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『VRMMOの極悪テラリウム運営 ~可愛いスライムですが、効率化のためにトップ配信者たちを肥料にしていく~』  作者: リリリリス
第1章:箱庭の管理人編

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第7話:クールな氷の魔女が来ました。無料の『超強力・冷房用クーラー』としてのご活躍、誠に感謝いたします

「皆様、ごきげんよう。本日は『空調管理』がいかにダンジョン経営を圧迫するかについて、お話しさせてください」


私は画面越しに、シュゥゥゥ……と音を立てて蒸発しかかっている己の体を映し出した。スライムである私にとって、過剰な熱は文字通り「身を削る」死活問題である。


管理モニターに映し出されているのは、『第9区画:永久氷壁のテラリウム』だ。


「ここは本来、マイナス40度の極寒を保つべき美しい雪原エリアなのですが……ご覧ください。下層からの熱気が上がってきてしまい、現在『深刻な地球ダンジョン温暖化』が起きているのです」


『主が溶けてるじゃん!』

『サウナ配信かな?』

『雪原がただの水たまりになっとるw』


「ええ。雪は溶け、湿度は上がり、最悪のサウナ状態です。何より可哀想なのが、ここに住まわせている【鋼刃こうじんのアイスペンギン】たちです」


画面の隅で、本来なら元気に雪原を滑り回っているはずの巨大なペンギンたちが、ぐったりと仰向けに倒れ、「きゅぅ……」と熱中症寸前の声を上げていた。


「この区画の温度を下げるためには、巨大な魔力冷房クーラーをフル稼働させる必要があるのですが……その電気代(DP)が払えず、現在泣く泣くスイッチを切っております。ああ、どこかに無料で冷気を振りまいてくれる、都合の良いクーラーなど落ちていないものか……」


私がスライムの体をドロドロに溶かしながらぼやいた、まさにその時。

涼やかな氷の結晶が弾けるようなアラート音が、ダンジョンに鳴り響いた。


侵入者あり。


モニターを切り替えると、そこに立っていたのは、氷のように透き通った青髪を持つ、極めて美しい女性プレイヤーだった。


エセルガルド・オンラインにおいて、絶大なカリスマと熱狂的なファン(下僕)を抱えるトップ魔法使い、『氷華の魔女フブキ』である。


『フブキ様きたあああ!』

『今日もゴミを見るような目が最高です!』

『フブキ様、俺を凍らせて踏んでください!』


フブキの配信枠は、彼女のドSな態度を崇拝するリスナーたちからのスパチャ(貢ぎ物)で溢れ返っていた。


彼女が扇子で口元を隠し、不快そうに眉をひそめるだけで、システムからの『オーディエンス・バフ(氷属性魔法・絶対零度化)』が彼女に付与されていく。


『……なんなの、この蒸し暑いだけの不快な空間は。水たまりで息も絶え絶えになっている鳥の魔獣……醜いにもほどがあるわ』


フブキは、ぐったりしているペンギンたちを一瞥し、冷酷に言い放った。


『こんな醜悪なサウナ空間、私の美学に反するわ。……この区画ごと、すべてを美しい「氷の彫刻」に変えてあげる』


「……おおっ」


私は、ドロドロに溶けかかっていた体を、一瞬でプルンッ!と球体に復活させた。


「皆様! 神は(あるいはシステムは)私を見捨ててはいませんでした! 超強力な『業務用の冷房クーラー』が、自ら出張工事にやってきてくれましたよ!」


『クーラーww』

『主の目には、トッププレイヤーが全部家電に見えてるだろ』

『フブキ様逃げて! 冷媒ガス扱いされてる!』


フブキは杖を高く掲げ、極限まで高まったバフの力をすべて込めて、詠唱を放った。


『凍てつけ。何人たりとも溶かせぬ絶対零度の檻! 《コキュートス・ブリザード》!!』


ドォォォォォォォォンッ!!!


すさまじい猛吹雪が、第9区画全体を吹き荒れた。

サウナのように淀んでいた熱気は一瞬でかき消され、水たまりは美しい永久氷壁へと姿を変える。


室温はみるみるうちに低下し、あっという間にペンギンたちの適正温度である「マイナス40度」へと達した。


『おおおお!』

『一瞬で雪原に戻った!!』

『フブキ様の魔法、相変わらずエグい威力だな!』

フブキの配信枠が歓喜に沸く中、私の配信枠もまた、狂喜乱舞に包まれていた。


「す、素晴らしい……! なんという完璧な空調管理! 室内の隅々まで冷気が行き渡り、しかも湿度まで完璧にコントロールされています! これを自腹で冷やそうとしたら、数百万DPは下らなかったでしょう!」


『主が大喜びしてるww』

『業者頼んだらクソ高いクーラー修理を、無給でやってくれる魔女』

『節電(他人の魔力)の鬼』


吹雪が収まり、フブキは満足げに息を吐いた。


『ふふっ……どう? これが私の創り出した芸術よ。さっきまで醜く倒れていた鳥たちも、綺麗な氷像になって――』


「キュウウウウウウウウウウッ!!(訳:涼しいいいいい!! 最高おおおおお!!)」


『……え?』


フブキの言葉を遮るように、大地を揺るがすような雄叫びが響き渡った。


熱中症で倒れていた【鋼刃のアイスペンギン】たちが、完全な冷気を取り戻したことで「絶好調」の状態でパッチリと目を覚ましたのだ。


「皆様、ご存知でしょうか。このペンギンたち、実は非常に『人懐っこい』性格をしておりまして。特に、自分たちに心地よい冷気を与えてくれる存在を『群れのボス(あるいは母親)』として認識し、強烈なスキンシップを図る習性があるのです」


バフを極限まで乗せて絶対零度の魔法を放ったフブキの体は、今、ペンギンたちにとって【世界で一番冷たくて気持ちいい、最高の抱き枕】と化していた。


「キュゥゥゥゥッ!!(訳:ママーーッ!! 抱っこーー!!)」


ズザザザザザザッ!!


総勢30羽の巨大なペンギンたちが、一斉に腹這いになり、凍りついた床の上を弾丸のようなスピード(時速100km)で滑り始めた。

彼らの標的はただ一人、中央でポツンと立つフブキである。


『は? 嘘でしょ、なんで氷魔法が効いてないの!? というか速っ――』


フブキは慌てて迎撃の氷槍を放つが、そもそも彼らは「氷を吸収して回復する」生態系の頂点だ。魔法はすべて彼らのエネルギーへと変換されてしまう。


『い、いやぁぁぁっ!? こっち来ないで! 汚い鳥が、私に触るな――』


ドスッ! メリメリメリッ!!


「キュウウ……(スリスリ……)」


『あぎゃあああああああああっ!?!?』


フブキの悲鳴が、物理的な破壊音とペンギンの愛らしい鳴き声にかき消された。


「ああ、言い忘れていましたが……彼らの羽毛、実はすべて『剃刀かみそりのように鋭利な鋼鉄』で出来ておりまして。体重500kgの巨体で勢いよくハグ(突撃)されると、ちょっとしたミンチ機にかけられるような状態になってしまうのです」


『愛が重い(物理)』

『ハグでミンチにされる魔女』

『フブキ様が別の意味で真っ赤な芸術作品に……』

『クーラーとして仕事させた挙句、ペンギンのおもちゃにしてて草』

『このダンジョンに人権はないのか』


数十羽のペンギンたちによる「冷たくて気持ちいいママへの激しいハグ」がひとしきり終わった後。

満足したペンギンたちは、フブキだったもの(遺品)を残して、元気に雪原へと遊びに行っていった。


もちろん、残された大量の魔術師用アイテムやレア装備は、氷の床の下に仕込まれた『自動搬送コンベア』へと吸い込まれ、カラカラと私の口座へ変換されていく。


「ふぅ……。フブキ様、完璧な『空調管理と冷媒ガス注入』、誠にありがとうございました」


私は画面越しに、深く深くお辞儀をした。


「おかげさまで、当ダンジョンのテラリウムは本来の美しさを取り戻し、ペンギンたちも大喜びです。いやはや、一流の魔女は、冷房設備としても超一流ですね」


チャリン、チャリン、チャリン!!!


莫大なDPと、マイナス40度の快適な空間。

私はプルプルと心地よい冷気を味わいながら、宣言した。


「さて、皆様。空調管理も完璧に解決し、資金も潤沢です。……次は、ついに二桁到達、第10区画の『害虫駆除(セキュリティ管理)』にでも着手しましょうか。引き続き、当ダンジョンのエコな運営をよろしくお願いいたしますね」


今日もまた、エセルガルドの平和と、私の完璧なテラリウムは保たれたのである。

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