S3-02 クマ駆除
観測者
[ようこそ、主婦転の世界へ。]
[これは、映像脚本型小説です。]
[彼らは、どんな一日を過ごすのだろう。]
直樹
「ねえ、兄貴」
テレビを、
見ている英雄。
ラファルサ
「ん?」
ゆっくり、
振り向く。
直樹
「やろうよ」
ラファルサ
「構わんが」
最近、
休日になると、
自分たちは、
FPSばかり遊んでいる。
自分は、
リビング。
ラファルサは、
自室へ。
2人は、
PS5を起動する。
互いに、
Discordの、
家族サーバーへ入る。
自分が、
先に声かけた。
直樹
「準備いいよ」
ラファルサ
[本体のアプデ来てるぞ。]
直樹
「あっ。ホントだ」
互いに、
本体のアップデート。
再起動。
直樹
「兄貴」
ラファルサ
[何だ。]
直樹
「本日の目標は」
ラファルサ
[トップだろ。]
他愛のない会話。
ラファルサ
[殲滅する。]
ロビーへ招待。
姿を現す。
くまの着ぐるみ。
相変わらず、
ギャップがすごい。
直樹
「ねえねえ」
「パパも呼ばね?」
ラファルサ
[…どうだろうか]
直樹
「聞いてくる」
席を外す。
父さんの、
部屋をノックする。
直樹
「父さん?」
反応がない。
そっと、
扉を開く。
直樹
「……。何やってるの」
真彩
「ファッションショー」
大地
「…」
父。
マネキンになる。
静かに、腕を組む。
父。
紺色のマント。
直樹
「スーパーマンですか?」
その声は、
笑いが含む。
直樹
「いつものが、いいと思うけど」
大地
「俺もそう思う」
ん?
その反応。
もしや…。
視線を、
母さんへ向ける。
直樹
「母さん?」
真彩
「何?」
採寸する、
その後ろ姿は、
趣味の領域を越えていた。
直樹
「職人かよ…」
呆れながら呟いた。
直樹
「長いマントじゃなくてさ…」
そう言い、
布を手に取る。
父さんの肩に触れた。
直樹
「こうだろう」
「これくらいの長さで」
「片方だけ掛けるんだよ」
真彩
「おお!」
ホンチョ丈。
左肩を覆う。
装飾はあえてしない。
取り外し可能。
自分の、
理想の父親像。
背後から声。
ラファルサ
「おい」
「……」
「何…してる」
大地
「相棒、助けてくれ」
直樹
「遊んでる」
ラファルサ
「…ゲームは」
直樹
「へへっ」
思わず、
小さく笑う。
直樹
「父さんとゲームしたい」
真彩
「えー」
大地
「やる」
真彩
「ええー」
大地
「終わり。直樹とゲームする」
真彩
「そんなー」
直樹
「母さんもやればいいのに」
真彩
「……」
「休んでる気がしない。やらん」
母さんも、
夢中になると思うのにな…。
戦場が、
それだけ、
過酷だということだろうな。
この人、
厳しそうだもんな。
そう、
思いながら、
視線をラファルサへ向けた。
ラファルサ
「ロビーで待ってる」
そう言い、
去って行った。
直樹
「くまさん待ってるって」
「ディスコに来てね」
大地
「了解」
自分も、
リビングへ戻った。
直樹
「あっ!それ自分のアイス!!」
ラファルサ
「ん?」
直樹
「ん?じゃない」
「楽しみにしてたのにぃー!」
ラファルサ
「んふふ」
アイスを
食わえたまま笑う。
…腹立つ。
直樹
「勝負だ!!」
ラファルサは、
アイスを口から離す。
ラファルサ
「ほう。宣戦布告か」
「いい度胸だ。受けて立つ」
互いに、
ゲーム機の前に待機。
直樹
「アイス食い終わったら言って」
ラファルサ
[ん。]
大地
[招待頂戴。]
直樹
「…いま、PVPするんだけど」
大地
[え?なんで。]
直樹
「自分で買ってきたアイス食われた!!」
大地
[…ハハハッ。それで、対戦するの?]
[俺も参戦しようか?]
ラファルサ
[ほう。1対2か構わんが。]
直樹
「なら、兄貴はミュートして」
「なんなら、通話抜けて」
ラファルサ
[……。そうか。]
寂しそうに呟き。
通話を、
抜けてった。
直樹
「パパ?」
大地
[何?]
直樹
「勝てるかな?」
大地
[気にしてどうする。ロビー立てたぞ。]
同時に、
招待が飛んできた。
直樹
「招待ありがとう」
スッと、
現すくまさん。
毎度、
クスって笑ってしまう。
隣に立つ、
ツルッツルの、
ダンディハゲも笑うが。
父さんの、
アバターである。
画面には、
準備完了の表示。
直樹
「いつでもどうぞ」
大地
[では…。]
画面は、
オープンフィールド。
ギャル。
ツルパゲ。
くまさん。
それぞれ、
バラバラに、
上空から降りる。
時間経過で、
フィールドが狭まる。
最初は、
武器・装備調達が先だ。
円の中心で戦闘。
それが、
自分らのPVPのルールだ。
10 minutes later.
直樹
「そろそろだけど、武器とか大丈夫?」
大地
[ああ、まあまあってところだ。]
直樹
「SRのスナイパー持ってるけどいる?」
大地
[助かる。]
直樹
「ピン差した。そこで合流で」
大地
[了解。]
[…。]
[足音。]
直樹
「え…。そっち行こうか?」
大地
[いや…。]
銃声。
近い。
音の方へ、駆け寄る。
大地
[来るな。]
直樹
「いや、行く。挟み撃ちだ。」
大地
[バカ。罠だ。]
立ち止まった。
微かに、
足音がする。
左。
身を屈める。
忍びながら、木陰に隠れた。
銃声。
木をかすめる。
――バレた。
直樹
「反撃する」
大地
[…っ…援護する。]
そう言い、連射。
くま。
反撃。
――パアーン!
華麗に、
回避するパゲ。
やべー、
スナイパーライフルじゃん。
自分は、
身動きできない。
パゲは、
クマを駆除しようとしている。
自分も、
クマ隙を、
慎重に見定める。
標準を定め…。
――パアーン。
あ。
避けられた。
え。
こっち来る。
自分は、
銃を持ち替え、
クマへショットガンを打ち込む。
そんなの、
お構いなしのくまさん。
ナイフ、
片手に迫ってくる。
直樹
「やべぇ!!ヘルプ!ヘルプ!」
クマの、
背後へ、
駆け寄るパゲ。
大地
[こっちだクマ!!]
――トトトトトッ
サプレッサーを連射。
くまさんは、
ゆっくりパゲに振り向く。
包帯を、
巻き出した。
それを、
静かに見守る。
直樹
「くまさん。痛かったそうです」
大地
[通話、入れてやろうよ。]
直樹
「確かに。…ちょっと待ってて」
離席した。
ラファルサの、
部屋をノックする。
部屋を開けた。
ラファルサ
「何だ」
ヘッドホンを外して、
こっち見てくる。
直樹
「通話繋ご」
ラファルサ
「いいのか?」
直樹
「うん」
ラファルサ
「円が狭まってきたが…」
直樹
「やべっ…」
扉を締める。
リビングへ戻り、
コントローラーを握り直す。
直樹
「ただいま。中央へ逃げよう」
大地
[おかえり。わかった。]
ラファルサ
[戻ったぞ。]
[「おかえり。」]
1匹?と2人は、
円の中心へ移動する。
ナイフを持ったままの
くまさん。
後ろを走る。
直樹
「あの…ホラーなんですけど!」
大地
[ハハハ!確かに!]
直樹
「ちょ。背後で振り回すなって」
笑いが響く。
大地
[逃げろー]
ラファルサ
[逃がすか!]
直樹
「ハハハハ…ッ!!」
真彩
「何そのクマ。可愛いどころか殺人鬼じゃん」
背後から声。
思わず、
吹き出す。
直樹
「アハハハハハ…」
くまさんが、
立ち止まった。
ラファルサ
[殺人鬼…。]
低く、
小さく、
呟く。
直樹
「母さん。兄貴に聞こえちゃったじゃん」
マイクへ、
母さんが近寄ってきた。
真彩
「ごめんね。くまさん」
ラファルサ
[いや…別に…]
画面では…。
くまさんが、
しゃがみ込んでいた。
通話を、
ミュートした。
直樹
「いじけちゃったじゃん」
「どうしてくれんだよ」
真彩
「え…。どうしたらいい…」
コントローラーを手渡す。
真彩
「え」
ヘッドホンも、
母さんへ渡した。
真彩
「え?やるの?」
直樹
「それしかないでしょ」
真彩
「勝てる気しない」
母さんは、
ソファーへ座る。
自分は、
母さんのスマホで、
Discordに接続。
同時に、
ミュートを解除。
真彩
「あーあー。聞こえる?」
大地
[なんで真彩?]
真彩
「くまさん。ごめんね」
画面のくまさんは、
すくっと立ち上がる。
でも、
ナイフは、
仕舞う気はないらしい。
ギャルが、
くまさんに近づく。
くまさんは後退る。
真彩
「大地。クマ駆除しないと…」
大地
[え。]
真彩
「農作物や人を襲うんだから…」
ギャルは、
ショットガンをクマへ構える。
くまさん。
全速力で逃げ出した。
自分は、
笑いを堪えた。
堪えてた。
無理だった。
真彩
「逃げるな!!」
「大地!援護して!」
大地
[え。あ。うん…ふっくっ…]
笑いを、
堪えている。
真彩
「くまさーん。はちみつあるわよ〜」
直樹
「煽るの、ホント上手いよな母さん…」
ため息が、
聞こえてくる。
円が狭まりだす。
真彩
「あら、いいの?そっち行って」
追い詰められて行く、
くまさん。
ラファルサ
[朱雀。]
真彩
「やめろ」
ラファルサ
[朱雀。俺をいじめて楽しいか]
真彩
「うん!」
ラファルサ
[くらえ!!]
火炎放射を放つ。
真彩
「あつっ!」
「…」
「逃げろー」
棒読みで、
円の中央へ逃げ出した。
建物の、
中へ入る。
続いて、
パゲも入って行った。
くまさん、
建物前で、
立ち止まる。
ラファルサ
[逃げても無駄だ。包囲している。]
真彩
「一匹じゃん」
大地
[…ふっふふ]
笑いを、
堪えている。
堪えているのか?
自分は、
聞き専で、
ずっと笑っていた。
息を整え、
ラファルサの部屋へ移動した。
隣に座った。
視線が重なる。
小さく囁いた。
直樹
「援護する」
ラファルサ
「いらん」
断られた。
建物の壁に、
背を預ける、
くまさん。
扉を、
そっと開ける。
手榴弾が、
飛んできた。
回避する。
ラファルサ
「…」
真彩
[当たれよ]
母さんかよ。
――トッ
一発撃たれた。
建物の影に、
パゲ。
罠だな。
さて、
クマはどうする?
さっきの、
一撃は、
麻酔銃ではない。
ナイフへ持ち替え。
パゲへ、
襲いかかる。
パゲも、
ナイフへ持ち替えた。
引っ掻き遭う。
静かに、
近づく、
ギャル。
クマの後頭部へ、
スナイパーライフル。
――パアーン!
[駆除完了。]
直樹
「アハハハ…」
腹抱えて笑った。
ラファルサ
「笑うな」
そう言いつつ、
口元は笑っていた。
扉が開く。
真彩
「ご飯にするよ。くまさん」
母さんの、
背後に父さん。
大地
「クマ料理だな」
ラファルサ
「…」
俯く。
直樹
「いじめんなよ」
母さんが、
近づいてくる。
真彩
「さっきは、ごめんね」
ラファルサ
「いや、気にしていない」
直樹
「父さん」
大地
「…相棒」
「言い方悪かった。すまん」
意外と、
英雄は、
傷つきやすい人だった。
英雄は、
小さく、
父さんへ視線を向ける。
ラファルサ
「…」
「ナイフ向けて、すまなかった」
…そこ?
大地
「本物のクマだと思えば気にならない」
そこ??
ラファルサ
「クマだしな。爪で引っ掻いた…か」
…。
なんだコレ。
真彩
「お腹減った」
英雄は、
立ち上がる。
ラファルサ
「ガオッ」
……。
自分も含め、
無言で、
固まる。
母さんは、
英雄を、
見つめた後、
すぐ立ち去った。
父さんは、
去る母さんを、
視線で追った。
英雄へ、
視線を戻した。
肩をすくめて、
去った。
時間停止した様に、
固まる、
英雄。
自分は、
両手を広げて、
英雄の前へ立ちはだかる。
――食われることを選んだ。
そっと、
抱き寄せられた。
ラファルサ
「ガウ…」
耳元で、
小さく囁く、英雄だった。
Next time
――継承
観測者
[直樹にとって、ラファルサは“英雄”]
[くまさんも良かったですが。ダンディパゲも好きですね。]
[次はどんなお話が待っているのだろう…。]




