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異世界でラーメン店『北の方』始めました  作者: 武 頼庵(藤谷 K介)
第1章 遥か先

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第11話 食わせろ

※主人公はまだ言葉を覚えたてで片言です。それを表すためひらがな文章にて表記しておりますので、読みづらいかもしれませんが、表現上ですのでご理解ください。




 屋台を借りられるとはいえ、宿代を考えると3泊している間にそれなりの収入を得ないといけない。


 次も同じくらいの日数を泊れるようにと、小金貨分くらいは稼げたいところではあるが、俺の場合は屋台で稼げない場合は冒険者として稼ぐという手もないわけじゃない。


 ただ、この世界そんなに甘くはない。


 小さいころにしていたゲームのように目に見える『レベル』『経験値』なんてものは見えないし、強さの基準もそんなもので測れない。


 冒険者ギルドなどで確認できるのは、名前やスキル、犯罪歴などしか見ることができないようで、稀に女神さまからのかごなどが明記されることがあるらしいのだが、一般庶民ではめったになく、見つかったなら国ぐるみで囲い込みされるほど重要視されるようだ。


 俺もようやくこの世界の文字が読めるようになり、文章や単語の意味が分かるようになってきたときに、マクガーさんに見せてもらった。


――え? これって……。


「な?」

「え? あ、はい……」

「テッタ様には【目利き】っていう、聞いたことも見たこともないスキルがあるみたいだが、正直それ以外には何も問題は無い」

「……そうですね」

 いや、本当はそうでもなかった。というよりもマクガーさんは気が付いていないようなので、そのままスルーしたのだ。


【女神パリュアの話し相手】

【ラーメンの伝道師】


 まぁ、その……。いろいろ突っ込みたいとこはあるが、これをそのまま伝えてもいいものかわからないのでやめておいた。


――しかし俺以外には見えないとなると、パリピ様かな? 遊んでばかりいるわけじゃないんですね……。

 さすが女神様だなと感心すると、なんとなく頭のなかへ声が響く。


『遊んでないですぅ~!! ちゃんと仕事してますぅ~。甲斐さんひどい言いがかりですよぉ!! あ、見つかっちゃうとまずいと思って隠しておきましたよ。ほめてくださいね!!』


――うん。とりあえずスルーしておこう。

 凛と響く声を無視して、マクガ―さんに微笑んでおいた。


 

 そんな回想が巡るあたまを左右に振って、いつの間にか寝てしまっていたベッドから素早く起き上がり、階段を下へと降りていく。降りる途中からいい匂いがしていたが、宿のおかみさんがすでに朝食の用意をしている最中だったようだ。


「おはようございます」

「あら? もう起きたのかい?」

「はい。早くねちゃったようで……」

「良く寝れたかい?」

「もう、ばっちりです」

 そうかと返事を返したテンバさん。それから調理場の方へと戻っていく。


「あ、あの!!」

「ん?」

「その……。てつだいますよ?」

「は? そんなお客さんに手伝ってもらっちゃぁ……。とはいえ、調理担当の旦那が腰を悪くして立つこともままならないもんで、人手はほしかったんだわ。テッタさんはその腕を見てるからね。悪いけど手伝ってくれるかい?」

「もちろん!!」

 急いで宿の裏手に回り、水を汲んで手と顔を洗い、調理場へと入っていく。何をすればいいのかわからないからテンバさんの指示に従って動き、朝の朝食ラッシュを2人で回して乗り越えていく。


 その合間に、旦那さんとのなれそめやら、旦那さんが腰を悪くした原因などを聞いて、俺も今までの事を簡単に話すと、テンバさんが驚きながらも背中をバシッと叩いてにこりと笑い、俺もそれにつられて煮久しぶりに自然と笑った気がした。


「ふぅ~。さて……と」

「はぁ~……」

 宿に泊まっている人たちの朝食が済んで後片付けをし、俺とテンバさんで食堂のテーブルへと移動して椅子を引き腰を下ろす。


「テッタさんありがとうね」

「いえいえ。できることをしただけですから」

「そういわないで。あんたの宿代だけど、今日と同じように手伝ってくれるならおまけしておいてあげるよ」

「え?」

「食事付きで5泊。どうだい?」

 俺の前に手を開いて見せてニコッと笑う。


「あ、ありがたいです!! がんばります!!」

「はははは!! でも、テッタさんも商売するんだろう? きっと上手くいくよ」

「そうですね。そうなるといいけど……」

「そういえば、今日は木工職人のところに行くんだろ?」

「あ!! そうだった!!」

 ガタガタと音を立てて急いで立ち上がる。


「す、すみません。ちょっと行ってきますので」

「はいよ。気を付けてね」

 テンバさんに頭を下げて、急いで宿の外へと歩き出した。




♢♢♢♢♢


「おう!! いらっしゃい!!」

「あれ?」

 木工職人さんのお店に入ると、昨日受付に立っていた若い人じゃなく、子供のような身長で髭がもじゃっとしている男の人に挨拶された。


「なんでぇ? そんなにじろじろ見やがって。ドワーフがそんなに珍しいのか?」

「どわーふって何ですか?」

「ん? こりゃたまげたぜ。ドワーフを知らねぇのか。ドワーフっていうのはな――」

 そこからというもの、ドワーフとは何たるかを滾々と詰め込まれた。


「――てなわけで、手先の器用さはどの種族にも負けねぇのさ」

「はぁ」

「で?」

「はい?」

「何の用でい?」

 ようやく俺が訪れた目的を思い出してくれたのか、ごほっと一つ咳払いしてから聞いてくる。


「えっと、きのうたのんでおいたものを取りに」

「昨日? あぁ、あのへんてこな奴か!! ちょっと待ってな」

「はい」

 どたどたと音を立ててお店の奥の方へと消えていくおじさん。


「これでどうだい?」

「おぉ!!」

 数分後に手にもって現れて、俺の前においてどや顔を見せる。


「うん……。たのんでいたものとイメージがあいますね」

「良かった!! さすが俺様だぜ。で? これを何に使うんでい?」

「りょうりです」

「りょうり?」

「はい」

 俺は昨日の施策をした様子や、その時に足りないと思った道具のことなどを詳しくおじさんに身振り手振りを交えて話す。


「するってぇと? これはその『蒸す』っていう料理に使うってことか?」

「あ、いえ? むすっていうのはりょうりほうほうで、りょうりではないです」

「うぅ~ん……」

 おじさんは両手を組んで考える。


「食わせろ」

「は?」

「その『蒸す』料理を食わせてみろ」

「あ、いやでも……」

「その料理がうまくいったなら、()()()がさらに必要になるだろ? だから食わせてくれたら作ってやるよ」

「え?」

「新しいもんを作るなんて久ぶりだったし面白かった!! だからお礼も兼ねてな!! 食わせてみろ。俺が宣伝もしてやるから」

「なるほど……」

 確かにおじさんが言うことも間違ってない。俺がその料理の仕方をすれば、きっと真似する人も出てくると思うから、後々は多く必要になるだろう。


「あんた以外には作らねぇから安心しろ」

「……いえ」

「ん?」

「たのまれたならだれにでもつくってあげてください」 

 ちょっと考えたけど、俺の中ではすでに答えが出ていた。


「良いのか? これを登録しちまえば金になるんだぞ?」

「とうろくはしますよ。でもおかねはとりません」

「なんでだ?」

「ひとりじめするだけじゃ、ひろがらないからです」

「……なるほどな。面白れぇじゃねぇか……。気に入ったぜ!!」

 がはははと笑いながら、俺の背中をバシバシとたたく。


「いたい、いたい!!」

「あはははは。おめぇさん名前は?」

「哲太といいます」

「テッタか。覚えたぜ。明日これを使ってテッタの料理を作ってくれ。店か?」

「いえ。はじめは屋台からですね」

「そうか……。うん。その屋台も何なら俺様がテッタ仕様にしてやろう」

「え? でも、そんなことしていいんですかね?」

「まかせろ。これの登録と屋台の事を商業ギルドに伝えに行くぞ!!」

 ぐいっと袖を引っ張られて引きずられるようにして店を出ていく。


「ラウルだ」

「え?」

 どうにか引きずることをやめてもらい、一緒に並んで歩いていると、おじさんが手を差し出してきた。


「あ、哲太です」

「今後ともよろしくな。何かあれば俺のところにこい。テッタの思うものを作ってやるよ」

「あ、ありがとうございます!!」



 俺の生活に、新たな知り合いが加わった。そうして手にしたものが新たな風を吹き込んでいく。


お読みいただいた皆様に感謝を!!


料理を介して新たな知人の輪ができ始める哲太。

ようやく屋台を出すことに?


次回

第12話 無理じゃろな

お楽しみに!!

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― 新着の感想 ―
心強い、技術のあるドワーフさんに気に入られて良かったですね。 ひとりじめするだけじゃ、ひろがらない……確かに。 でもテッタさん、なんて欲の無い、いい人すぎです^ ^
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