第17話:【朗報】5000人のボランティアが来ました。無料の『自家発電バッテリー』および超大豊作の収穫祭、誠に感謝いたします(スライム)
「皆様、ごきげんよう。本日は臨時ニュース、および当ダンジョンにおける『第一次大収穫祭』のデバッグ報告をさせていただきます」
私は管理室の特等席で、プルプルと心地よい弾力を味わいながら、カメラに向かって(表面張力を揺らして)一礼した。
私の配信枠のコメント欄は、かつてないほどの超高速で流れていく。
『工場長きたあああああ!』
『5000人を一網打尽にしたサイコパススライムww』
『人間を資源としか見てない顔』
『現場はマジで地獄絵図だぞw 説明しろ!』
「おやおや、皆様そんなに興奮しないでください。5000人もの大軍勢が押し寄せると聞いた時は、さすがの私も『処理負荷でサーバーが落ちるのでは』と肝を冷やしたのです。……ですが、日頃のエコ運営に対する私の情熱が、またしても奇跡の『永久機関』を完成させてしまいました」
私は楽しげに体を弾ませ、管理モニターの映像をリスナーたちに共有した。
画面には、先ほどまで絶望の表情でホログラムモニターを見上げていた重戦士ダリウスの姿が映っている。
「皆様、ご覧ください。彼らが『数の暴力でサーバーを落とす』という作戦を立ててくれたおかげで、当ダンジョンの電力(DP)問題は完全に解決いたしました。仕組みは非常にシンプルです」
私は解説パネルを画面にポップアップさせた。
【完全自立型・エコディフェンスシステム構造図】
1. 動力源(メインCPU):『RTA走者のジン』
第16区画の裏世界に設置した「人間ハムスターホイール」により、ジン様が秒間60フレームで入力し続ける超精密なバグ座標データを、当ダンジョンの並連演算プロセッサとして直結。
5000人分の物理演算負荷を、ジン様お一人の脳と指先にすべて「肩代わり(オーバークロック)」させることに成功。
2. 空間構造:『絶対座標のゼータ』
ゼータ様が綺麗にデフラグしてくださった「境界のグリッチ・アパートメント」の空間データを、ダンジョン全体の基礎フォーマットとして上書き適用。
これにより、侵入者が一歩歩くごとに、空間が自動で彼らを「バグ(未登録ファイル)」として検知し、最適なゴミ処理ラインへと自動ソートする。
3. 処理ライン(ミキサー&パッキング):『バレル』&『ガルド』
ソートされたお客様は、バレルの爆風で回る第13区画の巨大ミキサー(遠心分離機)へ自動搬送されて高純度DP液となり、あるいはガルド様のパッキングラインへ流れて魔獣たちの「真空パック弁当」へと綺麗に加工される。
『他人のバグ技でサーバー負荷を相殺するなww』
『ジンがグラボ代わりにされてて草』
『ゼータの整理整頓が、まさかの「自動ソート機能」に流用されるとは』
『これもう完全に、外から勝手に燃料が飛び込んでくる全自動工場じゃねえか』
「ええ。外部からの魔力投資はゼロ。侵入者が暴れれば暴れるほど、ジン様の処理速度が上がり、より強固なバグ空間がリアルタイムで生成される。これぞ、地球に優しい究極のリサイクルサイクルでございます」
画面の向こうでは、大盾を構えたダリウスが「ふざけるなァァァァ!」と叫びながら、ホログラムに向かって突撃してきていた。
彼はトップギルドの副長としての意地を見せ、空間の歪みを強引に突破してこちらへ向かってくる。
「おお、素晴らしい闘志です。……ですが、ダリウス様。貴方が踏みしめているその『床』、すでにゼータ様のフォーマットによって『ゴミ箱(ZIPファイル)』に指定されておりますよ」
「なっ――が、あ、体が……っ!?」
ダリウスが叫んだ瞬間、彼のグラフィックが縦横比を無視してペチャンコに潰れ、厚さ数ミリの「1枚の書類データ」へと圧縮された。
そのまま床のスリットへシュパッと吸い込まれ、コンベアへと乗せられていく。
「ダリウス様、大変ボリューミーで素晴らしい『幕の内弁当(指揮官入り)』として出荷されました。毎度あり」
【ピピピッ……全処理ライン、正常に稼働を終了しました】
システムメッセージが流れ、第14区画から第16区画に静寂が戻った。
5000人の大軍勢は、綺麗に、一滴の無駄もなく、すべてが「資源」へと変換し尽くされたのだ。
そして、管理画面の右上に表示されている「現在の所持ダンジョンポイント(DP)」のカウンターが、恐ろしい勢いで回転し始めた。
ジャラジャラジャラジャラジャラジャラ!!!!!
チャリン! チャリン! チャリン! チャリン!
【現在の保有DP:548,200,000 DP】
「す、素晴らしい……っ!! なんと5億DP突破です!!」
私はモニターの前で、今日一番の激しい大ジャンプを決めた。
「皆様! ついにやりました! これほどの莫大な資金、そしてエセルガルド全体に与えた『圧倒的なトラウマ』があれば、もはやチマチマと部屋を掃除している段階は終わりです!」
私はプルプルと満面の笑み(表面張力の極限)を浮かべ、高らかに宣言した。
「これより、当ダンジョンは『第2章:階層概念崩壊』へと移行いたします!この潤沢な資金を使って、ダンジョンそのものを『世界樹の苗床』へと巨大化させ、ゲームの生態系そのものを乗っ取りにいきましょう!」
チャリン、チャリン、チャリン!!!
莫大なDPと、世界を震撼させた完全自動化工場。
私はプルプルと心地よい勝利の弾力を味わいながら、いつものセリフを口にした。
「引き続き、当ダンジョンの清く正しく恐ろしい、超エコな拡大運営をよろしくお願いいたしますね」
今日もまた、エセルガルドの(私の)平和と、完璧なテラリウムは「世界規模」へと進化を始めたのである。




