今までのあらすじ10 63話~69話。
【第63話 逢わない方が互いの為】
ショッピングモールで華奈との遭遇をギリギリで回避したメアリーは、匠を強引に連れてホテルへ逃げ帰る。華奈はメアリーを見失うも、彼女の不可解な逃走から、その隣に匠が一緒にいるのではないかと確信する。
避難先の高級ホテル新館で、メアリーはすぐ近くの会議室にフィルモア王国の使節団(ウィラード団長たち)がいることに気づく。鉢合わせを恐れるメアリーは、会議を終えて出てきた彼らから隠れるように匠を誘導し、さらに軽い『魅了』をかけて匠の思考を逸らす。一方の華奈は、ホテル内の「アンチ索敵結界」に阻まれ、わずか数メートルの高低差ですれ違いながらも二人の居場所を特定できなかった。
翌日、匠はヨハネや現地の作業員たちと早朝から順調に砂鉄採集をこなす。その際にも、朝の鍛錬をする華奈のすぐ前を匠の馬車が通り過ぎるという、すれ違いが続いていた。
そして午後、それぞれの用事を終えた両国の一行は飛行場へと向かい、飛空艇を出港させる。上昇速度に勝るツヴェルクの試作機『烈風』が、鈍重なフィルモアの飛空艇と空の上で並んだその瞬間、観測窓を覗いた匠と、デッキで警戒にあたっていた華奈の視線がまっすぐに交錯する。声も届かない空の上という残酷なシチュエーションで、二人は互いの存在を確認しながらも、ただ遠ざかっていくしかなかった。
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【第64話 擦れ違い】
数十時間の空の旅を経て、匠とメアリー、ヨハネを乗せた試作飛空艇『烈風』は、フリード中立国家の港町「バース」に到着する。同じ頃、フィルモア王国のミラード国王率いる使節団もまた、初飛行のルートとしてこの町を訪れていた。そこには、国王の護衛任務に就くウィラード騎士団長や華奈の姿もあった。
翌朝、宿代の安い「旧館」に滞在していた匠一行は、南国の厳しい暑さに耐えかね、メアリーの涼しい衣服を探しに街の商店街へと向かう。一方、絢爛な「新館」に滞在していた華奈も、ウィラードから休日を言い渡され、近衛の先輩たちに押し切られる形で同じ商店街のカジュアル衣類店へ水着を買いに訪れていた。
運命のいたずらか、同じ店で水着を物色し、隣同士の試着室に入ったメアリーと華奈。先輩たちが華奈の名を呼ぶ声を耳にしたメアリーは、カーテンの隙間から隣の黒髪の少女が華奈本人であることを確認する。自身の『索敵スキル』に感知されることを恐れたメアリーは、着替えのタイミングを見計らって急ぎ店外へと脱出した。
メアリーが去った直後、試着を終えた華奈は、先輩たちの会話から隣の試着室にいたのが「金髪・巨乳・黒い眼帯」の特徴を持つ美少女だったことを知る。それがずっと捜し続けていたメアリーであると確信した華奈は、衝撃を受け、彼女を追うべく動き出すのだった。
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【第65話 真意を知る時】
飛空艇の並走ですれ違った華奈の悲しげな表情が頭から離れず、怒りを再燃させる匠。メアリーは匠が華奈を目撃したことを察し、その場を離れようとするが匠に阻まれる。昨日の一件を追及されたメアリーは、水着売り場で華奈と遭遇した経緯をすべて明かし、「呪いが解けない限り会えない」と告げる。
さらに何かを隠していると詰め寄る匠だったが、そこにヨハネが割って入り、匠を貴賓室へと連れ出す。ヨハネは匠たちが異世界人であることや華奈へのわだかまりをすべて知っていると話し、魔王レオンとも旧知の仲であることを明かす。「華奈の立場で考えろ」というヨハネの言葉をきっかけに、匠の中で散らばっていた記憶が繋がり始める。
ウィラードの苦しげな顔、そして冷たく大人びていた華奈の表情――それらは暗殺の危険から匠を引き離し、あえて自分を恨ませることで生き延びさせようとした、不器用な「憎しみ」という名の愛情だったのだと匠は気づく。真意を理解しつつも魔族領の捕虜という現状に力なく笑う匠に、ヨハネは「嫌なことを忘れるには打ち込むのが一番だ」と、最高の玉鋼作りに励むよう肩を叩くのだった。
数十時間後、帝国に戻ったメアリーは行方不明を心配するメルド村へ安否と経営報告の手紙を送るため、ヨハネに相談する。勇者(華奈)宛ての手紙は検閲で破棄されるため届かないと言われ落胆する匠だったが、メアリーは手紙の最後に『私《《も》》元気です』という一文を書き加える。ネスレならこの「も」に込めた意味を汲み取り、心配している者たちへ安否を伝えてくれるだろうという願いを込めて、手紙を託すのだった。
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【第66話 鍛錬の日々】
王都へ戻った華奈は、メアリーの手紙に添えられた「も」の一文字から匠の生存を確信し、密かに安堵する。一方、ツヴェルク帝国で「たたら製鉄」のデータ蓄積と量産化に励む匠は、数ヶ月かけて良質な玉鋼の精製に成功。その裏でメアリーも冒険者として腕を磨き、ワイバーン捕獲の準備を進めていた。
その頃、フィルモア王国のミラード国王は、新興宗教「ルシフェリア聖教」のゴッドフリー司教から、生贄(奴隷や孤児)の引き渡しと引き換えに莫大な資金援助を受け、ゴーレムの量産に狂奔する。さらに、匠が砂鉄調達のために港町バースへ出入りしているとの密報を掴んだ国王は、国外での匠暗殺を裏で画策し始める。
そんな中、研究所に届いた新聞から「勇者華奈が婚約した」という衝撃の報せが匠の耳に入ってしまう。華奈が自分を生かすためにあえて憎まれ役を買って出たのだと信じかけていた匠は、その希望を無残に打ち砕かれ、再び胸の奥で憎しみを蘇らせて心を氷のように冷たく閉ざす。メアリーに促されるまま、匠は呪いを解くという次なる目的地、魔法皇国ウィッシュランドへと旅立つ準備を始めるのだった。
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【第67話 メアリーの呪い】
メアリーの呪いを解くため、転移魔法で魔法皇国ウィッシュランドへ赴いた匠とメアリー。強かな交渉で皇帝デゥエンディへの謁見を取り付けたメアリーだったが、その呪いは魔法ではなく「神の力による変身」であり解除不能だと告げられる。落胆するメアリーに対し、デゥエンディは口止め料の代わりに神の力に対抗する三つの激レア素材――『ファルム・ワイバーンの爪』『グレートサラマンダーの核』、そしてフィルモア領の神域に棲む『大蛇の鱗』の存在を吐き出す。最難関の鱗を後回しにした二人は、まず爪の入手を目指して皇国を後にする。
その頃、フィルモア城では、強欲に染まったミラード国王がルシフェリア聖教のゴッドフリー司教と再び密談を交わしていた。司教は国王の覇業を支えるためと称し、伝説の破壊女神「マハーカーリン」を地下魔法陣から召喚する許可を得る。しかし教団の真の目的は世界征服ではなく、召喚による大量虐殺で魂を集め、大悪魔ルシファーを復活させることにあった。
一方、爪を求めて港町バースの冒険者ギルドを訪れたメアリーらは、目的地のメドゥファル島は嵐と危険な原住民のせいで誰も近づかないと知る。しかし持ち前の行動力で小舟を調達したメアリーは、自らの魔力を推進力にして強引に海へと漕ぎ出す。島影が見え、日没前に到着するかと思われたその瞬間、突如猛烈な暴風雨が船体を真っ二つに破壊。匠とメアリーは荒れ狂う大海原へと投げ出され、離ればなれになってしまうのだった。
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【第68話 匠、めっちゃモテ期】
嵐で船が難破し、メドゥファル島に漂着したメアリーは、絶対神サーペントを崇拝する秘境の少数民族「エウリュアレ族」に捕らえられてしまう。得意の『魅力』スキルで村人を骨抜きにし、丁重に案内させて集落へ辿り着いたメアリーだったが、そこで目にしたのは、村の少女ナーガに結婚を迫られ涙目で逃げ回る匠の情けない姿だった。メアリーを見つけて背後に隠れた匠だったが、ナーガはメアリーを匠の想い人だと勘違いし激怒。ナーガの兄シェーシャの提案により、二人は匠を巡って村の闘技場で決決闘することになる。
原始人相手なら魔眼で楽勝だと踏んでいたメアリーだったが、ナーガが身につけていた青い首飾りの力によって『チャーム』も『テイム』も一切無効化されてしまう。魔法を封じられ、肉弾戦でも柔術の心得があるナーガに圧倒されて地面に叩きつけられるメアリー。絶体絶命の窮地に追い込まれる中、ナーガはさらにファルム・ワイバーンの力を借りた青白く輝く灼熱の火球魔法『フレア』を放つ。本気で焼け死ぬと直感したメアリーが絶望に染まったその瞬間――。
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【第69話 再会は突然】
ナーガが放った灼熱の火球魔法『フレア』がメアリーに迫ったその瞬間、かつて共に遊んだ若いワイバーンの「ファル」が身を挺して彼女を守る。ファルがエウリュアレ族の崇める神の使徒「ファルム・ワイバーン」であったことから形勢は逆転し、村人たちは一斉に平伏して騒動は一件落着を迎える。匠がナーガに結婚を迫られていた誤解も解け、メアリーは村の詫びの品として目的のレアアイテムである『ファルム・ワイバーンの爪』を無事に入手する。
その後、二人はファルの背に乗って港町バースへと帰還。レベルアップにより念話が使えるようになったメアリーは、陰ながら自分を守ってくれていたファルとアングィスの優しさに感謝しつつ、切なくも温かい別れを告げてファルを送り出す。
無事にバースへ戻り冒険者ギルドへ向かう二人だったが、メアリーが『索敵スキル』を発動した直後、自分たちに向けられた強い殺意を感知する。突如として暗器を持った雇われ暗殺者たちに急襲されるが、メアリーが咄嗟に大声で「変態よー!」と叫んだことで、正義感の強い海の男たちが集結。正体が露見するのを恐れた暗殺者たちは、人混みに紛れて退散する。ミラード国王の放った魔の手が確実に迫っていることを予感させつつも、二人は危機を切り抜けるのだった。




