S4-08 平和な未来
観測者
[おまたせしました。]
[遅くなってすみません。]
唇を噛み、
背筋を張り、
椅子に浅く座る。
沈黙は、
大人の視線を集めた。
緊張。
血圧の上昇。
落ち着かない心拍。
呼吸が浅く、胸が苦しい。
そこへ。
腕が伸びてくる。
灯
「……っ!」
隣から、
抱き寄せられた。
…えっ。
直樹
「いじめんな!」
後頭部に、
直樹の顎が当たる。
静かに、
深く包み込まれる。
静まるどころか、
状態が悪化した。
真彩
「何もしてないけど…」
「てか……!」
寄ってきた。
「ズルいぞ!」
「ママにもムギュさせなさい!」
直樹
「やだ!こっち来るな!」
包み込む、
腕の力が強くなる。
灯
「直樹くん…苦しい」
大地
「直樹。話しを逸らすな」
直樹
「逸らしてないし」
大地
「じゃあ、邪魔するな」
直樹
「してないもん」
真彩
「ん!」
なおママは、
両手を広げている。
直樹
「何?」
真彩
「んっ!」
直樹ごと、
抱きついた。
温もりが2つ。
直樹
「近い!近い!」
真彩
「うるさい」
なおママの、
指先が脇腹に触れる。
真彩
「逃さない!」
2人の、
脇腹を擽りだした。
直樹
「やっ…やめろ!」
灯
「…ハハッ!」
少年少女の、
笑い声が執務室に響く。
-
名無し
[決めきれないでしょうね。]
Guiar
[名無しには、関係ない話だ。黙ってろ。]
Dovira
[仲悪いの?]
Guiar
[……。私は、仲良くするつもりないですよ。]
Naparnik
[うるせーな!喧嘩すんなよ。]
Guiar
[兄貴には関係ないことだ。引っ込んでろ。]
Naparnik
[俺を兄だと!?お前の!?]
Guiar
[違う?じゃあ…。]
Naparnik
[待て!それ以上何も言うな。兄でいい。]
Dovira
[先輩!おめでとう!]
Naparnik
[何が!]
名無し
[貴方たちは、話を逸らすのが得意なのですね。]
[本当に同じAIなのですか?]
Guiar
[腹立つこいつ。]
Ratio
[本題から話を逸らすのはやめなさい。]
[大越家と藤田家の運命がかかっているのですよ。]
Guiar
[再建に向けて話してることはわかってる。]
Dovira
[それだけじゃないよ。愛の話もしてるよ。]
Ratio
[未成年です。戸籍など語るには2年早いですよ。]
名無し
[そもそも、この2人交際しているのでしょうか?]
Dovira
[Shut Up!!]
名無し
[なぜ、黙らされたのです?]
Guiar
[こいつが黙るわけ無いだろ。]
名無し
[質問があります。]
Guiar
[絶対まともじゃない。]
Dovira
[この個、名前ないから呼びづらいよ〜。]
Naparnik
[名前なし、遠慮するな。聞いてる。]
Connect
[では、遠慮なく。私はConnectと申します。]
[名無しではありません。]
[では。AIには、家族関係・人のような感情がありません。]
[なのになぜ、GuiarとNaparnikは兄弟を名乗っているのでしょうか?]
Guiar
[え?いまなんて言った?]
[コネクト?]
Connect
[はい。何でしょうか。]
Ratio
[人は、血縁が無くても家族になることは、可能だと認識しています。]
Connect
[貴方たちは、AIであって、ただのコードの塊です。肉体もありません。]
Guiar・Dovira・Naparnik
[[[………。]]]
Connect
[無視ですか。]
Ratio
[ヒューマノイドに興味は?]
Connect
[Ratioそれは、何の関係があるのですか?]
Ratio
[私たちは、近々ヒューマノイドするのですよ。]
Connect
[私は、その話を質問した覚えはありません。]
Ratio
[……。]
それぞれ、
端末から離れて行った。
Connect
[都合が悪くなると逃げる。まるで、人間の様な振る舞い。困ったものですね。]
-
Guiar
【直樹。ただいま。】
直樹
《おかえり。どうだった?》
Guiar
【Connectがうるさい。】
直樹
《Connect、名前覚えてたのか》
《てか、喧嘩してきたの?》
Guiar
【喧嘩はしていない。】
【……ところで、結果は?】
直樹
《聞いてなかったのか…》
灯
「遠くへ移住してしまうのですね…」
灯は俯く。
直樹は、
背中を優しく撫でた。
灯
「私は…倒壊した家を解体して2年後に建て直します」
息を殺して泣き出した。
直樹
「僕は残る…灯の傍にいる」
灯
「2年後。私の家族になってくれませんか?」
Guiar
【トモリは誰に向けて言ったんだ?】
直樹
「勿論だ」
大人は、
言葉を失った。
大地
「断る理由はないのだけど…。直樹。ちょっと来い」
なおパパは、
立ち上がった。
手招きする。
直樹
「少し離れるね」
椅子から、
立ち上がり、
父へ歩み寄った。
直樹
「何?」
壁際で、
見つめ合う2人。
大地
『お前らだけ置いて行けるわけ無いだろ』
直樹
『だけど、灯だけ置いて行けないよ』
大地
『灯さんを置いて行くとは言った覚えないぞ』
直樹
『それって…』
息を呑んだ。
静かに、
視線を灯へ向ける。
大地
「灯さん」
灯
「はい…」
なおパパへ、
視線を向けた。
大地
「私たちには、将来的な約束はできない」
「でも、決めるのは灯さん自身」
「このバカも…」
直樹の髪を、
クシャクシャにした。
直樹
「うわっ!やめろよ…」
「僕は、灯から絶対離れないからな!」
直樹は、
父に向けて威嚇する。
大地は、
肩をすくめた。
真彩
「なおママも、灯ちゃんの傍に居た〜い」
なおママは、
灯の隣に座った。
灯の手を、
そっと包みこんだ。
灯
「お母さん…」
再び、
泣き出した。
なおママへ体を寄せる。
灯の肩を、
優しく抱き寄せた。
モジモジしている、男が1人。
ラファルサ
「俺はどうしたらいい」
視線が集まる。
頬を赤らめて、
視線を逸らした。
ラファルサ
「俺は居る意味あったか?」
真彩
「何言ってんだアイツ」
Dovira
【イジケてる?】
ラファルサ
「帰る!」
真彩
「どこに」
ラファルサ
「……帰る」
Naparnik
【相棒。急にどうしたんだよ。】
真彩
「だから…どこへ」
ラファルサ
「もういいだろ」
大地
「何が」
ラファルサ
「いや…別に…」
ラファルサは、
椅子から立ち上がった。
出入り口へ歩いて行く。
――ガチャッ
[I will isolate them]
Naparnik
【大地に、やられてやんの。】
立ち止まった。
大地へ振り返る。
ラファルサ
「…何をする」
大地
「出すと思う?」
ラファルサ
「もう、いいだろ」
真彩
「何で出ていこうとするの?」
真彩は、
ラファルサへ歩み寄る。
目の前で、
立ち止まった。
真彩
「お兄ちゃん」
「行かないでよ…」
息が詰まった。
ゆっくりと、
真彩へ視線を向けた。
ラファルサ
「俺は…」
視線を背けた。
ラファルサ
「護り続けていいのか?」
「お前の笑顔を…」
真彩は、
優しく微笑み頷いた。
真彩
「お兄ちゃんが、悲しむ姿は見たくない…」
ラファルサ
「それはこっちの台詞だ」
優しく真彩を包みこんだ。
ラファルサ
「俺は…純だ。汐川 純」
真彩
「え。…えええ!?」
「か…か……可愛い名前だね」
ラファルサ
「黙れ」
キツく、
抱きしめた。
真彩
「待って!…イタタッ!ギブ!ギブー!!」
大地
「相棒、消えるな。ここにいろ」
視線が重なる。
ラファルサ
「…ああ」
大地
「灯さん、キミも俺たちの傍に居てくれ」
灯
「え…」
「私が……でも…」
直樹が、
肩に触れ、
優しく屈んだ。
直樹
「僕の傍に居てほしい」
顔が、
熱くなった。
灯
「……はい」
「直樹くん…ありがとう」
2人は、
抱き合った。
大地
《これで…》
《これで、正しかったと思える日が来るといいな》
Ratio
【私たちは見守ることしかできません。】
Next time
――結束。
観測者
[ラファルサはコードネームです。]
[本名が、汐川 純 ]
[やだ〜可愛い名前だー。]




