S4-12 ここにいる。
観測者
[Connectは、ふざけてるわけではありません。]
[たぶん…]
Connect
[朱雀の私室で、奥様がお呼びですよ。]
Guiar
[こっちは仕事中なのですが…。奥様!?]
【直樹。トモリからの呼び出しだそうだ。】
直樹
《え。いま待って…終わらせる。》
Guiar
[お前…。]
Connect
[私は、お前ではありません。Connectです。]
Guiar
[何の呼び出し…。]
Connect
[奥様が寂しがっていたのでご報告をと思いまして。]
Guiar
[奥様って…。何言ってんだお前…。]
Connect
[お前ではありません。Connectです。]
直樹
《お待たせ》
Guiar
【お疲れ。】
直樹
『カルディ。灯が呼んでるから行ってくる』
カルディ
『了解』
『イチャつきも程々に…』
呆れた視線。
直樹
『……』
「わかったよ…」
ため息。
直樹
『ここ、よろしく…』
カルディ
『行ってらっしゃい』
小さく微笑む。
Connect
[空腹だそうです。茹で鶏を求めています。]
Guiar
【茹で鶏!?空腹なのは…わかったけども…茹で鶏!?】
直樹
『茹で鶏?…おばちゃんに頼んでみるよ』
食堂へ、
向かった。
いつもの、
食堂のおばちゃんと目が合う。
直樹
「Can I order some boiled chicken?」
(茹で鶏って頼める?)
おばちゃん(従業員)
「Boiled chicken? I could make that… but why do you ask?」
(茹で鶏?できるけど…どうしたの?)
直樹
「She’s fancied having some. You just need to boil it.」
(彼女が食べたがってるんだ。茹でるだけでいいよ)
おばちゃん
「Is the seasoning any good?」
(味付けいいの?)
直樹
「Salt, mayonnaise or mustard will do.」
(塩かマヨネーズやマスタードでいいよ)
おばちゃん
「Right. I’ll put it in a separate container.」
(わかった。別容器に入れておくね)
直樹
「Thank you」
しばらくして・・・
おばちゃん
「Sorry to keep you waiting!」
(おまたせ!)
袋を、
受け取る。
直樹
「That’s a great help. Two?」
(助かるよ。2つ?)
おばちゃん
「Bonus」
(おまけ)
親指を見せ、
にこやかに笑った。
直樹
「Thank you」
母の、
私室へ急いだ。
――シュゥー
部屋の奥で、
ちょこんと座り込む少女。
視線が重なる。
思わず頬が緩んだ。
-
匂いに釣られて、
黒猫が直樹に寄ってきた。
直樹
「ん?」
首を、
傾げながら屈んだ。
灯
「あっ。ユキ…」
茹で鶏が、
入った袋を鼻先で嗅いでいる。
直樹
「そういうことか!」
Connect
【どちらの奥方も空腹ですよ。】
灯
「奥方?」
Connect
【お気になさらず。】
Guiarは、
端末へ移動した。
Guiar
【無理があるだろ!普通気にするからな!】
直樹
「ギアル、性格変わったね」
Guiar
【好きで変わったわけじゃありませんよ!】
Connect
【奥方が食べたがってますよ。】
直樹
「ややこしいな…」
灯は、
くすくす笑っている。
直樹
「いま待ってろ〜」
黒猫の、
ユキの背中を撫でた。
直樹は、
立ち上がり戸棚へ向かった。
ユキも付いてくる。
その様子を、
見つめる、灯。
テーブルの上に袋を置いた。
ユキも、
トンッとテーブルの上に飛び乗った。
袋に、
顔を埋める。
直樹
「これこれ」
お皿を置き、
袋から茹で鶏が入った小袋を取り出した。
直樹
「熱っ!」
小さく、
食べやすく、ほぐす。
皿に置いた瞬間、
ユキは夢中で食べ始めた。
直樹
「この子、そうとうお腹減ってたのかな?」
ユキの様子を
観察しつつ灯へ話しかけた。
直樹
「どうしたのこの子」
灯
「ユキって名前なの」
「大切な…私の最後の家族なの」
「生きてて良かった…」
顔を覆い、
涙が隙間から流れた。
直樹は、
そっと灯を抱き寄せた。
直樹
「大丈夫」
「ここにいるよ」
灯
「…うん。ありがとう…」
しばらく、
温もりを確かめ合った。
直樹
「灯…」
視線が重なる。
指先が絡む。
静かに顔が近づいた。
生ぬるい空気が、
ふわっと鼻先を擽った。
Guiar・Connect
【【……。】】
Dovira・Naparnik
【【………。】】
「何してんの」
2人の、
肩が跳ねる。
ゆっくり、
背後へ視線を向けた。
大人3人が、
見下ろしていた。
荷物を下ろす。
真彩
「位牌これで合ってる?」
灯
「あっ。はっ!はい!」
優しく、
位牌を受け取り、そっと撫でた。
大地
「直樹…ちょっと来い」
直樹
「え…」
名残惜しそうに灯から離れた。
大地
『灯さんに何しようとしてたのかな?』
口角は上がっている。
だが、目が笑っていない。
直樹
『何も!ムギューてしてただけだもん!』
瞳は泳ぎ、
視線を逸らした。
大地がため息。
ゆっくり、
灯へ歩み寄る。
大地
「灯さん、ちょっと…」
灯
「はい!」
立ち上がる。
大地へ駆け寄った。
大地
「付いて来て」
直樹へ、
視線を向けた。
大地
「お前はここにいろ」
直樹
「…えー」
突然、
背後から、
ホールドされた。
ラファルサ
「行ってこい」
直樹
「兄貴…」
何故か、
嬉しかった。
大地
「こいつを任せた」
ラファルサ
「ん」
――シュゥー
真彩の、
私室を後にした。
-
廊下。
灯は無言で、
なおパパの後ろを歩く。
あれ絶対、見られたよね。
顔が熱くなる。
俯いた。
大地
「さっきは、邪魔して悪かったね」
灯
「え。いいえ…」
顔を上げ、
首を横に振る。
無言。
物凄く、気まずい。
大地は、
とある扉の前で立ち止まった。
大地
「端末をスキャナーにかざしてみてくれないか?」
灯
「あ…はい」
端末を、
ポケットから取り出す。
Connect
【…拒否しても宜しいでしょうか?】
大地
「やれるものならやってみろ」
スキャナーへかざした。
Connect
【藤田 灯。私室として登録しました。】
【あ。…卑怯です。】
――シュゥー
扉が開いた。
大地
「これからは、ここが灯さんの部屋だ」
「ようこそ、TSIへ。そして…我が家へ」
灯は、
息を飲んだ。
ゆっくりと、
自分の私室へ入る。
見渡す。
これが…私の新しい部屋。
大地
「何かあったら端末を使って連絡して」
「スマホと扱い同じだからね」
「あと…電子決済だからお金の心配しなくていいよ」
入口で、
立ち止まったまま、
優しく話しかけてくる。
灯
「あの…」
息が詰まる。
顔が熱い。
灯
「お父さんって呼んでもいいですか?」
大地は、
一瞬固まった。
だが、
すぐに穏やかに微笑んだ。
大地
「ああ。“灯”が呼びたい様に呼べばいいよ」
灯
「ありがとうございます!」
「お父さん…」
気恥ずかしかった。
え…。
いや…気のせいかな…。
大地
「ユキちゃん連れてこないとな」
「戻るぞ。灯」
今度こそ、
聞き間違えなかった。
思わず、
息が止まった。
全身が熱くなる。
目頭が熱くなった。
-
灯が、
勢いよく駆け寄ってきた。
真彩と、
さほど体格は変わらない。
小柄な少女が泣きながら抱きついてきた。
灯
「お父さん。お父さん…」
「会いたかった…寂しかったよ…」
その言葉に、
息を呑み込んだ。
優しく、
背中を撫でた。
大地
「ここにいる。もう大丈夫だから」
Next time
――謎の風邪。
観測者
[もう、我慢しなくていい…。]
[灯の過去に何があったのだろうか…。]




