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不合格から始まる聖医の絆 ―踏切を越えた先、異世界で命を繋ぐ―  作者: ねこあし


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第43話 「海上の試練」

 一日目


 船は、順調に海を進んでいた。


 青い空、青い海。


 波は穏やかで、風も心地よい。


 六人は、甲板で朝食を取っていた。


 パン、チーズ、果物、それに温かいスープ。


 船の料理長が作ってくれた。


「美味しいわね」


 リーナが、スープを飲みながら言った。


「ええ。船の料理とは思えないわ」


 セリアも微笑んだ。


 その時、凛が現れた。


「おはようございます」


「おはようございます」


 六人が答えた。


「朝食が終わったら、訓練を始めます」


 凛が言った。


「準備はいいですか?」


「はい」


 あかねが頷いた。


 午前中、凛はあかねと一対一で訓練した。


 船の後部甲板で。


「まず、紋章の力について理解を深めましょう」


 凛が説明を始めた。


「あなたは、三つの力を覚醒させました」


「地の力、風の力、光の力」


「でも、それぞれの力を完全にはコントロールできていません」


「そうなんです……」


 あかねが認めた。


「地の力は、たまに暴走するし」


「風の力も、まだ不安定で」


「光の力は、使うと疲れてしまう」


「それは、力の使い方が未熟だからです」


 凛が続けた。


「紋章の力は、あなたの意志と連動しています」


「意志が強ければ、力も強くなる」


「意志が弱ければ、力も弱くなる」


「つまり、精神力が大事なんですか?」


「はい。まさにその通りです」


 凛が頷いた。


「では、訓練を始めましょう」


「まず、地の力から」


 凛が、甲板に小石を置いた。


「この石を、地の力で浮かせてください」


「分かりました」


 あかねは、集中した。


 紋章に意識を向ける。


 地の力を感じる。


 大地のエネルギー。


 あかねの手から、茶色のオーラが放たれた。


 石が、少し浮いた。


 でも、すぐに落ちた。


「まだ、コントロールが甘いですね」


 凛が指摘した。


「もっと意識を集中させて」


「はい」


 あかねは、再び試した。


 今度は、もっと深く集中した。


 紋章と一体になるように。


 地の力が、体の中から溢れ出る。


 石が、ゆっくりと浮き上がった。


 今度は、安定している。


 五秒、十秒、十五秒。


 石は、空中に浮いたままだ。


「よくできました」


 凛が微笑んだ。


「その調子です」


 午後、凛は他の五人とも訓練した。


 セリアには、剣技の精度を上げる訓練。


 リーナには、動体視力を鍛える訓練。


 エルミナには、魔力コントロールの訓練。


 トムには、体術の応用技の訓練。


 ダリウスには、魔力を込めた剣技の強化訓練。


 凛の指導は、的確だった。


 一人一人の弱点を見抜き、それを克服する方法を教える。


 六人は、凛の技術の高さに驚いた。


「凛さん、本当に強いんですね」


 セリアが感心して言った。


「いえ」


 凛が謙遜した。


「私も、まだまだです」


「エルデン大陸には、もっと強い人たちがたくさんいます」


「例えば?」


「魔法学院の院長、エルヴィン・アークライト」


 凛が説明した。


「彼は、Sランクの魔法使いです」


「それに、『四天王』と呼ばれる四人の英雄たち」


「彼らは、皆Sランク以上の実力を持っています」


「Sランク以上……」


 六人は、想像もできなかった。


 Sランクでも十分強いのに、それ以上とは。


「でも、あなたたちなら、いつかそのレベルに到達できます」


 凛が励ました。


「だから、訓練を頑張りましょう」


「はい」


 三日目


 午後、船の見張りが叫んだ。


「船だ! 前方に船が見える!」


 六人と凛が、甲板に出た。


 前方に、三隻の船が見える。


 黒い帆。


 船首には、髑髏の旗。


 海賊だ。


「海賊!」


 船長が叫んだ。


「全員、戦闘準備!」


 船員たちが、慌てて武器を手に取った。


 でも、船員たちは戦闘のプロではない。


 海賊と戦えるかどうか……


「私たちが戦います」


 セリアが船長に言った。


「お任せください」


「頼む」


 船長が頷いた。


 海賊船が、近づいてくる。


 そして、横付けした。


 海賊たちが、ロープを投げて乗り込んできた。


 三十人以上。


 全員、武装している。


「金目のものを全部出せ!」


 海賊のリーダーらしき男が叫んだ。


「抵抗すれば、命はないぞ!」


「残念だけど」


 セリアが剣を抜いた。


「私たちは、抵抗するわ」


「何!?」


 海賊のリーダーが、セリアを見た。


「女か。生意気な……」


「やれ! 全員捕まえろ!」


 海賊たちが、一斉に襲いかかってきた。


 戦闘が始まった。


 六人と凛は、完璧な連携で戦った。


 セリアとダリウスが前衛で海賊たちを引きつける。


 リーナが、弓で遠距離から狙撃する。


 エルミナが、魔法で海賊たちの動きを鈍らせる。


 トムとあかねが、側面から攻撃する。


 そして、凛が最も強力な海賊たちを相手にした。


 凛の剣技は、見事だった。


 細身の剣が、まるで舞うように動く。


 一撃で、海賊を倒していく。


 速く、正確で、無駄がない。


 まさに、達人の技だった。


 十分後、全ての海賊が倒れた。


 リーダーだけが、まだ立っていた。


 でも、凛の剣が首に当てられていた。


「降伏しろ」


 凛が冷たく言った。


「くそ……」


 リーダーが、剣を落とした。


「降伏する」


 船員たちが、海賊たちを縛り上げた。


 そして、海賊船を没収した。


「ありがとう、銀の絆、そして凛さん」


 船長が感謝した。


「あなたたちがいなければ、私たちは全滅していた」


「どういたしまして」


 セリアが微笑んだ。


 五日目


 夜、海が荒れ始めた。


 波が高くなり、風が強くなった。


 嵐だ。


「全員、船室へ!」


 船長が叫んだ。


「嵐が来る!」


 六人と凛も、船室へ避難した。


 外では、雷が鳴り、雨が降っている。


 船が、大きく揺れる。


 六人は、必死に手すりにつかまった。


 嵐は、三時間続いた。


 やがて、雨が止んだ。


 風も収まった。


 六人は、甲板に出た。


 空には、星が見える。


 嵐は、去った。


「よかった……」


 リーナが安堵した。


 でも、その時――


 海面が、波立った。


 何かが、下から上がってくる。


 巨大な触手が、海から現れた。


 長さ十メートル以上。


 太さは、人間の胴体ほど。


 触手が、船に絡みついた。


「クラーケン!」


 船長が叫んだ。


「海の魔物だ!」


 さらに触手が現れた。


 二本、三本、四本。


 全部で八本。


 そして、海中から巨大な頭が現れた。


 イカのような頭。


 巨大な目、鋭い口。


 体長は、二十メートルはある。


 クラーケン。


 Aランクの海の魔物。


「戦うわよ!」


 セリアが叫んだ。


 六人と凛が、クラーケンと戦い始めた。


 でも、クラーケンは強かった。


 触手が、次々と襲いかかってくる。


 セリアとダリウスが、触手を切り落とす。


 でも、切っても切っても、また生えてくる。


 リーナとエルミナが、遠距離から攻撃する。


 でも、クラーケンの皮膚は硬く、ダメージが通らない。


 トムとあかねが、船を守りながら戦う。


 凛も、全力で戦っている。


 でも、クラーケンは強すぎる。


「このままじゃ、船が沈む!」


 船長が叫んだ。


「何か、弱点はないのか!」


 あかねが、鑑定能力を使った。


 クラーケンを詳しく調べる。


 すると――


『海の魔物:クラーケン。レベル:高。弱点:頭部の中央にある魔石。魔石を破壊すれば倒せる』


 情報が浮かび上がる。


「頭の中央に魔石があるわ!」


 あかねが叫んだ。


「それを破壊すれば倒せる!」


「分かった!」


 セリアが頷いた。


「みんな、シルバーチェイン!」


 六人の連携技。


 セリアとダリウスが、クラーケンの注意を引きつける。


 リーナとエルミナが、魔力を込めた矢と魔法を放つ。


 トムとあかねが、クラーケンの側面から攻撃する。


 そして、凛が――


 凛が、船のマストから飛び降りた。


 空中で、剣を構える。


 魔力を込めた、強力な一撃。


「『天翔剣・一閃!』」


 凛の剣が、クラーケンの頭部中央に突き刺さった。


 魔石が、砕けた。


 クラーケンが、悲鳴を上げた。


 そして、海中に沈んでいった。


 静寂。


 戦闘は、終わった。


「やった……」


 六人が、地面に座り込んだ。


 疲れ切っていた。


 でも、勝利した。


「凛さん、すごかったです」


 あかねが言った。


「あの技……」


「天翔剣です」


 凛が答えた。


「エルデン大陸の剣技の一つです」


「あなたたちも、エルデン大陸で学べますよ」


「本当ですか!」


 六人は、期待した。


 七日目


 朝、見張りが叫んだ。


「陸地だ! 前方に陸地が見える!」


 六人と凛が、甲板に出た。


 前方に、大きな陸地が見える。


 緑豊かな大地。


 高い山々。


 美しい海岸線。


 エルデン大陸だ。


「着いた……」


 あかねが呟いた。


「ええ」


 凛が微笑んだ。


「ようこそ、エルデン大陸へ」


 船は、港へ向かった。


 大きな港。


 多くの船が停泊している。


 そして、港には多くの人々がいた。


 様々な服装、様々な人種。


 自由都市連合とは、雰囲気が違う。


 もっと多様で、活気がある。


「すごい……」


 リーナが感嘆した。


「こんな大きな港、初めて見たわ」


「ここは、エルデン大陸最大の港、『オーシャンゲート』です」


 凛が説明した。


「世界中から、人と物が集まる場所です」


 船が、港に到着した。


 六人は、荷物を持って下船した。


 初めて、エルデン大陸の地を踏んだ。


「ようこそ、銀の絆の皆さん」


 港に、一人の男性が待っていた。


 四十代。白い髪、青い目。


 立派なローブを着ている。


 魔法使いらしい。


「私は、エルヴィン・アークライト」


 男性が自己紹介した。


「エルデン魔法学院の院長です」


「院長!」


 六人は驚いた。


 凛が言っていた、Sランクの魔法使い。


「凛から、あなたたちのことは聞いています」


 エルヴィンが微笑んだ。


「特に、あかねさん」


「『選ばれし者』として、歓迎します」


「ありがとうございます」


 あかねが頭を下げた。


「さあ、学院へ参りましょう」


 エルヴィンが、馬車を指差した。


「準備はできています」


 六人は、馬車に乗った。


 凛とエルヴィンも一緒だ。


 馬車が、動き始めた。


 港から、街へ。


 街は、美しかった。


 石畳の道、高い建物、広い広場。


 そして、人々の笑顔。


 平和で、活気がある。


「素敵な街ね」


 セリアが言った。


「ええ」


 エルヴィンが頷いた。


「この街は、『クリスタルシティ』と呼ばれています」


「エルデン大陸の首都です」


「そして、魔法学院も、この街にあります」


 馬車は、街の中心部へ向かった。


 やがて、巨大な建物が見えてきた。


 城のような建物。


 高い塔、美しい庭園、広い敷地。


 エルデン魔法学院だ。


「着きました」


 エルヴィンが言った。


「ここが、あなたたちの新しい家です」


 六人は、馬車から降りた。


 そして、学院の正門を見上げた。


 門には、文字が刻まれていた。


『知識は力なり。力は責任なり』


 あかねは、決意した。


 ここで、もっと強くなる。


 紋章の力を、完全に使いこなせるようになる。


 そして、一年後に復活する闇の王を倒す。


 世界を救う。


 仲間と一緒に。


 『銀の絆』として。


 新しい冒険が、始まろうとしていた。


 エルデン大陸での、新しい物語が。

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