第38話 新たなキキ
厨房には手の空いていたメンバーが集まっている。
先ほどまでいたフユ、最近何かと一緒にいることが多いマイヤ、怒ると怖いナルミと親子のためにヒーラーのアノンも呼んでもらった。
俺の指示のもと、アノンはまずケガをしているかどうかを確認してもらい、その間に三兄弟には保存庫に言って野菜を持ってきてもらう。
「さてっと……これを使ってみるか」
「それは?」
調理台の下に袋をかぶせておいておいたものを持ち上げ、これを使う時のために開けておいたスペースへと持っていく。
「すまんがマイヤはコイツを少し清潔に洗ってくれないか」
「は、はい。しかし主これは何ですか?」
「あぁ、これはなスライサーとミートチョッパーというものだ」
「えっと?」
初お目見えの機器なので、どう反応していいか戸惑うマイヤ。
「まぁとりあえず、水洗いして綺麗にしてから、フユに頼んでくれ」
「フユに?」
「あ!! あれですね? わかりました!!」
フユに頼んでくれと言った俺の言葉に疑問を持つマイヤだったが、これらは言っていいのかどうかわからないのでサガさんに聞いたことなどは、誰にも言わないでいる。
そういうわけで、訳が分からないまでも掃除に入るマイヤと、その様子をチラチラ見るフユ。
「師匠いわれたものを持ってきました!!」
「おう!! それじゃぁナルミと一緒にこの野菜は千切りにしてくれ。で、こっちはざく切りでいい」
「「「「はい!!」」」」
元気のいい返事を聞いて、俺は小麦粉の入った袋へ手を伸ばし、中から粉を問いだす。
「さてやるか!!」
ぐっと袖を腕まくりしてボールへと小麦粉を入れ、甕に入った水をカップに入れて持ってきて、少しずつ混ぜていく。
俺が使う小麦粉だけど、麺を打っている感触からある程度の種類わけをしていて、今回使うのは薄力粉に近いと思っている粉の方。
そこに、今日残った干し魚の出汁を少しだけ投入。本当はここに『山芋』みたいなものを入れたいが、あいにく今はそういうモノがあるかどうかもわからないし、探してもいないので店にはない。
その辺は今後の開拓次第だろうと思っている。
「師匠できました!!」
「おう」
「じゃぁ、フライパンを熱してくれ!!」
「はい!!」
ナルミが魔石コンロのスイッチを入れ、その上にフライパンを乗せていく。
「あ、悪い!! 一回停めてくれ!!」
「え?」
まだフライパンを乗せる前に、ストップの掛け声をかけた。
「フユ、そっちはどうだ?」
「はい!! 終わってます!! 大丈夫です!!」
「わかった。マイヤすまないがオーク肉のブロックを持ってきてくれ」
「はい!!」
指示に応えててきぱきと行動に移す。
マイヤにもってきてもらったオーク肉ブロックを、スライサーの所にもっていく。そうしてここにいるみんなを集めた。
「今から説明するが、以前鍛冶屋のバルさんに頼んでおいたものなんだが、こっちの穴がいっぱい空いたものがミートチョッパーという器械だ」
みんなの前に前面に穴がある機器を出して、その上部の蓋を取り、中へオーク肉を入れる。
そうして脇にあるハンドルをぐるぐると回していく。
「あ!! お肉が!!」
「これは……」
出てきた肉に三兄弟とマイヤが驚く。
「良し!! うまくいったみたいだな。これで少しは楽になるだろ」
「なるほど!! これはひき肉を作るものなんですね!!」
興奮気味に出てくる肉を見ている。
「そうだ。今まではナイフや包丁で作っていたんだが、これから先の事を考えると、手間がかかってしまうと思ってな。それで頼んでおいたんだ」
「さすがですね……」
さすがの意味が良くわからないけど、ナルミがこくこく頷いている。
「コレがあれば、包丁を使うような作業が無いから、子供達でも簡単にできるだろ?」
「凄いです師匠!!」
三兄弟の手間も考えると、こういうモノは導入しておいた方がいい。
「さて次のこちらだがな……」
そういって隣に置いておいたものに肉をセットする。
スッ
はらり
スッ
ぱらり
スッ
はらり
「うん。こっちもいけそうだな」
最初のひと切れは厚みの確認のため、二切れ目は調整を見るため、そして三枚目に最初に戻してしっかり厚みが戻るか確認する。
「こ、これは!?」
「コレがスライサーと言って、肉を同じ厚さに切っていく機器だ」
「スライサー……」
「これも、後々必要になると思って、バルさんに発注してたものなんだよ」
そう、昨日ラウルさんたちが来たのは、忙しくて店から出られなかったバルさんの代わりに、この二つを届けに来たついでに寄ってくれたのだった。
「使い方はあとでしっかりと説明するが、今はこういうモノだと思ってくれるだけでいい」
こくりと頷くみんなを見て、俺は笑顔で返事をする。
「さて、ではナルミ悪いがフライパンの用意だ。それとフユ、さっき俺が混ぜていたものを持ってきてくれ」
「わかりました!!」
「はい!!」
返事が返ってきて数舜後にはフライパンが熱せられていく。
持ってきてもらったボールに野菜を入れて、しゃもじ代わりのへらで良く混ぜ、それを熱せられたフライパンの上に丸くなるように形を整えながら適量乗せる。
もちろん油はオークからとれたラードだ。後々いろいろと油類も考えないといけないが、今はコレが手っ取り早い。
じゅわぁっと音を立てて焼きあがっていくものを見つつ、その上に薄切りにしたオーク肉を乗せる。
しばらく焼いたら、それをひっくり返すのだが、空中に放りあげてひっくり返すのではなく、ヘラで低い位置でひっくり返す。
そうしてだんだんと焼きあがっていくのを待つ。
「は、はやい!!」
「うまい!!」
ひっくり返すのも一つの技として観ているのか、三兄弟もメンバーたちもみんながずっと俺とフライパンを見ていた。
「あ、あの……」
「え?」
声をかけられて、みんなが一斉に声の方を向く。
「何をおつくりになられてるんですか?」
それまでずっと治療をしていたアノンと、治療を終えたアライさんがカウンター越しに俺たちを見ていた。
「今作っているものは、アライさん親子に食べていただくものだよ」
「え? 私たちも食べていいんですか?」
「あははは。さっき聞いたじゃないですか。お腹減ってます? って。もちろんあなた方三人がメインの物ですよ」
そうですかと小さな声で返事をするアライさん。その目にあずっとフライパンの方にくぎ付けになっていて、それを見て俺は少しだけ笑ってしまう。
そうして、出来上がったものをさらに乗せ、同じようにして何枚か焼いていくのだが、冷めてしまっては旨いものもまずくなってしまうので、先にアライさん親子の前へと持っていく。
「あの師匠!!」
「ん?」
「作ってみてもいいですか?」
「お? やる気があるなリーク。じゃぁ、マイヤ見てやってくれないか。危ないと思ったときは止めてくれ」
「「はい」」
リークがやりたがっているので、その意気に答え作らせることにする。そうこれもまた実は後々考えていることにもつながるので、いい経験になると思っての事。
「さ、冷めないうちに食べてくれ」
「こ、これは?」
「えぇ~っとそうだな。まだ上にかけるものはないから塩などですまないが、簡易版のお好み焼き……ってところだな」
「オコノミヤキですか……」
親子三人の前に出されたもの。そう俺が作っていたのはお好み焼きである。
「腹が減っては――ってやつさ。とりあえず食ってくれ」
「はぁ。では……」
恐るおそるではあるが、フォークを使い切り分けてあげて、子供二人も一緒にそれを刺す。
そうして三人は頬張ると、なんとも言えない表情をするのであった。
お読みいただいた皆様に感謝を!!
そうです、お店ができる前にラウルさんと一緒に、バルさんの所に頼みに行っていたものですね。
それが今回初登場!!
次回
第39話 思い付き
お楽しみに!!




