第62話:【魔法少女の買収】マスコット獣の『希望の搾取ビジネス』は特許侵害です。彼女たちを我が社の『専属タレント』として再デビューさせます
「ぼくと契約して、魔法少女になってよ! 君の『希望』があれば、この世界を救えるんだ!」
養殖宇宙・第2ブロック。パステルカラーの空が広がるメルヘンな都市の路地裏で、白くてフワフワした謎のマスコット獣『モコラ』が、絶望に沈む少女に甘い言葉を囁いていた。
まさに契約が成立しようとした、その瞬間である。
「そこまでだ、無許可の感情搾取業者め」
路地裏の空間が歪み、パリッとした漆黒のリクルートスーツに身を包んだ男――昨日入社したばかりのレベル9999勇者、アークが現れた。
彼は聖剣の代わりに分厚い『内容証明郵便』を突きつけ、血走った目でマスコット獣を見下ろした。
「な、なんだ君は!? ぼくの神聖な契約の邪魔をしないでよ!」
「『神聖な契約』だと? 笑わせるな」
アークは、テラリウム支給のタブレット端末を操作し、ホログラムで特許証を展開した。
「未成年の少女に十分なインフォームド・コンセント(説明と同意)もなく、命懸けの労働を強要し、その際に発生する『希望と絶望のエネルギー』を回収するビジネスモデル……。それは我がテラリウム・ホールディングスが取得済みの『第842号・感情エネルギー変換特許』の完全な侵害だ。ただちに営業(契約)を停止しろ」
かつては世界を救うために剣を振るっていた勇者が、今は完璧な『法務コンプライアンスの鬼』と化して、マスコット獣を理詰めで追い詰めている。
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【第2ブロック:魔法少女市場の独占・再構築プロセス】
1. 既存プラットフォームの強制解体(担当:アーク、ゼータ):
勇者アークの圧倒的な威圧感(レベル9999の営業スマイル)でマスコット獣たちを無力化。
すかさずゼータが「こんな希望的観測だけの契約書、法的に無効よ!」と、魔法少女たちが結ばされていた『理不尽な契約の概念』を分子レベルで一刀両断して白紙に戻す。
2. マルチバース・タレント契約の締結(担当:アルド):
路頭に迷った魔法少女たちに対し、アルドが「テラリウム専属アイドル(Vチューバー)契約」を提示。
「泥臭い路地裏での戦闘はもう古い。これからは安全なスタジオ(防衛結界付き)から、全次元に向けて戦闘を配信し、スーパーチャット(DP)で世界を救う時代だ!」とプレゼン。
3. スタジオの除菌・設営(担当:元・神):
「希望やら愛やらで空気が甘ったるい! 労働環境の湿度が異常だ!」と激怒した元・神(清掃員)が、高圧聖水スチームでメルヘンな街並みを徹底除菌。機能的で無機質な『テラリウム第8スタジオ』へと急速リフォーム。
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「ひぃぃぃ! ぼくの、ぼくの集めたエネルギーがすべて差し押さえられていくぅぅ!」
マスコット獣モコラは、アークの容赦ない差し押さえシールの連打(1秒間に1000枚の神速タップ)を受け、無残にも木箱に梱包されてしまった。
その様子を呆然と見ていた魔法少女の前に、今度はアルドが輝く笑顔で歩み寄る。
「やあ、お嬢さん。タダ働き(無給の正義)は今日で終わりだ。我が社の『上位次元メディア戦略本部長(画面の前の貴方)』が、君たちの戦闘データを解析し、最高にバズる配信アルゴリズムを構築してくれたんだ!」
アルドが指を鳴らすと、上空に巨大なホログラムモニターが出現し、テラリウム専属タレントとしてデビューした先輩魔法少女たちの姿が映し出された。
『みんなー! 今日も元気にモンスター狩っていくよー! あ、サイバー次元の〇〇さん、赤スパ(1万DP)ありがとう! これで次の必殺技のクールタイムを課金できるわ!』
華麗にモンスター(テラリウムが用意した安全なやられ役)を倒すたびに、マルチバース全域から滝のようなスーパーチャット(DP)が降り注いでいる。
もはや彼女たちは、理不尽な運命に翻弄される悲劇のヒロインではない。テラリウムの圧倒的な資本力に守られた、最強の『エンタメ・ワーカー』なのだ。
「……わたしも、あんな風に輝ける(稼げる)の……?」
少女の瞳に、星のような(あるいはDPコインのような)輝きが宿る。
「もちろんさ! 制服も、魔法のステッキ(当社製・月額レンタル)も完備! さあ、この『テラリウム専属タレント契約書』にサインを!」
少女が迷うことなくサインを捺した瞬間。
チャリン! チャリン! チャリン!
チャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
全マルチバースの視聴者たちから、魔法少女への「応援(という名の狂信的な課金)」が、桁違いのDPとなって我が社の口座に雪崩れ込んできた。
悲劇を消費するのではなく、エンタメとして最適化された『希望と熱狂の集金システム』。これこそが、テラリウム流の新しい市場開拓である。
「……ふふっ、素晴らしいですね」
私は、テラリウム本社に新設された『マルチバース配信管理センター』の巨大モニターを眺めながら、特製プールの中でプルプルと至高の悦びに浸った。
「船長! 新人アークの活躍により、第2ブロックのマスコット獣は全滅(買収完了)。魔法少女たちは全員、我が社のタレント名簿に登録されました! 莫大な広告収入とスパチャで、サーバーが悲鳴を上げています!」
アルドが、分厚い札束(DPの結晶)の山を抱えて報告に来る。
「おや、それは嬉しい悲鳴ですね。……アーク君のレベル9999の力は、法務手続きと債権回収にこそ最も輝くようです」
私は、画面の向こうで魔法少女のマネージャーとして走り回っている、血走った目の元勇者を見て満足げに頷いた。
「さあ皆様! エンタメの市場を掌握したなら、次はその『インフラ』です。次は養殖宇宙・第3ブロックの【神話の世界】を地上げして、我が社のサーバーの『冷却装置(電池)』として組み込みに行きましょうか!」
元・神のスライム率いるテラリウム・ホールディングス。
その底なしのブラック起業精神は、勇者も魔法少女も等しく「最高の社畜」へと染め上げ、次なる神々の世界すらも呑み込もうと、狂気のM&Aを加速させるのであった。




