第14話 3姉妹
頭にピコンと軽快な音が響いたのもそうだが、奥に見える畑の様子を見る限り、きっとこの孤児院で食べるだけの物を作っているんだろう。
つまりは余裕がないというわけだ。
「あ、あのお手伝いというのは?」
「あぁ、えっと、おれあやしいものじゃないですよ?」
「テッタよ、そんな言い方をしたら、余計に怪しく思われるだろうが!! シスターはお前のことをよく知らん。子供たちだってそうだろ? しっかり話をせんか!!」
「あ!! そうですね。ではお話ができるところへいきましょう」
ラウルさんに促され、シスターのアキさんに先導してもらい、孤児院が併設されている教会の方へと歩いて向かう。
教会の中へ入ると、外で会わなかった子供たちも数人いて、中を掃除したり、小さな子たちの面倒を見ていたりと、自分にできることをしているように見える。
そんな子たちの様子を見ながら進んでいく、目の前に大きな白い像がステンドグラスから差し込む光を纏い輝いて見えた。
――ん? これってパリピ様かな? でもちょっと違うような気がするけど……。
「いかがいたしましたか?」
「あ、えっと……」
像を言見ていたら後ろからアキさんに声をかけられる。
「このひと、めがみさまですよね?」
「そうですね。教会ではこの世界には一人の神様がいて、その方がすべてをお造りしたと説いておりまして、この像もその神様をかたどったものと言われております」
「そうなんですか……。おなまえはなんとおっしゃるんですかね?」
「女神シンキュア様でいらっしゃいますね」
「へ?」
変な声が出てしまった。俺の声を聴いてアキさんも不思議そうな顔をする。
――ちょ、ちょっとまて!! シンキュア様って誰だよ!! パリピ様はこの世界の神様じゃねぇの?
「さぁ、まずはせっかくおいでになられたのですから、お祈りを捧げましょう」
あたまのなかがパニックではあったが、アキさんに促されるまま、俺たちは像の前に膝をつき、両手を合わせて祈りをささげる。
「こんにちは」
「え?」
「お久しぶりです!! パリピュアですよ」
声が聞こえてきたと思って目を開けてみると、目の前には真っ白な空間があり、そこにあの女神さまが一人立っていた。
「め、女神様……今日はパーティしてないんですね?」
「朝までナイトフィーバーして頭が――て、そのパリピではないですぅ!!」
いつも通りの反応が返ってきたので、パリピュア様で間違いないみたいだ。
「どうですかこの世界の生活は?」
「えっと、説明のないまま草原の真ん中に放置されたり、言葉が分からなかったり、イノシシ野郎に食われそうになりましたけど、何とか生きてますね」
「……すみません!! 本当にすみません!!」
ぺこぺこと頭を下げるパリピュア様。
「いえ、ナツやハルに助けられて、ギルマスや宿のおかみさんなどと仲良くしてもらってますし、楽しく生活はしてますよ」
「そういっていただけるとありがたいですぅ。な、何か聞きたいことなどありませんか?」
「そうですね……パリピュア様ってこの世界の女神様なんですよね? お一人なんですか?」
「あぁ……その事ですか。いえいえ。私って実は3姉妹なんですよぉ。この世界も姉や妹と管理してるんです」
「え? じゃぁあの教会の像は?」
「あれは妹のルールメアですねぇ。私はあまり地上に顕現しないので、姿を見たことがある方は現状では甲斐さんしかいないと思いますよ? あの子は巫女となった子たちにお告げを出すなどの都合上、夢の中などで顕現することがあるのでその子がこの世界の神様だと思ってる方が多いみたいです。なのでこの世界の女神はシンキュアという神様で、顕現しているのはそのシンキュアだと思っている方が多いのですよ」
パリピュア様が三姉妹とはびっくりだけど、あれ? この話を俺が知ってるってまずくないか?
「大丈夫ですよぉ。私の声は甲斐さんにしか聞こえないようになってますから」
「あ、やっぱり時々聞こえてくるあの声ってパリュア様の声なんですね?」
「はい。甲斐さんの事は気になってつい見ちゃうんで」
ホホに手を当てて「きゃっ」と照れるパリピュア様。
「それであのよくわからないものが付いてるんですね?」
「称号ですね!! ですです!! 女神と話ができるなんてすごいんですよ?」
あまり胸を張ってエッヘンはしない方がいいですよパリピュア様。その……突起が……。
「あらいやん。やっぱり甲斐さんて……」
ジト目で見てくるパリピュア様。
――いや、今のは俺悪くないよね!? 見ちゃうよ? そりゃ見ちゃうけどさ!!
「甲斐さんだけですからね?」
「それをどうとらえていいかは悩むところですね……。あれ……薄く……」
「残念ですがお別れの様ですね。 今まで通り、甲斐さんは甲斐さんのままで過ごしてください。では、またいらしてくださいね」
スッと女神様が薄くなっていき、目の前でフラッシュバックのような現象が起きる。
「――さん!!」
「――ッタ!!」
「ん?」
目の前にアキさんの顔があり、目には涙をためている。
「テッタさん!!」
「テッタ!!」
「あれ? ここは?」
教会の像の前に置かれているベンチにアキさんがすわり、俺を膝枕してくれている状態。なので目の前にはアキさんの顔があったというわけで。
「良かったです!! どこかお加減が悪いところは無いですか!? 魔法でケアをしては起きましたけど、ヘンなところとかあったら教えてくださいね!!」
「あ、はい……」
「何があったんだ?」
ラウルさんも心配そうに俺に詰め寄ってくる。
――パリュア様に会ったことは言わない方がいいよな?
『できれば内緒でお願いしますねぇ』
またも聞こえてくる天の声。
「えっと天界? からお告げがあったといいますか……」
「なんだと!?」
「え? そ、それじゃテッタさんは巫女様なのですか!?」
「あ、巫女じゃないです」
とはいえ、アキさんからすればものすごく大変なことに遭遇してしまったわけで、どうしようかとあたふたし始めた。
できれば本当にお告げなのかわかるまでは内緒にしていてほしいと真剣に頼み込み、アキさんはしぶしぶ頷いてくれたけど、きっとアキさんの中で俺のことに関しての興味が爆上がりしてしまったに違いない。
「あ、あの手伝いの事なんですけど……」
「え? あ、そ、そうでしたね」
必死に話題を変える俺。
「お手伝いというのはですね、俺が出すお店の手伝いをしてほしんですよ」
「お店……ですか?」
「はい。屋台を出したいと思っていたんですけど、人手が足りなさそうでして。俺には知り合いもあまりいないので声をかけることもなかなか……」
「そうですか。屋台を……」
アキさんが考え始めるので、矢継ぎ早に畳みかける。
「もちろん、お手伝いしてくれた子たちにはご飯と、少ないですがお金をお支払いします。それとここで育ってている野菜を使いたいので、畑を少し大きくしませんか?」
「え? でも、そこまで余裕が……」
「その点は俺が出しますので、安心してください」
「……あの子たちと相談してみますね」
「はい」
アキさんが子供たちを集めて話し合いを始めた。
「テッタ」
「何ですか?」
「おぬし、ずいぶんと会話ができるようになったな」
「え?」
そういえば、今までよりも話の内容がよくわかるし、発する言葉もはっきりとしているような気がする。
「たぶん……『話し相手』だから、上手くなったんじゃないですかね」
「何のことを言っているのかわからんが、今までよりも理解できるというのは良いことだな」
天にいるであろうパリピュア様に心の中で感謝し手を合わせた。
♢♢♢♢♢
「屋台の手伝いですが、子供たちはやってみたいと」
「そうですか!! 良かった!! これで何とかなりそうです!!」
「それで、その……。毎回同じ子だけというわけには……」
「もちろん!! いろいろな子に交代で来てもらった方が、子供たちもいろいろと覚えることができるでしょうし、先に繋がると思いますので」
「そこまで考えて……?」
「子は宝ですよ?」
大きく目を見開いて驚くアキさん。その後ですごく優しく微笑んでくれた。
それから少しの間子供たち屋台でする仕事のことを教え、畑で作る野菜の事をアキさんに相談し足りない分を後で持ってくることにして、俺とラウルさんは教会を後にした。
「パリュア様、シュウマイはあとで持ってきますからね」
ラウルさんと別れてから、夕日がオレンジ色に街を染めていく中、空に向かってつぶやいた。
『あ、忘れてましたぁ!! ぜひ!! ぜひ!! よろしくお願いしますぅ!!』
鈴の音が凛と鳴るようなパリピュア様の声が聞こえてきて、そのテンションの高さに噴き出してしまったのだった。
お読みいただいた皆様に感謝を!!
現地語を、ようやくまともに話せるようになった哲太。
これからはより良いコミュニケーションが取れて円滑になっていくでしょう。
パリピ様は3姉妹!! 姉と妹がどんな人かちょっと気になるw
次回
第15話 プレオープンの喧騒
お楽しみに!!




