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転生時に貰ったギフトで異世界をのんびり旅します  作者: きさらぎみな


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第021話 早朝会談

 ……なんだか周囲が騒々しい。

 今朝は何かがあるのだろうか?

 意識がハッキリしてくると、俺の部屋のドアが激しくノックされていたのだと分かった。


 狭い部屋だから余計に音が響いていたのだろう。

 そしてノック音の中に、焦りを含んだ声が混じって聞こえてきた。


「お客さん、申し訳ないけど起きてくれるかい」


 どうやら受付の女性が、俺を起こそうとしているようだ。

 起きたからには無視するわけにもいかず、俺は返事をしながら扉の鍵を開けた。


「はい、起きましたよ。どうかしましたか?」

「ああ、よかった。この前一緒に来た獣人の子供がいただろ? あんたに急用があるらしくて下で待ってるよ」

「ジンくんかな?……それだけでこんな騒ぎになるのですか?」

「まあ、普通は呼びに来たりはしないよ、だけど……貴族様絡みの依頼で来た、って言われちゃあねえ」


 女性は周囲に聞こえないように、途中から声を潜めていった。


「貴族?」

「詳しい事は呼びに来た彼に聞いとくれ」

「わかりました、わざわざありがとうございました」

「なあに、これも仕事さ」


 そう言って女性は軽く手を振りながら、この場から去っていった。


 さて、貴族ということは辺境伯様かな、それぐらいしか心当たりはないし。

 それにしても、こんな朝からとは、何かあったっけ?


 疑問はあるが、呼ばれているのは事実だし、俺は立ち上がり、棚に置いてある鞄を肩にかける。

 全身に〈研磨洗浄〉を使い、鍵をかけてから、ジンくんがいるという、下に降りていく。

 受付付近に立っているジンくんを見つけたら、向こうも俺に気づいたのか声をかけてきた。


「兄ちゃん、遅いよ」

「え、そうかな?」

「ああ。まあ、いいや、とにかく冒険者ギルドに行くよ」

「そんなに急ぎなのかい?」

「ログさんにとにかく急いで兄ちゃんを連れてこいって言われたんだよ。宿で止められそうになったら「貴族様絡みだ」って言えともね。そんなことを言わせるなんて、余程のことだぞ」

「ログさんが? それじゃあ、行くか」


 俺はそう言って、受付にいる女性に声をかける。


「それじゃあ行ってきます。あ、これ鍵です」

「ああ、変なことに巻き込まれないようにね」

「ははっ、そうですね、そうならないことを願いますよ」


 軽く一礼して出口へ向かうと、ジンくんは既に外で待っているようだ。

 鞄からマスクを取り出して装着する。


「お待たせ」

「……なんだそれ? まあいいや、兄ちゃん行くぞ」


 そう言うと、ジンくんはかなりのスピードで走りだした。


「ちょっ、ちょっと待って、速いよ!」

「えー、これくらいは普通だろ?」

「いや、ジンくんはそうかもしれないけど、俺にはキツイって!」


 あの速さで走ったら鞄の中身が大惨事になるかもしれない。

 ……ああ〈移送養生〉をかければいいのか。

 能力のことを思い出したので、中身全てに、衝撃用の養生をまとめてかける。

 そしてキックボードを召喚して移動することにした。


「また変わったものがでてきたぞ」

「俺はこれでついて行くよ、走るよりは多少は速くなるから」

「……わかった」


 一応納得してくれたのか、ジンくんはさっきよりはスピードを落として走り出した。

 俺は必死にキックボードを漕ぎ、人にぶつからないように周囲に気をつかう。


 なんとか事故を起こすこともなく、冒険者ギルドに到着することができた。


「兄ちゃん、なかなか速かったな」

「ああ、でも人が多いところでは危険だから、あまり使いたくないな」

「そうなのか? まあいいや、ログさんのところに行くよ」

「わかったよ」


 俺はジンくんに案内されるままギルドの建物に入る。

 ロビーは今まで見たことないぐらい混んでいた。

 やはり、この世界の人達は早朝から活動しているようだ。

 俺は人混みをかき分けながら、ジンくんのあとを追って2階へと上って行く。

 どうやら、会議室へ行くようだ。

 前回と同じ中会議室の前につくと、ジンくんはノックをして中に入っていった。


「連れて来たよ」

「ああ、ご苦労じゃったな」

「これぐらい楽勝だよ、兄ちゃんがなかなか起きなかったこと以外は」

「なんじゃ、朝に弱いのか」


 俺のことが話題になっている。

 これ以上は何を言われるかわからないので割り込むことにする。


「ログさん、おはようございます。カイルさんも、セナさんも、リィンさんも」

「ああ、おはよう」


 他のメンバーからも挨拶を返されたところで、ログさんに大事な確認をする。


「ところで、急用とのことでしたが、今は時間に余裕はある感じですか?」

「そうじゃな、まだ人が揃ってないからの」

「貴族様絡みって聞いたのですが辺境伯様ですか?」

「ああそうじゃ、深夜にギルドに連絡がきて、朝から会議がしたいとのことじゃ」

「深夜に連絡があったのか……」

「儂らも来てから聞かされたからの、そしてお主の宿はジンが知っとるはずじゃったから、連れて来させたのじゃ」

「それでジンくんがこんな早朝から来てたのですか」


 たしかにジンくんに紹介してもらったし、他の誰にも教えてはいないからな。

 腕時計を確認すれば、今は6時33分である。


「いや、早朝と言うが普通はもっと早くから行動するじゃろ?」

「……人それぞれですよ」

「まあよい、7時までには関係者を集めて会議をするとのことじゃ」

「それじゃあ、ちょっとトイレに行ってきていいですか?」

「すぐに戻るんじゃぞ」

「はい」


 念のためにみんなが行ける有料トイレの入り口を開いたら、それぞれが中に入っていた。

 ジンくんはそれを見て驚いている。


「ああ、昨日の場所に行っているだけだよ、ジンくんも行くかい?」

「いや、ぼくはここで待ってるよ。誰もいないと困るだろ?」

「そうなのかな?それじゃあちょっとの間お願いね」


 そう言ってトイレに向かう。

 さっさと用を足して、顔を洗う。

 洗浄でもスッキリはするが、水で顔を洗うのはまた違うのだ。

 目が覚めたので自動販売機の前へ行き、飲み物を買おうとして疑問に思う。

 辺境伯様たちの分ってギルドが用意するのかな?

 水とお茶とコーヒーを複数買って鞄に入れる。

 余ったらジンくんにあげよう、コーヒー以外を……お茶も駄目か?

 あとで聞いてみようと思いながら会議室に戻る。


「ただいま。ジンくん、水でよければこれ飲んでね」


 お茶は危険かもしれないので水を渡した。

 俺も水だから構わないだろう。


「ありがと」


 残りは上座のテーブルの端に置いておく。

 そんな暫しの休憩をしていると扉がノックされた。

 視線を向けると、そこから予想外にもミアちゃんが入ってきた。


「あー!ジンに負けた……」

「ぼくの方が近いから当然だよ。でも僕は兄ちゃんが起きてこないから待たされたよ」

「へえ、にいちゃんにも苦手なことがあるんだね」


 なんか俺の話題になってきた……。

 視線を逸らし扉の方を見ると、マルクさんもいたようで、目が合った。


「マルクさん、おはようございます」

「ヒュウガさん、おはようございます、疾風の盾の皆さんも」


 疾風の盾のメンバーもそれぞれ挨拶を返す。

 挨拶が終わると、マルクさんは改めて、俺の方を向いてきた。


「ヒュウガさん、この度はありがとうございます」

「えっと、何かしましたっけ?」

「何を言っているのですか? この会議に私の参加を進言してくれたのは貴方と聞いていますよ?」

「ああ、そうですね」

「なんでも商業関係についての会議とか。あの飲み物は素晴らしいものでしたからね、それ以上のお話しなのでしょう?」

「聞いたらたいした事なかった、ってなるかもですよ」

「はははっ、それはないと思いますが、何が起きても大丈夫な覚悟はしてきました」

「は、はあ」


 凄く期待されているが……、まあ大丈夫かな?

 そう考えながら俺は獣人兄妹をみる。

 ミアちゃんは、昨日の時点で元気にはなっていたが、今日はそれ以上だ。


「ミアちゃんもずいぶん元気になったね」

「あれから本当に調子が良いのよ!だから今日からまたジンと仕事をしようとしたの、そうしたらログさんに捕まっちゃった」

「儂も元気なミアを見て驚いたぞ。ジンに用事があって探したら一緒にいたからのう」

「ミアちゃんのことも知っていたのですね」

「まあな、有名な兄妹じゃよ」

「へえ、そうなのか」


 そんな話をしていたら、再びノックの音が聞こえて来た。

 扉が開き、入ってきたのはギルドマスターと辺境伯様、そして護衛のダルガさんだった。


 辺境伯様の姿を認めるやいなや、周りの人達は即座に立ち上がり、深くお辞儀をした。

 俺は数テンポ遅れて、慌てて立ち上がり、お辞儀をする。


「ヒュウガ、無理するな。他の者達も直れ、掛けてよいぞ」


 辺境伯様のその言葉に、全員は緊張しながらも席に座った。

 そして、退出のタイミングを逃したのか、獣人兄妹はおろおろしている。


「その子供たちは……ああそうか。ヒュウガ、そこの子供たちはどこまで知っている?」

「えっと、昨日のお土産とトイレ、洗浄ですかね? ああ、キックボードも知ってますね」

「ふむ、それならばヒュウガが良ければ参加させてもよさそうか、どうだ?」

「私は構いませんよ」

「それならば、子供たちよ、お前たちも参加するといい」


 その言葉にジンくんとミアちゃんは目を開いて驚き、そして完全に逃げ場を失ったようだ。

 とりあえず二人は俺と同じ側、俺から見たら右側の上座に辺境伯様が座り、左側の下座に疾風の盾とマルクさん、正面にギルドマスターという座りになった。

 

「さて、朝の忙しい時間から集まってもらってすまなかったな、この機会を逃すと数日は時間が取れなかったのだ」

「滅相もございません。お忙しいのは重々承知しております。特にそこのヒュウガのおかげで」

「まあそれもあるな」


 そう言って辺境伯様とギルドマスターはこっちを見てくる。


「お仕事を増やさないように、もうこれ以上は何もしない、というのもいいですかね?」

「ヒュウガ、冗談はよしておけ、昨日の土産のことでも増えているのだからな」

「……すみません」

「まあよい、さて本題に入るとするか。まずはヒュウガ、機密保持とやらを頼む」

「あ、はい」


 思わず答えた俺は〈機密保持サポート〉を使用した。

 光る魔法陣から出て来たのはスリムな金属製の人型のゴーレム。

 ゴーレムは水晶玉のようなものを持っており、それをダルガさんの前に差し出した。

 俺が料金の支払いを押し付けたのが原因だ。

 ダルガさんは辺境伯様に目配せをし、それに辺境様が頷くのを確認してからプレートを水晶に透過させた。

 すると水晶から光が溢れ、会議室はメタリックな質感の壁に囲まれた。

 そしてゴーレムは邪魔にならない位置に移動し、まるで彫像のように完全静止している。


「さて、これで話が進められるが、マルクよ、どこまで知っている?」

「恥ずかしながら街道でのことぐらいです」

「そうか、ガルド、俺がヒュウガと話している間にマルクに可能な限りの説明を頼む」

「畏まりました」

「よろしくお願いします」

「子供たちも一緒に話を聞いておくといい」

「は、はいっ!」


 そういってマルクさんと兄妹はギルドマスターに近づき、話を聞き始めた。

 そして辺境伯様はミアを一瞥してから、俺の方を向いて話し始める。


「ヒュウガ、改めて言うが昨日の土産は、仕事は増えたが素晴らしいものだったぞ」

「お気に召していただけたのならば、渡したかいがありましたね」

「ああ、帰りにまた貰えるか?」

「もちろん、お渡ししますよ」


 辺境伯様は笑顔で頷いている。

 何を買ったかはわからないが、気に入って貰えてよかった。


「さて、その話は別として、急ぎで呼んだのには理由があってな、そこのミアだったか? 虎人族の少女のことだ」


 急に真剣な顔になって話し始めたことに驚かされる。

 そしてミアちゃんが話の中心らしいということにも。


「え? 商業関係の話し合いではなく?」

「それも重要そうだが、その子の病気が治ったことが最重要だ」


 治ったことが、ということは……。


「誰かがミアちゃんと同じ病気ということですか?」

「そうだ。ヒュウガよ、ミアの病気「魔力回路閉塞熱症」というのだが、知らぬよな?」

「はい、知りませんでしたけど」

「それが生存率1%の病とされていることも知らないな?」

「えっ……」

「そしてその病気が治った。朝から呼び出された理由がわかるな?」

「……はい」


 そんな大病だったのか……、そして呼ばれた理由は同じ症状で危険な人がいると。

 こっちの会話も聞いていたのか、ジンくんがすごい顔で驚いているぞ。

 ミアちゃんも驚きを隠せないでいる。

 それにしても、俺が治したことを昨日の今日で知っているとは……貴族って本当に怖いんだな。


「大体は理解しました。けれどもひとつだけハッキリさせたいことが」

「なんだ」

「病気は治ってはいませんよ、また暫くしたら症状が出てくる可能性があります」

「どういうことだ?」

「私は魔力回路の詰まった部分を解消しただけで、原因である魔力の質は治っていないのです」

「そういうことか。だが、一時的であったとしても解消はされるのだな?」

「診てみないと絶対とは言えませんが、ミアちゃんと同じ症状であれば大丈夫かと」

「可能性があるのならば――頼んでいいか?」

「ええ、人の命がかかっているのですから、断わりませんよ」

「助かる。それで、その病気の方は王都に住んでいる」

「……王都ですか」

「ああ、俺は10日後に王都に向かう予定だったのだが、その時に同行するか、同じ頃に向かって欲しい」

「病気の方は大丈夫なのですか?」

「俺が聞いている話では、少なくとも3か月以内に危険な状態になるということはない」

「そうですか、診に行くには、辺境伯様がいたほうが話がしやすいということですよね?」

「そうなるな」

「それならば同行させて貰います」

「助かる」

「ちなみに服装などは?」

「それはこちらで用意する。午後に仕立屋を手配しておくので、冒険者ギルドにいてくれ」

「わかりました」

「とりあえず急ぎの話はここまでだ」


 そういうと辺境伯様は少し安堵したようすだった。

 王都に向かう予定を考えて、今の時間に俺の意思を確認したかったということか。


「さて、まだ少しは時間があるが、商業関係という話もしておくか」

「わかりました。商業ギルドとかは大丈夫ですか?来ていないですが」

「ああ大丈夫だ。今のはちょっとな。それも含めて王都に行く予定だ」


 いろいろとあるようだな。

 利権が絡むと面倒なのはどこの世界も一緒だな。


「わかりました。マルクさん達の方は大丈夫ですか?」


 話を聞き終えたのか、こちらを見ているマルクさんに聞いてみた。


「ええ、大丈夫ですよ、大体の情報は確認させて貰いましたから」



 俺は頷き、コンビニとデリバリーの話を始めるのだった。


     ダルガ

   辺境伯

ガルド 口 飛河・兄妹

   マルク

   疾風

       扉

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