第63話:【神話世界の地上げ】オリュンポスの主神が怒りの雷を落としてきましたが、我が社の『無休の自家発電(ハムスター)装置』に転職していただきました
「おのれ下等生物ども! 我ら神々への祈りを忘れ、画面の中の『魔法少女(Vチューバー)』などに熱狂するなど……断じて許さん! オリュンポスの怒りの雷を喰らうがいい!!」
養殖宇宙・第3ブロック。雲海の上にそびえ立つ神殿の最奥で、筋骨隆々の主神(ゼウス的な存在)が激怒していた。
人間たちの信仰心が、ごっそりとテラリウム社の配信プラットフォームに奪われたため、神々の存在意義が揺らいでいたのだ。
主神が天高く掲げた手から、宇宙そのものを引き裂くほどの極大の雷撃が、下界のテラリウム通信サーバー群へと放たれる。
ドババババババァァァン!!!
「……おや。これは質の良い高圧電流ですね。バレル様、受電の状況は?」
「ああ、完璧だ。俺の重力ファンネルで雷撃を100%キャプチャし、そのまま第2ブロックの配信サーバーの電力網に直結させた。……ふふっ、これで今月の電気代は実質タダだな」
私はスライムの体でモニターを見上げながらプルプルと笑った。
神の怒りの雷撃は、バレルが構築した『重力避雷針』によって一滴残らず吸収され、魔法少女たちの華麗な配信を支えるクリーンなエネルギーへと変換されていた。
「さて、先方から『無償のエネルギー提供』という名のアプローチがありました。……皆様、インフラ整備(地上げ)の準備はよろしいですね?」
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【第3ブロック:神話世界の強制買収プロセス】
1. 環境騒音防止条例の執行(担当:新人アーク):
レベル9999の勇者アークが、ヘルメットと作業着姿で神殿に突入。
「貴殿らの雷鳴は、マルチバース環境基本法の『騒音基準値』を大幅に超過している!」と、聖剣ではなく『騒音測定器』を突きつけて主神を論破(物理的制圧)する。
2. 神聖な雲海の完全除湿(担当:元・神):
『雲のせいで湿度が上がり、サーバーの基盤がショートするだろうが!」と激怒した元・神(清掃員)が、高圧聖水スチームでオリュンポスの美しい雲海を一瞬にして拭き取り、ただの「乾燥した岩山」へと景観を破壊する。
3. 神格のバッテリー化(担当:ゼータ):
主神が放つ「無限の神力(雷)」を、ゼータが魔剣で『単三電池サイズ』に美しくスライスし、パッケージングしていく。
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「な、なんだ貴様らは!? 我が放つ絶対の神罰が、なぜ『サーバーの冷却ファン』を回す動力として使われているのだ!?」
主神は己の目を疑った。
神殿の扉を蹴り破って現れたのは、作業着姿で目を血走らせた人間の青年(勇者アーク)だった。
「主神殿。貴殿の『雷を無限に生み出す権能』は、我が社のSDGs(持続可能な搾取目標)の理念と完全に一致している」
アークは、分厚いコンプライアンス違反の是正勧告書を神の顔面に叩きつけた。
「無駄に下界へ雷を落とすのは非効率だ。今日から貴殿らオリュンポスの神々は、我が社の『第3ブロック・データセンター自家発電部門』へ出向してもらう!」
「ふ、ふざけるな! 我ら気高き神々が、人間のための発電機になるなど――」
主神が再び雷を放とうとした瞬間、ゼータがすれ違いざまに主神の髭とプライドを分子レベルで切り飛ばした。
「モーションが長いのよ。雷を落とすなら、もっとタイパ(タイムパフォーマンス)を意識してコンスタントに出力しなさい」
さらに背後からは、元・神が「神殿の大理石が曇っている!」と激怒しながら猛烈な勢いでモップがけを開始し、神々の足元をツルツルに磨き上げていく。
「やあ、神話の皆様! 素晴らしいエネルギー効率だ!」
そこへ、完璧なスーツ姿のアルドが、巨大な『特製ハムスター・ホイール(神力抽出用回し車)』を何十台も転がしながら登場した。
「君たちのその『怒り』、そのままテラリウムのインフラとして活用させてもらうよ! さあ、このホイールの中で永遠に走りながら、怒りの雷でサーバーを冷やし続けてくれ! 報酬として『魔法少女のプレミアム配信視聴権(広告付き)』を与えよう!」
「ひぃぃぃ! 驕れる人間どもめ……いや、悪魔の企業めぇぇ!」
主神をはじめとする神々は、レベル9999の勇者の圧力と、狂気的なブラック企業の速度感に完全に心を折られた。
彼らは震える手で『自家発電部門・契約書』にサインを捺し、トボトボと巨大な回し車の中へと入っていく。
神々が涙を流しながら車輪を走るたびに、莫大な雷が発生し、テラリウムのマルチバース・サーバーを煌々と照らし出した。
チャリン! チャリン! チャリン!
チャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
神々という究極の「無料インフラ」を手に入れたことで、サーバーの維持費が『ゼロ』になり、魔法少女たちの配信売上が純利益100%として私の口座へ雪崩れ込んでくる。
「……ふふっ、素晴らしいですね。神話の神々ですら、我が社にかかれば立派な『エコ・バッテリー』です。これでどれだけ事業を拡大しても、サーバーが落ちる心配はありません」
私は、神殿の跡地に設営された「テラリウム第3発電所」のコントロールルームで、プルプルと至高の悦びに浸った。
「船長! インフラが安定したことで、AIオメガが『次は養殖宇宙・第4ブロックの【終末SF世界】を地上げして、最先端の兵器プラットフォームを没収しましょう』と提案を出してきました!」
アルドが、煌びやかな次期事業計画書を掲げて報告する。
「おや、SF世界ですか。魔法も神々も手に入れましたし、次は『圧倒的な科学力』の接収ですね。……アーク君、次の現場も徹夜になりますよ。準備はいいですね?」
「はい! 我が社畜魂、すべてはテラリウムの利益のために!」
元勇者は、完全に濁った(澄み切った)目で元気よく敬礼した。
元・神のスライム率いるテラリウム・ホールディングス。
自ら養殖した宇宙の「神話」すらもインフラの歯車として組み込み、その果てなきブラック経営は、次なる科学の領域へと容赦なく侵略の歩みを進めるのであった。




