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異世界でラーメン店『北の方』始めました  作者: 武 頼庵(藤谷 K介)
第2章 希望を繋ぐもの

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第43話 便利だな魔法!!

※少し会話文が多いので苦手な方はご注意を。



「これ次の人に……」

「はい!! ありがとうございます!!」

 明るい声が響く店内に向け、笑顔で手を振ってから離れていくお客さんを厨房のカウンター席の奥から見ている俺もまた、小さく頭を下げて気持ちを受け取る。


 それらがしっかりと次(・)の(・)人(・)へ使っているのかというのは、その時その場の人には関係ないのだ。


 ただいつかしっかりと使ってもらって、腹いっぱいになってほしいという、その優しい気持ち。


 でも、中には悪いことを考える奴もいて、俺の店がそういう名目で不当に金銭を巻き上げているなんて言ってくる奴もいるし、店の外でもそういった声を上げている奴らもいるのは知っている。


 それをしっかりと『やっている』なんて言葉だけで話しても、そいつらが納得するなんてことはないことはわかっているので、ラウルさんに頼んで『次の人へ』というメッセージを書いたボードと共に、箱を設置して、もらったお金はその時その場で箱の中へと集金した人が入れるようにした。


 少なからず、そのお金をうかうような人達には来てほしくはないと願っていても、そういう人達はやってくるもので――。



「あの……」

「はい?」

「本当にいいのでしょうか? お金なんて……」

「あ、大丈夫ですよぉ!! 皆さんが次の人のためにっておいていってくれるんですよ。その中から支払ってますから心配しないで、お腹いっぱい食べてください」

「……ありがたいです。ここ数日まともな……」

 今も店の隅に少し目隠しされた場所で、子供を抱えたままの女性が目の前のラーメンを見ながら涙を流している。


 そんな女性の背を優しくなでるフユ。


「さぁ、温かいうちに食べて下さい」

「必ず、このご恩は……」

 小さなどんぶりを持ってきて、スープと麺を分けてあげながら、その女性は静かに食べ始めた。


「おっと……。お客さんがいたのか。すみませんお邪魔しますね」

 裏口の方から声を掛けつつ入ってくるザイツさん。


「あれ? ザイツさん。どうしたんですか?」

「えぇっと、今、大丈夫ですか?」

 入ってきた人に気が付いた俺が声をかけると、頭を下げるザイツさん。少しばかり店の中を見て確認し、厨房の三人にも視線を向けると頷いたので、少しばかりその場を外す。


「どうしたんですか?」

「まずはですね、以前探してくれと頼まれていたものを見つけたので、ご報告とともに確認してもらおうかと思いましてね」

「探してくれ?」

「えぇ。タッケー……でしたっけ?」

「あぁ!! タッケー!!」

 何か足りないと思っていたものがあり、それを探そうと思っていたのだが、あいにくこの周辺にはないという事が分かったので、ザイツさんに依頼して探してもらっていた。


「こちらをどうぞ。確認してください」

「はい」

 裏口から離れて少し歩き、敷地の外に停まっていた馬車に近づく。

 ばさりと幌にかかっていた布をめくると、そこには青々とした棒のようなものと、枯れて茶色に変色している棒のようなものが乗せられていた。


 軽く飛び乗るようにして荷台に上がるザイツさんが、その2種類を引き、俺の前にもってきてくれた。


「どうでしょうかね? これがタッケーと呼ばれている植物なんですけど」

「拝見しますね。うん……。片方は枯れてしまっていますし、片方は少し成長しすぎているようですけど、確かに俺が探している植物ですね」

「そうですか!! 良かった!!」

「で?」

「え? で?」

「え? いや、ですからこれだけですか?」

「そうですけど何か?」

「あぁ~なるほど……」

 確かに俺がザイツさんに頼んだのは、タッケーという植物が近くにあるかどうかの確認だし、有ったならそれを取ってきてほしいとも言った。


――確かに言ったけど、そうじゃないんだよなぁ……。

 一応そのタッケーを持ってみたり、重さを感じてみたりはしてみる。


――まぁ、これはこれであれに使えるからいいか……。

 今使っているものはラウルさんに頼んで廃材を加工してもらったモノ。生前(昔)テレビで見たことがあるけど、竹を使っていたのを覚えている。


「まさか……お探しのはこれではない?」

「あ、いえ、確かにこれはこれなんですけど……。実はこれの子供というかですね、生えてきたばかりのやつが欲しいんですよ」

「あぁ!! そういう事ですか!! しかしそうするとですねちょっと難しいといいますか……」

「どういうことですか?」

「このタッケーはですね、ツバサの町周辺にはないことは御存じだと思うんですけど、ここから少し離れた場所に生息している植物なんですが、この雪が溶けないと生えてこないという事でして。こうして青いままのやつも、有るにはあるという事だったんですけど、なかなか手に入らないという事なんですよ」

「そうでしたか」

「しかもこれの生えてきたばかりのやつという事ですよね?」

「そうですね」

「それはもう、現地に行ってみてもらうしかないかもしれないですね……。この植物は成長が早いという事なので」

「そうなりますよね……。ちょっと考えてみます」

「そうですね。ではタッケーの件はこのくらいで」

 そういうと、ザイツさんは荷台のさらに奥の方へと進んでいき、奥から少し大きな麻袋をもって来た。


「よっと……」

「これは?」

「オコメですね」

「え? オコメですか? 俺は頼んでませんけど……」

「あ、いえ、こちらはノイアー様からでして……」

「なるほど……」

 顔を見ると、少し苦笑いしている様子を見せるザイツさん。それを見て、俺もザイツさんの苦労を少しだけ労わるように頭を下げた。


「見せてもらっても?」

「どうぞ」

 麻袋を固く締めている紐を外し、中を確認する。

 中に手を入れてみるとつるっとした感触ではなく、植物を触ったような感じがしたので、少しだけ手に取って出してみる。


「あぁ、なるほど脱穀前なのか……」

「そうですね。このまま家畜などに出すのでここから何か手を加えるという事は、この国ではしてないかと思います」

「うぅ~ん……」

 中を何度か確認すると、その一粒だけを手に取り、外側についたもみ殻などを根気よく剥いていく。


――少し細長いか……。インディカ米よりも、少しだけ短くて丸みがあるからジャバニカ米に近い感じがするな。となると、粘りが強くはあるという事か……。しかし、実際に食べてみない事にはわからないんだよなぁ……。


 という事を考えていたら、そのまま口の中へとポイっと入れてしまう。


「あ!!」

「ほぇ?」

「あ、いえ……。まさか口に入れるとは……」

「あぁ、すみませんダメでしたか?」

「いやまぁ、こちらはテッタさんへという事で持ってきたものですから、どうしようとテッタさんの自由なんですけど。ただ、何の抵抗もなく口に入れるとは思ってなかったものですから……」

「なおの事すみません……」

 驚いた顔をしているザイツさんに頭を下げて謝る。


――ん~……。ちょっと青臭さがあるな。乾燥をしかりとしてないのかもしれないな。という事は、乾燥をすればもう少し粒が締まるかも? なかなか面白いな。


「少しご相談があるのですが……」

「何でしょうか?」

「これって、乾燥させることってできますか?」

「まぁ、魔法を使えばできると思いますけど……」

「便利だな魔法!! と、どのくらいあるんでしょうか?」

「この袋にして10袋は有りますね」

「では全部お願いしていいですか? お金はお支払いしますので」

「え? いえ、乾燥させるだけなら、お店の皆さんでもできるのでは? 火魔法や風魔法などが使えるのでしたら、すぐにできるでしょうから」

「おぉ!! なるほど!!」

「では、オコメはこのままおいていきますね」

「ありがとうございます」

 そのまま奥の方へ袋を取に行き、下ろす準備をするみたいなので、俺はお店の中へと戻り、警護をしているメンバーの二人を呼んで、ザイツさんの手伝いをしてもらう事にする。


 荷台から降ろしたものを倉庫の方へと運んでもらい、そのまま床へと置こうとしたのでストップをかけ、置く予定の所へ外に置いてある角材――店の改装時に使った廃材――を持ってきて置き、その上に板になっている材料を隙間が空くようにして乗せ、その上に袋を置いていく。


 まぁ、なぜそんなことをするのかとザイツさんなどに聞かれたけど、湿気や熱気などがこもるので、喚起のためにしていると答えると「勉強になる」と言いながら感心された。


 この世界ではそういう概念が無いみたいで俺も驚く。できれば麻袋のような目の粗めで大き目なものではない紙製や、ナイロンなどの袋状の物で保存したいところだけど、あいにくこの世界では、ナイロンなどまずある訳無いし、紙はあるにはあるがべらぼうに高価なものしかない。まず庶民が使うなんてことはできず、貴族の方々かお金持ちの方が使うモノしか出まわらない。


俺的には当たり前にやっていた事なので、そんなに感心されるようなことをしているわけではないけど、こういう概念の積み重ねが今後の生活を豊かにしていくかもしれないと思うと、なんだか不思議な感じがしてくる。


倉庫へと運び終えて、手伝ってくれた二人とザイツさんに礼をして、警護の二人はお店に戻っていったが、俺はザイツさんと共に先ほどの馬車へと戻る。


「では私はこのへんで……」

「あ、ちょっと待ってください」

「なんです?」

「タッケーも置いていってください」

「え? でも使えないのですよね?」

「まぁ、料理としてはですけどね。でも他の事に使うので」

「はぁ、わかりました。では」

「それと」

「まだなにか?」

「このタッケーが採れる場所って、この辺りからどのくらい時間がかかるんですかね?」

「う~ん。馬車ですと6~7日……といったところですかね」

「6~7日ですか……」

「?」

 首をかしげるザイツさん。慌ててザイツさんにお礼を言って、ザイツさんは馬車に乗り込み、去っていった。


「6~7日か。行ってみるのも……ありかな?」

 遠ざかる馬車を見つめながら、誰にも聞かれるでもない独り言が俺から漏れた。


お読み頂いた皆さまに感謝を!!


どうするテッタ!! 行く? 行かない?


次回 

第44話 決心


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― 新着の感想 ―
タッケーは少し遠目の所にあるんですね〜、でも一度に大量に採れるならそんなにしょっちゅう行かなくてもいいし、行ってみる価値はあるのかな? オコメは無事に食べれるようになるのかな〜?♪
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