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今までのあらすじ9 57話~61話。

【第57話 足枷】


 戦闘狂と噂されるエルフの王・デゥエンディの来訪に沸くフィルモア王国。不仲なミラード国王から罠含みの招待を受けた勇者・八雲華奈は、立場上拒めず彼との決闘に臨むことになる。


 翌日、闘技場。デゥエンディは属性の異なる二つの破滅魔法を同時に放つ『二重詠唱ダブルキャスト』で華奈を全方向から猛攻。大ダメージを受ける華奈だったが、執念で耐え抜きパパ・ヤーガ直伝の上位神聖魔法『ホーリー・ディアクティベート』を展開する。デゥエンディは魔法を跳ね返す『リフレクション』で対抗するも、華奈はそれを上回る圧倒的な魔力を継続してぶつけ続け、術式ごと力任せに霧散させる。


 視界ゼロの霧の中を青い閃光となって急接近した華奈は、次の呪文を放たれる前にデゥエンディの喉元へ木剣を突きつけた。「技術では上だったはず」と驚愕し敗北理由を問う彼に対し、華奈は「テクニックで勝てないなら力押ししかない」とケロッと言い放つ。知略と技術の極みにいたエルフの王は、規格外すぎる脳筋思考を前に、ただただ絶句し敗北感を味わうのだった。



 ※※※※※



【第58話 技術者魂に火がつく】


 デゥエンディに圧勝した八雲華奈に対し、ミラード国王とデゥエンディは「強大すぎる力への確証」を求め、呪いの契約で縛ろうとする。しかし思惑を見抜いていた華奈は「私に枷をハメるなら貴方達もハメなさい」と圧倒的なプレッシャーで主導権を強奪。

 パパ・ヤーガの協力で三人の血を用いた強力な契約魔法を結び、「納得いかない命令には従わない」などの自由をもぎ取る。

 だが代償として、華奈自身も魔人族領(匠の側)へ寝返る選択肢を失い意気消沈する。そこへ、メアリーがワイバーン調教中に行方不明になったという緊急書簡が届き、華奈は密偵を総動員して捜索を始める。


 一方、魔人族領を発った出雲匠とメアリーは、古代の魔法陣から工業国家『ツヴェルク帝国』へ到着。人間領のはずの国と魔人族の裏の繋がりを疑う。その夜、宿に潜んでいた国家情報局の黒装束に襲撃され匠は満身創痍となるが、メアリーの「魅了の魔眼」で逆転。襲撃が国家元首ヨハネの命令だと知る。

 翌朝、二人は確実な証拠を求め怪しい武器屋へ潜入し、魔人族用の武器が並ぶ密輸の現場を目撃する。しかし店を出た瞬間、数十人の黒装束に囲まれ、抵抗の隙もなく一気に拉致されてしまうのだった。


 裏路地で拘束された匠とメアリーは「ツヴェルク帝国・国家情報局」へ連行され、緊迫した尋問を受ける。メアリーの身元は確認されたものの、匠が持つ二振りの剣に盗難の疑いがかかる。しかし、その内の一振りは尋問官がフィルモア王国のウィラード団長のために打った剣だった。匠がウィラードの妻の得意料理「ミートグラタン」や彼の筋肉論を語ったことで疑いは晴れ、尋問官の正体が帝国の国家元首であり最高峰の鍛冶師でもあるヨハネだと判明する。


 ヨハネは匠が持つもう一振りの「故郷の剣(日本刀)」に目を奪われ、その驚異的な結晶構造と刃文に驚愕。二人を最先端素材研究所へと連行する。未知の素材「玉鋼」の存在を知ったヨハネは職人の血を滾らせ、昼食もそこそこに匠へ詳細を問い詰める。


 意気投合した二人は、日本の伝統技術「たたら吹き」の実証実験を開始。砂鉄の代わりに屑鉄を代用し、魔法に頼らず木炭の燃焼温度と風量だけで炭素を取り除く画期的な炉の稼働に挑む。拉致から始まった最悪の出会いは一転、炎と熱気の中で汗を流す二人の間に、言葉を超えた熱い「職人の絆」が芽生え始める。



※※※※※



【第59話 技術者魂に火がつく】


裏路地で捕らえられ、ずた袋を被せられて連行された匠とメアリー。緊迫した空気の中、尋問官からウィラード団長の剣の入手経路を激しく追及される。盗難を疑われる匠だったが、団長の妻の得意料理が「ミートグラタン」であること、そして団長が筋肉のためにそれをガツガツ食べていたという具体的な事実を言い当てたことで、見事に疑いを晴らす。


尋問官の正体は、ツヴェルク帝国の国家元首であり、最高峰の鍛冶師でもあるヨハネだった。誤解が解けたヨハネは、匠が持つもう一振りの「故郷の剣(日本刀)」に目を留める。その美しい刃文や未知の結晶構造に驚愕したヨハネは、二人を最高機密である最先端素材研究所へと連れて行く。


素材が「玉鋼」であることを知ったヨハネは技術者魂に火がつき、昼食もそこそこに、匠から日本の伝統技術「たたら吹き」のレクチャーを受ける。砂鉄の代わりに屑鉄を代用し、魔法に頼らず木炭の燃焼温度と風量だけで炭素を取り除くという未知の炉の実証実験が始まった。汗だくになりながら炉に向かう中、拉致されたはずの匠と国家元首ヨハネの間には、言葉を超えた熱い職人の絆が芽生え始める。



※※※※※



【第60話 あらすじ】


最先端素材研究所にて、匠とヨハネは「たたら製鉄」の炉の試行錯誤を繰り返していたが、来賓であるエルフの王・デゥエンディの対応のためヨハネが席を外す。約1ヶ月が経ち暇を持て余していたメアリーは、城内散策中にデゥエンディとすれ違い、その美貌と豊かな胸に目を付けられてしまう。


夕刻、メアリーと別れて宿に戻ろうとした匠は、ホテルの前に武装した不審な一団を目撃する。魔王レオンの「デゥエンディにメアリーを会わせるな」という警告を思い出し、急ぎ彼女の元へ引き返すも、一歩及ばずメアリーは馬車で拉致されてしまった。


匠はヨハネに事態を告げ、ツヴェルク帝国の特殊部隊と共にデゥエンディの滞在先へと突入する。その頃メアリーは、デゥエンディの「アンチスキル」で得意の『魅了』を無効化され、剥ぎ取り魔法により貞操の危機に瀕していた。


お楽しみを邪魔され激昂したデゥエンディが広範囲魔法を放とうとした刹那、衣服を抱えたメアリーが至近距離から頭突きを炸裂させる。さらに不意を突いて隠し札の『石化の魔眼』を放ち、デゥエンディの上半身を石化させる大金星を挙げた。最後は破れた下着を慌てて隠すハプニングに見舞われつつも、ツヴェルクでのドタバタ拉致事件は無事に一件落着を迎えるのだった。



※※※※※



【第61話 飛空艇】


エルフの王・デゥエンディが起こした騒動は、国家間の威信に関わるため秘密裏に処理される。あられもない姿にされたメアリーはヨハネに激怒して詰め寄るが、職人技の輝かしい金色の首飾りを贈られると、守銭奴な本領を発揮して瞬時に機嫌を直すのだった。


騒動が落ち着いたのも束の間、ヨハネの職人魂により、匠とメアリーは砂鉄の採取を目的として、両国の境界にある港町「バース」へ同行させられる。移動手段として案内されたのは、ツヴェルク帝国の最新技術の結晶である試作高速魔導飛空艇『烈風』。初めての飛空艇に怯えるメアリーを乗せ、烈風は大空へと飛び立つ。


しかし、穏やかな空の旅は突如現れた無数のワイバーンの襲撃によって一変する。飛空艇を迎撃・急加速させるヨハネだったが、激しい曲芸飛行の最中、シートベルトをしていなかったメアリーが開きっぱなしの扉から外へ放り出されてしまう。


絶体絶命の落下中、迫りくるワイバーンを前にメアリーは「石化の魔眼」を解放。「テイム!」と叫びながら放った玉虫色の光で見事にワイバーンを手懐け、その背に着地して飛空艇へと生還する。乗組員から大喝采を浴びて得意満面になるメアリーだったが、その様子を、アングィスの意志を宿したかつての遊び相手・ファストワイバーンの「ファル」が雲の隙間から静かに見つめていた。



※※※※※



【第62話 逢わない方が互いの為】


ショッピングモールで華奈との遭遇をギリギリで回避したメアリーは、匠を強引に連れてホテルへ逃げ帰る。華奈はメアリーを見失うも、彼女の不可解な逃走から、その隣に匠が一緒にいるのではないかと確信する。


避難先の高級ホテル新館で、メアリーはすぐ近くの会議室にフィルモア王国の使節団(ウィラード団長たち)がいることに気づく。鉢合わせを恐れるメアリーは、会議を終えて出てきた彼らから隠れるように匠を誘導し、さらに軽い『魅了チャーム』をかけて匠の思考を逸らす。一方の華奈は、ホテル内の「アンチ索敵結界」に阻まれ、わずか数メートルの高低差ですれ違いながらも二人の居場所を特定できなかった。


翌日、匠はヨハネや現地の作業員たちと早朝から順調に砂鉄採集をこなす。その際にも、朝の鍛錬をする華奈のすぐ前を匠の馬車が通り過ぎるという、すれ違いが続いていた。


そして午後、それぞれの用事を終えた両国の一行は飛行場へと向かい、飛空艇を出港させる。上昇速度に勝るツヴェルクの試作機『烈風』が、鈍重なフィルモアの飛空艇と空の上で並んだその瞬間、観測窓を覗いた匠と、デッキで警戒にあたっていた華奈の視線がまっすぐに交錯する。声も届かない空の上という残酷なシチュエーションで、二人は互いの存在を確認しながらも、ただ遠ざかっていくしかなかった。

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