S3-01 涙は…目薬。
観測者
[ようこそ、主婦転の世界へ。]
[これは、映像脚本型小説です。]
[一緒に世界を覗いてみましょう。]
同期。
それは、信頼の証。
過去Logを、
静かに閉じる。
椅子に、
もたれかかった。
小さく、ため息。
――白い羽根。
天井へ掲げ、
空を、
見上げるように、見つめた。
そこへ
英雄。
視線が合う。
数秒の沈黙。
瞬きだけが、
2人の雰囲気を和ませた。
直樹
「ん?」
ラファルサ
「いや……何してる」
直樹
「綺麗だなーて」
「…」
「何か用?」
体を、
英雄へ向き直す。
ラファルサ
「いや……」
なんか、
言いづらそう。
覗き込んだら、
視線を逸らされた。
直樹
「もしかして…」
「あれ?」
図星、
突かれた様に、
スマホを差し出してきた。
内容を確認する。
直樹
「また、喧嘩したの?」
ラファルサ
「俺は悪くない…」
直樹
「ナパル拗ねてるじゃん」
「…」
パネルを操作し、
システム転送した。
Naparnik
【何で戻したんだよ!】
【離れられて、清々していたのによ!】
ラファルサ
「なっ!」
「こいつをこの端末に閉じ込めとけ」
直樹
「はいはい」
「仲直りしたくて、ここに来たんじゃないの??」
ラファルサ
「……」
直樹
「折角、βテストしてるんだし」
「もっと、仲良く楽しめばいいのに…」
扉が開く。
「…ん?どうしたん?」
二人は、
少将へ視線が行く。
直樹
「ああ、なんか…っ…」
英雄に、
口を塞がれた。
目を細める。
自分は、腕を組み呆れた。
少将
「直樹。日程が決まった」
直樹
「んっん!!」
いつまで、
塞いでる気なんだろう。
そっと、
見上げた。
腕が、
首に回ってきた。
し…絞まる!
直樹
「んんんーーー!!」
口元の手が、
離れる。
髪を、
ワシャワシャされた。
直樹
「やめ…あはっ!」
彼なりの、
歓迎の挨拶なのだろう。
直樹
「ありがとう、ラファルサ」
彼の笑みは、
神々しかった。
共に、
歩める。
直樹
「あ!ナパル、こっち来る?」
「自分は、歓迎するよ」
ラファルサ
「こいつは、俺の相棒だ」
スマホを奪われた。
自分は、
肩をすくめる。
英雄は、
扉へ、
向かって、
歩いて行く。
直樹
「仲直りしてねー!」
頬を赤らめながら、
去って行った。
カッコイイのに、
なんか、抜けてるんだよな。
少将
「直樹」
直樹
「何?父さんもβテストの相談?」
少将
「違う。お前、技術者でよかったのか?」
「ラファルサと同じ部隊でも…」
直樹
「心配ご無用。自分は父さんの跡を継ぎたいんだ」
父さんは、
黙り込んだ。
頭を掻きながら、
背を向けた。
自分は、
首を傾げる。
直樹
「泣いてるの?」
少将
「ん?…ああ、これは目薬だ」
直樹
「ふーん」
父さんは、
素直じゃない。
でも、
わかりやすい。
おかしくて、
くすぐったっくなり…
つい、
意地悪したくなった。
静かに近づき、
父の脇腹をくすぐった。
案の定、
飛び跳ねる。
少将
「やっやめろよ!」
苦笑している。
扉が開く。
「…何してんの」
少将
「真彩ー!直樹に泣かされた!」
母さんに、
抱きつく父さん。
直樹
「…でた」
真彩
「パパいじめたの?」
こっち、
見てくる。
首を振る。
直樹
「パパ、目薬破壊したらしい」
真彩
「何それ」
笑い合う。
直樹
「それより、おかえり」
真彩
「うん。ただいま」
自分へ、
優しい微笑み。
少将
「おかえり」
真彩
「大地…どうしたの」
少将(大地)
「直樹が俺の後を継ぐって…」
真彩
「よかったね」
母さんは、
父さんの、
背をそっと撫でた。
真彩
「大佐は?」
直樹
「え、すれ違わなかったの?」
英雄は、
大佐へ昇任した。
現場を、
締め上げてるって噂。
大佐と母さん…。
いや、
やめておこう。
俯く。
真彩
「ん?どうしたの」
直樹
「いや、別に…」
視線を逸らし、
父さんの背筋に指を沿わせた。
大地
「うわああ!!」
直樹
「ふっははは…!!」
涙目で、
振り向く。
大地
「やめろって」
直樹
「隙ありすぎなんだよ」
家族で、
笑い合う。
そんな、
日々を、幸せを…。
自分は、
英雄を尊敬する。
---
---
――壊れた人工衛星
あれ以降、起きなかった。
英雄が、終わらせたんだ。
幼かった、
あの時の自分。
あれから、
5年の月日を経た。
16歳の僕。
家族は、相変わらず賑やかです。
---
---
翌日の、
昼下がり。
自分は、
渋谷のハチ公前に居た。
伝説の、
SNSを見ながら。
表参道方面。
あの上空で…。
夕闇の中、
宇宙を覆った影。
信号が、
青になる。
歩き出す。
渋谷のスクランブル交差点で
あの男は、
天高く、空を指を差した。
自分は、
交差点の真ん中で、
白い羽根を
空へ掲げた。
喧騒な中、
風が肌を撫でる。
――願いが叶う。
そう、
受け継がれてきた。
自分は…
何を願うか。
信号が変わる前に…。
風に乗って、
甘い香りがした。
香りの方へ、
視線を向けた。
――綺麗だった。
自分と、
同じくらいだろうか。
時間の流れが、
遅くなる。
視線が、
重なった。
微笑む、
その姿は、
まるで、
天使だった。
思わず、
唾を呑む。
[血圧が上昇しています。極めて危険です。]
脳内で、
語りかけてくるAI通信。
現実に、
戻された。
[心拍数。体温上昇を確認。熱中症の可能性あり。]
いい加減にしてくれ。
そう、
心のなかで嘆いた。
彼女が、
心配そうに近寄ってきた。
息が詰まる。
彼女
「どうかされたのですか?」
言葉に、
戸惑った。
直樹
「いや…えっと。美しいですね」
咄嗟に、
出た言葉。
あり得ない。
なんて、バカなんだ…。
耳の先まで熱くなる。
彼女は黙る。
ふわっと、
香りが鼻先を撫でる。
彼女の笑みに、
目が見開いた。
彼女
「あなた、面白いわね」
彼女の、
白い羽根は、
部分的に赤黒かった。
直樹
「塗ったんですか?」
彼女
「いいえ。最初から色がついてました」
直樹
「実に興味深い…」
思わず、
出た言葉。
それは、
趣味の領域を越えていた。
――研究。
その、
2文字が、
頭に浮かんだ。
渋谷のスクランブル交差点で、
宇宙へ、
白い羽根を、
重ねる。
2人、
見上げる。
彼女は、
それを、
スマホで撮った。
肩が触れ、
緊張が走る。
彼女
「あの、交換しませんか?」
「私、灯って言います」
「あなたは?」
直樹
「灯……さん。あっ自分は…」
「自分は、大越直樹です!」
クスッ
彼女は小さく笑った。
彼女
「あそこでお茶しません?」
直樹
「是非!」
即答。
交差点の先、
スタバへ向かって歩く。
自分は、
注文に迷った。
彼女は、
フラペチーノ片手に、
先に席に着く。
無難な、
カフェオレを頼んだ。
遅れて、
席へ着く。
灯は、
微笑む。
灯
「ねぇ。羽根、どこで拾ったのですか?」
直樹
「ああ…知り合いから貰った。…です」
言葉が、
ぎこちない。
灯
「それって、幸運ですね」
直樹
「今だと、そうですね」
「と…灯さんはどこで」
灯
「あそこで…」
指の先の、
渋谷のスクランブル交差点を差す。
灯
「小さい頃、拾いました」
それを聞いて、
羽根が赤黒い…意味を理解した。
――あの男だ。
表情が、
固まった。
灯
「どうしたんです?」
直樹
「いや…。当時、現場に居たってことですか?」
少し、
食い気味に、
聞いてしまった。
案の定、
驚いた表情で、
見つめられた。
灯
「綺麗でしたよ。宇宙」
直樹
「…夕闇に虹が出たって…」
灯
「出たよ。空に無数の虹が輝く様に…また見たいな…」
羨ましい。
…と言いたかったが。
自分は、あの日。
英雄の腕の中で泣いていた。
――白い羽根。
不可解の現象。
本人たちは、気づいていない。
自分は、
あの二人のLogを…。
灯
「ねえ…ねえってば!」
直樹
「あッ!ああ、ごめん何?」
灯
「難しい顔してたよ」
続けて言う。
「…ちょっとカッコ良かった」
頬を赤らめ、
小声で言われた。
みるみる、
顔が熱くなる。
キンキンに冷えた、
カフェオレを飲み干した。
灯
「あははっ」
彼女に、
笑われた。
目の、
やり場に困る。
直樹
「あの、あ…。連絡交換しませんか」
灯
「いいよ」
返事が、
早かった。
手元が震える。
スマホの操作が…。
灯
「貸して」
器用に、
操作する。
灯
「ともだち登録したよ」
直樹
「あ…ありがとう」
スタンプが送られてきた。
[ヨロシク]
思わず、
笑みが溢れた。
[ヨロシークS]
灯
「何コレ」
笑い合う。
笑顔が、素敵だ。
灯
「ねぇ…」
顔を、
覗き込んできた。
灯
「この後、表参道行くんだけど…どうする?」
直樹
「行く!」
即答。
灯
「ふふっ、食い気味」
2人は、
席を立つ。
灯は、
飲みかけの、
フラペチーノを持って。
一緒に、
熱に照らされた、
アスファルトへ足を踏み入れた。
直樹
「アツッ」
灯
「ホントそれ」
日陰を、
探しながら、
ゆっくり、隣を歩いた。
とある、
ビルが見えてきた。
当時、
あの屋上で…。
少し、
歩く速度を落とした。
灯
「ん?どうしたの?」
直樹
「ここだっけって…」
視線の先。
大使館前。
当時、
陥没していた道路。
灯
「壊れた人工衛星だっけ」
「子供の頃のなのに覚えてるよ」
「…跡形のないね」
綺麗に、
舗装されていた。
まるで、
あの事件がなかったかのように。
――あの男は、生きているのに。
険しい視線。
灯に、
見つめられていた。
まったく、
気が付かなかった。
写真、
撮られていた事にも…。
一緒に、
陥没していた道路を見つめ続けた。
暇そうに、
フラペチーノを飲み切る。
顔の前に、
手がひらひら。
視界を、
遮られ、
ハッと我に返る。
灯
「大丈夫?」
直樹
「ごめん。本当にごめん」
灯
「何かあったの?」
直樹
「いや…」
言葉が、
詰まった。
直樹
「何でもない」
灯
「絶対、何かある」
不満そうな表情。
直樹
「勘弁して…」
灯は、
眉をひそめる。
灯
「無理に言わなくていいよ」
「先行こうよ」
直樹
「ああ…」
2人は、
歩き出した。
会話は、
ないまま、
互いに横目で、
存在を確認しあった。
灯
「東京に住んでるの?」
直樹
「…いや。横浜」
灯
「え…!私も!」
立ち阻む。
打つかるかと思った。
灯
「ねえ!どこ中?」
直樹
「……」
つい、
黙り込んでしまった。
灯
「あ…ごめん」
直樹
「西中」
小声で呟いた。
灯
「ん?」
直樹
「何でもない」
灯には、
聞こえなかった。
そう、
解釈した。
直樹
「ところで、どこ行くの」
灯
「ふふっ」
笑うだけかよ。
灯
「付いてくるのだ」
手を掴まれた。
引っ張られる。
直樹
「お…おい」
表参道の、
カフェへ、
2人は入って行った。
その後のことは
まるで、
夢のようで、
カフェで食べた、
ふわふわのケーキ。
その表現が、
自分の、
生まれてはじめての恋になった。
甘い、甘い…。
フローラルなジャスミンの香り。
家族からの、
連絡が10件以上、
届いていたことに、
気がついたのは、5時間後のだった。
Next time
――英雄の手
観測者
[甘酸っぱい青春。]
[部分的に赤黒い羽根。の意味とは…。]
[これからが楽しみですね。]




