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『VRMMOの極悪テラリウム運営 ~可愛いスライムですが、効率化のためにトップ配信者たちを肥料にしていく~』  作者: リリリリス
第2章:神の遊戯編

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第61話:【新人社畜(勇者)の研修】レベル9999の勇者アーク、テラリウム流『マインドセット研修』で早くも自主サビ残の鬼と化す

「……ハァ? 『業務時間外の自主的スキルアップ』? そんな生ぬるい言葉、我がテラリウム・ホールディングスには存在しませんよ、アーク君」


テラリウム地球本社・研修ルーム(旧・国連会議場を全面防音・精神隔離仕様にリフォーム)。

昨日、涙ながらに正社員登用契約書にサインした元勇者アークは、早くもテラリウムの代名詞である「黒いリクルートスーツ」に身を包み、パイプ椅子に座らされていた。


彼の目の前に立っているのは、我が社のシニア・アソシエイトであり、元・魔王のガルザだ。かつてはアークのライバル(地上げ対象)だった男が、今は完璧なネクタイの結び方で、後輩に鋭い視線を投げかけている。


「アーク、お前の目はまだ『定時退社』を夢見ている濁った目をしている」


ガルザが、黒板に大きく【顧客満足(絶望)の最大化】と書き殴りながら言い放った。


「お前が養殖宇宙でやっていた『勇者業』は、しょせん自己満足だ。これからはプロの『罠の提供者(テラリウム社員)』として、いかに効率よく冒険者からDP(魂と資産)を絞り尽くすかを考えろ」


「お、俺は……村の税金を免除してもらうために、ここで働くんだ。早く現場ダンジョンに出してくれ!」


アークが拳を握りしめるが、その横からスッと現れた元・神(清掃員)が、冷たい雑巾でアークの顔を乱暴に拭った。


「うるさいぞ新人! 挨拶の声が小さい! 現場に出る前に、まずはその薄汚れた『正義感』という名の脳内ゴミをデトックス(精神洗浄)しろ!」


---


【新入社員研修:テラリウム・マインドセット・プログラム】


1. 時間感覚のバグ取り(担当:バレル):

バレルが研修室の「時間の進み方」を重力圧縮。

アークにとっては「30年間の地獄の合宿研修」が、現実世界の「わずか30分」で完了する『タイムワープ教育』。



2. 実戦OJT(担当:ゼータ):

「モンスターの効率的な配置とトラップ設計」の講義。

ゼータが「この宝箱のミミック、噛みつきのモーションが0.5秒遅いわ! 冒険者に反撃の余地を与えるなんてコストの無駄!」と、物理的にトラップを微調整するデモンストレーション。



3. 自己啓発やりがいの強制(担当:アルド):

アルドによる「マルチバースの未来を創るビジョナリー・トーク」。

「君たちの労働は、宇宙の質量を増やす神聖な作業だ」という甘美な詐術(営業トーク)を、アークの脳内に15,000回リピート再生。




---


『……研修開始から主観時間で15年が経過。新入社員アークの脳波を測定。……「正義」の成分が完全に揮発し、「売上目標」への妄執が98%を占め始めました』


AIオメガの冷徹なアナウンスが響く。


研修室の奥で、アークは泥のように崩れ落ち、頭を抱えていた。

彼がこれまでの人生で信じてきた「世界の平和」や「勇者の誇り」は、テラリウムの「経営理念」と「コスト計算シート」の前に、塵芥のごとく粉砕されていく。


「ちがう……俺は人々を救うために……いや、違う。人々が我が社のダンジョンで適度に絶望し、適度な快感(課金)を得ることこそが、本当の救い(LTVの向上)なのだ……!」


アークの目が、次第に怪しい黄金の光を帯びていく。

その目は、かつて彼を地獄へ突き落とした魔王たちと全く同じ、美しい『社畜の目』だった。


「……そうです、アーク君。よく気づきましたね」


私はスライムの体で、ガルザの肩からプルンとアークのデスクの上へ飛び移った。


「誰もが幸せな世界など、市場ビジネスとして成立しません。適度な理不尽、適度な苦難があるからこそ、人類は『課金』という名の救済を求めるのです。私たちは、宇宙に『生きる意味』を提供しているんですよ」


「CEO……!」


アークは、涙を流しながら私の前に跪いた。


「俺は、愚かでした。これからはテラリウムの一員として、養殖宇宙『テラリウム・ファーム』の全冒険者に、最高のトラップ(絶望)をお届けします。……お願いです、今すぐ現場を! サビ残をさせてください!」


「ふふっ、素晴らしい教育成果です。では、君の最初の任務を言い渡しましょう」


私は、アルドが持ってきた新しい企画書をアークに差し出した。


「我が社が次に地上げする新市場……【養殖宇宙・第2ブロック:魔法少女ファンタジー】。

あそこの世界は、少々『夢と希望』の過剰供給で市場がインフレを起こしています。アーク君、君のレベル9999の剣技で、あの世界の希望(契約マスコット獣)をすべて物理的に『地上げ(リストラ)』し、健全な課金システムを導入してきてください」


「御意に……! 我が聖剣、すべてはテラリウムの売上のために!」


アークは、支給されたテラリウムのロゴ入りビジネスバッグをしっかりと抱え、目がバキバキにキマった状態で、バレルが生成したポータルへと飛び込んでいった。


---


チャリン! チャリン! チャリン!

チャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


アークがポータルを抜けた瞬間から、早くも新市場の「希望の価値」が暴落し、テラリウムのDPカウンターが凄まじい勢いで回り始める。


「船長! 新人アーク、現地に到着するなり『営業スマイル』でマスコット獣の首根っこを掴み、契約の独占禁止法違反を突きつけて地上げを開始しました! 初日からものすごい仕事ぶりです!」


アルドが、現地からの進捗報告書を掲げて大歓声を上げた。


「……ふふっ、これです。育て上げた勇者をそのまま最強の営業マンとして前線に送り込む。これぞ、完璧な循環リサイクル経営ですね」


私は、ピカピカにデフラグされた社長室の特製ゴールデン・プールの中で、プルプルと至高の悦びに浸った。


元・神のスライム率いるテラリウム・ホールディングス。

自ら創り出した新宇宙の『魔法少女たち』すらも容赦なく優良顧客へと仕立て上げる、新たなる搾取ビジネスの幕が、今ここに上がったのである。

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