい展開の幕開けです。]
体を低くし、身構える。
双短剣が現れ。
それを力強く握る。
剣を構え、
迫りくる父。
風を、
切る音。
重心を変え、
高く跳ぶ。
勢い良く振りかぶる。
短剣を重ね
降り下りてくる剣を受け止める。
――ガキーーン!!
乾いた金属が鳴り響く。
キリキリと火花が散る。
重い。
短剣が軋む。
押される。
刃先が頬を掠める。
一筋の血が滲んだ。
直樹
「ギィアルウッ!!」
Guiar
【補助します。】
直樹
「ぁぁああ!!」
押し返す。
片側へ体を逃がした。
肩で、
息をする。
父は、
表情一つも変えない。
鋭い視線が、
胸を締め付ける。
一瞬。
微かに口角を上げた。
目を見開く。
幻かと思ったくらい瞬間的だった。
直樹
「父さん、もうやめよう」
返事はない。
チャーリー
「…これならどうだ」
両手を、
こちらへ掲げてくる。
Guiar
【Ratio融合率上昇。危険です。いや…逃げるべきだ。】
直樹
「父さん!!」
一瞬。
視界が歪む。
Guiarの、
声が遠く感じる。
Guiar
【やらなきゃ殺られる。いや…やれ。】
直樹
《やる…父さんを…?》
Guiar
【死にたいならご自由に。】
直樹
《ギアル?お前…》
Guiar
【融合率上昇させます。】
直樹
《やめ…》
『そんな…』
『絶対バグだ…』
涙が、
瘡蓋を伝い、
赤い雫が床へ落ちた。
体を包む、
オーラは、
闇に染まり、
意識さえも塗り替える。
直樹
「父さん…助けて…」
その声を最後に、
Guiarに取り込まれる。
Guiar
【融合完了。任務執行します。】
Ratio
【…手遅れでした。申し訳ございませんでした。】
チャーリー
「俺も悪かった。隙を与えすぎた」
Guiar
【いかが致します?こちらはいつでも殺れますよ。】
直樹は、
宙へ浮かぶ。
双短剣から、
杖へと持ち替えた。
Guiar
【直樹。貴方には失望しました。】
【私が代わりに殲滅を…。】
【任せてください。】
【私は、ガッカリさせませんから。】
杖を、
天井へ掲げる。
口ずさむ、言葉。
「♪見えない扉、開いた瞬間。The world changed color without a sound♪」
小さくハミング。
大地は、
目を見開く。
息を呑んだ。
それは、
懐かしい旋律だった。
Ratio
【事例なし。予測不能。】
【もう一度侵入を試みます。】
大地
「ああ…頼む…」
《Doviraへ…》
《援護を要請》
Ratio
【了解。】
Guiar
【私に介入しようと?】
【バカげてる。】
【人間なんぞ、貧弱だ。】
【私が壊して差し上げます。】
「♪……誰かに支えられ。……Still doesn't know……Why it has been protected♪」
最後の音だけ、長く残響した。
旋律が杖の先に集まる。
静かに、
光が弾けた。
無数のハープーンへ変わる。
Ratio
【避けて!!】
1本。
放たれた。
空気を切る。
一歩下がり、身構えた。
盾で、受け流す。
触れた瞬間、
重高音が響いた。
衝撃が重い。
ハープーンは床へ、
静かに花びらとなり舞い落ちた。
息子へ、
視線を合わせる。
光を、
失った、瞳へ。
大地
「直樹。戻ってこい…」
Guiar
【ふっ、無駄な。】
【やめなさい。少将がみっともない。】
【次で仕留める。】
杖を、
前へ掲げる。
ハープーンが、
一斉に飛び出す。
大地
「Ratio!!」
Ratio
【シールドを展開します!!】
大地
《間に合うか…》
《処理が追いつかない》
背中越しに、
肩に手が触れた。
瞬間。
防壁が、高速で展開。
思わず、
息が止まった。
ラファルサ
「すまない…」
Naparnik
【待たせたな!】
Ratio
【援護します。】
【Guiarへ侵入再開。】
Guiar
【無駄なことを!!】
直樹
「英雄…」
掠れた、
囁きだった。
直樹の瞳が、
一瞬、揺れる。
防壁へ、
ハープーンが、
当たった瞬間、
辺り一面花びらで覆われた。
直樹
「ギ…ア……ル…」
Guiar
【意識なんて、不要。】
直樹
「や……め…ろ…」
Ratio
【侵入回路が解放されました。】
【続けて作業に取り掛かります。】
大地は、
息をつく。
微かに、
口角を上げた。
直樹の、
瞳が小刻みに動いている。
大地
《援護する!!》
Ratio
【はい。】
大地の、
肩を小さく叩く。
視線を向ける。
ラファルサだった。
彼は、
背を向けたまま、
大地の前へ立った。
ラファルサ
『ここを護る』
Naparnik
【ああ。任せろ!】
Guiarの、
ため息が響いた。
静かに、
杖を構え直した。
Next time
――共鳴。
観測者
[英雄の登場。]
[その背中は凛々しかった。]
[いったいどうなる。]




