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異世界でラーメン店『北の方』始めました  作者: 武 頼庵(藤谷 K介)
第1章 遥か先

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第4話 テンプレにならないテンプレ



 目の前で揺れる尻尾を見ながら、先ほどの草原帯を抜け、木々がさわさわと揺れる林を避け、土を固めただけの道路というか街道をひたすらに歩く。


 体感で約2時間――この世界基準でどのように表現しているかわからないので2時間とする――ほど経つ頃、遠くにぼんやりとだが建物らしき物体があるのが俺にも確認出来てきた。

 

 猫耳さん――いや、心の中でそう呼んではいたけど、さすがにそろそろしっかりと呼ばないといけないかなと思い、2人で楽しそうに話している時に呼んでみる。


「ナツ」

『え? 呼んだ?』

 2人が立ち止まり、呼ばれたと思った自分に指を指しながら首を少しだけかしげる。


 ちょっとした仕草だったけど、少しばかりかわいいなと心の中で思ってしまった。


「あれって町か?」

『そうだよぉ~』

 身振り手振りで家の形を作り、その先を指さすとハルが返事を返してくれる――くれているんだと思いたい。


 どこかのテレビ番組じゃないけど、第1異世界人との遭遇は案外うまくいったというか、襲われそうになっていたおかげだと思うと、あのイノシシ野郎には少しだけ感謝しないといけないかも。


 何も知らない、いや現地の言葉すら話せない俺のことを、疑ってかかっても全く不思議じゃないし、それこそその場に放置していても、2人にとっては全く問題はなかったはずだ。


 それなのにこうして俺と同じ速度で歩いてくれているし、ちらっと後ろを見ながら何度も確認しながら歩いてくれている。


――うん。いい子たちに出会えてよかった。

 俺の運もなかなかいいものを持っているのかもしれない。


――そもそも、あのパリピ様がしっかり現地に送ってくれれば、最初からこんな事にはなってないんだけどな。



『パリピじゃありません!! パリュアですぅ!! でも、ごめんなさぁ~い』

 なんとなくだけど、空の上からそんな声が聞こえた気がした。




♢♢♢♢♢



「おぉ!! こ、これが異世界の町!!」

 門を通り抜けてすぐにその街並みに感動して大きな声で叫ぶ。


 自分が予想していたのは、木造の家々が立ち並ぶもの、江戸時代の日本に近いかな? という感じだったのだが、ほとんどの家は確かに木造だけど、石をふんだんに使っていて、ガラス窓をはめている家は少ないようだけど、しっかりとした造りで、どちらかといえば中世の欧州に近い感じ。


『ちょっと恥ずかしいからやめて!!』

「え? あ、いったぁ!!」

 町の入り口で入門審査を受けていた二人が俺の方へと掛けてきて、ナツが俺の背中をたたく。


『なに? 何をそんなに興奮してるのよ?』

「え? なに? えぇ~っと……」

 身振りで説明するのは難しい。だから苦笑いをしてごまかした。


『まったく!! まぁいいわ。とりあえず行きましょう』

『そうだねぇ。テッタ様の身分証作らないとだねぇ』

『はぁ……どう報告すればいいのかしら。ハルは楽しそうね』

 先ほど急に叫びだした俺を見ながらハルはニコニコとずっと笑顔を見せている。


『そりゃ? だって不思議な人じゃない? 私たちを見ても驚いただけでぜんぜん気にしてるそぶりもないしぃ、魔法なんて初級を見ただけで驚いて、こんな小さな町で興奮して叫んでるなんてさぁ』

『……まぁ、悪い人じゃないのはなんとなくわかるよ』

 ふぅ~っとため息交じりに頷く。


『さて、まずはギルドだ。ギルマスに相談してみよう。何かわかるかもしれないからね』

『はぁ~い』

 俺の方をポンと人たたきすると、ナツが先を指さしながら歩いて先を行く。その後を尻尾を振りながらハルが付いていった。


「お? 移動か? どこに連れていかれるのやら……」

 先ほどまでの興奮と反比例するかのように、不安が急上昇していく。しかし二人に助けられた身としては行くというのならば否はない。


「さぁ……鬼が出るか蛇がでるか……」

 再び揺れる尻尾を見ながら二人の後をついていく。



 進んでいく道中も俺はあたりをきょろきょろと見回している。完全にお上りさんになった気分だけど、見ているだけで楽しい。


 町の中には俺と同じような人もいれば、前を歩く二人のようにケモミミにけもっぽ(けもしっぽ)を持っている人もいる。それもクマやウサギ、ネズミのような耳や尻尾を持っているのだから、それが目に入る度に心の中で「うあぁ!!」と声を上げてしまう。


 ただし、その人たちはどこか『見られないよう』にしているような感じがする。背中を丸めて俯き加減である。


――何かあるのか?

 どのケモミミさんもそんな感じで歩いている。


 歩き続けてしばらく、石造りで大きな建物の入り口付近になって二人がぴたりと立ち止まる。そうして大きく深呼吸して入り口のドアを開けて入っていく。


 二人に続いて俺も中へと足を進める。


『お? ナツじゃねぇか』

『今日は早いんじゃね? 子猫ちゃん』

『帰ってきたらにゃぁ~って鳴かないと聞こえないぜ?』

『ぎゃはははは!!』

 中にいた数人の男どもが、2人の姿を見るとすぐに声を上げる。


 二人の表情は俺にはわからないけど、これって絶対に男どもが何かを言っているんだと理解できた。だって降ったりの尻尾がボフンと膨らんでいるし、先ほどまでリズミカルに揺れていたのに、今は全く動いていない。


 そんな男もの声には全く反応することなく、ずんずんと進んでいき、カウンターの先にいたお姉さんに声をかけると、俺の方を指さしたり、背負っていた袋の中を見せたりし始める。


『おいおい聞いてるのかナツよぉ~』

 完全に無視されていた男衆の一人が、片手に飲み物だろう木で作られたジョッキのようなものを持ちながら近づいてきた。


 その気配にいち早く気が付いたハルがスッとナツの後ろに移動する。


『おうおういぬっころは忠犬だなぁ。それで守ってやってるつもりか?』

『ナツは守る』

 手を広げてナツをかばうハル。


『はん!! いつまで持つかな……と』

 男が空いている手を振りかざす動作をした瞬間、俺はその男の前へと進み出ていた。


ばきぃ!!

ゴロゴロ!!

どかん!!


『あっ!?』

『え!?』

 大きな音をたててカウンターの下にぶち当たる俺。


『な!? じゃ、じゃますんじゃねぇ!!』

「いちちち……」

 そのまま殴られた頬をさするおれ。


『ちょっと何するのよ!!』

『知らねぇよ。そいつが勝手に前に出てきたんだろ?』

『あんた殴ったじゃない!!』

『偶然だ。俺は止めるつもりだったんだぜ? それを目の前に出てきたんだからそいつがわりぃだろ?』

 にやにやと微笑む男。


『あんたねぇ!!』

『お? やる気になったか?』

『何の騒ぎだ!!』

 俺の様子を見ていたナツも、ハルの横に並び男に向かって威嚇する。二人とも3人ともに腰の物に手をかけている。


 と、そこへ建物の上階から降りてきた男性の声で3人の動きが止まる。


『ま、マスター……』

『ちっ……』


『お前たち、()()を抜いたら、分ってるんだろうな?』

『でも、こいつが……』

 男性の言葉に反応したナツが男を指さす。


『はぁ~。またお前さんか。昼間から酒ばかり飲んでまったく仕事もしないで、何をやってるんだか……』

『けっ。しっかり躾とけよな』

 腰に手をかけていた男は、スッと手を離すと先ほど座っていた方へと戻っていった。


『さて……。ナツよく我慢したな。で? ソイツが報告の?』

『……しっかり頼みますよマスター。そうです』

『ふむ……じゃぁ上で話を聞こうか』

『はい』

 ハルに体を支えられて起こされつつ、2人の話を聞いていた。相変わらず何を言っているのかわからないけど、なんとなく偉そうな人が呼んでいるというのを理解する。この辺はさすが空気が読める元日本人って気がする。


――まぁ、正直言うと俺が殴られる前に出てきてほしかったんだけどな……

 殴られて痛むホホをさすりながら、ハルに連れられて建物の2階へと続く階段を上る。


 一足先に歩いて行った男性が部屋の前で待っていて、俺たちが来るとすぐにドアを開く。


『入ってくれ』

『はい』

『はぁ~い』

 促されて中へと入っていく。


『あ、君はこれを飲んでくれ』

「へ?」

 手渡された小瓶を見ると、日本ではあまり見かけたことのないような色をした液体が入っている。


 男性はそれを飲む仕草を俺に見せてきた。 


――えぇ? これを飲めってか?

 ナツもハルも俺の方を見てコクコク頷いているので、仕方なく栓を抜き、それを口に含んだ。




「うえぇ~~」


そして思いっきり吐き出す。


「まっず……もう1本!! ってなるかボケ!!」


 この世界でポーションと呼ばれるものを始めて口にした瞬間。あまりのまずさに吐き出してしまったのだった。


お読みいただいた皆様に感謝を!!


 テンプレだと返り討ち。ですがこの物語の主人公はあくまでも元普通の日本人ですから(;^ω^)

 反応できずに殴られちゃいますよ。

 さてここからどのように進めるか……。


次回

第5話 始まりの町

お楽しみに!!


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― 新着の感想 ―
ここまで読みました。 お肉、なんだか食べたくなってきました……いつラーメンが出てくるのかドキドキです(´ω`*) テッタさんはいいひとですね。頑張ってほしいです! 庵さん、ありがとうございました。
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