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『VRMMOの極悪テラリウム運営 ~可愛いスライムですが、効率化のためにトップ配信者たちを肥料にしていく~』  作者: リリリリス
第1章:箱庭の管理人編

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第16話:【悲報】大規模レイド、わずか15分で『食肉処理工場』のベルトコンベアに載せられる【阿鼻叫喚】(攻略者)

「……おい、嘘だろ。なんだよこの空間は……っ!」


大盾を構えた重戦士のダリウスは、恐怖で震える声を押さえ込もうと必死だった。


彼は、エセルガルド・オンラインのトップギルド『アイアン・ファング』のサブマスターであり、今回の5000人レイドでは、前衛の第二陣を率いる指揮官を任されていた。


作戦はシンプルだった。

罠が発動する隙も与えず、前衛2000人の突進力(数の暴力)で物理的にダンジョンを踏み荒らし、一気に最深部まで駆け抜ける。


開始から10区画までは、何事もなく進んだ。

ただの静かな植物園。罠の気配すらなかった。


「スライムが処理落ちしてビビってるぞ!」と、レイドチャットには楽観的な声が飛び交っていた。

だが、第14区画の巨大な扉をくぐった瞬間。

世界が、狂った。


「ダ、ダリウス副長! 後続が来ません! 扉をくぐったはずの第三陣が……消えました!」


「バカな!? 扉の向こうはどうなっている!」


「それが……真っ暗な『壁』です! 扉の入り口が、完全に塞がれています!」


ダリウスが振り返ると、彼らが通ってきたはずの巨大な石扉は、無機質な大理石の「壁」へとシームレスに変化していた。

そして、彼らが立っている廊下の先は――。


「おい……あれを見ろ……」


誰かが、絶望を含んだ声で指を差した。

幅30メートルはあろうかという巨大な回廊。

その回廊が、前方100メートル付近で、まるで飴細工のように「上」に向かって90度ねじ曲がっていた。


いや、違う。壁も、床も、天井も、すべての幾何学的な構造がグニャグニャと歪み、メビウスの輪のように不規則に絡み合っているのだ。


「非ユークリッド空間……! トッププレイヤーの『ゼータ』がやられたっていう、あのバグ・アパートメントの構造か!」


ダリウスが叫んだその時。

ドォォォォォォン……ッ!!!


彼らの頭上――「ねじ曲がった天井の先」から、地鳴りのような轟音が響いた。


「上から何か来るぞ! 盾を構えろ!」


ダリウスの号令で、重戦士たちが一斉に大盾を上(元々は前方の廊下だった場所)に向ける。


降ってきたのは、モンスターではなかった。

それは、凄まじい勢いで「滑り落ちてくる」数百人のプレイヤーたちだった。


「ぎゃあああああああ!!」


「止まらない! 床が……床が氷みたいに滑るぅぅぅ!!」


「どいてくれ!! ぶつかるぅぅぅっ!!」


彼らは、先行して突入したはずの「第一陣」だった。


第一陣は、ねじ曲がった空間の先で『重力反転』の罠にかかり、天井を滑り台のように滑り落ちてきたのだ。


「隊列を崩すな! 受け止め――」


ダリウスの指示が飛ぶよりも早く、加速した数百人の第一陣が、第二陣の盾の壁に激突した。

凄まじい衝撃。飛び散るポリゴン。阿鼻叫喚の悲鳴。


そして、衝突の反動で隊列が崩れたその瞬間――。


シュガァァァァァァンッ!!


突如として、ダリウスたちの足元の床が、巨大な「四角いブロック」となって沈み込んだ。


「なっ……床が抜けた!?」


何百人ものプレイヤーが、ブロックごと暗闇の底へと落下していく。

ダリウスは咄嗟に壁の突起にしがみつき、落下を免れた。

だが、彼が下を覗き込むと、そこには地獄が広がっていた。


「ダリウス副長! 助け……ぎゃああああ!」


落下した先は、第5区画の『底なし沼』だった。

だが、ただの沼ではない。


沼の底から、巨大な「ミキサーの刃」のような無数の鋼鉄の刃が回転しながらせり上がり、落ちてきたプレイヤーたちを次々とポリゴンの塵へと粉砕ミキシングしていった。


「なんだあれは……! 底なし沼に、あんなトラップはなかったはずだ!!」


ダリウスは戦慄した。

あの回転刃は、確か第13区画で『バレル』を溶かした罠の一部だ。


なぜ、第5区画の沼と、第13区画のミキサーが「合成」されているのか!?


『ダリウス! 聞こえるか! こちら後衛部隊の司令だ!』


レイドの通信チャットから、司令官の悲痛な声が響いた。


「司令! 前衛は壊滅状態です! 空間が狂っていて、罠が……区画ごとに設定されていた罠が、無茶苦茶に混ざり合って襲ってきます!!」


『こちらも同じだ! 第10区画の植物園に陣取っていた後衛魔導士3000人の足元が、突然【全自動パッキング&真空保存マシン】の巨大コンベアに切り替わった!!』


「コンベア!? 第15区画の『ガルド』をパックにしたあれですか!?」


『そうだ! 今、魔導士たちが次々と巨大なアームに捕まれ、頭にパセリを乗せられて真空パックにされていっている! 魔法を撃とうにも、詠唱中に空気を抜かれて窒息……ゴフッ、うわああああああ!!』


通信の向こう側から、シュゥゥゥゥゥという空気を抜く絶望的な音と、司令官の断末魔が聞こえ、チャットが途絶えた。


「くそっ……! 完全に遊ばれてる……っ!!」


ダリウスは、壁にしがみつきながらギリッと歯を噛み締めた。


5000人のレイドが、始まってわずか15分で、文字通り「パック詰めの肉」と「ミンチ」にされていく。


これは戦闘ですらない。

高度に自動化された、超巨大な『食肉処理工場(リサイクル施設)』のラインに乗せられただけだ。


「……あ。あそこに、誰かいるぞ」


生き残った数名の部下の一人が、震える指で『ねじ曲がった回廊の奥』を指差した。


ダリウスが目を凝らすと、そこには、発光する奇妙な空間の裂け目があった。

その裂け目の奥で、一人の男が、目にも止まらぬ速度で「反復横跳び」を繰り返していた。


「あれは……RTA走者のジン!?」


ジンは、虚ろな目をして、狂ったような速度で足踏みを続けている。


そして、彼が動くたびに、空間の裂け目から膨大な「処理データ(ノイズ)」が溢れ出し、それがダリウスたちの周囲のねじ曲がった回廊をリアルタイムで生成し続けていた。


「バカな……! あのスライム、ジンを『巨大なCPU』として利用して、このふざけたバグ空間を無限に生成し続けているのか!?」


ダリウスは絶望の底に突き落とされた。

自分たちが暴れれば暴れるほど、負荷をかければかけるほど、ジンが強制的にオーバークロックさせられ、さらに狂った罠が生成される。

完全に詰みだ。永久機関だ。


「おい、撤退だ! もう無理だ! システムメニューからログアウト……」


ダリウスが空中にメニュー画面を開こうとした、その時。


【ピーンポーンパーンポーン♪】


突如として、ダンジョン全体にスーパーのタイムセールのような、軽快で間抜けなBGMが鳴り響いた。


「な、なんだ……?」


ダリウスたちが呆然とする中。

ねじ曲がった回廊の先、空間の歪みの中から、一つの「プルプルとした青い球体」が、まるでエスカレーターに乗るかのように、スゥーッと滑り降りてきた。


「……っ!! スライム……!!」


ダリウスは咄嗟に大盾を構えた。

だが、スライムは全く悪びれる様子もなく、ただ愛嬌のある(今となっては最悪にサイコパスな)表面張力を揺らして、ピタリと止まった。


そして、彼らの前に、巨大な「ホログラムモニター」が展開された。


そこには、満面の笑みを浮かべた(ように見える)スライムの姿と、配信のコメント欄が映し出されていた。


『「皆様、ごきげんよう。本日は臨時ニュースがございます」』


スライムの、あの呑気で慇懃無礼な声が、ダンジョン全体に響き渡った。

ダリウスは、絶望のまま、そのモニターを見上げるしかなかった。


エセルガルド史上最悪の『大豊作収穫祭デスゲーム』の、答え合わせが始まろうとしていた。

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