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異世界でラーメン店『北の方』始めました  作者: 武 頼庵(藤谷 K介)
第2章 希望を繋ぐもの

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第41話 三角の



 呪いの家こと、旧代官屋敷はというと――。


 フユたちにその『イワク』を取り除いてもらった日の午後には、ノイアーさんと衛兵並びにクラーメン領騎士隊の皆さんが家へと足を運び、しっかりと中や敷地内を確認。


 次の日からは俺たちもまたお店の営業があるため、次の日の仕込みなどをしないといけないので最後まではいることができなかったが、ノイアーさんとザイツさんお店までお越しくださって、新たな店としての体裁を整えてくださることになった。


 当初は『下賜する』と言っていたノイアーさんだったが、あまりにも大きすぎるもらいものになってしまうので、俺の方からそれは辞退。


 しっかりと調べた結果、今はすでに『祟り』や『呪い』などの影響も、現象も起きていないという事で、ノイアーさんというか、ご領主様からの指名依頼という形式をとり、冒険者ギルドにも登録している俺に個人依頼をした結果、『解決済み』の証明印をいただいたことで、正式に俺の冒険者としての実績として組み込まれた上に、マイヤやナルミもいたという事実から、この2人の実績にも含まれることになった。


 それもあって、ノイアーさんからは『売却する』という意思をザイツさんが受け、俺に売ることで合意。


 資産的には5000万リピ程もする物件を、なんとまぁはかくも破格、激安価格の50万リピで購入することが正式に決まった。


 それでもノイアーさんはしぶしぶといった感じではあったのだけど、これから必要になってくるものをノイアーさんのご(・)厚(・)意(・)により揃えていただくことで、最終的な合意となった。


 それから先はラウルさんに頼むという事なので、お店に来て『油かす塩ラーメンの大盛り』を頬張っていたラウルさんに注文。


 いつもの事だけど、二つ返事で了承をもらい、実は、この日の午後からすでに解体・修繕・新築工事に入ってもらっている。


 ここまでは、順調すぎるほど順調なのだけど、もう一つ今の北の方ではやらないといけないことがあるので、そちらも同時に進行していく。


「アライさんこれはざく切りで!!」

「はい!!」

 手渡された野菜をナイフではなく包丁――実はバルさんに注文しておいたもの――を使いザクザク切っていくアライさん。


 最初はアライさんだけど、何を渡してもまず水洗いしようとするので、慌ててしないものとするものを教えていく作業が始まりだった。


 なんでも種族の特性というもので、『洗わないと気が済まない』らしい。


 その習性の良さというのもあるにはある。そう、清潔に保てるという点だ。手を洗う、まな板を洗う、野菜を洗う、樽などを洗う。いろいろと洗う事で清潔になるというのは食品を扱う店的には心強い。


 ただ、一度洗ってあるものや、フユに頼んで綺(・)麗(・)にしてもらったモノまで、アライさんはざぶざぶと洗ってしまうので、二度手間になってしまう事もあり、そのあたりはしっかりと作業工程として教えることになった。


 担当していたのはフユとリーク達三兄弟だけど、兄弟内で教えるという事はしてきたけど、他人(ひと)に教えるという事が無かったみたいで、当初はぎこちないものだった。

 まぁ、アライさんは年上でもあるので、かなり気を使っていたようだ。

 俺たちの教えを心配そうに見ているラスとカルに、俺は『大丈夫だぞ』と声をかけて安心させながらも、指導は続いた。




♢♢♢♢♢



「ふぅ~……。今日も大入りだったなぁ」

「そうですね!! いつもと同じで皆さん良く食べてくださいますし」

 ありがたいことに、俺の店の売り上げはかなり好調をキープしている。塩ラーメンは一杯当たり550リピと少しばかり高いのだが、塩という貴重なものを使用しているので、この辺は仕方がない。


 しかし、野菜は孤児院産のものを使用しているし、他の野菜にしても市場で多くの領を仕入れるから単価は割と安く済むし、スープのもとになるものも肉屋との交渉で上手く仕入れを抑えることに成功している。


 これから先の流通次第では値段を上下させるしかないかもしれないが、できる限り値段は据え置きにしたいとも思っている。



 そんな考えをしつつも、俺と店のスタッフたちによる、次の費用の仕込みと、夕飯用の賄作りに入っていた。


 本日の賄は、先日作った簡易お好み焼きと、シュウマイを作る時に余った生地を使って一品作る。


 まずはキャベンをみじん切りにして、オーク肉のひき肉も用意する。白髪ねぎを作る時に余る緑の部分もみじん切りにして、ボールの中でそれらをこね始めると、粘りが出てくるので、そこで塩を少しふり、さらに混ぜていく。


 この世界のデカい生姜のかけらを手に取って、皮をむき、みじん切りにしてボールの中へと投入し、良く練り合わせていく。


「こんなもんかな?」

「えっと……シュウマイにするんですか?」

 俺の手元を覗き込みながら、リーク達が聞いてくるので、その問いかけに首を振る。


「いや、これはシュウマイではなくて、ワンタンにする」

「わんたん……?」

 不思議そうな顔をする兄弟たちに苦笑いを返し、生地を伸ばしていくとその生地を四角くカットする。


 人数分は結構時間がかかると思っていたら、リークとルークも俺と同じように作業を始めたので、俺はリザを呼び、カットされた生地に先ほどまで混ぜていた餡を載せて包むように教えていく。


 この時にシュウマイの様に丸くするのではなく、端をもって三角形になるようにして畳みこみ、皮の端を濡らしてくっつける。


「うん。いい感じだ」

 声をかけるとリザがにこりと微笑むので、おれたちはそのまま作業を続ける。


 俺たちの作業の裏側では、昨日簡易お好み焼きを作ったメンバーが、懸命に生地を丸くなるようにしながらフライパンで焼いていた。


 その中に、アライさんの姿もある。

 この簡易お好み焼きは、アライさんのために作っているといってもいいので、メインはアライさんとなって焼いてもらっている。


 出来上がったワンタンを、今度はあんかけ用に作っていた野菜スープと一緒に煮込んでいく。


 シッカリと火を通すことで、ワンタンの皮が透き通ってきて、中身も確認しやすくなってくるので、その辺を見つつ、後ろの作業も確認していく。


 お好み焼きが人数分出来上がったころには、ワンタンも良い感じで浮いてきているので、そろそろ火をとろ火まで落とし、メンバーを食堂のテーブルに座るように促しつつ、みんなにいきわたるようにワンタンを椀に入れていく。


「さて、今日も一日お疲れ様!!」

「お疲れ様です!!」

 食堂でみんなの声が響く。


「いただこうか」

「はい!! いただきます!!」

 全員がそろって夕飯と相成ったわけだが、そこで俺は皆に切り出した。


「食べながらで良いから聞いてくれ。今日、正式に昨日見てきた物件が俺の物になった。そこで、新たにそちらを店舗兼住居にしようと思っている」

「店舗というと? そこでもラーメンを?」

 フユが俺の言葉に合いの手を入れ、質問してくれる。


「いや、そちらでは簡易版のお好み焼きをメインにしようと思っている。それとこのワンタンだな」

「なるほど……」

 マイヤが小さな声で返事をし、ほかの皆は頷いてくれた。


「ただ、今まではこっちの店でシュウマイを出していたけど、これからは新しい店の方でシュウマイを売ろうと思う」

「「「え!?」」」

 俺の言葉に三兄弟が驚く。


「今後は、アライさん」

「え? は、はい!!」

 急に名前を呼ばれて驚くアライさん。


「アライさんがメインとなって、そのお店を回してください。店員さんには孤児院の子供達か、アライさんの様にこの町に来るしかなかった人達を雇いたいと思ってます」

「そ、そんな!! え、わ、私なんてまだここに来たばかりですし!!」

「そんなことは関係ないですよ。俺がアライさんを信じた。ただそれだけですから、気楽にやってください。そうすれば子供達とも一緒に居られるでしょう?」

「あ……」

 近くにいた子供二人をぎゅっと抱きしめるアライさん。


 その様子を見てこくりと頷き、マイヤたちの方へと視線を向ける。


「マイヤたちは、これからは新しい店の方のも任せることになる」

「わかりました。しかしどうやって振り分けましょうか?」

「その辺は君たちに任せるけど、もしかしたら人手的に足りないときが出てくるかもしれない。その時は冒険者ギルドにまた依頼を出すことにするよ」

「ふむ。そうなると住み込みで……ということになるのでしょうか?」

「そうだね。新しい店舗は結構広くてね。そっちの中を少し改築して、お店の従業員が住み込み出来るようにする予定なんだよ」

「そこからこちらにも通うと」

「そうなるね」

 俺の話にマイヤを中心にして警備組メンバーが集まり、話を始めた。


「フユも、新しいお店の方に――」

「いえ。私はこちらに残ります」

「え? いや、みんなそっちに行くわけだし、その方がよくないか?」

 ぷくっとホホを膨らませるフユ。


「何を言っておられるんですか!! テッタさんが一人でこちらに残るなんて警備の上でも駄目です!! 私も残ります!!」

「いやいやいや!!」

 ちょっとばかり押し問答が続くが、マイヤがパーティの一人をこちらに残すという事で、その話も一応の決着がついた。


 そうして話が終わり、賄も皆が食べてばらばらに散っていくと、俺は一人テーブルの上にあの見つけたものを出した。


「あれ?」

「ん?」

 俺の手の上に乗ったものをアライさんが見て、ラスとカルもその声に引き寄せられて俺の方へと寄ってくる。


「それって、オコメですよね?」

「え? 知ってるのか!?」

「えっと……」

 アライさんの言葉に気が付くとアライさんの方をつかんで揺らしていた。


「それって豚さんとか、牛さんとかの餌だよ?」

「は?」

 ラスとカルが「なんだぁ~」と残念そうにしながら興味が失せたのか、おれたちの所から離れていく。


「家畜の……えさ?」

「そ、そうですね……」


 愕然する俺の手を肩から外しながら、アライさんは申し訳なさそうに俺のことばに返事を返してくれた。


お読み頂いた皆さまに感謝を!!


新たな店舗購入w



第42話 前払い


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ラーメン店『北の方』 設定・登場人物集
― 新着の感想 ―
大きな家が格安で手に入って良かったですね。 種族の特性(笑) アライ母さんの手を動かす必死なお姿を想像して、すごくほのぼのしてしまいました。 そして三角の新たなメニュー、私もこれは大好きです! 例のも…
新しい店舗を格安で購入!! そこはお好み焼き屋さんにするんですね〜♪そしてアライさんにお店を任す! あっ、前に見つかったお米!! えっ!家畜のエサ!!? もしかして、ごはんとして炊く前の段階しか知ら…
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