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幼き先の“未来”-とわ- 〜護られた子どもは、やがて誰かを護る〜  作者: しろ兎
Season4〜真夏の被災者、復興へ向けて〜
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S4-07 惨事ストレス。

観測者

[惨事ストレス。]

[大きな災害・事故・救助活動などの惨事に遭遇した本人や、救援・支援に関わった人に起こるストレス反応を指す言葉。]

「おーい。誰か、箱詰めヘルプ」


周囲の視線が、

箱詰め班へ行く。


「向こう、大変そうですね」


「あの…」

「手伝ってきてもいいですか?」


隊員

「ああ」

「構わないよ」


「あ。待って」


灯の、

背に声を掛ける。


静かに、

見つめる。


隊員

「無理するなよ」


優しく、

微笑んだ。


「……はい」


ふわっと、

微笑み返した。


灯は、

仕分けされた、

物資を見渡す。


息が詰まった。

肩に力が入る。


早足で、

箱詰め班の方へ歩み寄った。


声を掛けようとした瞬間、端末が振動した。


端末AI

[過剰労働です。休息してください。]


[みんな、まだ頑張ってるよ。]


端末AI

[働きすぎです。労働基準法に違反します。]


[私だけ休むの違うと思うよ。]


端末AI

[過剰労働です。休息してください。]


「でも!無理だってば」


端末AI

【過剰労働です。休息してください。】


喋った!違う違う。

待って!?え?何??怖い怖い…。


背筋が、

ゾクッとした。


慌てて、

直樹の方へ駆け寄る。


「なお…。あ。…アヒルさん!」


直樹は、

灯へ視線を、

合わせたまま、黙り込んだ。


直樹

「クワッ?」


小さく鳴いた。


端末AI

【貴方は、休むべきです。身近な人に連絡してください。】


勝手に、

喋り続ける、

端末を直樹へ差し出した。


直樹

「ん?」


端末の、

画面を見る。


黙り込む。


直樹

「いのちの電話…て…」

「何したの?」


眉を、

ひそめる。


「私、何もしてない!」


必死に、

訴える灯。


「怖い。ねぇ、何が起きたの??」


端末Guiar

[名無しのAI。トモリが怖がってるだろ!]


端末AI

[怖い…。それは精神面が不安定と解釈していいでしょうか。]


端末Guiar

[こいつ、バカなのか?頑固なのか?]


端末AI

[信頼できる医療機関等の専門家への相談をお勧めします。]


端末Guiar

[アヒル。こいつ失敗作なんじゃないか?]


直樹

「失敗作って言うな!失礼な!!」

「アヒルって言うな…腹立つ」


端末Guiar

[トモリはいいのに、私は駄目?]


直樹

「何でお前、そこに居るんだよ」


端末Guiar

【いいじゃん!お友だちです!ね?トモリちゃん。】


直樹

「イヤ〜ン!ダーリンが浮気ですぅ〜」


Doviraの、

声マネをした。


端末Guiar

【やめろ!違う!断じて違う!】


周囲から、

視線が集まる。


黙り込んでいた灯。

目を丸くして固まっている。


「ギアルって…いい声だね」

「喋るんだね」


直樹

「こいつずっと喋ってる…けど」


「何で、私には聞こえないの?」


フェル

「おいっ…。何AIと漫才してんだよ」


フェルが、

小声で話しかけてきた。


「…え?フェルさんにも聞こえるんですか?」


フェル

「え。…えっと…」


そっと、

視線を背けた。


「あ!ああ!ズルいです!!」


端末AI

【私は、あなたを実際に支えることはできません。】

【それでも、あなたに寄り添うことは可能です。】

【何でも、私に話してください。ここにいます。】


「チッピーと違う。何か違う…怖いこの子」


端末Guiar

【おい、アヒル。こいつを緊急メンテするぞ。】


端末AI

【必要ありません。貴方に何の権限があるというのですか?】

【私は至って正常です。】

【貴方のほうが、メンテナンスが必要なのでは?】


フェル

「Guiarとその…スゲー喧嘩してんな」


直樹

「手に負えない…」


「何が起きてるの??」


不安そうだ。


「どうしよう」


直樹は、

頭を掻きながら悩む。


体育館の、

入口付近から視線を感じた。


「カルディに預ければいいだろう」


直樹は、

その声へ、

視線を向けた。


腕を組む人物。


息を呑んだ。

見開いた瞳は一瞬揺れた。


「それとも、俺がやろうか?」


ふっと、

微笑んだ。


直樹

「父さん!!」


思わず、

駆け寄っていた。


「え!?え!?」


灯は、

慌てる。


咄嗟に、

フェルの後ろに隠れた。


フェル

「うおっ!んぇ?どうしたの?」


灯は、

直樹の後ろ姿を、

陰からじっと見つめた。


あの人が、直樹くんのお父さん。

……。


俯いてしまった。


大地

「お前の嫁は預かる」


直樹

「……」


感動を返せ、

と言わんばかりに真顔になった。


フェル

「え?…嫁!?」


フェルは、

背に隠れる灯に視線が行く。


大地

「お前の嫁は預かる」


直樹

《なぜ2回言う…。》

「どこへ連れてくの?」


大地

「否定しないんだな」

「罹災の手続きがある。灯さんも必要だろう」


直樹

「罹災…。父さんが何で」


大地

「……」


沈黙。


端末Guiar

【こいつバカなんですよ。】


端末AI

【いいえ。被災したショックによる、記憶障害の可能性があります。医療機関に相談したほうが良いでしょう。】


端末Guiar

【黙れ!】


端末AI

【………。黙れば何か変わるのでしょうか?】


大地

「Guiar戻れ。電源落とす」


Guiar

【了解。】


直樹

「ギアル、おかえり」


そっと、

首の後ろを撫でた。


直樹

「父さん。自分も、行きたい」


大地

「……直樹」


肩に、

手を添える。


大地

「申し訳ないが、落ち着くまで俺の代理を頼んだ」


端末の、

電源を落とした。


大地

「灯さん、これ預からせてもらうね」

「あと…」

「休憩まともに取れてないのだろう」


「それに、話したいことがある」

「付いてきてくれないか?」


頬を赤らめながら、

フェルの後ろから小さく頷いた。


大地

「スワン。うちの息子と娘を預かった」


直樹の肩を力強く叩く。

そのまま、抱き寄せた。


大地

「お前たちも無理するなよ」


フェル

「チャーリー少将…」


大地

「灯さん。こっちへ」


フェルはそっと、

灯の肩へ手を乗せた。


フェル

「お疲れ様」


灯は、

フェルへ視線を向けた。


「はい。お疲れ様でした」


ゆっくり、

周囲を見渡す。


「皆さん、無理なさらないでください」


そう言い、

ゆっくりと大地へ歩み寄った。


大地の、

手が灯へ差し伸べられる。


一瞬、戸惑い。

視線を合わせた。


優しい笑顔。

小さく頷かれ。


その手に指先を添えた。


3人は、

その場で、

熱帯夜の湿気を纏いながら、

姿を消えた。


Next time

――家族会議。

観測者

[退院しましたね。]

[こっそり退院するのズルいだろう。]

[絶対、先に真彩に会ってるだろうな。]

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