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異世界でラーメン店『北の方』始めました  作者: 武 頼庵(藤谷 K介)
第1章 遥か先

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15/20

第15話 プレオープンの喧騒



 手伝いをしてくれる子が俺のところへと通ってくれるようになった。

 

 なかでも『出会い方』といった点で少しだけ長がある、リーク・ルーク・リザの3兄弟はほかの子たちと一緒に毎日来ている。


 最初に手伝ってもらう予定だったのは、売り子とゴミの回収くらいで、シュウマイを蒸して容器に入れる――そこまでは考えてはいなかったが、この三兄弟が思った以上にやる気を見せていて、一番上のリークは蒸し上げる係で、ルークは蒸しあがったものを木製のトレイに乗せる係を、リザがお金の受け取りとお金管理をしている。


 その他にも孤児院から手伝いに来てくれる子供たちもいて、周囲のごみを拾ったり、手渡した食器の後片づけをしてくれたりと、子供の体力恐るべしと感じるほどに動き回ってくれている。


 特にリークは、料理に興味が有るみたいで、材料の仕込みから、調理の方法、保存の仕方など俺の作業を見て学んでいる最中。



 まだ13歳だと聞いた時には少し考えることもあったが、毎日元気な顔を見せてくれるので、俺も余計なことは考えないようにした。


 そうしてようやく出店を出す初日が訪れる。初日とはいっても俺的にはプレオープンに近い感じ。本格的なオープンは次の以降の予定だ。



♢♢♢♢♢



 この世界は、1日が24時間ほどで、時間の掲示も地球と同じ。1時間、1分間、1秒間という形で分かりやすく、俺にはとてもありがたい。


 時計も数千年前に魔道具として開発されていて、その時に世界基準が周知されたみたいだ。そういうものを作れる天才ってどの世界にもいるんだよね。


 さらに、嬉しいことにこの世界は四季が有る。日本人としては春夏秋冬の季節の移り変わりを感じられることも一つの楽しみになっている部分が、きっとDNAのどこかに入っていると思うほど、その季節感は大事に思ってるから、温かい季節と寒い季節はあると聞いた時は嬉しかった。


 ただ、この世界では『春夏秋冬』とは表現しないで、雨季、乾季、冬季というらしい。


 桜が咲いたら花見をするのが楽しみな日本人からすると、少し季節感的には物足りないけど。


 その話をなぜしたのかというと、孤児院で畑での栽培をしてもらう用に、種などを運んでいた時にシスターに聞いたのだ。


 季節によって収穫できる野菜が違うという話から、そういう話の流れでどうなっているのかを聞いた。


 この世界に生きてきたのなら、それが当たり前になっているのにというような不思議そうな顔されたけど、俺は山の中育ちで涼しい所で育ったから、その辺の事は良く知らないんだとごまかしておいた。


 孤児院の畑の方も、子供たちの歓声を聞きつけた周囲に住むおじさんや、主婦の方々も手伝ってくれて、思った以上に広い畑が出来上がった。


 すべてをすぐにとはいかないだろうけど、これで少しは財政的なものも賄えるようになるんじゃないかなと思っている。



「リークそろそろ開けるんだ」

「はい師匠!!」

 いつの間にか俺を師匠と呼び始めたリーク。俺も嫌ではないからそのまま呼ばせている。


「良し、盛り付けを頼むぞルーク」

「まかせて!!」

 兄に負けないくらい元気なルークが、蒸篭からリークが大皿へ移したシュウマイを、木皿の上に乗せていく。


「リザは注文の数と合ってるか確認して、この櫛を指してくれ」

「わかりました!!」

 この屋台は基本的にその場で食べるイートイン方式をとっている。屋台の横に食べ終わった皿や櫛を確保して、それを後ろで水洗いし、きれいに拭いてから再度商品を提供するスタイルだ。

 

 これも孤児院からの帰りにラウルさんに頼んで作ってもらうようになったもの。当初は持って帰ってもらうようにしようかと思ったが、容器代もばかにならないから最初はこういう売り方の方がいいとアドバイスをもらった。確かに資金が多くあるわけじゃない今は、この方法が一番コスパがいいと思う。


「よし!! じゃぁ始めるぞ!!」

「「「おう!!」」」

 俺は本日までに用意していたシュウマイを、蒸気が黙々と立ち上る蒸篭の中へと並べ始めた。

 

――どれくらい売れるかは運しだいだな。

 今日はプレオープンの日。

 本格的に商売になるかどうか、どこかで詰まったりしないか、お客さんの対応の仕方や、その後の片づけまでをある程度予測する日に当てる。


「お? やってるな」

「あ、ラウルさん」

 商業ギルドから指定された路地にお店をだし、最初のシュウマイを蒸篭に入れたとき、ラウルさんが声をかけてきた。


「今日はテストの販売です」

「あぁ、うちの店のやつらも買いに来るらしいから、楽しみにしてるぞ」

「あざます!!」

 手をひらひらとさせて歩き去っていく。


「あ、あった!!」

「本当に今日からなんだぁ」

「お? ナツにハル!! 来てくれたのか!!」

 二人そろって屋台の方へと歩いてくる。


「あのウインナーを作ったテッタさんの新作だもの、絶対おいしいと思って買いに来たよ」

「これからクエストだから、その前の朝ごはんです」

「なるほどな。もう少し待ってくれよ」

「「はい」」

 屋台の前でじぃ~っと蒸篭を見ているナツとハルに釣られたのか、道行く人達が次第に興味を持ち始め、俺たちの方へ近づいてきて、三兄弟に話しかけてくれている。


「よし!! いい感じだ!! リーク販売開始だ!!」

「はい!!」

「「いらっしゃいませぇ~!!」」

 俺の声を合図に、三兄弟が客引きを始める。そういう部分も俺が指導をした。


「ほふっ!! あっつ!! でもうまぁ!!」

「熱いけど……やっぱりこの肉汁は正義……」

 ハルもナツも気に入ってくれたようだ。


 二人の事が呼び水となったのか、それまで警戒していたのか、興味はあれど迷っていたのか、藤巻に見ていた人たちも、屋台へと押しかけてきた。


 思ったよりも売れていくシュウマイにほくほくするおれ。

 しかしそんな俺に冷や水をかぶせる声が聞こえる。


「なんだよこれ!! 獣人の毛が入ってるじゃねぇか!!」

「おいてめぇ!! 毛が入ってるもんなんて食わせようとしやがって、金払え!!」

「そもそも獣人と一緒に食うなんてことが間違ってるんだよ!!」

 どのワードもあからさまに『獣人』の事を下げようと言っているのはわかる。

 それが誰の事を指しているのかは明白だ。屋台の前でおいしそうにシュウマイを食べていた二人。ハルとナツ。そして孤児院から助っ人として来てくれている子の一人も、熊の獣人さんである。


「あ……」

 獣人の子はさっと耳を手で隠した。


「ちょっと!!」

「あんたらまた……」

 声を張り上げた人に向かってハルとナツが詰め寄る。


「はん!! ここは冒険者ギルドにも商業ギルドにも入れるのかよ!? おまえらは道に捨てられたもんでもくっとけや!!」

「ぎゃはははは!!」

「俺たちと一緒の物が食えるなんて思うんじゃねぇぞ!!」

 屋台の前で大笑いする男三人。


「帰ってください。お代はいりませんので」

「あん?」

 ナツやハルの前にスッと入ると、男どもをにらみつける。


「良いから帰れって言ってんだよ!! てめぇらなんかに食わせるもんはねぇ!」

「てめぇ誰に言ってるかわかってんのか?」

「あぁ? しらねぇよ!!」

「俺たちが声かけりゃ、こんな屋台になんて客が来なくなるんだぜぇ?」

「どこのだれで何様か知らねぇがな!! こちとらものを売る客ってもんを選べるんだよ!! てめぇらには売らねぇ!! とっとと帰りやがれ!!」

 大の男を前にして啖呵を切る俺。


「面白れぇじゃねか」

「てめぇらやっち――」

「そこまでにしとけ」

 男二人が腰の物に手をかけた瞬間、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「マクガーさんと、ラウルさん。それにザイツさんまで」

 ぞろぞろとそろって登場した、俺が知ってるお偉いさんたち。マクガーさんが俺に頷くと男たちの前に立った。


「さてこの国は、確かに以前は獣人の国といろいろとあった。だが今は獣人の国とは義兄弟ともいえる関係になっている。だからそのような発言は認めることができんな。ましてや、冒険者でもない普通の一般人に対して、その腰の物を抜こうとしているのを黙ってみているわけにはいかんな」

「オウそうだな。それにこんなうまそうなもんを売ってる店だぜ? なくしちまうのは持ったいねぇだろ?」

「そうですね。これからもこの町にいろいろ恩恵を落としてくれそうな方ですしね」

 マクガーさん、ラウルさん、そしてザイツさんがそれぞれ声を上げる。


「……ちっ!! まずいもんをまずいって言って何が悪い!!」

「え? これをまずいっておっしゃるんですか!?」

 男の1人が、シュウマイを吐き出してそう口にした。それを見てザイツさんが驚きの表情を見せる。


「お前たち、ただ因縁をつけてるようにしか感じんな。この後ビルドで話を聞こうか」

 マクガーさんが手を上げると、スッと数人の冒険者らしい格好の人たちが3人を取り囲む。


「せっかく買いに来たのにすまんな。仕事ができてしまった」

「あ、いえ」

 頭を下げるマクガーさん。


「お? ならあとで届けてやるぜ?」

「本当か?」

「何個がいい?」

「じゅ、いや20個頼む」

「わかった」

 マクガーさんにラウルさんが提案すると、すぐに交渉はまとまった。


「まったく、おいしいもの静かに食べれないんですかねぇ」

「あははははは」

 ザイツさんはすでに黙々と1人シュウマイを頬張っていた。


 以前も少しナツやハルに対して、人たちのあたりがおかしなところがあったと記憶しているが、少しじゃなく根深いものがありそうだ。


――プレオ―プンにしてはうまくいったか? 問題点も何点かわかったしな。

 目の前で喜んでくれているお客さんを見ながら、俺は次の事を考えていた。


お読みいただいた皆様に感謝を!!


ちょこちょここの世界の環境などについて挟んでますが、それはテッタがこの世界の事についてまなんでいるのと同じだと思っていただければなと思って書いてます。


次回

第16話 フラグ回収はお早めに

お楽しみに!!

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― 新着の感想 ―
テッタさん、プレオープン、おめでとうございます! 子どもたちの働きも素晴らしいですね。 テッタさん、こちらの言葉で啖呵を切れるまでになっていて、言葉はかなり上達しましたよね。 多少のトラブルはあったも…
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