第20話 何者なんだ?
登場人物
〇主人公
カイ・テッタ=甲斐哲太 (かいてった)
三大ラーメンの一つである地域で、ラーメン屋を営んでいた33歳独身。地元高校を卒業後すぐに地元のラーメン屋に修行に入り、30歳になったときに独立し自分の店を持つ。
町の協会での会合からの帰りに、暗い路地裏で悲鳴を聞き駆け付けたが、そこで凶刃に倒れる。
〇パリピュア
異世界フクキタリの女神
ちょっとドジっ子な女神様。
地球で無駄死にしてしまった(笑)テッタの事を気にかけてくれている。テッタが自分の世界で何とか生活できるように、スキルを与えたまではよかったが、ほとんど内容を伝えずに下界に下ろしてしまうというドジをする。
いつも見守ってくれているのか、時折声が哲太に届いている……気がしている。
〇リーク
三兄弟の長子
普通の人族
13歳
孤児院で保護されていたが、最近町にやってきたばかりでまだ慣れておらず、兄弟だけで生きようともがいていた。まじめで勉強熱心な一面がある。
とあることでテッタと出会い、それが縁でテッタとともに行動するようになる。
〇ルーク
三兄弟の次子
普通の人族
12歳
兄リークとともに兄弟で生きようともがいている。兄を助けようと一生懸命。お調子者の気があるが優しい。
〇リザ
三兄弟の長女(三子)
普通の人族
10歳
兄2人とともに行動を共にする。当初は人見知りだったが、徐々に町にも人にも慣れてきて、テッタや兄たちと一緒に行動するようになる。
〇マクガ―
普通の人族
最初にたどり着いた町の冒険者ギルドギルマス。
細マッチョな体で、威厳を持っている40歳くらいの男性。
起こるときはすごく怖いが、面倒見のいい性格をしていて、みんなから頼られている。
〇ザイツ
普通の人族
ツバサの町の商業ギルドマスター。
少し恰幅のいいおじさん。
口調が優しくて穏やかな人柄だが、商売のことに関しては情熱を燃やしている。
「うまぁ!!」
「肉汁が甘いです!!」
「あと3……いや、5個お願いします!!」
厨房で作れるだけ作り、その場で調理することも考えたが、せっかくなので広い庭に手BBQのようにみんなで食べようと提案し、それで簡易的に屋台のようなものを組んでもらって調理をはじめた。
最初は何が始まるのか興味で見ているといった様子だったが、急いでラウルさんの所から買ってきていただいた蒸篭から、モクモクと蒸気が上がり始めると、その蒸気が拡散されると同時に、脂の溶けた甘い香りが庭いっぱいに広がり、さらにその匂いが屋敷の中にまで広がっていったことで、館にいた方々が庭へと足を運んできた。
「なるほど……これがシュウマイか」
「おいしいですね父上!!」
ご領主様とその子息であられる子供がにこやかに話をしながら、俺が作ったシュウマイに舌鼓を打ってくれている。
――やっぱり旨いって正義だよなぁ……。
微笑ましい状況を見つめながら俺は心の奥が少し暖かくなるのを感じた。
どうして初めて来た領主の館で、このようなことになっているのかというと、少し時はさかのぼる。
♢♢♢♢♢
馬車に乗せられてれてこられたのは、屋台を出していた中央広場からまっすぐに伸びた大通りを抜けた先。
少しばかり屋敷が入り組んでいるその先に、今回乗せられている馬車の持ち主が住んでいる。
「うわぁ~……でっか……」
遠くから少しだけ見えていたのだが、近づいてくるにしたがってその規模が格段に大きくなっていることに気が付き、自然と声が漏れだす。
行ったことはないし見たことは無いけど、欧州のどこかの宮殿みたいな造りで、門も塀もかなり高く頑丈そうな造りをしている。
「あはは。驚きますか?」
「そうですね……あまりこういうものは見たことが無いものでして」
俺の様子を見ていたオリバーさんがニコニコと聞いてくる。
門について少しばかり待っていると、ギギギッ!! と重くて硬いものを擦っているような音が響き、その後位に馬車がゆっくりと進みだす。
通る道すがら見える庭は、日本庭園とは全く違い、なんというのか映画のシーンによく出てくる、欧州城内のブリティッシュガーデン? というのかな。そういう華やかさを思い出せる。
少し進んでいくと、ロータリーになっているようで、馬車が方向を変え、速度がゆっくりになった。
ぱから
ひひんっ
蹄の音と馬の嘶きが聞こえて、馬車はゆっくりと停車した。
「お疲れ様でございましたご到着です」
「あ、はい!!」
庭のきれいさや、家の大きさ、敷地の広さに感心していると、オリバーさんが声をかけて馬車のドアを開く。
先にオリバーさんがおり、俺もその後に続いた。オリバーさんに促されて玄関へと歩き出すと、メイドさんというのか侍女というのか、統一されたデザインの服に身を包んだ女性陣が並び、俺が進んでいくと一斉に頭を下げて「いらっしゃいませ」と声をそろえて挨拶された。
「あ、はい……お邪魔します」
「挨拶はなさらなくていいんですよ?」
「いやぁ、挨拶されたら返すのが基本だと育ってきましたからね」
「なるほど……」
声は柔らかいが、その北条まではうかがい知ることができない。案内されるままに歩き、一つの大きな部屋へと通され、そこで少し待っててくれと言われた。
「こちらをどうぞ」
「ひっ!?」
中に入りどうしようか迷っていると、突然後ろから声をかけられて驚いて変な声が出てしまう。
「申し訳ございません。驚かせてしまったようで」
「あ、いえ、いえ……」
「こちらでお座りになられてお待ちくださいませ。今、お茶をお持ちいたします」
「は、はい。有難うございます」
スッと俺に頭を下げたメイドさん――もうめんどうくさいんでメイドさんという事にしておこうか――が、俺から離れてワゴンの方へと歩いていく。
お茶を出してもらい、その場にある腰が沈んで立てなくなるんじゃないのかって思うくらいフカフカなソファーに座り、お茶を飲み始めた。
こういう時、あまりきょろきょろしてしまうと、怪しまれたり、田舎者扱いされることは知っているが、どれも見たことが無いものなどが置いてあったり、貼ってあったりして、どうしても気になってしまう。
コンコンコン
ガチャリ
「大変申し訳ありません。主様は少しお仕事があるようでして、お越しいただくのに時間がかかってしまうかもしれません」
オリバーさんではなく、30代か40代とみられるほどの男性が入ってきて、頭を下げる。
「あ、大丈夫です。ご心配なさらずに」
「では……」
「あ、ちょっと……」
「はい? なんでしょうか?」
その男性がすぐに出ていこうとするので、俺は引き留めてしまう。
「その、俺、あ、いや、私はこのような姿のままですし、その……言葉遣いなどもあまりまだよろしくないのです。少し不安なので、お時間があれば教えていただくことは可能でしょうか?」
「なるほど……」
少し考えた男性が、俺ににこりと微笑む。
「わかりました。では簡単なことから」
「はい、ありがとうございます」
そうして少しの間だが、男性に付き合ってもらいマナーなどを教えてもらった。
コンコンコン
がちゃ――
「やはりこちらにいらしたのですね?」
ドアがノックされ、返事を返した後にドアを開けてオリバーさんが入ってくると、俺の体面に座っている男性を見てはぁ~っとため息をついた。
「どこを探してもいらっしゃらないわけです」
「あははは。許せオリバー」
男性が豪快に笑うと、オリバーさんがもう一度ため息をつき、そのまま男性の後ろへと移動する。
「え?」
「こういうことはあまり感心しませんね。ご主人様」
俺が驚いて居ると、俺を見ながらオリバーさんが男性をたしなめる。
「あははは。もういいだろう?」
「えっと?」
「すまない。君をだますようなことをしてしまった。改めて自己紹介をしよう。私がこの町、そしてこの領を拝領して治めているノイアー・クラーメンだ」
「えぇ!? 伯爵様ご本人ですか!? あ……」
あまりに驚きすぎて大声を出してしまう。
「あははは。まぁ良いよ。私もあまり堅苦しいのは好きじゃない」
「すみません」
笑いながら許してくれた。
「さて、テッタ殿。あなたをここに呼んだのはほかでもない。君の話を聞いて判断したいと思ったからだ」
「判断?」
「そうだ。率直に言う。君は……何者だ?」
「え?」
それまでの和やかな雰囲気と違い、ご領主様の鋭い視線が俺を突き刺す。
「この町に君が来た時からの報告は見てもいるし聞いている。当初は全く会話ができなかったというのは本当かい? それから数ヶ月で会話できるようになって、町の人とも仲良くなって、冒険者としてはまじめに暮らしていた。そうだな?」
「そうですね。その通りです」
国利と頷くご領主。
「そこまではまぁいい。そこで新しい料理を作りだし、それを民衆に認知され、新たな道具も生み出した。この町でラウルもそれなりに知られた職人だが、そのラウルが気に入っている人物だ。そしてまた屋台を出して新しい料理を出している」
「……」
「私がこの町で領主を継いだ時から、この町でいろいろなものが生まれはしたが、ここまで画期的で新しいものは生まれてなかった。それが君がこの町に住み始めて数ヶ月ですでに4つも新しいものが生まれている。しかも君からだ」
「4つ?」
「ウインナーという食べ物、蒸篭という道具、シュウマイなる食べ物、そして衛生という概念。この4っつだろ?」
「なるほど……」
指を折りながら、俺がこれまでにしてきたことを言葉にして俺に聞いてくる。
――そうか、冒険者ギルドで言った『綺麗は大事』ってことも、ご領主様には報告されてるのか。
冒険者ギルドで俺が行った掃除と、衛生管理という概念は、それからずっと冒険者ギルドの食堂では引き継がれている。あの時一緒に働いていた専属料理人の人が、俺が離れて以降もそれを守ってくれていて、その概念は町にある食堂を経営している人たちの間にも広がっている。
「君は何者なんだ? この町で……、いやこの国で何をしようとしている?」
そう聞いてくるご領主様は、静かで無表情のまま問いただしてきた。きっと俺がどこかの国のスパイか何かだと思っているのかもしれない。
――どうする? ここで言ってみるか……。
ピコン
【アイーヅ王国 クラーメン領 現当主 民衆優先の政策で、民衆からも国からも支持が高い。この人なら話しても大丈夫だと思いますよぉ?】
あたまの中に響く音色と声。
――久しぶりに聞いたな。パリピ様いつもありがとうございます。
あの鈴の鳴るような声を聴いて少し落ち着いた俺は、視線をご領主様へと向けた。
「信じられないかもしれないですが」
前置きを一つして、俺はこれまでの話をし始めた。
お読みいただいた皆様に感謝を!!
目立てばいろいろなところから注目されます。
いいことも悪いこともある。
今回のご領主との対面は――?
次回
第21話 後ろ盾
お楽しみに!!




