第40話 「Aランクへの挑戦」
二日目の朝
六人は、ギルドの大ホールに集まった。
筆記試験の結果発表の日。
他の受験者たちも、緊張した表情で待っていた。
やがて、ギルドマスターが現れた。
「受験者諸君」
ギルドマスターが、掲示板に紙を貼った。
「筆記試験の結果を発表する」
受験者たちが、一斉に掲示板に駆け寄った。
あかねも、その中にいた。
掲示板を見ると――
『筆記試験合格者』
そこに、六人全員の名前があった。
セリア・ブライトブレード
リーナ・アッシュフォード
エルミナ・ストーン
トム・ハリソン
あかね(苗字なし)
ダリウス・シルバーブレード
「やった!」
あかねが、小声で叫んだ。
他の五人も、笑顔を見せた。
全員、合格した。
でも、合格者は全部で八人だった。
受験者十人のうち、二人は不合格。
筆記試験は、思ったより厳しかった。
「合格者は、午後の実技試験に進んでください」
ギルドマスターが言った。
「不合格者は、次回また挑戦してください」
不合格だった二人が、肩を落として去っていった。
あかねは、少し申し訳ない気持ちになった。
でも、これが試験だ。
全員が合格できるわけではない。
午後、実技試験が始まった。
場所は、ギルドの地下訓練場。
昨日よりも前に、筆記試験を乗り越えてきた数組のパーティーもいた。
広い空間。
そこに、一人の男性が立っていた。
六十代。白髪、筋肉質の体。
全身から、圧倒的な威圧感が漂っている。
元Sランク冒険者だ。
「私は、ヴィクター・ストームと言う」
男性が、低い声で自己紹介した。
「元Sランク冒険者。現在は、試験官を務めている」
「よろしく」
受験者たちが、緊張して頷いた。
「実技試験のルールを説明する」
ヴィクターが続けた。
「お前たちは、パーティごとに私と戦う」
「制限時間は五分」
「五分間、私の攻撃に耐えられれば合格だ」
「倒す必要はない。ただ、耐えればいい」
「分かったか?」
「はい」
「では、最初のパーティから始める」
最初は、既にのパーティだった。
四人組の冒険者。
戦闘が始まった。
でも、三分で全員が倒された。
ヴィクターの圧倒的な強さ。
レオナルドと同じか、それ以上だ。
「不合格」
ヴィクターが冷たく言った。
四人が、悔しそうに退場した。
次のパーティも、四分で全滅した。
「不合格」
あかねは、不安になった。
みんな、耐えられていない。
五分は、長すぎる。
やがて、六人の番が来た。
「次、銀の絆」
ヴィクターが、六人を見た。
「お前たちが、ドラゴンを倒したパーティか」
「はい」
セリアが答えた。
「興味深い」
ヴィクターが微笑んだ。
「では、始めよう」
六人は、陣形を組んだ。
セリアとダリウスが前衛。
トムとあかねが左右。
リーナとエルミナが後方。
いつもの防御陣形。
「準備はいいか?」
ヴィクターが尋ねた。
「はい」
「では、始め」
その瞬間――
ヴィクターが動いた。
速い。
でも、レオナルドとの訓練で慣れていた。
セリアが、ヴィクターの剣を受け止めた。
ガキィン!
火花が散る。
セリアは、吹き飛ばされた。
でも、すぐに立ち上がった。
ダリウスが、続いた。
ダリウスの剣が、ヴィクターに迫る。
ヴィクターは、それを避けた。
そして、反撃。
ダリウスも、吹き飛ばされた。
でも、その隙にリーナが矢を放った。
ヴィクターは、剣で弾いた。
エルミナが、魔法を唱えた。
「『氷よ、敵を縛れ――アイスチェイン!』」
氷の鎖が、ヴィクターの足を縛った。
でも、ヴィクターは力で鎖を砕いた。
トムとあかねが、左右から攻撃した。
ヴィクターは、二人の攻撃を同時に防いだ。
一分が経過。
六人は、まだ全員立っている。
他のパーティより、遥かに健闘している。
「ほう」
ヴィクターが、感心した表情を浮かべた。
「お前たち、強いな」
「では、少し本気を出そう」
ヴィクターの動きが、速くなった。
攻撃が、激しくなった。
六人は、必死に防いだ。
でも、一人ずつ倒されていく。
トムが、吹き飛ばされた。
リーナが、倒れた。
エルミナも、膝をついた。
残るは、セリア、ダリウス、あかね。
三分が経過。
あと二分。
「シルバーチェイン!」
セリアが叫んだ。
三人の連携技。
セリアとダリウスが、ヴィクターを挟み込む。
あかねが、隙を突いて攻撃する。
完璧なタイミング。
でも――
ヴィクターは、全てを防いだ。
そして、反撃。
三人とも、吹き飛ばされた。
四分が経過。
あと一分。
六人は、ボロボロだった。
でも、まだ諦めなかった。
立ち上がる。
何度倒されても、立ち上がる。
それが、『銀の絆』だ。
「お前たち……」
ヴィクターが、微笑んだ。
「素晴らしいな」
ヴィクターは、攻撃を緩めた。
六人は、必死に耐え続けた。
四分三十秒。
四分四十秒。
四分五十秒。
そして――
ピー!
タイマーが鳴った。
五分が経過した。
六人は、地面に倒れ込んだ。
全員、息を切らしていた。
でも、笑っていた。
「やった……」
セリアが呟いた。
「五分、耐えた……」
「合格だ」
ヴィクターが、六人に手を差し伸べた。
「よくやった、銀の絆」
「お前たちは、本物だ」
「ありがとうございます」
六人が、ヴィクターの手を取って立ち上がった。
体は痛いが、心は満たされていた。
実技試験、合格した。
その後、他のパーティも試験を受けた。
でも、五分間耐えられたのは六人だけだった。
他のパーティは、全て不合格。
「厳しいな……」
あかねが呟いた。
「ああ。Aランクは、そう簡単にはなれない」
ダリウスが答えた。
でも、六人は合格した。
明日は、最後の試験。
実地試験。
三日目
朝、六人はギルドに集まった。
実地試験の説明を受けるために。
ギルドマスターが、依頼書を渡した。
『依頼内容:古代遺跡の封印強化
依頼主:王立魔法研究所
報酬:金貨三十枚
危険度:高
詳細:西の砂漠にある古代遺跡「沈黙の塔」の封印が弱まっている。封印を強化せよ。遺跡には強力な魔物が封じられている可能性がある』
「これが、実地試験の依頼だ」
ギルドマスターが説明した。
「Aランク相当の難易度」
「成功すれば、試験合格」
「失敗すれば、不合格」
「期限は?」
セリアが尋ねた。
「三日以内」
「分かりました」
六人は、すぐに出発した。
西の砂漠は、王都から二日の距離にあった。
馬車を借りて、移動した。
砂漠は、暑く乾燥していた。
太陽が、容赦なく照りつける。
二日目の夕方、遺跡が見えてきた。
巨大な石の塔。
高さ五十メートルはある。
全体が、黒い石でできている。
不気味な雰囲気が漂っている。
「あれが、沈黙の塔か……」
トムが呟いた。
「ええ。封印が弱まってるって言ってたわね」
セリアが確認した。
六人は、塔に近づいた。
入口には、大きな扉がある。
扉には、複雑な魔法陣が刻まれている。
封印だ。
あかねが、鑑定能力を使った。
『古代の封印魔法。現在の強度:三十パーセント。このままでは一ヶ月以内に破られる』
情報が浮かび上がる。
「封印の強度、三十パーセントしかないわ」
あかねが報告した。
「このままだと、一ヶ月以内に破られる」
「急がないとね」
エルミナが言った。
六人は、塔の中に入った。
暗い通路。
松明を灯して、進む。
通路は、螺旋階段になっている。
上へ、上へと続いている。
階段を登りながら、あかねが周囲を鑑定した。
魔物の気配はない。
でも、強力な魔力が感じられる。
塔の最上階に、何かがいる。
三十分後、最上階に着いた。
広い部屋。
中央に、巨大な魔法陣がある。
そして、魔法陣の中央に――
巨大な水晶がある。
高さ三メートルほど。
水晶の中には、黒い影が見える。
あかねが、鑑定した。
『封印された魔物:闇の精霊王。レベル:極めて高。危険度:S。封印の強度:三十パーセント』
「これ……」
あかねが、震えた。
「闇の精霊王が、封印されてる」
「レベルは極めて高、危険度はS」
「S……」
六人は、緊張した。
Sランクの魔物。
ドラゴンと同じレベル。
「封印を強化しないと」
セリアが言った。
「どうやって?」
リーナが尋ねた。
「魔法陣に、魔力を注入するのよ」
エルミナが説明した。
「六人全員で、魔力を送る」
「そうすれば、封印が強化される」
「分かったわ」
六人は、魔法陣の周りに立った。
そして、それぞれの手を魔法陣に当てた。
魔力を、注入し始めた。
魔法陣が、光り始めた。
青い光。
封印が、強化されていく。
でも――
突然、水晶が震えた。
中の黒い影が、蠢いている。
「何!?」
「魔物が、抵抗してる!」
エルミナが叫んだ。
「封印を強化されるのを、嫌がってるんだわ!」
黒い影が、水晶の中で暴れた。
封印が、揺らぎ始めた。
「まずい! 封印が破られる!」
セリアが警告した。
「もっと魔力を!」
六人は、さらに魔力を注いだ。
でも、魔物の抵抗は強い。
封印が、徐々に弱まっていく。
「このままじゃ……」
その時、あかねが決断した。
光の力を使う。
あかねは、両手を魔法陣に当てた。
そして、聖魔法を発動した。
光の力。
まばゆい白い光が、魔法陣を包んだ。
聖なる力が、闇の精霊王を押さえつける。
精霊王が、悲鳴を上げた。
でも、抵抗を止めた。
光の力に、屈したのだ。
六人は、さらに魔力を注いだ。
十分後、魔法陣が完全に輝いた。
封印が、強化された。
『封印の強度:百パーセント。今後百年間は破られない』
鑑定能力が、そう告げた。
「やった……」
六人は、地面に座り込んだ。
魔力を使い果たして、疲れ切っていた。
でも、成功した。
封印を、強化した。
実地試験、合格だ。
翌日、六人は王都に戻った。
ギルドで、報告した。
「封印を強化しました」
セリアが、報告書を渡した。
ギルドマスターが、報告書を読んだ。
「よくやった」
ギルドマスターが満足そうに言った。
「闇の精霊王の封印を強化するとは」
「お前たちは、本物だ」
「ありがとうございます」
「これで、三つの試験全てに合格した」
ギルドマスターが、立ち上がった。
「銀の絆」
「はい」
「お前たちを、Aランクに昇格させる」
ギルドマスターが、新しいギルドカードを渡した。
六枚のカード。
全てに、「Aランク」と刻まれている。
「おめでとう」
「ありがとうございます!」
六人は、新しいギルドカードを受け取った。
Aランク。
ついに、ここまで来た。
EランクからAランクまで。
約四ヶ月。
長い道のりだった。
でも、やり遂げた。
六人は、抱き合って喜んだ。
「やったわね!」
「ええ!」
涙が出そうなほど、嬉しかった。
その夜、六人は街の高級レストラン『王冠亭』で祝杯を上げた。
Aランク昇格のお祝い。
美味しい料理、美味しいワイン。
全てが、特別だった。
「乾杯!」
カチンという音が、心地よく響いた。
「お疲れ様、みんな」
セリアがグラスを掲げた。
「ついに、Aランクになったわね」
「ええ」
五人が頷いた。
「長かったわね」
リーナが言った。
「でも、あっという間だった」
「本当に」
エルミナが続けた。
「この四ヶ月、色々あったわね」
「ええ」
あかねが頷いた。
「グレートベア、エルドランド王国、影の翼、ヴィクター、ドラゴン、戦争、和平交渉」
「全部、大変だった」
「でも、乗り越えた」
トムが言った。
「みんなで、一緒に」
「そうね」
ダリウスが微笑んだ。
「これが、『銀の絆』の力だ」
「ええ」
セリアが、みんなを見回した。
「私たちは、家族よ」
「どんな困難も、一緒に乗り越える」
「それが、私たちの絆」
「うん」
五人が頷いた。
「これからも、一緒ね」
「もちろん」
六人は、再びグラスを合わせた。
カチン。
心地よい音。
これから、新しい冒険が始まる。
Aランクとして。
もっと難しい依頼。
もっと強い敵。
もっと大きな冒険。
全てが、待っている。
六人は、それを楽しみにしていた。
パーティ『銀の絆』として。
仲間と一緒に。
家族と一緒に。
これからも、ずっと。
その夜、あかねは一人で考えていた。
Aランクになった。
ここまで来られるとは、思わなかった。
この世界に来た時、自分は何もできない弱い存在だった。
でも、今は違う。
強くなった。
Aランクの冒険者になった。
紋章の力も、全て覚醒した。
地の力、風の力、光の力。
全てが、自分を強くしてくれた。
でも、まだ紋章の謎は残っている。
なぜ、自分にこの力が与えられたのか。
紋章の真の目的は、何なのか。
答えは、まだ出ていない。
でも、いつか分かるだろう。
その時まで、冒険を続けよう。
仲間と一緒に。
あかねは、そう決意した。
窓の外を見ると、星が綺麗に輝いていた。
平和な夜空。
これから、どんな冒険が待っているのだろう。
あかねは、期待と不安を胸に、明日を待った。
新しい冒険への、第一歩として。
Aランク冒険者、『銀の絆』のあかねとして。
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