第33話:【銀河のゴミ屋敷】回収した宇宙拠点が「広すぎて」掃除が終わりません。ゼータ様、そろそろ『全自動解体ロボット』を開発しませんか?
「……船長、正直に言うわ。拾ってきた宇宙拠点がデカすぎる」
ゼータが、オイルと埃で汚れた顔を拭いながら、管理室の扉を蹴り開けた。
恒星系『エデン』の採掘拠点は、あまりに広大すぎた。数千のドローン、数万トンの鉱石、そして無数の生活ユニット。これらをすべて「ダンジョンの資源」として整理整頓するには、いくら天才剣士の彼女でも、腕が何本あっても足りない。
「……ええ。私も想定以上でした。第1区画から第100区画まで、ゴミ……いえ、資源の山で溢れかえっています」
私はプルプルと溜息をつき、管理ホログラムを操作した。
以前の「小惑星サイズ」ならスライムの体一つで管理できたが、今のダンジョンは「恒星系一つ分」を飲み込んでいる。もはや管理者のキャパシティを物理的に圧迫し始めていた。
「このままでは、ゼータ様の剣技が『資源の切断』だけで終わってしまいます。これでは、私のテラリウムではなく、ただの『銀河のゴミ屋敷』です」
『だったら何か策はあるのか?』
バレルが重力エンジンの調整の手を止め、怪訝そうにこちらを見る。
「ええ。ゼータ様、貴方のその天才的な『剣の軌道』を、AIに学習させましょう」
【プロジェクト:剣聖AI・テラリウム】
・剣技のデータ化:
・ゼータがこれまで瓦礫を斬ってきた数百万通りの「角度、速度、力加減」をすべてデータベース化。
・解体専用ユニットの量産:
・そのデータを元に、ゼータの剣技を完璧に模倣する『自動解体アーム』を開発。
・全自動リサイクルラインの構築:
・ダンジョンの各区画に、無数のアームを配置。
入り口から入ったゴミは、アームがゼータ並みの速さで切り刻み、即座にDP変換炉へと送り込む。
「……私の技を、ロボットに?」
ゼータは少し不服そうだったが、目の前に投影された『秒間1000回切り刻む解体アーム』のシミュレーション映像を見て、その表情が好奇心に変わった。
「……なるほど。これなら、ゴミを斬るだけの単純作業から解放されて、もっと複雑な『大型構造物の切断』に集中できるわね」
『面白そうだ。そのAIの演算エンジン、私の重力制御と統合すれば、解体時の衝撃を「発電エネルギー」に変換できるはずだ』
「……それなら、ゴミを斬る時の音を『音楽』として出力して、労働意欲を高める環境を作るのも悪くないな」
アルドまでが楽しそうに提案を出す。
三人の天才が、私のダンジョンをより「効率的」で「自動化」された空間へと作り替えていく。
「ふふっ……素晴らしい。私の指示よりも、彼ら自身の発想でダンジョンが最適化されていく。……これこそが、最高の『テラリウム』です」
私は天井からその様子を眺めながら、スライムの体をプルプルと大きく膨らませた。
神として世界を支配していたときは、自分が全てを決めていた。
だが今は違う。彼らが自発的に、私の箱庭を「より良く」するために働いている。
私という管理者の意思は、もはや最小限でいい。彼らが動けば動くほど、ダンジョンは勝手に強くなり、DPは勝手に貯まっていく。
チャリン、チャリン、チャリン!!!
全自動解体ラインが稼働し、銀河のゴミが瞬く間に宝石のような価値ある資源へと変わっていく。
ダンジョン・ロケットは、ゴミ山を抱えてさらに巨大に、さらに鋭利に成長していく。
「さて……これで、ゴミ処理という『非効率』は解消されました。……皆様、次はどんな『宝物』を銀河の彼方から拾いに行きましょうか?」
私は、モニターに映し出された次の標的――銀河系でも有数の大富豪が所有する『宇宙要塞都市』を指差した。
「全自動化した我がダンジョンにとって、あの都市など、ただの『大きな缶詰』に過ぎません。……さあ、開けに行きましょう」
今日もまた、スライムという名の管理者は、最高の仲間と共に、宇宙という名の巨大な餌場を「完璧にリサイクル」していくのである。




