第2話 けもみみだと……!!
登場人物紹介
甲斐哲太=カイ・テッタ=テッタ・カイ
三大ラーメンの一つである地域で、ラーメン屋を営んでいた33歳独身。地元高校を卒業後すぐに地元のラーメン屋に修行に入り、30歳になったときに独立し自分の店を持つ。
町の協会での会合からの帰りに、暗い路地裏で悲鳴を聞き駆け付けたが、そこで凶刃に倒れる。
そうして目が覚めると目の前に自称女神が立っており、人生が終わったことを知る。しかし本当は死ぬ運命ではなかったと聞き、女神から新たな世界での生活を提案された。
「とはいえ……」
これからどうしたものかと周囲を見回す。本当に何もない――いや草木は生い茂っているし遠くに木々が風でわずかに揺れているのが見えるので、何もないとは言えないけど、人がいる様子も町がある様子も見当たらない。
「どうしたものか……」
その場にドカリと座り込んで空を見る。
「う~ん……」
目を閉じて少し考えてみる。
「……#$!! …………!!」
そもそもこの世界自体が良くわからない。俺は自慢じゃないけど高校を卒業して、頑固おやじと地元では有名だったラーメン店へ修行に入った。それからは毎日朝から夜までラーメンに関する事しか知識として頭に入れてない。
「&#お%!! …………#%%あ+*!!」
どどど
時折若い学生などが店に来て『異世界』なるものの話をしていたことはあるけど、その異世界なるもの自体が良くわかってない。
女神様の話によるとまったく違う世界なのだろうけど、そこで新しい風をなんて言われても、何をしていいかわからないし、そもそもこの世界って日本語が通じるのか? 英語すらまともに話せない俺がすぐに覚えられるとも思えないんだがな。
どどどっ!!
「あん? うるせぇななんだよ?」
少しずつ聞こえていた音が、考え事をしている俺の邪魔をする。音のする方へと顔を向けるとそこにはこちらに向かって土煙が上がっていた。
「は? 何か……くる?」
目を細めながら立ち上がり確認する。
どどどどど!!
どどど!!
「な、なんだあれ……」
こちらに向かって大きな牙の生えたイノシシのようなものが、ものすごい勢いで走って向かってきている。その後ろから、小さいながらも人のような存在も見えた。
「$&%&!! おV&%TR%$!!」
その人のような存在が身振り手振りで何かを伝えようとしている。
「あ、これってまずいやつ? なんて考えてる場合じゃないな!! ヨシ逃げるか!! イノシシみたいだからすぐには曲がれないよな」
ぐっと体を低くし、イノシシのようなものが近づいてくるのを待ち、そのタイミングをうかがう。すんでいたところが田舎だからイノシシに遭うなんてこともあったし、その緊急対応方も一応は知っている。知っているけどしたことは無いからうまくできるかは運次第という所。
ドドドドドッ!!
ドドド!!
向かってくる音が変わり、もうすぐ到達するという所で、俺は奴らの進行方向から真横へダッシュを始めた。数秒程度走ったところで後方を確認する。
ドドドド!!
ドドドド!!
ブフゥーーー!!
「追ってこれるんかぁーい!!」
そいつらは鼻息荒くも俺を追ってきていた。
――あ、これはダメだな……女神様すんません。俺、転移してすぐ死んじゃうみたいです……。
『ちょっと横に飛んで!!』
「え!?」
いつの間にか俺の横を同じスピードで走っている女の子に気が付き、ビックリしていると「チっ」と舌打ちされて突き飛ばされた。
「うわぁ!!」
『邪魔だからごめん!!』
その女の子はイノシシのようなものの前に先回りして、大きな斧のようなものを振りかぶると、とても女の子が振れるような速さではない速度で横なぎした。
ぼごぉ!!
ぶふぃ!!
『ハル!!』
『はい!!』
ズズンと大きな音を立てて地面に落ちたイノシシらしいーーいやもうイノシシでいいや。そいつらをめがけて先ほどの女の子じゃない子が両手を添えて何かをつぶやく。
『ファイアボール!!』
両手が光ったと思った途端に炎の塊が出てイノシシに向かっていき、イノシシにあたると二頭同時に炎に包まれた。
『ヨシ!!』
ぷぎゃ!!
ぎょ!!
直撃された炎に包まれ、しばらくすると動かなくなる。
『やったぁ!!』
『やったっていうけど、それじゃ皮は買い取りつかないよ?』
『あ……ごめん。早くしないとって思ったら……』
『まぁいいよ。それよりも……』
俺を突き飛ばして斧をふるった女の子が俺の方へと近づいてくる。その後方では別の子がイノシシを確認していた。
『危ないでしょ!! 何してるのよこんなところでボケっとして!!』
「え!? あ、えっと……」
両手を腰に当て、転がったまま腰を下ろしていた俺に顔を近づけてくる。目が大きくて白い髪の毛の女の子。そして威嚇するようなピンととがった猫のような耳。体の後ろでゆらりと揺れる白く細いしっぽ。
――え? けもみみ……だと!? と、しっぽ!?
『ナツぅ~。討伐部位は取ったよぉ~』
その後ろからもう一人の女の子がナツと呼ばれる女の子の横へと並んだ。その女の子は茶色の髪で大きな耳を持っていて、ふさっとした尻尾を揺らしている。
『大丈夫ですかぁ?』
「え?」
『私たちの言ってることわかりますぅ? わかったら返事してほしんですけどぉ~?』
「あ、えっと……やば、やっぱり何言ってるかわかんねぇや」
たぶん心配してくれているんだと思うけど、やっぱり何を言っているのかはさっぱりわからない。女神様ぁ!! できれば言語だけはわかるようにしてほしかったです!! 天に向けて両手を合わせると、スッと一条の光が差した。
――あ!! ごめんなさい忘れてたわ!! でも今からじゃつけられないの。ごめんなさい甲斐さん頑張ってください。
そんな女神さまの声が脳内に聞こえてきた気がした。
それから身振り手振りを交えて、自分がここに一人でいたこと、言葉は全くわからない事、行くところもないことなどを懸命に伝えた。
そして自分をカイ・テッタと指をさしながら伝えると、2人は名前だと理解してくれたのか大きく目を見開いて驚いていたが、猫耳の女の子がナツという名前であること、犬耳の女の子がハルという名前であることを指さして教えてくれた。
『テッタ様でいいのかな?』
「テッタでいいよ?」
自分を指さして「テッタ」というと、うなずいてくれたので、それで通すことにして、ひとまず先ほどのイノシシの方へと向かっていく。
『ナツ、肉とかはどうするの?』
『持てる分だけ持っていこうか』
『今日はお肉だね!! やったぁ!!』
『でもコイツ肉固いのよねぇ……』
何やら二人で相談しているようだ。肉を切り出しながら渋い顔をしている。異界のイノシシにちょっと興味がわいてきて、俺もそれを見ようかと近づいていく。
『興味あるの?』
俺の方へと肉を差し出してくるナツ。
「見てもいいのか?」
指で目をさし次に肉をさすと、こくりと頷くナツ。
――ん? なんとなくだけど豚に似てるような気がするな。肉質は……これは固いな。他の部分はどうなんだろうか。
他の部分も見せてくれないかなとイノシシの体の方を指さすと、ナツが近づいてきてイノシシの体を指さしていく。見たい部分を俺も指をさし、その部分をナツが切り取ってくれた。
「血抜きしてないから生臭さは捨てきれないけど、ここはロースか? さっきの部分よりは柔らかくて使えそうだな」
『食えそうなの?』
俺が一人でぶつぶつとつぶやいていると、肩をちょんちょんと突いたナツが、自分の口に肉を運ぶようなしぐさをした。それから少しほかの部位を見ていき、食べられそうな部位をナツに指さしていく。
「あぁ、たぶん食えると思うよ」
こくりと頷きながら、ぐっと親指を立ててナツに俺も同じように口に運ぶしぐさをすると、ぱぁっと華が開いたような笑顔を見せる。
『ハル、この人がこの部分食えるって言ってるから、少し多く持っていきましょう』
『え? 本当に食べられるの? コイツあんまり食べてる人いないよ?』
『まぁ食べれなくても干し肉にでもすればいいんじゃない?』
『そうだね。物は試し?』
『そうそう』
二人で何か相談して、うなずきあい、俺が言った部位を切り取っていくと、あたりは陽が落ちてきて暗くなり始める。
『さてっと。そろそろ帰りましょうか』
『そうだね。あんまり遅いと心配されちゃうし』
『で、テッタ様も一緒に行くことにするけどいいかしら?』
『でも大丈夫なの?』
『大丈夫……とは言い切れないけど、このままここに放置もできないでしょ? 帰ったらギルドマスターに相談してみましょう』
『ナツがいいていうならそうするけどね』
二人が俺を見ながらこくりと頷き、俺の方へと近づいてきて、歩くしぐさをしながら指をさす。
「お? ここから離れるのか?」
俺も同じようにして指をさすと、ナツとハルがうなずいて歩き始めた。俺はその二人の後を追うように歩き始める。
――何とかできたな。しかしケモミミのある人か。獣人っていうんだっけか……。
ある日の店での学生たちの会話を思い出しながら、俺は揺れる尻尾2本を見ながら静かに二人の後をついて歩いた。
お読みいただいた皆様に感謝を!!
連載をするのが久しぶりという事で緊張してますが頑張ります。
いつもの様に見切り発車ですが(笑) よろしくお願いします。
今回のお話ですが、ラーメンにこだわったお話となる予定です。バトルは無いと思いますけど、食材探しなどにはいくかも?
その辺はおいおい考えます(さすが見切り発車連載w)
次回
第3話 町へ
お楽しみに。




