第50話:【世紀のメガマージ】暗黒大陸の『魔神連合』と合併したら、全自動の別荘(前宇宙)と回線が繋がってマルチバース企業になりました
「船長! 暗黒大陸の『魔神連合』の最高幹部たちが、全員スーツ(幻影)を着て、手土産の高級菓子折り(暗黒魔力の塊)を持って応接室で震えて待ってます!」
アルドが、あまりの営業効率の良さに満面の笑みを浮かべながら報告してきた。 中央帝国を丸ごと買収(M&A)した我が社の噂は、瞬く間に新次元の全域へと轟いていた。次に地上げされるのを恐れた暗黒大陸の魔神たちは、戦う前に「対等合併(という名の全面降伏)」を申し入れてきたのだ。
「おや、話のわかる魔神たちですね。デューデリジェンス(資産査定)のしがいがあります」
私はスライムの体でプルプルと笑いながら、役員会議室(旧魔王城・最深部)へと向かった。 そこには、世界を幾度も滅ぼしかけた異形の魔神たちが、小さくなってパイプ椅子に座っていた。彼らの前には、すでに我が社の鬼面面接官たちが並んでいる。
【暗黒大陸:経営統合(合併)プロセス】
1. 不採算部門の徹底的なリストラ(担当:ゼータ):
* 「世界を呪う部署」や「無差別に大洪水を起こす部署」など、利益を生まない非効率な魔神の権能を、ゼータが分子レベルでスライスして解体。
* 呪いのエネルギーはすべて、ダンジョンの自動販売機の冷却システムへと再利用(クリーンエネルギー化)。
2. 瘴気のラグジュアリー化(担当:アルド、バレル):
* 暗黒大陸を覆う不快な黒い瘴気を、バレルの重力ろ過装置で圧縮。
* アルドのPR戦略により「ゴシック調のプレミアムな大人空間」としてリブランディングし、高所得者の冒険者向けに『ナイト・ダンジョン(5号店)』として開拓。
3. 根源的な闇の滅菌(担当:元・神):
* 「5000年間一度も光が届かなかった深淵」を、元・神が「高圧聖水スチーム洗浄」で一晩にして完全除菌。塵一つないピカピカの「暗黒オフィス」へ改装。
「……以上が、我が社との合併契約書となります。ご署名を」
私がスライムの体で契約書を差し出すと、魔神連合の総帥(異形の巨大目玉)は、震える触手で血判を捺した。 その横では、名誉エリアマネージャーになった中央帝国の元・皇帝と、先輩インターンのガルザ(元・魔王)が、優しくタイムカードの押し方を教えている。
「安心しろ、魔神総帥。ここのCEOは恐ろしいが、徹夜明けの達成感と、毎月振り込まれるDPの万能感は麻薬だぞ……フフ、ハハハ!」
「(魔王も皇帝も、完全に調教されている……!)」
魔神たちは恐怖で涙を流しながら、我が社のブラック労働(大人の趣味)に組み込まれていった。
その瞬間だった。 この新次元のすべての土地、国家、そして神々までもが我が社の『テラリウム・ホールディングス』の傘下に入った。つまり、この世界の市場占有率が「100%」に達したのだ。
ジジジジジジッ……!!!
突然、オフィスの空間OSが激しく点滅を始めた。
『緊急警告。新次元の全リソースの完全掌握を確認。……システムが上限に達しました。自動的に【次元間ネットワーク】を開通。第一宇宙との同期を開始します』
「……おや?」
空間が裂け、眩い黄金の光が差し込んできた。 なんと、私たちが「飽きたから」といって放置してきた、あの完璧に自動化された最初のテラリウム(宇宙)と、この新次元のオフィスが、DPの過剰な膨張によって太いパイプラインで直結してしまったのだ。
『あ、あれは……私の解体ロボット軍団!? 自動で新次元のゴミを回収し始めたわ!』
ゼータが窓の外を見て叫んだ。前の宇宙で暇を持て余していた完璧な自動化システムが、新たな「未開の領土」を見つけて、ものすごい勢いで出稼ぎ(自動経営)にやってきたのだ。
『重力演算エンジンも完全同期した。これで、この新次元のすべての罠の維持管理も、1秒間に1億回ペースで完全自動化されるな。……おい船長、また俺たちの仕事がなくなっちまうぞ!』
バレルが嬉しそうに、しかしどこか寂しそうに叫ぶ。
チャリン。チャリン。チャリン。 チャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリン!!!!!
二つの宇宙が経営統合したことで、もはや脳が破裂しそうなほどの、マルチバース規模のDPの超絶大洪水が口座に流れ込んできた。文字化けどころか、画面が黄金の光で爆発している。
「……ふふっ、あはははは!」
私は、スライムの体をかつてないほど巨大に膨らませ、管理室の中央で大爆笑した。 退屈を紛らわすためにゼロからスタートアップ(趣味のブラック起業)を始めたはずなのに、あまりのビジネスの才能のせいで、またしても世界を完全に征服し、挙句の果てには複数の宇宙を股にかける「マルチバース・テラリウム企業」へと成長してしまったのだ。
「船長! 前の宇宙の自動システムと、この世界の店長(魔王・竜・魔神)たちが勝手に連携して、次の『第3の次元』への進出計画書(M&A提案)を自動生成してますぜ!」
アルドが、宇宙の真理が書かれたような輝く報告書を持ってきた。
「……素晴らしい。我々の経営(遊び)に、もはや終わりなどないようですね」
私は、ピカピカに磨き上げられたマルチバース本社のVIPプールにプルプルと身を沈め、極上のワインをすする。
ただのスライムに戻ったはずの元・神は、今やあらゆる次元の富と労働を統べる、絶対的な『マルチバースCEO』として、次なる不便な宇宙を最高にブラックに、最高に楽しくプロデュースするための戦略(遊び)を練り続けるのである。




