第34話:【大富豪の宇宙要塞】開けてびっくり、中身は『管理者の天敵』でした。缶切り役は、もちろんあの清掃員にお任せです
「……船長、今回のターゲットは随分と『硬い』みたいね。外装に特殊な力場が張られているわ」
ゼータが艦橋(管理室)のモニターを指差した。
我々の標的である宇宙要塞都市『金龍』は、銀河中の富が集まる場所だけあって、通常の物理攻撃を完全にシャットアウトする特殊装甲で守られていた。
「……なるほど。バレル様、解析を」
『ああ、手強いな。通常の重力加速弾では弾かれる。だが……この力場の周波数、どこかで見覚えがある』
バレルが指先を動かし、ホログラム上に複雑な波形を浮かび上がらせる。
その波形を見た瞬間、私のスライムとしての演算核が危険信号を発した。
「……これは、かつて私のテラリウムを『ZIP圧縮』しようとした、あの頃のセキュリティ技術の系譜……!」
そう、この要塞の持ち主は、かつて私を追い詰めた「開発者サイド」の残党だった。彼らにとって、この要塞は私のテラリウムをメタ的に破壊するための「最終兵器」として設計されていたのだ。
『船長、この要塞の内部には「管理者の権限を強制停止させるデバッグ・コード」が埋め込まれているようだぞ。……もし侵入すれば、我々の演算システムそのものが「初期化」される恐れがある』
「……ふふっ。やはり、ただの大きな缶詰ではありませんでしたね」
私はプルプルと笑った。
恐怖? いいえ、皆無です。
神の権能を捨てた今、私には「演算上のバグ」など怖くない。なぜなら、私にはこの要塞の力場を「力技」でこじ開けられる、最高の缶切りがいるからだ。
「ゼータ様。作戦を変更します。力場を破壊する必要はありません。……力場の『継ぎ目』に、貴方の剣を突き刺してください」
『継ぎ目? あんな巨大な要塞の力場に、そんな隙間があるわけ……』
「あります。私がこれまで集めた『ゴミ』をすべて、一点に集中させて力場を飽和させます。その一瞬だけ生じる『歪み』を、貴方の剣で切り裂いてください」
【作戦:銀河一の缶切り】
・ゴミ・バースト:
・これまで溜め込んだ膨大な廃材を、バレルの重力魔法で極限まで圧縮し、要塞の正面に射出。
・力場の強制過負荷:
・要塞側の防衛システムが、ゴミの処理に全リソースを割いた瞬間、力場が0.1秒だけフリーズする。
・剣聖の突撃:
・その0.1秒の隙間を縫って、ゼータが要塞の「要」を切り飛ばす。
ズズズズズッ!!!
数百万トンの廃材が要塞の力場に衝突し、閃光が宇宙を照らす。
要塞の防衛システムがエラーを吐き出し、力場が揺らいだ、その刹那――。
「今よ!!」
ゼータが艦隊の射出ポッドから飛び出した。
彼女の剣が、要塞の装甲の「継ぎ目」を正確に射抜く。
ガッ!! という鈍い音と共に、要塞の外装がベリベリと剥がれ落ちた。
中から現れたのは、黄金に輝く広大な都市と、私を捕らえようと待ち構えていた『開発者たちの追跡用ドローン』の群れ。
『ひっかかったな、管理者スライム! これで貴様のダンジョンも終わりだ!!』
要塞から響く傲慢な通信。
しかし、私はモニター越しに、要塞内部で「掃除」を始める準備万端のゼータを見て微笑んだ。
「おや、ご挨拶ありがとうございます。……ですが、申し訳ありません。この要塞は今から、私のテラリウムの『第101区画』に認定されました」
ゼータが剣を振り下ろし、要塞のメインコンピューターを真っ二つに割る。
その瞬間、要塞の全システムが私の「ダンジョンOS」に上書きされた。
チャリン、チャリン、チャリン!!!
要塞の中にあった数千億DP相当の資産が、一瞬にして私の口座へ吸い込まれる。
「さあ、ゼータ様。ゴミ屋敷が、また一つ豪華になりましたよ。……とことん、掃除してやってください」
今日もまた、元・神のスライムは、敵の最終兵器を「ただの缶詰」として美味しくいただくのである。




