第13話 スカウト
※まだ主人公は片言ではありますが、徐々にしっかりとお話しできるようになってきました。平仮名だけの文章ももうすぐ終わりです。
ラウルさんと並んで歩いていく最中、布袋を持っている手からスッとものが消えていることに気が付いた、
「あっ……」
「どうした?」
「えっと……」
先ほどまで俺の手に合ったものはラウルさんも見ているので、それが何なのかわかっている。
「やられたな?」
「やられた?」
「ほれ……」
ラウルさんがひょいと首で示す方向を、小さな子供たちが駆けていく後姿が見える。
「こども?」
「そうだ。どの町にも少なからずああいった子供たちはいる。ただこのツバサの町はほかの町よりも少ないはずだ。孤児院があるおかげで、小さな子供たちも少なからず食べてはいけるからな」
「では?」
肩をすくめてラウルさんがため息をつく。
「それでも、そこに入っていない者たちもいるのさ。孤児院とはな、この町に住んでいたものの親が病や、魔獣やモンスターといったものに襲われて、育てるものがいなくなってしまったものたちの受け皿だ。しかし片親がいるとなると、孤児院では育てる名目がない。そういう子供が、路地裏などで稼ぐ方法が、今テッタがやられたことだな……」
「なるほど……」
「どうする? 追いかけるか?」
「ですね。ちょっとはなしを聞きたいと思います」
ラウルさんの目が真剣なものに変わり、俺はその意図を読み取ってはいたけど、それでも彼ら彼女らから話を聞きたいと思ってしまったのだ。
「はぁ~しかたないのぅ。どれ、わしから離れるでないぞ?」
「すみません」
お前さんは弱そうじゃからな!! がはははと大きく笑いながら、先ほど子供たちが駆けていった方へと歩き出すラウルさん。俺もその後を追った。
♢♢♢♢♢
あたりは薄暗く、細い道の両脇にずらりと並ぶ古い小屋のような家の数々。繁華街からは遠く、この町へ初めて来たときに見た防護壁の傍である。
日当たりは壁にさえぎられ、風も壁にあたって噴き上げるか、吹き下ろすという、人が住むとしては環境があまりいいとは見えない。
そんな住宅地の中をラウルさんは静かに進んでいく。
町には路地が多くあるが、家事などの防災のために家などの建物がない広場のような部分も存在していて、そこに数人の子供が布袋を開けて喜びの声を上げているところだった。
「おい!! そこのガキども!!」
「え?」
「ひっ!!」
「あっ!! さっきの……」
そういって俺の方を見たひとりの少年が声を上げる。間違いなく先ほどの少年たちの様だ。
「な、何か用かおっさん!!」
「こ、こんなところまで来やがって!! ただで済むと思うなよ!!」
「…………」
男の子二人が、俺たちの前へと踏み出してきて、1人だけ髪の長い子はその二人の後ろへと隠れた。
ラウルさんと子供たちの間に緊張感が走り、沈黙の時間が続く。
「それ、食ったか?」
「え?」
「は?」
ラウルさんにかばわれながら、俺はその子たちに向けて声をかけた。
「食ったか?」
「はん!! 食ったらどうだってんだ!!」
「そうだそうだ。もう腹の中に入っちまったもんは、返せって言われても返せねぇぞ!!」
男の子二人はたぶんまだ食べてはいないだろう。後ろにかばっている子がずっと持っているのだから、その子だけがきっと先に食べていたに違いない。
「……うまかったか?」
「はぁ?」
「何言ってんだ?」
「いや、だからそれうまかったか?」
俺の問いかけに驚き、しかし誰も答えない。
「あぁ、盗っちまったことを責められると思ってるのか? だったら気にするな」
「テッタよ、気にするなは言い過ぎだ。れっきとした犯罪だぞ?」
「まぁそうですけど、俺も盗られやすそうにしてたのが悪いってことで……ね?」
「はぁ~……。まぁテッタが言うんなら、俺はあとは何も言えねぇよ」
手で顔を覆い、あきれるようにため息をつくラウルさん。
「さてと、もういちどきくけど、それうまかったか?」
「……まだ食ってねぇよ」
「今から食うところだったんだ」
「おいしかったです!!」
やっぱり男の子は突然おれたちが来たもんだから、まだ食べてなかったみたいだ。その代わり後ろに隠れていた子がいい笑顔で返事を返してくれた。
「そっか……それは良かった。君たちもたべてみてくれ」
「いいのか?」
「食べたらあんちゃんたち俺たちを捕まえないか?」
「つかまえない、つかまえない」
手を振ってそれを否定し、どうぞと手を向ける。
男の子二人も、布袋に入っているものを手に取り、ポイっと口の中へ放り込んだ。
「うまぁ!!」
「肉だ!! 久しぶりの肉ぅぅ!!」
「おいしいよね!!」
三人ともに喜んでいるのを見て、俺は少し心の奥がほっこりするのを感じた。
そのまま三人が袋の中身を食べきるまで待ってあげる。
食べ終わった順に俺たちの前に来て、土の上に正座で座る三人。
なんとこの三人は兄妹で、ここ最近になってこのツバサの町へと流れついたらしい。
もともとは両親と一緒に越してきたのだが、父親は冒険者になってすぐに実力を過信しすぎて突っこんで行った挙句に魔獣に喰われてしまい、父親がいなくなったことで母親が働きに出たのだが、冒険者の男とともにどこかへといって帰ってきていないという。
いつまで待っても帰ってこない母親をあてにもできず、どうにかしてお金を稼ごうと冒険者になるためにギルドを訪れたが、年齢が低すぎてダメだと断られた。
しかしギルマスが孤児院に話を通してくれて、孤児院で過ごせるようになったのだけど、なかなか馴染むことができず、また迷惑をかけたくないという思いから、こうして兄妹だけで外に出て人の物を盗ったりして自分達の分だけでもと稼いでいたらしい。
「うぅ~ん……」
「どうしたんだ?」
三人の話を聞いて考える。
この三人はいわば独立心が強いともいえるし、他人に迷惑をかけたくないという、優しい心も持っている。
「ラウルさん、孤児院ってどこですか?」
「……行くしかねぇか……」
「そうですね」
座ったままの三人を立たせ、俺たちは孤児院へと向かい歩き出した。
♢♢♢♢♢
俺が想像している孤児院とは、日本にて時々ニュースなどで知ることができる、児童保護施設のようなものなのだけど、この世界『フクキタリ』のこの国においては、国が管轄し各領で管理運営しているものと、神様を祀る教会が孤児院として孤児を受け入れているものの2種類があるらしい。
国による運営がされている孤児院では、国からの補助金のほか、貴族たちからの寄付などで賄われているという点と、教会の方では一般の人や商会、各ギルドなどが運営を手助けしているところが違う。
ツバサの町では、この2種類の孤児院があるが、三人がいた方は教会が運営母体をしている方であるようだ。
孤児院につくと、外で遊んでいた子供たち数人が駆け寄ってきて、三人に声をかけていた。
「あの、どうなされました?」
「あ……」
「シスター」
子供たちの様子を見ていると、教会の中から制服を身にまとった女性が近づいてきて声をかける。
「えっと……ここの代表のかたですか?」
「はい。アキと申します。それで……」
「俺は、哲太と申します」
「俺はラウルだ」
お互いに名乗りを上げて、頭を下げ、ここに来た理由を簡単に説明した。
「まぁ!! そんなことを!? リーク!! ルーク!! リザ!! こっちにいらっしゃい!!」
「「「はい……」」」
怒られることが分かっているけど、呼ばれたからには従うしかないとアキさんの方へ近づいてくる三人。
「あなたたちはなんてことを――」
「畑、つくってるんですね」
「え?」
アキさんが雷を落とそうとした瞬間、俺が話を遮る。
ここについてから子供たちが集まってきて、アキさんが来るまでの少しの時間で、俺はこの孤児院というか教会の周辺を見回していた。
そこで目にしたものが敷地の奥にある、土が少し盛られたような跡。
「今も作ってるんですか?」
「えっと、はい。ここで食べる分はみんなで作ってますが……。それと少しばかり市場の方へも出しております」
「なるほど……」
アキさんの話を聞いて考える。
「まさか……」
ラウルさんは俺の方を見て目を大きく見開いた。
ピコン
【愛情たっぷりに育った新鮮野菜。料理に使われることを願っている】
――こんな表示が見えちゃったら、もうそうしろって言ってるようなもんじゃないですかパリピ様!!
「なぁ、きみたち、俺のお店をてつだってみないか?」
俺から発せられた言葉に、ラウルさん以外の人たちみんなが驚いていた。
お読みいただいた皆様に感謝を!!
町で出会った三人の子供、話を聞くと孤児院で暮らす子供の様で……。
これでお店の人員ゲットだぜ!! となるといいなぁ(;^ω^)
次回
第14話 3姉妹
お楽しみに!!




