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『VRMMOの極悪テラリウム運営 ~可愛いスライムですが、効率化のためにトップ配信者たちを肥料にしていく~』  作者: リリリリス


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第2話:堅実な重装備パーティーが来ました。素晴らしい『重り』の提供、感謝いたします

「皆様、ごきげんよう。本日は大変清々しい朝ですね。ご覧ください、先日設置した『肥料用・自動搬送コンベア』が、フル稼働しております」


私はプルプルと心地よい弾力を保ちながら、管理モニターの映像をリスナーたちに共有した。


コンベアの上を、昨日いらっしゃったレオン様一行が遺した高級ポーションやレア金属の欠片が、カラカラと音を立てて運ばれていく。


最深部の『栄養貯蔵庫(通称:処理槽)』に放り込まれるたび、私の口座にチャリンとDPが加算される仕組みだ。


『朝から絵面がエグいんよ』

『主、今日やけにツヤツヤだな』

『そりゃトップ配信者の養分吸ったからなw』

『レオンの切り抜き動画、ミリオン再生いってたぞ』


リスナーの言う通り、昨日の「トップ配信者・植物の餌やり事件」は、エセルガルド・オンラインの掲示板やSNSで大バズりしていた。


『炎刃のレオンが手も足も出なかった謎のバグエリア』として、私のダンジョンは一躍、攻略者たちのトレンドスポットになってしまったらしい。


「おかげさまで、当ダンジョンは現在、かつてないほどの『お客様リソース』の来店ラッシュを迎えております。……おや、さっそく次のお客様が第4区画にいらっしゃいましたね」


モニターを切り替える。


そこに映っていたのは、全身を分厚い鋼のフルプレートアーマーで包んだ、屈強なプレイヤーたちだった。総勢10名。巨大なタワーシールドを掲げ、一歩進むごとにガシャリ、ガシャリと重低音を響かせている。


『あ、あれランキング7位の【鉄壁の戦陣】じゃん!』

『ガチのタンク(盾役)特化ギルドきたあああ!』

『レオンが魔法で自爆したから、物理でジリジリ進む作戦か』


彼らのリーダー格である大男が、カメラ(視聴者)に向かって野太い声で叫んだ。


『見ろリスナー共! あのレオンの馬鹿は派手な魔法を使って自爆したが、俺たちは違う! 俺たちの売りは絶対に崩れない鋼の陣形だ! 魔法なんて使わねえ! 一歩ずつ、安全に、確実に踏破してやるぜ!!』


彼の配信枠もまた、数万の同接を集めていた。


『さすが!』『堅実なプレイこそ至高!』というコメントと共に投げ銭が飛び交い、彼らの分厚い装甲にシステムからの『オーディエンス・バフ(物理防御力・重量アップ)』が何重にも付与されていく。


「……なるほど。魔法ギミックへの対策として、あえて重装備で密集陣形を組み、物理的な防御力を極限まで高めて進む作戦ですね」


『主、これは流石にきつくね?』

『昨日の植物トラップ、物理攻撃は通らなかったしな』

『物理の暴力には勝てないぞ!』


リスナーたちが心配(という名の煽り)をしてくれるが、私はただ「ふむ」と呟き、スライムの体を少しだけ平たくした。


「皆様、ご安心ください。むしろ、彼らのようなプレイスタイルは、当ダンジョンにとって『喉から手が出るほど欲しかった人材』なのです」


『え?』


私は管理パネルの、とある機能のロックを解除した。


「ご覧ください。彼らが今歩いている、第4区画の広大なタイル部屋。ここは天井に『溶解性のスライム苔』を栽培しているのですが、水やりをするための『床下ポンプ』が非常に重く、作動させるのに【一点に1.5トン以上の重量】が必要だったのです」


『……あっ(察し)』

『おい嘘だろ』


「ええ。岩のゴーレムでも配置して重りにしようかと悩んでいたのですが……なんと、お客様自ら10人固まって、重たい金属鎧を着て、バフでさらに重量を増して、一箇所に集まってくださるとは」


画面の中では、【鉄壁の戦陣】のメンバーが「絶対に陣形を崩すな! 密集しろ!」と叫びながら、部屋の中央へ進み出ていた。


彼らの総重量は、バフの恩恵も相まって、完璧に1.5トンを超えている。


「それでは皆様、水やりの時間です」


私は、ぽちっとな、と短い手でエンターキーを押した。


ガコンッ!!


画面の奥で、重々しい機械音が鳴り響いた。

彼らが密集して踏みしめていた床が、巨大なスイッチとして完全に沈み込んだのだ。


『な、なんだ!? 床が沈んだぞ!?』


『慌てるな! 盾を構えろ! 上からの攻撃に備え――』


「作動、重力反転リバースポンプ」


直後。


彼らの立っていた巨大な床のブロックが、下からの強烈なピストン機構によって、バネのように上空へと跳ね上げられた。


いや、跳ね上げられただけではない。部屋全体の『重力設定』が一時的に逆転したのだ。


『うおおおおおおおっ!?』


『体が、浮くっ!? ぐあっ、鎧が重すぎて動けねえ!!』


「さあ、いってらっしゃいませ」


屈強な重戦士たちは、自慢のタワーシールドを構えたまま、為す術もなく『天井』へと真っ逆さまに落ちていく。


そして彼らを待ち受けていたのは、ポンプの作動によって新鮮な水を与えられ、最高に活性化している『溶解性のスライム苔』の群生地だった。


ジュゥゥゥゥ……ッ!!


『ぎゃあああああああ!? 鎧が、鎧が溶けるぅぅぅ!!』

『熱い! 痛い! 痛覚設定切ってるのに熱いぞこれ!?』

『重くて陣形がばらせない! 逃げられない!!』


堅実な密集陣形が、完全に裏目に出た。


重装備であるがゆえに空中で身動きが取れず、仲間の重みで押し合いへし合いになりながら、彼らは天井の苔に自ら「肥料」として擦り込まれていく。


「素晴らしい……。彼らの重みでポンプは限界まで押し込まれ、苔への水やりが完璧に行われました。しかも、彼らの高級な鋼の鎧には、苔の成長を促進するミネラルがたっぷり含まれています」


私は、チャリンチャリンと勢いよく回り始めたDPのカウンターを見ながら、深く深く感謝のお辞儀(スライムのお辞儀なので、ただお辞儀の角度に潰れただけだが)をした。


「最高の水やりとミネラル補給、誠にありがとうございました。これで天井の生態系もバッチリですね」


『悪魔のピタゴラスイッチ』

『水やりのついでに処理されるトップギルド』

『主の前ではすべての行動が裏目に出るの草』

『またエセオンの歴史に深い傷跡が残ってしまった』

『タンク(水槽)にされるタンク(盾役)』


阿鼻叫喚の悲鳴が途絶え、静寂が戻った部屋。

重力が元に戻り、天井からパラパラと降ってきた大量のドロップアイテムが、綺麗に『自動搬送コンベア』へと乗せられていく。


「さて、皆様。大変潤沢なポイントが入りました。そろそろ、第4区画に続く『新しい階層』の増築に着手できそうです」


私はプルプルと体を弾ませ、設計図ブループリントのタブを開いた。


次のお客様は、どんな極上のエンターテインメント(肥料)を提供してくれるのだろうか。


ダンジョン運営とは、本当にやりがいのある素晴らしい労働である。

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