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転生時に貰ったギフトで異世界をのんびり旅します  作者: きさらぎみな


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第018話 ギルド職員と洗浄屋

この話以前までのギフトの能力説明や一部行動を変更しました。

その為レベルアップのタイミングやポータルの仕様等が変わっています。

ここまでの流れとしてはほぼ変更はないので、以前の分を読まなくても話は繋がると思いますがご了承ください。

 長い話し合いが終わり、今は3時過ぎぐらいのはずだ。

 時計が欲しい……。

 ギルドマスターを見ても腕時計や懐中時計みたいなものは持っていなさそうだし、壁掛け時計も見ていない。

 この世界にはスキル以外では知る方法がないか、時計は貴族しか買えないぐらい高価なのかな。


 ギルドマスターたちも打ち合わせが終わったようで、こちらに視線を向けて話しかけてきた。


「ヒュウガ、この後、時間あるよな?」

「はい、ありますよ」

「それならば、エレナが職員たちを連れてくるので、グルーミングチケットの配布と希望者に洗浄を頼む」

「構いませんが、それって依頼ですか?」

「ああ、最後にエレナが人数分の洗浄代を払う」


 その言葉にエレナさんも頷く。


「わかりました。チケットは3枚ずつですか?」

「ああ、1回分は職員限定での使用を認めることで、チケットの不正利用を防ぎつつ担当をやらせる予定だ」

「なるほど、わかりました。今後のチケットの補充についてはカエラさんを探して聞けばいいのですよね?」

「エレナでもいいぞ。受付にいなければ呼び出せるようにしておく。エレナもカエラも頼むぞ」

「はい!お任せください」


 気合の籠った二人の声が重なった。


「では、今日の所はここまでだ。疾風の盾もギルドの方針は大体わかっただろう?よろしく頼むぞ」

「ああ、人目に気を付けて使わせてもらうぞ、ところで次の辺境伯様との話し合いはわしらはどうしたらいいんじゃ?」

「興味があるのならば参加して構わないぞ」

「そうか、どうする?」


 ログさんは他のメンバーに確認するように見回した。

 リィンさんは退屈になりがちな話し合いには興味がなさそうだ。


「座って話しているだけは退屈にゃ」

「そうですが、マルクさんも参加するならば、私たちも参加した方がいいのでは」

「僕もこの件に関しては、新情報は大切だと思うし、参加がいいと思う」

「そうじゃのう、マルクが参加するのなら、後々の為にも同席した方がよいか。ちなみにヒュウガよ、少しぐらい何について話すか教えられんのか?」

「え?そうですね……まあ、買い物についてですよ」

「買い物か、話し合いの時には商品とか見られるのか?」

「それは見せますね、実物がないと説明が大変ですから」

「それなら参加するぞ、あの飲み物と似たようなものの場合には参加していないと損じゃろ」

「甘い物があるかもしれにゃいなら、参加にゃ」

「ふふっ、楽しみですね」

「ギルドマスター、僕らも参加しますので、日程が決まったら教えていただけますか」

「わかった。ただし連絡を走らせることはしないから、悪いが受付で確認してくれ」

「はい、それで大丈夫です」


 カイルさんがリーダーとしてまとめ、これで本当に話し合いは終わりだな。

 さて、職員たちに付与をする前にトイレに行かせてもらおう。


「エレナさん、職員さん達を呼ぶ前にトイレ休憩でもいいですか?」

「ええ、いいですよ、私はその間にグルーミングチケットを使わせて貰います」

「あ、はい。それじゃあ10分ちょっとは休憩ですね」


 使うタイミングを待っていたのだろうか、返事に迷いがなかった。

 ギルドマスターも苦笑いしているし。


「それでは、また明日以降だな」

「はい、よろしくおねがいします」

「わしらも今日は解散じゃな」


 各々が椅子から立ち上がり、自由に行動を始める。

 俺はトイレに行き、ロビーで飲み物を飲みながら少しだけのんびりとした。

 ソファーの座り心地はこっちの方がいい。

 頭を使うことばかりのせいで甘い物が染み渡る。


 休憩を終わりにして会議室に戻ると、別人に見えるエレナさんがいた。


「お待たせしましたエレナさん。さらにお綺麗になられましたね」

「ありがとうございますヒュウガさん」


 笑顔が眩しいとはこういうことか。


「俺は準備できましたので、いつでもいいですよ」

「そうですか、では連れてきますね」


 そう言ってエレナさんは部屋の外へと出て行った。

 エレナさんが下に降りたのだろう、ロビーの方から騒がしい声が聞こえてきた。

 暫くしてからエレナさんが3人の女性職員を連れて戻ってきた。


「まずはこの子たちにお願いします。全員洗浄も込みで」


 俺は言われた通りに3人に洗浄をかける。

 女性職員たちは喜びあっていたが、グルーミングチケットを譲渡した時は狂喜の声を上げていた。

 ただ、エレナさんが忠告していたのだろう、この場で使う人はいなかった。

 女性職員たちは足取り軽くエレナさんと戻って行き、さらに別の職員が連れて来られる。

 この作業を後6回、合計で21人にチケットを譲渡した。

 エレナさんにも使った分を譲渡しておいた。

 女性だけでなく男性にも譲渡した、どうやらギルド所有の馬などにも利用するようだ。

 洗浄は結局、来た全員が受けていて、銀貨2枚と小銀貨1枚を受取った。


「おつかれさまでした。後は今日休みの者と、この時間は来られない解体作業担当者の5人です。ですので申し訳ないですが、門の外にある解体場に行って5人に同じことをして来て貰えませんか?」

「ええ、いいですよ、まだ行ったことがなかったので楽しみです」

「それでは、城外の受付に行けば、先ほど来ていた職員もいると思いますので、確認してください」


 エレナさんはそう言って俺に小銀貨5枚を追加で渡してきた。


「わかりました。あ、時間も良さそうなので、行ったついでに冒険者の方たち相手にも商売していいですか?」

「そうですね、こちらの依頼の終了後ならば構いませんよ」

「もちろんですよ。そういえば、これって税金とかはどうなるのですか?前回はいらないと聞きましたが」

「辺境伯様との事もありますので、この領都でならば無税で大丈夫でしょう」

「わかりました。それでは行ってきますので、これで失礼します」

「はい、本日はありがとうございました」


 エレナさんと別れ、ロビーへと降りていく。

 疾風の盾のメンバーの姿はなかったので、城外にあるギルドの建物へ向かう。

 城内の建物から直ぐ近くに南東門があり、その先に城外の建物が見えるから迷うことはない。

 南東門の兵士に身分証を見せればすんなりと外に出られた。

 この門は冒険者の出入りはかなり緩いようだ、まあ俺が荷物を殆ど持っていないというのもあるだろうが。

 城外の建物についたので受付に向かう。

 受付にいた女性は先ほどもお会いしているので笑顔で対応してくれた。

 解体場を教えて貰い、話はしてあるから問題はないとの事。

 お礼を伝えて解体場に近づくと、周囲には清掃がしきれていないのか、新しいものと古いものが混ざり合った、血と脂と獣の生々しい臭いが漂っている。

 俺は鼻と口を覆っていた布をしっかりと締め直し、解体場に足を踏み入れた。

 そこには俺の想像を絶する光景が広がっていた。

 職員の体調が心配になる程に汚れた室内での作業に、この世界での今後の食事は喉を通るだろうか。

 大河から流れる水を内部に引き込んで洗浄しているが、排水をまともに処理せず、垂れ流しているために、外にまであの臭いが広がっていたようだ。

 俺は受付で教えて貰った特徴の、ここの責任者であろう男に声をかけた。


「すみません、エレナさんに頼まれて洗浄にきました」

「おお、聞いてるよ。でもな、俺たちはこれからが作業のピークだ。今から綺麗になってもすぐに汚れちまう」


 周囲の職員たちも頷き、肯定の意思を示している。

 職業柄汚れに関しては諦めているのだろうか。

 困った俺は取り合えずチケットを先に譲渡し、この部屋の惨状を解決する方を提案する。


「そうですか、もう代金は貰っているのですよね……。それでは、見て分かってもらう為に、お試しでこの部屋を綺麗にしていいですか?正直俺には臭いがきつくて……」

「ああ、慣れてないやつにはキツイよな」

「それでどうでしょう?」

「どの程度かは知らないが、綺麗になる分にはいいんじゃないか?」

「それなら、この部屋にこびり付いた汚れを綺麗にさせてもらいますね」


 そう伝えて、部屋全体にこびり付いた血や脂を削ぎ落す。

 効果は抜群で見違えるほどに綺麗になった。

 臭いも大分薄まった感じだ。


「終わりました」

「あ、ああ、これはすごいな。この後に汚すことになるのが申し訳なくなるぐらいだ」

「そこは仕事なので気にせずにやってくださいよ」

「まあそうだがな、ところで俺たちもこれぐらい綺麗になるのか?」

「ええ、余分な汚れは落としますよ」

「……何時までいる?」

「えっと6時ぐらいまでは城外の建物で洗浄の商売をしている予定ですが」

「あと2時間か、それじゃあ悪いが、帰りに寄って貰って俺たちにも頼めるか?」

「わかりました、それなら帰る前によりますね」

「たのんだ」


 約束をして、先ほどの受付まで戻る。


「すみません、商売の許可をエレナさんに貰っているのですが、どの辺りでしていいですか?」

「えっと、あちらに子供たちが立っていると思うのですが、そのあたりでよければ」

「わかりました、それでは場所をお借りしますね」


 お辞儀をして言われた場所に向かう。

 そこには声をかけられるのを待っている子供たちがおり、ジンくんもいた。

 彼と目が合い、話しかけに行く。


「やあジンくん、こんにちは」

「兄ちゃんこんにちは」


 また何か頼まれるのと思ったのか、嬉しそうな声色だった。

 尻尾も揺れているし。

 しかし、何かを頼むために声をかけたわけではなかったので申しわけない。

 そんなことを思いながら彼を見てみると、言って悪いがかなり汚れている印象だ。

 これならば呼び込みをしてもらい、ついでに彼に洗浄を受けて貰うことで宣伝になるのではないか?

 聞いてみるか。


「ここで商売をするんだけど、ジンくん手伝ってくれないか?」

「いいのか?」

「ああ、ただ一つ確認したいんだが、ジンくんって少々汚れてるよね」

「う、水浴びしてきた方がいいか?」

「いやいや、違う違う、ジンくんを宣伝で綺麗にしたいんだけど、それって問題ないかなと」

「綺麗になるのに問題があるやつなんているのか?」

「……いないかな?」

「だろ、問題ないよ。ちゃんと依頼料が貰えればなっ」


 ジンくんは笑顔でそう答えた。


「じゃあ、人がもう少し増えたら呼び込みと、宣伝の手伝いを頼むよ」

「わかった」

「俺がやる事は、人の体や、装備品などを綺麗にする事ね。なのでちょっと汚れて帰ってきた人などを中心にお願いするよ」

「まかせてくれよ」

「報酬は売り上げの1割でもいいかい?」

「兄ちゃんに任せるよ」


 任せられても困るが、10人くれば1割は小銀貨1枚、これを最低額としておけばいいか。

 最初なんてなかなか人は来ないだろうし。

 暫くして、冒険者がちらほらと依頼を終えて戻ってきたようで、受付のあるこの建物も混雑し始めてきた。

 ジンくんは多くの人に声をかけたようで、俺の近くには10人近くの人が集まってきた。

 そしてその半分ぐらいは獣人のようだ。

 リィンさんもそうだったが、獣人は綺麗好きなのだろう。

 とりあえずこれだけ集まれば後は口コミやこの後の様子で人が来るかもしれない。

 そう思いジンくんに戻って来てもらい、営業を始める。


「お集まりいただきありがとうございます。これから暫くはここで商売をするヒュウガと申します」

「おいおい、随分堅苦しいな」

「兄ちゃんも冒険者だろ?もう少し砕けていいんじゃないか?」


 子供にまで注意されるとは……。


「ん、んっ。わかったよ。ここで洗浄屋をするヒュウガだ。代金は体でもアイテムでも1回小銀貨1枚」

「小銀貨1枚だと?高くないか?」

「ああ、それで商売になるのか?」

「ギルドマスターからその金額にしろと言われたから、今のところ変えられない、その代わり効果はかなり高いぞ」


 俺はジンくんを呼び寄せる。


「聞いただけではわからないだろうから、ジンくんに協力して貰う。彼を綺麗にするから効果を見て行ってくれ。そして気に入ったら注文を受けるぞ」


 俺は冒険者たちの視線がジンくんに集まったことを確認する。


「よし、いくぞ」


 ジンくんに〈研磨洗浄〉をかける。

 いつものエフェクトと共にジンくんについていた汚れは綺麗に落ちた。

 髪の毛から服まですべてだ。

 髪は青黒いのかと思ってたら、黒っぽい部分はほぼ汚れだったようで、かなり青が強くなった。

 服も相当汚れていたのだろう、黄ばみなども含め全てが綺麗になった。

 ただ、綺麗になったのは良いがボロイ部分が目立ってしまっている。

 あとでお詫びに何かを買った方がいいだろうか。


 そんなことを考えている間にも、周囲の人達の驚きは相当のようで、ジンくんが全身もみくちゃにされている。

 その中から一人の獣人の女性が近づいて来た。


「すごいね、私にもお願いするよ」


 そう言って彼女は小銀貨1枚を渡してきた。


「はい、ありがとうございます。体の方でいいですか?」

「ああ」


 彼女に〈研磨洗浄〉をかけると尻尾が大きく揺れだした。


「これはいいな、すごくスッキリとした気分だ。また今度も頼むよ」

「よろしくお願いします」


 そういって彼女はこの場を去っていった。

 ジンくんや彼女がいい宣伝になったようで、その後は依頼者が増えた。

 俺が洗浄をかけている間ジンくんは、待っている冒険者や遠巻きに見ている人にも近づき、宣伝をしていた。

 時間が来たので締め切り、最後の人に洗浄をかけたら38回分の小銀貨が俺の小袋には追加されていた。

 細かい銅貨もないので、俺はジンくんに小銀貨4枚を渡す。


「え、多くないか?」

「いや、最初に言った通りに1割だよ」

「そうなのか?」

「ああ、約束通りだから気にせずに受け取ってくれ。多くの人に宣伝してくれて助かったよ」

「ありがとう、これで暫くは妹に良いものを食べさせてあげられるよ」

「ん?妹がいるのか?」

「ああ、ちょっと病気で寝込んでいるけどな、似てない双子の妹だ」


 なんだか無理して明るく答えているようだった。


「病気か……それは何の病気か知ってるのか?」

「よくわからないよ、熱がでて寝込んでいることが多いんだ」

「そうか、よかったら診てみようか?原因とかが突き止められるかはわからないけど」

「そんなことができるのか?でもうちにはお金なんてないぞ?」

「無料でいいよ。ジンくんにはまた今度も頼みたいからな」

「それじゃあちょっと待っててくれ」

「ああ」


 そういってジンくんは受付に向かった。

 そして簡単に何かを聞いたようで、直ぐに戻ってきた。


「もどったぞ。お願いするよ。ギルドマスターからも信頼されているようだからな兄ちゃんは」

「……それを聞きに行ったのか?」

「信用できない人は連れていけないからな!」


 ……どうやら警戒はされていたようだ。

 その後、受付に場所を借りたお礼を伝え、解体場に向かう。

 およそ2時間で、そこそこに汚れがついた部屋と職員達を見て、大変な仕事だなと思う。

 職員達に〈研磨洗浄〉をかけると大喜びで感謝された。 

 そして今後も定期的にかけて貰えるようにギルドマスターに願い出るとの事だった。

 ギルドマスターにまた考える仕事が増えたなと思いながら、解体場を退出し、ジンくんと合流した。


「おまたせ、それじゃあ行こうか」

「ああ、こっちだよ」


 俺はジンくんの後を追いながらも、次第に薄暗い道が多くなって来た事に、少々ながら不安を募らせていた。

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