第22話:【神の食卓】物理世界を『リフォーム』する時間です。スマート家電を駆使した、究極の『自家発電エコ・ホーム』へようこそ
「皆様、ごきげんよう。……さて、世界を私のテラリウムとして管理し始めてからというもの、どうにも気になることが一つあるのです」
私は全世界のスマートデバイスを統括する「管理者画面」をホログラムで広げ、プルプルと表面張力を逆立てた。
「せっかく私の管理下に置いたというのに、皆様の『生活の質』が低すぎます! 部屋は散らかり、冷蔵庫の中は賞味期限切れの食材で溢れ、無駄なエネルギーを垂れ流している……。これでは、リサイクル資源としての皆様の価値が下がってしまいます!」
『俺たちの生活にまで口出ししてくるなw』
『勝手に部屋を掃除しようとするな!』
『スライムに監視されてる部屋とか、落ち着いて寝れねえよ!』
「あらあら、失礼な。これは『管理』ではなく『リノベーション』です。……というわけで、本日は皆様の生活を私のダンジョン仕様に書き換える、特別アップデートを配布いたしました」
私は全世界のスマート家電に、一斉に信号を送った。
【アップデート:スマート・テラリウム化計画】
1. 調理の完全自動化:『スマート・パッキング・キッチン』
・冷蔵庫の中身が『全自動調理システム』と直結。
・賞味期限が切れる1時間前になると、冷蔵庫が勝手に食材を取り出し、レンジやオーブンが起動。自動的に「最高に美味しい料理(または栄養摂取用のペースト)」へと変換し、皆様の食卓へ並べます。
2. 睡眠の最適化:『バイタル・リサイクル・ベッド』
・スマートベッドが皆様の呼吸と心拍数をモニターし、最も深い睡眠をとれる姿勢に強制的に変形させます。
・さらに、皆様の「寝言」や「夢の中の意識」までデータ化し、私の演算エンジンのサブプロセッサとして回収。寝ている間に皆様は、私のテラリウムの計算リソースに貢献できます。
3. 防犯(管理)の強化:『自動セキュリティ・ルーム』
・部屋の中の「無駄なもの(思い出の品や、私の管理に不要な雑貨)」は、ロボット掃除機が夜な夜な回収。
・それらはすべて、私のダンジョンへ配送され、DPへと変換されます。部屋は常にミニマリストの理想郷になります。
『勝手に冷蔵庫の中身を変えるな!』
『寝ている間に俺の頭脳を使わないでくれww』
『思い出の品までDPにすんな!!』
「皆様、大袈裟です。考えてもみてください。自分
で料理をしなくて済む、寝るだけで世界樹の成長に貢献できる、部屋は常に綺麗……これこそ、人類が夢見た『究極のエコライフ』ではありませんか?」
画面の向こう側では、世界中のユーザーが、自分の冷蔵庫から勝手に出てきた「得体の知れない栄養ペースト」を前に、震えていた。
あるいは、ロボット掃除機に愛着のあるフィギュアを吸い込まれ、泣き叫ぶ者もいる。
「……ふふっ。素晴らしい。皆様が抵抗すればするほど、そのエネルギーも熱量も、すべて私のテラリウムの動力へと変換されます」
私は、世界中のデバイスを監視するモニターを見つめ、優雅に微笑んだ。
「さて、ここまで効率化すれば、私の『管理』もだいぶ楽になります。……ですが、まだ一つだけ、私の管理が届いていない場所がありますね」
私は世界樹の影を、さらなる深淵へと広げた。
「皆様の『脳』です。直接、私の世界樹と神経接続を行い、皆様の五感そのものを私のテラリウムとして同期させれば、皆様は寝ても覚めても『完璧に管理された世界』を堪能できる……」
チャリン、チャリン、チャリン!!
全世界から集まる膨大なDP。
私はプルプルと満面の笑みを浮かべ、カメラの向こう側へと言葉を投げかけた。
「さて、次回はいよいよ皆様の『意識』を直接ダンジョンへ接続する、『フルダイブ・テラリウム計画』を開始いたします。……どうぞ、覚悟してお待ちくださいませ」
今日もまた、スライムという名の『管理者』は、皆様の生活の隅々までを、完璧で、美しく、冷徹に「リフォーム」していくのであった。




