閑話1 神々
※このお話はパリピュア視点です。
お話しの進行には全く関与しておりませんので読み飛ばしても大丈夫です。
話を聞いた時は、『え? 別に必要ないけどな?』なんて思っちゃったけど、その人がこの世界に来てから、なんとなく気になって様子を時々見るようになってしまった。
私たちの管理しているこのフクキタリは、他の世界に比べて発展しているとはとてもいいにくい。
それでも、ゆっくりと進化する世界を大切にはぐくんでいた。
「え? 間違いで亡くなってしまったの?」
「そうなの!! でね、パリピュアの所でどうにかできないかなぁ?」
地球という世界を管理している女神から、久しぶりに連絡が来たと思ったら、とんでもないことを言い出した時は驚いた。
「どうにかって……。どうしたいの?」
「転移……はもう肉体がないからできないか……。転生ってできないかしら?」
「転移? 転生?」
「これよ!!」
そういいながら目の前に差し出された本。なんでも地球の二ホンという国で流行っている者らしく、地球の女神もその類の話が好きで愛読しているといっていた。
渡された本を少しだけ読んでみる。
「なにこれ? こんな事あるわけ……? あぁ!! そこでそんな力使っちゃ!!」
私はすっかりその本が好きになり、時間を忘れて読んでしまう。その横でくすくすと笑いながら地球の女神が私を見ていた。
「なるほどね」
「どう? おもしろいでしょ?」
「面白いけど……こんな事ってできるの?」
「実のところ、そういうお話を良く貰うのよねぇ。だから、ある程度はこちらでも吟味して、その世界へと送り出してあげることもあるんだけど、召喚術とかいうのを使われちゃう時が有って、いるはずだった人たちが急にほかの世界に行っちゃうってこともあって困ってるのよね」
テーブルに突っ伏してはぁ~っと大きなため息をつく彼女。
「でも今回はこちらのミスじゃない? 何とかしてあげたいのよねぇ……」
ちらっちらっとこちらを見ながら、わざとらしく大きなため息をつく。
「……。できるかと言われればできるわよ」
「ほんと!? いやぁ助かるわぁ。じゃぁさ!! パリピュアの世界に行っても困らないように何か付けてあげてね」
「初めての事だし、上手くいくかわからないけど、善処してみるわね」
「お願いね!!」
何度も頭を下げて、地球の女神は自分の世界へと帰っていった。
そうして私の目の前に現れた元地球人の甲斐哲太さん。
自分がどのように亡くなったのかを聞いて、ちょっとショックを受けていたみたいだけど、どうにか持ち直して私の管理する世界で暮らしていってくれることに合意してくれた。
それに私の事もほめてくれたし、なんとなく気になる存在になっちゃった。なんというか甲斐さんとお話をするのが心地いいと感じている私がいるのよね。
地球の女神に言われた通り、フクキタリで生活していくうえで役に立ちそうなスキルをつけてあげたんだけど、上手く活用してくれると嬉しいな。
「よろしくお願いしますね?」
「え? あ、ち、ちょっと!!」
もう少しお話をしてみたかったけど、初めての事で力を使いすぎちゃって、あまり長く説明する時間が取れないほどに消耗しちゃった。
「え? ちょっと女神様!! ここはどこですかぁ~!!」
そうして展開でふぅ~っと一息ついていると、下界から先ほど見送った甲斐さんが空に向かって叫んでいる声が聞こえてきた。
「あ……説明するの忘れちゃった。てへっ」
初めての事ばかりで、私もかなり焦っていたのかもしれない。ちょっと反省しましたよもちろん。
♢♢♢♢♢
甲斐さん改め、哲太さんがフクキタリに降りて、もう数ヶ月が経つ。
地球の女神が言っていたスキルを哲太さんにつけたのだけどそれ以外は全く考えてなくて、下ろしてしまったのも草原の真ん中だったし、現地の言葉の翻訳スキルなんて思いもつかなかったし。結構ミスばかりしちゃっている私だけど、そんな私に言いたいことがあるはずなのに、何も言わずに黙々と生活基盤を整えていく哲太さん。
初めは苦労してるみたいで、周囲との会話もまま奈恵らない様子だったけど、次第に言葉を覚えてくると、冒険者として生活を整え始めた。
「大丈夫かしら……」
「何見てるの?」
「え!?」
下界の様子をうかがっていたら、真後ろから声をかけられて驚く。
「えっと……」
あわあわとその場を取り繕うとするけど、私の傍まで来てにこりとその人は微笑んだ。
「あぁ、その人が気になるのね?」
「……うん」
「初めての異世界人だものね。そりゃ気になっちゃうよね」
「……特に意味はないわよ?」
「そういうことにしておくわね」
そういうこの人は、私の姉であるシンキュア。私と一緒にこのフクキタリを管理している女神の1柱。
「で?」
「え? なに?」
「うまくいってる?」
「……今のところは……かな?」
シンキュアも気にはなっていたみたいで、私と一緒に少しの間哲太さんの様子を伺い、また来るといって去っていった。
去り際に「ほどほどにしないとプライバシーの侵害で訴えられるよ?」なんて、怖いことを言っていたけど、そんなことは起きないはず……起きないよね?
私が哲太さんを気にしているから見ているというよりも、哲太さんの見ているものを私がチェックしているので、仕方がないのだ。
何しろ、哲太さんはこの世界を始めてみているわけで、知らないことも多い。だから私が教えてあげているのだけど、そのたびに私の気持ちが反映されちゃう。
時々テッタさんが私の事をいじってくるから、それに乗っちゃう私も悪いのかもしれないけど、それが少し楽しいと感じてしまっているのも事実。
だから哲太さんのスーテータスに『女神パリピュアの話し相手』なんて表示がされているのを見たときは驚いた。
もちろんそんなものを見られちゃったらまずいので、慌てて女神特権で隠ぺいしておいた。
「おねぇさま……」
「はい!!」
でも下界の人にばれる前に同じ管理女神の一人にばれてしまう。
「ルールメア……何かしら?」
「その称号は何ですか?」
「…………」
このルールメアは私の妹だけど、普段無口な分、起こったときなどは凄く怖い。管理している部分が違うから、あまり下界の事に関して干渉するところが無いけど、たぶん姉妹の中で一番しっかりしていて、一番怖いのがこの妹だと思う。
「えっと……」
「まぁ、時々おねぇ様が楽しそうにしていらっしゃるのは知ってますからね」
「そ、そんなことないもん……」
「……おねぇさまでもそんな表情されるのですね」
どんな顔をしているのか私にはわからないけど、哲太さんとやり取りをするのは確かに楽しい。
「ルールメア」
「わかってます。それに関して私は何も言いません」
にこりと笑って、妹は去っていった。
――それって称号の事よね?
ルールメアはあまり会話をしないから、あの子が何を考えているのかよくわからないでいた。
♢♢♢♢♢
時が過ぎ、哲太さんも自然と現地の言葉が話せるようになって、周囲の人たちとの親交も増え、あれよあれよと自分で商売を始めた。
「シュウマイかぁ……」
「おいしそうね」
「でしょ?」
私が下界を見ている横で、シンキュアとルールメアも一緒になって様子をうかがうことが増えた。
なんだかんだと言ってはいるが、2人もこの世界へとやっていた初の異世界人の事は気になっているみたい。
今までも時々一緒に見ることが有って、その時は名も言わないで静かにみているだけだったけど、少し前に哲太さんが考案したウインナーなるものを見たときは、2人とも驚いていた。
この世界で、ゆっくりと流れていた進化の一つが料理・調理である。昔ながらの製法や料理は存在してきたが、なかなか進化させることができず、もどかしい思いをしていたけど、それが突如現れた一人によって、進化の兆しを見せ始めたのだ。
「え? 今度はラーメン!?」
「あの料理法は新しいな……」
「すごいですね。もう次を考えているなんて……」
あまり下界の事に関心を示さないルールメアも、今度ばかりは哲太さんに関心を寄せた。なんだかそれが少しうれしくなる。
「ありがとうございます!! 嬉しいですぅ!!」
「あ、コラ一人で食うな!!」
「ダメよぉケンカしちゃ」
私たちの目の前に現れた、少し小さめの器に入れられたもの。哲太さんが作り出した新たなる料理、塩ラーメン。
食べてみたいと思っていたら、哲太さんが日本式の神棚なるものを作ってくれたおかげで、私たちのもとへ引き寄せることが可能になり、早速取り寄せたのだけど、それをしまいに見つかってしまい、久しぶりに姉妹の間で取り合いになってしまう。
哲太さんはこれからこの世界でいろいろとあると思う。だけど、私はずっと哲太さんの事を見守っていこうと思ってます。
――応援してますよ哲太さん!!
ラーメンが食べたいからという理由じゃないですよ? 本当ですよ?
お読みいただいた皆様に感謝を!!
閑話を1話挟ませていただきました。
次回から新章開始です!!
次回
第35話 雪の下
お楽しみに!!




