第25話 まずは改装だ!!
クーリングオフは適用になるのかと、サガさんに聞いてみたけど、契約書に自分の血を使った拇印をしてしまっている以上、できないといわれてしまった。
今回の契約を解除するのであれば、しっかりと借金を返済完了しないといけないらしい。
「あの……」
「他にも何かありますか?」
「そうですね、この300万1リピという金額なんですけど」
「はい。間違いないですよ?」
「いや、これって6人分なんですよね?」
「そうでごさいますよ?」
「と、いう事はフユさんっておいくらなのですか?」
「あぁ、そういう事ですか」
サガさんが部屋から出ていこうとしているフユさんを呼び止めて、サガさんの横へと移動させる。
「フユさんには確認しておりますから、今回のテッタさんに購入されることを納得されておりますよね?」
「はい。私はテッタ様に買っていただけて大変うれしく思っております」
俺にぺこりと頭を下げるフユさん。
「そうなるとですね、疑問があるんですよね」
「……ちょっと部屋を変えましょうか」
サガさんが俺とフユさんを連れて、ここではない部屋へと移動する。俺はその時にマイヤさん達と少し話し、用意ができたらそのまま俺のお店へと先に行ってもらうことにした。
サガさんの執務室に入ると、俺の横にフユさんが座り、俺たちの向かい側にサガさんが座った。すぐに手にあざのようなものを付けた女の子が入ってきて、俺たちの前にお茶を出し下がった。
「さて、お聞きしたいことですよね?」
「そうですね、あの契約書を見る限り、フユさんって1リピの値段ってことですよね?」
「そうですね。フユさんは特殊でして、1リピという価格を相談して設定しております」
「それだと引く手あまたなのでは? フユさんはお綺麗ですし」
フユさんの顔が少しだけ薄く赤く染まっていくのを隣で感じた。
「これは契約者様には本来話してはいけない事なのですが、テッタさんにはこれからもウチの奴隷商を御贔屓してもらえそうな予感がしますので、隠さずにお答えしますね。よろしいですかフユさん」
「はい」
こくりと頷くフユさん。
「フユさん――いえ、フユ様はですね、我がフクキタリ王国から離れた国である、とある国の第4王女様でいらしたんですよ」
「え? 王女様……ですか?」
「はい。しかし内乱が起こりまして、そこを突くように他国をも巻き込んだ謀反も勃発。王家の方は最後まで王都で食い止めようとしたんですが、残念ながら相手側の勢いに押され、降伏してしまいました。国王陛下は降伏なさる前に自分の子供たちだけでもという事で、それぞれ別のルートになるようにして国外へ逃がすことに成功したのです。その逃げてこられたお一人がフユ様ということですね」
「なるほど……」
俺たちが今住んでいる国も、貴族を立てている封建制で運営しているのだから、内乱などはあり得る話だ。
その時、犠牲になるのは貴族ばかりじゃない。一般市民もまたその戦いに否応なく巻き込まれてしまう。
――戦争は嫌いだ……。
いくら自分が嫌いだといっても、自分だけのチカラじゃどうしようもないことくらいはわかる。今の俺は、自分の傍にいる子供たちを守ることですら、ほかの人たちの助けを借りなければいけないのだから。
「この国に来られらことは、人伝手に聞いておりまして、ご自身の身元がばれてしまうと、いろいろなことに巻き込まれてしまう可能性があるので、ご領主様と相談し、簡単には身元を引き渡せないように『契約奴隷』のような形で生活してもらうことにしたのです。
「ふむ」
「で、今回ですね、偶然にも我が商会からテッタさんに買っていただけるという事で、フユ様も同意してくださってますので、一緒にテッタ様の所でご奉仕をしていただこうかと」
「ん~それでも、これってどうなんですか? フユさんの価値が1リピってことはないでしょう?」
「それはですね、変な方に間違いででも買われないようにという事で、本来の価格は3億5000万リピとなっているんですよ」
「さ、3億!?」
「しかし、フユさんとの契約で、自分で行きたいと思ったところへ行くときは1リピでいいという契約になっておりまして。今回その契約通りという事になりますね」
「そうですかぁ……。 なんというかだまし討ちのような気がしてますけど」
はぁ~っと大きなため息が漏れる。
「あ、あの!!」
「ん? なんですか?」
「テッタ様は私がおそばにいるのはお嫌ですか!?」
「あぁ~、その聞き方はずるいですねぇ」
「え?」
「傍にいるのが嫌とかないですよ? ただ今の私は大きな借金もある身ですから、もしかしたら馬車馬のように働いていただくかもしれないんですよ。それでもウチに来ますか?」
「ば、馬車馬だろうと、メス豚だろうとが、頑張りましゅ!!」
――最後に嚙んじゃったけど。うん。その前のセリフは男に言っちゃあかんだろ……。
ピコーン
【女神パリピュアの巫女 聖属性の持ち主。これでお店の衛生管理はばっちりですね!! あとはテッタさんのお嫁さん候補かなぁ?】
ぶふぉ!!
「だ、大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫ですよ……」
久しぶりにこの手の【目利き】が発動したと思ったら、とんでもないことを表示しやがった。おかげで口に含んでいたお茶を吹き出してしまったじゃないか。
――パリピ様? どういう意味ですかねぇ? パーティのし過ぎでお酒飲みすぎたんじゃないですか?
『昨日飲みすぎちゃって家の前に着いたらそのまま寝ちゃってて――て、そんなわけないじゃないですかぁ!! しっかり素面ですぅ!!』
あたまの中でいつもの様に会話するけど、あの神様ならやりかねないなと思っていたりする。
「テッタ様、大丈夫ですか?」
「えぇっ、はい大丈夫です。それで、その……」
フユさんの方を見る。
「何ですか?」
「俺でいいんですか? 何もない普通の人間ですよ?」
「だ、大丈夫です!! 視えてますから」
「大丈夫ならいいんですけどね。ではこれからよろしくお願いしますね。フユさん」
「フユ……と呼んでください」
「……わかったよ。フユ」
「はい!! がんばりまっしゅ!!」
胸の前でぐっと両手を握り締めるフユ。俺と冬のやり取りをニコニコしながらサガさんは何も言わずに眺めていた。
♢♢♢♢♢
いろいろあったものの、とりあえず、従業員と警備要員は確保することができた。
フユを連れ奴隷商を出て、自分のお店へと向かうと、中に先行していた5人が立ったままで待っていた。その後人を見ながらどうしたらいいのか困っている3兄弟。
ぱんぱん!!
「はいちゅうもーく!!」
店に入って戸を閉め、みんなの前で手を鳴らす。
「今日、ここに集まっていただいているのは、このお店で働いてくれる人たちです。それぞれに自分の名前を言って自己紹介お願いします。まずはリークから」
「え? おれ!? えっと俺は――」
最初に任命したのは、俺とも長い付き合いのリーク達。その後に5人組のもと冒険者たちが挨拶と自己紹介して、最後にフユが自己紹介をして終えた。
「さて、では人も増えましたので、新たな担当を決めたいと思います」
「担当?」
「そうだぞ? 人が多くなればそれだけやることが多くなるし、責任が重くなるんだ。リーク達もしっかりその辺を学んでいくんだぞ?」
「「「はい!!」」」
新たなスタートに向け、新しい組織を構想していく。リークとルークは俺と一緒に厨房での料理を担当。リザとフユはホールと後片付けや会計を担当。マイヤとアンドレは店舗側の警備を担ってもらい、ミラとナルミに屋台の方の警備とちょっとした手伝いなどをしてもらう。残ったナルミに関しては、平時は店舗と屋台の手伝いをしつつ、伝言係も担ってもらう。
アノンを屋台組に入れたのは、その場でけがをさせられた時などに応急措置ができるようにするためだ。
そして、今後は店の二階で寝泊まりしてもらうことになるので、それぞれに部屋などを割り振っていく。
もともとこの食堂は、前オーナーの前に営んでいたのが宿屋だったこともあり、2階は使われてない部屋と、ちょっとした宴会ができるようになっているので、その辺を新たな部屋に改装することにした。
食堂部分の1階には、厨房と食堂、そして俺の部屋と、お客様と相談するための執務室兼面談室を作る。
衛生管理は大事なので、この世界に風呂がないことはずっと残念に思っていたから、この際風呂も作り、トイレもまた別に作ってもらう。
そのようなことを一通りみんなに説明して、早速店の2階中心に片づけを始めてもらうことに。
リーク達には次の日の仕込みを頼んで、俺はその足でラウルさんの所へと赴き、この新しい構想を話して、改築してもらうことにする。
その際の資金はノイアーさんに出してもらえることになっているので(もちろん後で返済義務はある)、できる限り導線を考えた造りにしてもらうつもりだ。
前世時代にも感じた、『俺の店』を持つという感覚が再びよみがえってきて、俺はずっとわくわくした気分を抑えきれないでいた。
お読みいただいた皆様に感謝を!!
そろそろ作り始めますよ。
長い前振りでしたねぇ(笑)
次回
第26話 うずまき
お楽しみに!!




