第31話 あ!! 店名!!
※会話文が多いです。苦手な方はご注意を。
お店の中では毎日店員教育が行われているが、俺もそれにばかりにかまけているわけにもいかず、次の一手をかんがえるために、ラウルさんのお店へと足を運んでいた。
「今度は何でぇ?」
「あはは。実はですね、こういうものを作ってほしんですよ」
「どれどれ……ん?」
板に炭で簡単に書いた展開図を見せる。
「ほう……この図面、なかなか見やすいな」
「ありがとうございます。ではなくて!! これを作ってくださるかどうかなんですけど」
「がははは。任せとけ!! ただ、こういう真円に近いものを作るとなると、あいつの手も借りないと出来ねぇぞ」
「そうですよね。だから今日はラウルさんの所へ行った後に行こうと思ってました」
「なら一緒に今行くぞ!! さぁ行くぞ!!」
「え? え? ちょっと!!
袖を引っ張るラウルさんの力に負けて、そのまま店から連れ出され、鍛冶屋のおじさんの所へと連れてこられる。
「おいこら!! いるだろ!?」
「なんだ!! 誰でぇ人の店でデカい声出しやがるあほうは!!」
店の奥からどかどかと足音をさせて一人の男性が出てくる。
「はん!! どうせろくな仕事もしてねぇくせに!! 素直に出てくりゃいいんだよ!!」
「なんだとてめぇ!!」
「まぁまぁ……二人とも」
お互いの顔を見てケンカしそうなので、2人の間に入りお互いを止める。
「ん? こないだの兄ちゃんじゃねぇか」
「はい。先日はありがとうございました」
「おう。で? 今日はラウルまで連れて何しに来たんだ?」
「仕事だバル。コレを見てみろ」
俺が書いた設計図の板をバルさんの前へと出す。
「ほう……。なるほどな。固定具ってことか?」
「そうですね。しかもその先はしっかりと刃をつけていただきたいのです」
「うむ。わるくねぇ。これで新しいものを作るってわけだ」
「はい。もうすぐお店ができるので、いろいろ試行錯誤してます」
「ものを作る奴は嫌いじゃねぇ。受けてやるよ」
「ありがとうございます!! それとですね、ほかに頼みたいこともあるんですよ」
「ほかにもか?」
「はい。こういった刃物を作ってほしんです」
「何に使うのかはわからねぇが、わかった作ってやるよ。こっちはラウルに届けりゃいいのか? んで、こっちは兄ちゃんにか?」
「そうですね。よろしくお願いします」
ふんと鼻を鳴らして、バルさんは億絵と消えていくと、すぐにキーン!! カーン!! という金属をたたく音を響かせ始めた。
それを確認して、俺とラウルさんは一度ラウルさんの店に戻る。
「あとは出来上がってくるまで待ちだな」
「えぇ。あれはそうですね」
「ん? その言い方だと……」
「はい。ラウルさんにはほかにも、こういうものを作ってほしんですよ」
「また面白そうなものを……。何個ほしい?」
「そうですねぇ。とりあえず100個ですかね」
自分の店の席数を思い起こし、予備も含めて注文しておくことにした。
「やってやるよ。他に何かあるか?」
「ラウルさんにはないんですけど、この町で土を焼く人っていませんかね?」
「あぁ、焼き物かぁ。それは隣町まで行かないといねぇぞ。そういう時はギルドに相談してみるといい」
「わかりました」
お礼を言って、前払い金を置き、ラウルさんのお店を後にした。
そのままの足で商業ギルドへと足を運び、ドアをくぐると受付嬢の方が俺に気が付いて、二階へと上がっていく。
しばらく待っていると、ギルドマスターが降りてきた。
「テッタさん。本日はどのような件で?」
「いろいろとあるんですけどね……」
アハハとごまかしながら話すと、ザイツさんが大きなため息をついた。
「まぁ、こちらとしてもいろいろとお話がありますのでちょうど良かったですがね」
今度は俺を二階の執務室へと引き連れて戻っていく。
「さて、今回はどのような話ですか?」
お互いにソファーに座り、対面になっていると過ぎにお茶が運ばれてきて、お互いに一口飲んでからザイツさんが切り出した。
「まずはこちらを作ってもらうように依頼してきました」
「こちらは……お店で使うものですね?」
「はい。これも一応発明品という事になるかと思ったので念のためにですが、ご相談に」
「良い選択・いい判断ですね。わかりましたこちらで登録しておきましょう」
「ほかにですね、焼き物をしておられる店などを紹介してほしいなと思いまして」
「焼き物ですかぁ……」
腕を組んで考え込む。
「何か?」
「いえね、隣町は土が良くて焼き物が盛んな町なんですよ。いろいろなものを作り出してるんですが、最近は仕事がないとおっしゃられていて、今は窯もあまり動いてないとおっしゃってましたね」
「え!? でも、未だ稼働はしてるんですよね?」
「はい。ですが大量に生産はできないかもしれませんね」
「そうなんですか……」
「何をお探しなんですか?」
ザイツさんに、俺が欲しいものを説明した。
「なるほど……。これは大きさもありますし、数もある。なかなかいい仕事になりそうですね」
「そうですね。まずまずの破損が出ると思いますし、古くなれば新たなものに入れ替えもしないといけないと思っていますので、結構な仕事になると思いますけど」
「……良いでしょう!! ただそうなりますと、商業ギルドや店だけでは解決できないかもしれません。なのでノイアー様にも少しお声がけしておきましょう」
「え? そこまでですか?」
まさかそんなに大ごとになると思っていなかったので驚く。
「何を仰ってるんですか。焼き物というのは一つの領でも産業として成り立つほどの物なんですよ? それが現在下火になっていいて、それをまた少しでも盛り上げられるかもしれないとなるとすれば、領にとってもお店側にとっても大きなことなんですよ」
「はぁ……」
あまり良くわかってない俺に苦笑いするザイツさん。
「まぁ、その辺は私の方でノイアー様にお声がけしますのでご安心を。で、こちらの納期的にはどのようになさいますか?」
「なるべく早くほしいですね……」
「ん? もしかして……?」
「そうですね」
「ほう……。それは楽しみにしております」
にこりと笑うと、何かを皮に書いて、くるくるとまとめ懐へとしまう。お互いに握手を交わし、部屋を出て階段を下りる。そのまま受付嬢さんに挨拶して外に出ようとしたとき、ザイツさんに呼び止められた。
「テッタさん」
「はい?」
「ところでお聞きしますけど……」
「なんでしょう?」
「お店の名前はもうお決まりですか? そろそろ登録しないといけないのですが……」
「あ!! 店の名前!!」
すっかりと俺の頭の中から抜け落ちてしまっていた。
ここまではこの世界で作れるものを考え、試行錯誤を繰り返し、再現できるかどうかを探っていた。
お店があるんだから、なるべく早く営業ができるようにとしか考えていなかったので、まったく店の名前などあたまの中になかった。
「えっと……」
「まだ決めていらっしゃらないと?」
「実は考えてませんでした……」
「では、近日中には考えて登録してくださいね」
「すみません。わかりました。数日後に伺います」
頭を下げてギルドから出ると、まっすぐにお店へと向かう。
入ってすぐにみんなの進捗を聞き、確認してから自分の執務室へと入り、木の板を机の上に出して炭を置く。
そうして椅子にもたれかかり、頭を抱えながら考え始めた。体が揺れるたびに椅子がギギッと軋み、危険を予告してくる。
――どうするか……。
コンコンコン
「はい」
「失礼します」
考え始めていると、ドアをノックする音が響き、返事を返すとフユがトレーにお茶を乗せて持ってきてくれた。
「お茶をお持ちしました」
「ありがとう」
「何かお考えですか?」
「あぁ~」
板の上に書かれては消した跡があるものを見ながら、フユが訪ねてくる。
「実はさぁ」
「はい」
「決めてなかったんだよね」
「何をですか?」
「名前」
「名前ですか?」
「そう、この店の名前をね」
「え? まだ決まってなかったのですか?」
大きく目を見開いて驚くフユ。
「さてどうしたもんかな……て」
「……テッタさんのお店ですから、お好きにつけられては?」
「まぁそうなんだろうけどさ。いいのが思いつかなくて」
「……こちらは?」
「ん?」
板を読んでいたフユが、書いてあるものの一つに目を止めた。
「あぁ、これは俺の生まれ故郷の名前だよ。キタカタって読むんだ」
「キタカタですか」
そこには『日本語』の『漢字』で『喜多方』と書いてある。なのでフユはそれが読めなかった。
「そう。でもそのままじゃなぁって」
「どういう意味ですか?」
「う~んと、たしか……喜び多き方々へ? 方々に? とかそういう意味だったような気がする。このほかにも確かもともとは字が違ってて、『北方』って意味もあったって聞いたことがあるな」
「北の方……ですか。この辺りと同じですね」
「ん?」
「このクラーメン領は北にあるんですよ。なので北の方というのは間違ってないかと」
「なるほどな……うん。いいかもしれないな」
「え?」
「喜多方と被ってるしいいかもしれない!! ラーメン店『北の方』か!!」
俺の脳内で何かがカチッとはまったような感覚がした。
こうしてこの店は、ラーメン店『北の方』という名前が正式に決まったのだった。
お読みいただいた皆様に感謝を!!
店名決定!!
次回
第32話 看板
お楽しみに!!




