第40話 何とかなりそうです
お偉いさん達の目の前にある皿はすでに空になっているのだが、誰一人として話をすることなく、静かな時間だけが過ぎていく。
「さて……」
「そうですなぁ」
「そろそろ余韻に浸るのもしまいじゃな……」
まずはノイアーさんが大きく息を吐きながら言葉を発すると、それに続いて二人もまたようやく再起動し始めたようだ。
「さて、改めてだがテッタさん。コレをどう使うつもりなのかな?」
「詳しくお聞きしましょう」
ノイヤーさんとザイツさんが俺の方へと真剣に眼差しを向ける。
「はい。しかし思い付きでしかないといいますか、コレの事ではないのですけど、前から少しだけ考えていたことがあるんですよ。しかし、今の自分ではいろいろと回らない部分があるので、後回しにしようと思ったのですけど……」
スッと俺の視線がアライさん達親子の方へと向くと、2人も俺の視線を追うように顔を向ける。
「ふむ。簡単な話、テッタさんが新たな店を出したい――という事で合っているかい?」
「そうなんですけど……そうじゃないんですよ」
「どういう事でしょう?」
ノイアーさんが訪ねてくる問いに、俺は少しだけ考えて返事をすると、ノイアーさんと同じことを考えていたザイツさんが改めて問いかけてくる。
「お店は俺が出そうと思ってはいますが、それを俺が運営するんじゃなくて、別の人にしてもらいたいなと……」
「なるほど……」
「要するに、お店のオーナーになるという事ですかね?」
返事を返すと頷く2人。ザイツさんの問い返しに俺がこくりと頷いた。
「で、そこでこの親子を雇いたい。そういう事かい?」
「まぁ、簡単に言うとそうなんですけど……」
「なにかあるのかい?」
少しだけ俺も考える。
「仮にですが、仮にですよ? もし、これからもアライさんのような方が俺の店に来るようなことがあるならば……この町に来るようなことがあるなら、俺はそれを手助けしたいなと思ってしまったんですよね」
「あぁ~……」
「なるほど……」
俺の話を聞いたノイアーさんは渋い顔をし、ザイツさんは国利と頷いているが、ラウルさんはずっと黙ったまま腕を組んでいる。
「ザイツ」
「はい」
少しだけ考えたノイアーさんが、視線をザイツに向ける。
「空いている店はあるか?」
「そうですねぇ……。できれば『北の方』から近い場所でという事ですよね?」
「わかってるじゃないか」
にこりと微笑むノイヤーさん。
「無いことはないとだけ……」
「ん? どういうことだ?」
「そこは人通りも良い立地なのですけど、とても古い家が建っているのですよ。お店を出すとしても住むとしても十分な大きさがあるんじゃないですかね」
「あぁ~……もしかして、アレか?」
「はい……」
二人がはぁ~っとため息をついて頭を抱えたのを見て、良くわからないという表情をしたのだろう、俺にその家の事を説明してくれた。
その家は、ノイアーさんが幼いころから空いてはいたそうだ。
何度か新しく建て替えをしようとしたのだけど、その度に病気になる人が出たり、ケガをしてしまう人が出てしまったりと、まったく工事が進まなくなることが多々あり、その家はいつしか『祟られている』という噂が立つようになった。
その噂が立った背景も、その家がクラーメン領の代官屋敷として使われていたという歴史があり、数代前の領主様の時代に横領と背任の罪によって、その代官一家は取り潰しとなり、一家そろって追放されたうえ、その追放途中で魔物なのかモンスターなのかわからないが襲撃を受けてお亡くなりになったという経緯があるからこそだろう。
今でもご領主様一家を恨んでいて、あの家が心残りになってしまったが故に、祟りとしてずっとあの家にいる。
そんな噂の元になった。
「まぁ、そういういきさつがあって、もともと別の場所にクラーメン領主館は有ったんだけど、この町に改めて作り、直接の統治をわれらがするために移り住んでいるという訳さ」
「なるほど?」
ノイアーさんの話を聞いてとある考えが浮かんでいる。
「えっと……その祟り? 呪い? をどうにかすればそこに住めるんですかね?」
「住めるというか、どうにかできるのであれば、誰にせよその人に下賜してもいいくらいだよ」
「なら……どうにかなるかもしれませんよ?」
「「え!?」」
俺はフユの方へと視線を向けると、フユも俺が思っていることを悟ったのかこくりと頷いた。
♢♢♢♢♢
数日後――。
お店の休業日に合わせて、俺とフユ、そして護衛代わりのマイヤとナルミは、その噂の家へと赴いていた。
「ここがそうだよな?」
「はい。あ、ザイツ様がお待ちになられているようですよ」
家の前に立って見上げていると、中からザイツさんが現れてこちらに近づいてきていた。
「ようこそ皆さん」
「いえいえ。ザイツさんの方こそ、御足労ありがとうございます」
「私はコレが仕事でもありますからお気になさらず。早速ですが中を見てみますか?」
「よろしくお願いします」
家という話を聞いていたので、俺が考えていたのは現在の日本でいう2階建ての一軒家のような大きさなのかと思っていたけど、中へ入ると、中庭のようなものがあり、部屋の数も多くある。俺のイメージ的には老舗の料亭的に感じた。
「――という事で、一通り見てもらったのですけどどうでしょうか?」
ある程度見て回り、その中でも応接間だった場所だと思われるところに腰を下ろして、一息ついた。
「フユ。どうだ?」
「そうですね……」
声をかけると、目を閉じて集中するフユ。
「……。はい。何とかなりそうです」
「そうか。ならもうやっちゃってくれ」
「わかりました。ではマイヤさんナルミさん良いですか?」
声をかけられた二人がこくりと頷き、フユが立ち上がり歩き始めると、2人もフユの事を守るように前後について歩き出した。
「あの……」
「え? あぁ、大丈夫ですよ」
フユたちが歩いていく姿を見送りながら、ザイツさんが不安げな表情をするので、俺もこくりと頷いて返事をかえした。
しばらくするとフユたちが戻ってきて、俺の傍までくると、スッと耳元へ口を寄せる。
「上手くいきました」
「そうか。ありがとう」
ぽふっとフユの頭に手を乗せると、次第にあわあわとし出すフユ。
「さて、どうやら上手くいったみたいですよ」
「え!? もうですか!?」
フユのことを茶化している2人と、それにさらにアワアワ慌てるフユの様子を見て微笑みつつ、ザイツさんに結果を伝えると、ザイツさんもかなり驚いて一通り確認してきますと言い残し、部屋から出ていってしまった。
「どうだったんだ? やっぱり祟りが?」
「いえ。祟りというか、この家に住んでいた人達ではなく、逆に住んでいた人たちに向けての呪いといいますか……」
「あぁ……なるほどな」
まぁ、いろいろとやらかしていた家族だったようなので、恨みつらみは一つじゃなく買っていることは容易に想像できる。
「それと、こんなものがありました」
「ん? 鍵?」
「はい。たぶん倉庫か何かのカギだと思うんですけど……」
スッと俺に手渡された鍵を見ていると、ザイツさんが戻ってきたようで、俺の手にあるカギを見て驚く。
「あ、そのカギってもしかして?」
「はい。フユが見つけたそうです」
「たぶんこの家の倉庫のカギだと思うんです。探していたんですけど見つけられなくて」
早速その倉庫なるものがある場所へと行くことになり後をついていくと、外に出て少し離れたところに確かに倉庫と思われる建物があった。
フユから渡された鍵をザイツさんにわたし、鍵を開けてもらいドアを開ける。
中にはいろいろなものが積まれていたが、長年入ることができなかったのですごくカビの匂いやら、ものが腐った匂いやらが凄く充満していた。
その中でとあるものを見つける。
「これは……」
茶色くなっていたり、小さくなって黒ずんでいたりと、保存状態は悪いものが大半を占める中、それは小さな袋の中にわずかに残っていた。
「まさか……米……なのか?」
中身を見ながら、少しの間その場から動けないほどの衝撃を受けていた。
お読みいただいた皆様に感謝を!!
とうとう見つけたよ!!
次回
第41話 三角の
お楽しみに!!




