第46話 「試練の日」
フェンリルの訓練から、さらに一週間が経った。
六人は、毎日厳しい訓練を続けていた。
基礎訓練、座学、実技訓練。
全てが、着実に力をつけていた。
そして、この日――
朝、六人は院長室に呼ばれた。
「来てくれたか、銀の絆」
エルヴィン院長が、六人を迎えた。
部屋には、凛とフェンリルもいた。
「今日は、重要な話がある」
エルヴィン院長が、地図を広げた。
「ここを見てくれ」
地図には、エルデン大陸の北部が描かれていた。
山々が連なり、その中に一つの印がついている。
「ここは、『影の谷』と呼ばれる場所だ」
エルヴィン院長が説明した。
「古代魔法文明の遺跡がある」
「そして、この遺跡には、『闇の王』に関する情報が封印されている可能性がある」
「闇の王の……」
あかねが、身を乗り出した。
「はい。千年前、闇の王を封印した賢者たちがこの遺跡に情報を残したという記録があります」
エルヴィン院長が続けた。
「もし、その情報が手に入れば、闇の王を倒す手がかりになるかもしれません」
「では、調査に行きましょう」
セリアが言った。
「ええ。それが、今日の実地試験です」
エルヴィン院長が頷いた。
「あなたたち六人で、影の谷の遺跡を調査してください」
「遺跡には、魔物や罠があるでしょう」
「それらを乗り越え、情報を手に入れてください」
「分かりました」
「ただし」
フェンリルが口を開いた。
「この試験には、もう一つ目的がある」
「もう一つ?」
「ああ。お前たちの連携を試す」
フェンリルが説明した。
「遺跡の中では、六人がバラバラになる可能性がある」
「その時、お前たちがどう行動するか」
「それを、見させてもらう」
「つまり、監視されているということですか?」
ダリウスが尋ねた。
「いや、監視ではない」
凛が答えた。
「ただ、遺跡の外で待機しています」
「もし、本当に危険な状況になれば、助けに入ります」
「でも、基本的には、あなたたちだけで乗り越えてください」
「分かりました」
六人が頷いた。
「では、準備を整えて、一時間後に正門に集合してください」
エルヴィン院長が言った。
「馬車を用意しておきます」
一時間後、六人は正門に集まった。
武器、防具、薬、食料。
全てを確認した。
馬車が、待っていた。
凛とフェンリルも、同乗する。
「では、出発しましょう」
凛が言った。
馬車が、動き始めた。
学院を出て、北へ。
影の谷へ向かって。
午後、馬車は山道に入った。
道は狭く、険しい。
両側には、深い森が広がっている。
三時間後、谷が見えてきた。
深い谷。
底が見えないほど、深い。
そして、谷の中腹に、石造りの建物が見える。
古代遺跡だ。
「着きました」
馬車が、谷の入口で止まった。
六人は、降りた。
遺跡への道は、谷の斜面に沿って続いている。
細い道。
一人ずつしか通れない。
「ここから、あなたたちだけで行ってください」
凛が言った。
「私たちは、ここで待っています」
「はい」
六人は、遺跡へ向かって歩き始めた。
細い道を、慎重に進む。
一歩間違えば、谷底へ落ちる。
三十分後、遺跡の入口に着いた。
大きな石の扉。
扉には、古代文字が刻まれている。
あかねが、鑑定能力を使った。
『真実を求める者のみ、入るを許す。試練を乗り越えし者のみ、知識を得る』
文字が浮かび上がる。
「試練、か……」
セリアが呟いた。
「行きましょう」
セリアが、扉を押した。
扉が、ゆっくりと開いた。
中は、暗い通路だった。
六人は、松明を灯して入った。
通路は、長く続いていた。
壁には、古代文字や絵が描かれている。
あかねが、鑑定しながら進む。
『千年前、闇の王が世界を脅かした』
『賢者たちは、力を合わせて闇の王を封印した』
『しかし、封印は永遠ではない』
『いつか、闇の王は復活する』
『その時、選ばれし者が現れる』
『選ばれし者は、三つの力を持つ』
『地の力、風の力、光の力』
あかねは、自分の紋章を見た。
まさに、自分のことだ。
通路の奥に、広い部屋があった。
中央に、大きな魔法陣がある。
そして、魔法陣の周りに、四つの石像が立っている。
人間の形をした石像。
全て、武器を持っている。
「これは……」
セリアが警戒した。
その時、石像が動き始めた。
ゴゴゴゴゴ……
石像が、生き物のように動く。
そして、六人に向かってきた。
「ゴーレムだ!」
ダリウスが叫んだ。
戦闘が始まった。
石像ゴーレムは、四体。
全て、三メートルはある。
石でできた体は硬く、普通の攻撃では傷つかない。
「弱点を探して!」
セリアが指示した。
あかねが、鑑定能力を使った。
『石像ゴーレム。弱点:胸の魔石。魔石を破壊すれば倒せる』
「胸の魔石よ!」
あかねが叫んだ。
「分かった!」
六人は、それぞれゴーレムと戦った。
セリアとダリウスが、二体を引き受ける。
トムとあかねが、一体を相手にする。
リーナとエルミナが、残りの一体を攻撃する。
激しい戦闘。
ゴーレムの攻撃は、重く強い。
一撃でも当たれば、大怪我をする。
でも、六人はフェンリルの訓練で鍛えられていた。
セリアが、ゴーレムの攻撃を避けながら、胸を狙う。
剣が、魔石に命中した。
ガシャン!
魔石が砕け、ゴーレムが倒れた。
ダリウスも、魔力を込めた剣でゴーレムの魔石を破壊した。
リーナが、魔力を込めた矢でゴーレムの魔石を狙う。
矢が、命中した。
ゴーレムが、倒れた。
残るは、一体。
トムとあかねが、協力して戦う。
トムが、ゴーレムの注意を引く。
あかねが、槍でゴーレムの胸を突く。
魔石が、砕けた。
全てのゴーレムが、倒れた。
「やった……」
六人は、息を切らしていた。
でも、勝利した。
部屋の奥に、扉があった。
六人は、扉を開けた。
その先には――
小さな部屋があった。
中央に、石の台座。
台座の上に、古い巻物が置かれている。
「これが……」
あかねが、巻物を手に取った。
巻物を開くと、古代文字が書かれていた。
あかねが、鑑定能力で読む。
『闇の王を倒す方法』
『闇の王は、三つの封印で縛られている』
『第一の封印:北の氷結の地』
『第二の封印:西の炎獄の山』
『第三の封印:東の嵐の海』
『三つの封印が破られた時、闇の王は完全に復活する』
『闇の王を倒すには、復活前に封印を強化するか』
『復活後に、選ばれし者の力で倒すか』
『どちらかしかない』
あかねは、重要な情報を手に入れた。
闇の王を倒す方法。
封印を強化するか、復活後に倒すか。
「これ、すごく重要な情報よ」
あかねが、みんなに見せた。
「三つの封印の場所が分かった」
「じゃあ、封印を強化しに行けばいいのね」
リーナが言った。
「でも、三つの場所、全部遠いわ」
エルミナが地図を思い浮かべた。
「北の氷結の地、西の炎獄の山、東の嵐の海」
「全部回るには、数ヶ月かかる」
「一年後に闇の王が復活するなら、時間はあるわ」
セリアが言った。
「でも、三つ全部の封印を強化する必要があるのよね」
その時、巻物の裏に、さらに文字があることに気づいた。
あかねが読む。
『警告:封印を強化するには、選ばれし者の力が必要』
『選ばれし者は、三つの試練を乗り越えなければならない』
『試練を乗り越えた時、真の力が目覚める』
『しかし、試練は命がけである』
『覚悟せよ』
あかねは、震えた。
命がけの試練。
でも、やるしかない。
「大丈夫」
セリアが、あかねの肩を抱いた。
「私たちが、一緒よ」
「うん……」
あかねが頷いた。
六人は、巻物を持って遺跡を出た。
夕方、六人は谷の入口に戻った。
凛とフェンリルが、待っていた。
「お帰りなさい」
凛が微笑んだ。
「無事で、よかった」
「はい。そして、これを見つけました」
あかねが、巻物を見せた。
凛とフェンリルが、巻物を読んだ。
二人の表情が、真剣になった。
「これは……重要な情報だ」
フェンリルが言った。
「すぐに、院長に報告しよう」
馬車で学院に戻った。
その夜、院長室で会議が開かれた。
エルヴィン院長、凛、フェンリル、そして六人。
「この情報は、極めて重要です」
エルヴィン院長が言った。
「三つの封印の場所が分かった」
「そして、封印を強化する方法も」
「では、封印強化の旅に出ましょう」
セリアが提案した。
「待ってください」
エルヴィン院長が手を上げた。
「封印の場所は、全て極めて危険です」
「あなたたちの今の実力では、難しい」
「もっと訓練が必要です」
「どのくらいですか?」
あかねが尋ねた。
「最低でも、三ヶ月」
エルヴィン院長が答えた。
「三ヶ月間、さらに厳しい訓練を受けてください」
「そして、Sランクに匹敵する実力をつけてください」
「そうすれば、封印の旅に出られます」
「分かりました」
六人が頷いた。
「では、明日から新しい訓練プログラムを開始します」
エルヴィン院長が続けた。
「四天王の全員が、あなたたちを指導します」
「四天王全員!」
六人は驚いた。
「はい。フェンリルだけでなく、残りの三人も」
「彼らは、それぞれ異なる分野の専門家です」
「全員から学べば、あなたたちは飛躍的に強くなれます」
「ありがとうございます」
セリアが深く頭を下げた。
その夜、あかねは一人で考えていた。
三つの封印。
命がけの試練。
そして、真の力の覚醒。
全てが、重くのしかかる。
窓の外を見ると、星が綺麗に輝いていた。
その時、左手首が温かくなった。
紋章だ。
紋章が、微かに光っている。
まるで、励ましてくれているかのように。
「大丈夫」
あかねが、自分に言い聞かせた。
「仲間がいる」
「みんなで、乗り越えられる」
ノックの音がした。
「どうぞ」
扉が開き、六人全員が入ってきた。
「みんな……」
「眠れないのは、あかねだけじゃないわ」
セリアが微笑んだ。
「私たちも、色々考えてて」
「だから、一緒にいようと思って」
「ありがとう……」
あかねが、涙を流した。
六人は、あかねの部屋で夜遅くまで話した。
これからのこと。
三ヶ月の訓練のこと。
封印の旅のこと。
そして、闇の王を倒すこと。
全てを、一緒に。
仲間と一緒に。
『銀の絆』として。
どんな困難も、乗り越えていく。
それが、六人の決意だった。
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