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異世界でラーメン店『北の方』始めました  作者: 武 頼庵(藤谷 K介)
第2章 希望を繋ぐもの

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第48話 忘れてた!!



 旅は順調に過ぎていく。

 いや、マイヤいわく順調すぎるらしいけど、順調ならいい事なのだからと言いつつ、目的地までの旅はある程度の余裕を持ったまま続いている。


 旅の三日目からは、先行して偵察をしていたナルミも俺たちの行軍に同行するようになり、「偵察は?」と聞いてみたけど、「もう必要ないと思う」とクマの方を見ながら返された。


 初日に出会ったウチの番犬であるクマだが、いつもは俺の事が目に入る位置を一緒に歩いている。


 時折いなくなってしばらく帰ってこないことがあるのだけど、まぁ所謂『お花摘み』にでも行っているものだと思っていたのだが、ナルミなどがクマの方を見て毛を逆立てていることがあるので、何かしらはしているんじゃないかなとは思っていても、俺がクマの言葉を分かるわけでもないので、俺たちに害が無い事には放っておくことにした。


 そんな隊列と言っていいのか、そのまま何ごとも無く進み、次の日には目的地に着くという場所にまでたどり着く。


 たどり着く前の食事という事で、夜には少し豪勢にしたいなと思っていたのがいつの間にか声に出ていたようで、メンバー皆の気分が少しばかり浮きだっているようにも感じる。


「あ、そう言えば肉ってまだもつかな?」

「そうですねぇ。目的地について仕入れをするのであれば大丈夫だと思いますけど、どのくらい必要ですか?」

「そうだなぁ。塩焼きそば作るくらいは欲しいな」

「ん~。では少し足りないかもしれません」

「そっか。じゃぁ肉はがま――」

「わふぅ!!」

「え!?」

 材料を見ながらフユと相談していると、俺の横にいたクマが突然声を上げ、勢いよく走りだした。


「あ、クマ!! どこに行くんだ!?」

「わふぅ!!」

 走りながら振り向き、俺に向けて鳴き声を上げるクマ。


「何となくだけど、獲ってくるって言ったような気がするな」

「私もそう思います」

 二人で顔を見合わせて苦笑いする。まぁそんなはずがないと。



――ありました!!

 ありすぎました!! クマは帰ってくるなり、ドスンとものすごい音を響かせ、口にくわえているものを俺の前に落としたもんだからさすがにびっくりするよね。


「……ストロングバッファロー」

「まじで……?」

「わふぅ!!」

 音に驚いたマイヤとミラが駆けつけ、俺の前にある物体を見て驚いている。そして俺の前ではクマがどや顔をしつつむふぅ~っと鼻を鳴らす。


「え? なに?」

「あ、主、それをどこで?」

「ん? クマが今持ってきたんだよ」

「クマ……が?」

「Bランクなのに……」

 呆然とするマイヤとミラ。


 後で聞いた話だと、このストロングバッファローは単体でもBランクに指定されている魔獣で、単体でも数人のワンパーティでかからないと倒せないほど強いらしい。さらに単体でいることがまず無く、群れで行動しているので討伐する難易度はさらに上がるとのこと。群れでいるときの討伐推奨レベルはA以上になるとナルミが熱弁していた。


 ただそれを咥えて持ってきて、俺の前においた瞬間に尻尾をぶんぶんと振るクマの事を、さすがにただの『犬』と言っていいのかどうかと、マイヤたちが悩み始める原因になってしまったのは申し訳ない。


 何はともあれ、肉が手に入ったのでみんなで解体をして肉を切り分けるのだけど、まずは血抜きをしっかりとしないといけないので、アンドレに頼んで縄を括り付け、近くの木へとつるす。それもクマが手伝って縄を咥えて引いてくれるので、かなり早くできてしまう。


 クマの体の大きさが変化することについては、もう誰も何も言わなくなった。そういうもんだろうという事で納得したというか、俺のペットというか番犬という事にして、考えることを放棄したに近い。


 つるされて血抜きしたその後、使う部分と保存する部分に分けてから調理を始める。


 まずは持ってきた野菜芯の部分などをざく切りにして、葉の部分もざく切りに。今日は牛の脂があるのでそれでしっかりと炒めていく。


 牛の肉は薄くスライスして、後々しっかりと炒めるので軽めに火を通す。


 旅の最中の時間がある時に捏ねていた生地を伸ばして、細く麺状に切っていく。こういう時に製麺機があると便利なんだけど、そうも言ってられないあるもので作るという事も忘れてはいけないので、しっかりと作る。


「あれ? この麺……」

「お? 気が付いたか?」

 ナルミとフユが麺を見て俺の方を見つめる。


「普通の麺じゃないですよね?」

「そうだな。これはオコメの粉で作った麺だ」

「オコメの粉で……」

「あぁ。まぁ簡易版のビーフンといったところだな」

 麺を触ってからその素材に関しての違いが分かったのか、ナルミもフユも目を輝かせながらできた麺を見ていた。


「そういえばですけど……」

「ん?」

 麺を作り、フユがそれを整えていると、ナルミから声をかけられる。


「ご領主様にオコメって召し上がってもらったんですか?」

「え?」

「ですから、ノイアー様にオコメを召し上がっていただくと約束してましたよね?」

 そう問いかけられて、ちょっと前までの出来事を思い出す。


「……あ!? 忘れてた!!」

「……やっぱり」

「そうじゃないかと思ってました」

 はぁっとため息をつくフユとナルミ。


――ヤバイ!! どうする!?

 焦った所で今は旅先なのだからどうしようもない。しかしこの旅の準備の事しか頭に無くて、ノイアーさんに言われていたことをすっかり忘れてしまっていた。


「ま、まぁ、その……こうしてちゃんと食べ物になるのか試したかったんだよ。うん。ほら、ご領主様に下手なものを食べさせるわけにはいかないからさ」

「後付けですね」

「言い訳ですね」

「ぐぅ!! その通りだから何も言えねぇ……」

 フユとナルミからのツッコミに何も言い返すことができず困った顔をしていたようで、俺の表情を見た二人がくすくすと笑いだした。


 さて、そんな一幕もあったけど、切ったビーフンをお湯で茹で、火が通りすぎる前に出してから、先に炒めておいた野菜と牛肉を混ぜ合わせ、最後に『塩味のかえし』に少しだけジャペッパを混ぜたものを絡め合わせつつ再度炒めていくと、野菜が少ししなっとするので、そこで皿へと盛り付ける。


「良し!! 完成かな。簡易版塩味ビーフンだ」

 人数分とクマの分を作り、それぞれの前に置いて食事の準備ができた。早速挨拶をしてみんなで食べ始める。


「ん!? 麺の食感が違う!?」

「わりともっちりしてますね」

「ラーメンと違って細いから少し持ち上げづらいですね」

 女性陣からいろいろな意見が出るけど、男性陣は無言でもぐもぐと口を動かすだけで意見は出ない。


 しかし食べる速度で、気に行ったのかどうかがこの世界ではわかりやすいんじゃないかと思う。気に入ったものは食べるのが早く、あまり好きじゃない者は結構なくなるまでの時間が長い。


 今回は口に入って消えていく速度が結構早いので、割と気に入ってくれているようだ。


「オコメっていろいろと食べかたがあるんですね」

「そうだぞ。俺が生まれた場所ではオコメが主食でな。このオコメに合うようにいろいろと発達したんだよ」

「主食とは?」

「え?」

 オコメをいつも食べているという所ではなく、フユは『主食』という言葉に興味を持ったようだ。


「あぁなるほどな。主食という概念がこの世界には無いのか……。主食とは、主に食事の際に基本として食べているモノの事だ。俺はツバサの町しか知らないけど、ツバサの町では固パンか黒パンを食べて、それに合うおかずを食べているだろ?」

「そうですね」

「だからこの場合の主食とはパンという事だ」

「なるほど……。そう言われますと、確かに私たちはいつも基本的にはパンを食べつつ、一緒に何かを食べていますね」

「うん。俺が生まれた場所では、それがオコメだったという事さ」

 こういう話はあまりしないので、みんながしっかりと真剣に聞いてくれるのも嬉しい。特にフユに関してはなんというか、俺がこういう話をすることでますます食の事に関しての知識欲が上がっている気がする。


「それで、そのオコメの使い方などが発達したと?」

「そうだな。それだけじゃなく、そのオコメ自体も地域性や気候に合わせて発展・進化させていて、おいしいオコメを食べてたよ」

 頷きつつ俺が言ったことを考えるフユ。ほかの皆はというとオコメに対する偏見があったことで、今まで食べてみようと思ったこともないという話や、食べられるのならどうしてちゃんと作らないのかなど、いろいろな話が出ては消えていった。


 こういう話し合いって、意外なほどに大事なんだけど、自分に必要が無いとか、欲しい欲しくないというだけでも議論は無くなっていくので、その先の進化させるなんてことをまず思いつくことはない。


「なるほどな」

「どうしました?」

「あぁ、このオコメを、育てるっていう事をやったことが無いんだよな?」

「そうですね」

「ちょっとノイアーさんに相談しても良いかもしれないな」

「え? ノイアー様に? そこまでの話ですか?」

「今の所、主食としての小麦に関してはしっかりと流通できているけど、仮に全く取れなくなってしまった時の事を考えて、2種類の穀物を育てておくというのも、この先きっと大切になると思うんだ」

「そんなことまで……」

 話を聞いているフユはとても目をキラキラとさせて聞いてくれる。


「まずは話をしてみるよ」

「そうですね。まずはオコメの事を忘れていたことをしっかりと謝ってから……ですけどね?」

「あぁ~……。やっぱり駄目かな?」

「それこそ、信用度の問題では?」

「フユに言われると否定しづらいんだよな。でもその通りだ。まずは謝らないとな」

「はい。きっとノイアー様は怒ったりしませんよ」

「だといいけど……」


 二人でクスリと笑い、他のメンバーがまだオコメに関して話している中に混ざり、食後の楽しいひと時を過ごした。


 俺の隣にはお腹がいっぱいになったクマが、大きなあくびをして眠り始めるのだった。


読み頂いた皆さまに感謝を!!


忙しいのはわかるけど、大事なことを忘れちゃだめだぞ哲太……。


次回

第49話 到着

お楽しみに!!

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― 新着の感想 ―
旅が順調なようでよかったです♪ んで、いきなり凄く強い牛を狩ってきてくれちゃうクマ!! その強さはなんなんだ〜??ww でもおかげで美味しいお肉の、しかもビーフンが食べれました♪ あ、ノイアーさん…
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