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不合格から始まる聖医の絆 ―踏切を越えた先、異世界で命を繋ぐ―  作者: ねこあし


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第33話 「捜査開始」

 翌朝九時、六人は王宮の正門前に集まった。


 王宮は、昨日の爆破事件後、厳重な警備が敷かれていた。


 衛兵が、門の前に十人以上立っている。


 全員、武装している。


「ギルドからの依頼で来ました。銀の絆です」


 セリアが、依頼書を見せた。


 衛兵が確認し、頷いた。


「お待ちしていました。こちらへ」


 衛兵が、六人を王宮の中へ案内した。


 正門をくぐると、広い中庭があった。


 美しい庭園。噴水、花壇、彫像。


 でも、今はその一部が破壊されていた。


 昨日の爆破の影響だ。


 衛兵は、六人を建物の中へ案内した。


 長い廊下を歩く。


 壁には、絵画が飾られている。


 歴代の王の肖像画、戦争の絵、風景画。


 全てが、一流の芸術品だった。


 やがて、一つの部屋の前で止まった。


 衛兵が、扉をノックした。


「外務大臣、銀の絆が参りました」


「入れ」


 中から声がした。


 扉が開き、六人は中に入った。


 広い執務室。


 大きな机、本棚、地図。


 そして、机の前に一人の男性が座っていた。


 昨夜見た、外務大臣アルバート・クロンウェルだ。


「ようこそ、銀の絆」


 外務大臣が立ち上がった。


「お忙しい中、来ていただき感謝します」


「いえ」


 セリアが答えた。


「私たちの仕事ですから」


「さあ、座ってください」


 六人が椅子に座ると、外務大臣が説明を始めた。


「改めて、昨夜の爆破事件について説明します」


 外務大臣が、机の上の書類を取り出した。


「昨夜午後八時、王宮北翼の会議室で爆発が起きました」


「当時、会議室には外交官三名と事務官二名がいました」


「全員、即死でした」


 六人は、黙って聞いた。


「爆発の原因は、魔法の爆弾です」


「爆弾の破片を分析した結果、エルドランド王国製であることが判明しました」


「つまり、犯人はエルドランド王国のスパイである可能性が高い」


「そのスパイを捕まえてほしいのです」


 外務大臣が、六人を見回した。


「手がかりは?」


 ダリウスが尋ねた。


「少ないです」


 外務大臣が正直に答えた。


「爆破現場からは、爆弾の破片以外、何も見つかっていません」


「目撃者もいません」


「衛兵の報告によれば、爆破の直前、怪しい人物の目撃情報はなかったとのことです」


「つまり、犯人は王宮の中にいる?」


 セリアが推測した。


「その可能性があります」


 外務大臣が頷いた。


「王宮の職員、または出入りを許可されている者の中に、スパイがいるかもしれません」


「職員は、何人いますか?」


「約二百人です」


「二百人……」


 あかねは、驚いた。


 その中から、犯人を見つけるのは容易ではない。


「まず、爆破現場を見せてください」


 セリアが言った。


「そこから、捜査を始めます」


「分かりました」


 外務大臣は、六人を北翼へ案内した。


 爆破があった会議室。


 扉は吹き飛び、壁は崩れている。


 床には、血痕が残っていた。


「ここです」


 外務大臣が、部屋の入口で立ち止まった。


「中は、まだ調査中です。気をつけてください」


 六人は、慎重に部屋の中に入った。


 部屋は、完全に破壊されていた。


 机、椅子、書類。


 全てが、粉々になっている。


 あかねは、鑑定能力を使った。


 部屋中を、詳しく調べる。


 すると――


 床の隅に、何かが光っているのが見えた。


「これ……」


 あかねが近づいて、それを拾った。


 小さな金属片。


 長さ二センチほど。


 表面には、細かい文字が刻まれている。


 あかねは、鑑定能力でその文字を読んだ。


『エルドランド王国軍事工廠 第三製造部』


 情報が浮かび上がる。


「これ、エルドランド王国の軍事工廠で作られた爆弾の破片だわ」


 あかねが、みんなに見せた。


「本当か」


 ダリウスが、破片を調べた。


「確かに、エルドランド王国の刻印だ」


「これで、犯人がエルドランド王国のスパイである証拠が固まったわね」


 セリアが言った。


「でも、犯人は誰?」


 エルミナが尋ねた。


「それを、これから調べるのよ」


 六人は、さらに部屋を調べた。


 トムが、窓の近くで何かを見つけた。


「これ、見てくれ」


 トムが、床に残っている足跡を指差した。


「足跡?」


「ああ。爆発の後、誰かがここに来た」


 トムが説明した。


「この足跡、衛兵のものじゃない。靴のサイズが違う」


「じゃあ、犯人の足跡?」


「可能性はある」


 リーナが、足跡を追った。


 足跡は、窓の方へ続いている。


 そして、窓の外へ。


「犯人は、窓から逃げた?」


「いや、違う」


 ダリウスが窓を調べた。


「この窓、内側から鍵がかかってる」


「外から入ることも、外へ出ることもできない」


「じゃあ、この足跡は……」


「爆破の後、誰かが証拠を回収しに来たのかもしれない」


 セリアが推測した。


「犯人、または犯人の仲間が」


「そうね」


 六人は、部屋の調査を終えた。


 外務大臣のところへ戻った。


「何か、分かりましたか?」


 外務大臣が尋ねた。


「はい。いくつか手がかりを見つけました」


 セリアが、爆弾の破片と足跡のことを報告した。


「そうですか……」


 外務大臣が考え込んだ。


「爆破の後、会議室に入ったのは衛兵だけのはずです」


「でも、足跡が衛兵のものじゃないとなると……」


「誰か、衛兵に紛れて入った可能性があります」


 セリアが続けた。


「王宮の職員、または出入りを許可されている者」


「調べてみます」


 外務大臣が、書類を取り出した。


「昨夜、爆破後に王宮にいた職員のリストです」


 六人は、リストを見た。


 約五十人の名前が書かれている。


 職員、衛兵、貴族、外交官。


 様々な人々。


「この中に、犯人がいる?」


 リーナが呟いた。


「おそらく」


 セリアが頷いた。


「一人一人、調べましょう」


 午後、六人は職員への聞き込みを始めた。


 一人ずつ、別室に呼んで質問する。


「昨夜、爆破の時、どこにいましたか?」


「爆破の後、会議室に行きましたか?」


「怪しい人物を見ませんでしたか?」


 様々な質問をした。


 でも、有力な情報は得られなかった。


 みんな、爆破の時は別の場所にいたと言う。


 会議室には行っていないと言う。


 怪しい人物も見ていないと言う。


 十人、二十人、三十人。


 聞き込みを続けた。


 でも、手がかりは見つからなかった。


 夕方、四十人目の職員を呼んだ。


 若い男性。二十代後半。


 書記官だという。


「あなたの名前は?」


 セリアが尋ねた。


「ジェームズ・ハリソンです」


 男性が答えた。


「昨夜、爆破の時、どこにいましたか?」


「自分の部屋にいました」


「一人で?」


「はい」


「証明できる人は?」


「いません」


 あかねは、鑑定能力を使った。


 男性を詳しく調べる。


 すると――


『人間。職業:書記官。レベル:中。特記事項:右手に火薬の痕跡』


 情報が浮かび上がる。


 火薬の痕跡。


 爆弾を扱った証拠だ。


「この人……」


 あかねが、小声でセリアに伝えた。


 セリアが、男性をじっと見た。


「ジェームズさん、もう一つ質問があります」


「何ですか?」


「あなた、昨夜何をしていましたか? 詳しく」


「自分の部屋で、書類整理をしていました」


「書類整理?」


「はい」


「それは、いつまで?」


「夜十時頃まで」


 男性が答えた。


 でも、その目が泳いでいた。


 嘘をついている。


「本当ですか?」


 セリアが、さらに詰めた。


「本当です」


 男性が、強く答えた。


 でも、額に汗が浮かんでいた。


「分かりました」


 セリアが、男性を部屋から出した。


 六人だけになると、セリアが言った。


「怪しいわね」


「ええ。嘘をついてる」


 エルミナが頷いた。


「あかね、鑑定で何か分かった?」


「右手に、火薬の痕跡があった」


 あかねが報告した。


「火薬……」


 ダリウスが考え込んだ。


「爆弾を扱った証拠か」


「おそらく」


「じゃあ、あの男が犯人?」


 トムが尋ねた。


「可能性は高い」


 セリアが答えた。


「でも、証拠が足りない」


「もっと調べる必要があるわ」


「どうする?」


「彼を尾行しましょう」


 セリアが提案した。


「今夜、彼がどこへ行くか見張る」


「もし怪しい行動を取れば、それが証拠になる」


「いいわね」


 六人は、計画を立てた。


 夜、六人はジェームズの部屋の近くで待機していた。


 王宮の廊下の影に隠れて。


 八時、九時、十時。


 何も起こらなかった。


 でも、十一時頃――


 ジェームズの部屋の扉が開いた。


 ジェームズが出てきた。


 黒いフードを被り、周囲を警戒している。


「出た」


 セリアが小声で言った。


「尾行するわよ」


 六人は、距離を保ちながらジェームズを尾行した。


 ジェームズは、廊下を歩き、階段を降り、地下へ向かった。


 地下?


 王宮の地下には、何があるのか。


 ジェームズは、地下の暗い通路を進んだ。


 松明の明かりだけが頼りだ。


 やがて、ジェームズは一つの部屋の前で止まった。


 扉をノックする。


 トン、トン、トントン。


 リズムがある。


 合図だ。


 扉が開き、ジェームズは中に入った。


 六人は、扉の外で耳を澄ませた。


 中から、声が聞こえる。


「遅かったな、ジェームズ」


 男の声。


「すみません。衛兵の目を避けるのに時間がかかりました」


 ジェームズの声。


「で、例のものは?」


「ここに」


 何かを渡す音。


「よくやった。これで、次の作戦が実行できる」


「次の作戦?」


「ああ。明日、王宮の南翼を爆破する」


「また爆破を……」


「当然だ。我々の目的は、自由都市連合を混乱させることだ」


「爆破を繰り返せば、人々は恐怖する」


「そして、エルドランド王国に降伏する」


 六人は、顔を見合わせた。


 やはり、エルドランド王国のスパイだ。


 そして、明日また爆破を計画している。


 止めなければ。


 セリアが、剣を抜いた。


 そして、扉を蹴破った。


 ガシャン!


 部屋の中には、ジェームズともう一人の男がいた。


 四十代。黒い服。顔に傷跡。


 明らかに、プロの工作員だ。


「何者だ!」


 男が、短剣を抜いた。


「冒険者パーティ、銀の絆です」


 セリアが名乗った。


「あなたたちを、爆破事件の容疑で逮捕します」


「くっ……」


 男が、ジェームズに言った。


「逃げるぞ!」


 男が、部屋の奥の壁に手をかざした。


 すると、壁が開いた。


 隠し通路だ。


 男とジェームズが、通路に逃げ込んだ。


「逃がさない!」


 六人が追った。


 通路は、狭く暗かった。


 でも、六人は諦めなかった。


 必死に追った。


 通路は、長く続いていた。


 やがて、出口に着いた。


 王宮の外。


 裏門の近くだ。


 男とジェームズが、街へ逃げようとしていた。


「待て!」


 ダリウスが叫んだ。


 そして、剣を投げた。


 剣が、ジェームズの足元に刺さった。


 ジェームズが、転んだ。


「ジェームズ!」


 男が、振り返った。


 その隙に、セリアが男に斬りかかった。


 男は、短剣で受け止めた。


 ガキィン!


 激しい攻防。


 でも、セリアの剣技は、一ヶ月の訓練で格段に上達していた。


 男の防御を崩し、剣を弾き飛ばした。


 そして、剣先を男の首に当てた。


「動くな」


「くっ……」


 男が、観念した。


 トムとあかねが、ジェームズを捕まえた。


「やった……」


 六人は、二人を王宮へ連れて帰った。


 深夜、外務大臣に報告した。


「よくやってくれました、銀の絆」


 外務大臣が、満足そうに言った。


「犯人を捕まえただけでなく、次の爆破も防いだ」


「素晴らしい働きです」


「ありがとうございます」


「これが、約束の報酬です」


 外務大臣が、金貨の袋を渡した。


 金貨五十枚。


 六人で山分けすると、一人金貨八枚と銀貨三十三枚ずつ。


 これまでで、最高額の報酬だ。


「それと」


 外務大臣が続けた。


「犯人の尋問で、重要な情報が得られました」


「何ですか?」


「エルドランド王国は、近日中に自由都市連合に侵攻する計画だそうです」


「侵攻……」


 六人は、驚いた。


「はい。戦争です」


 外務大臣が、真剣な表情で言った。


「我々は、準備を始めています」


「あなたたち冒険者にも、協力をお願いするかもしれません」


「その時は、よろしくお願いします」


「はい」


 六人は、王宮を出た。


 外は、もう夜明け近くだった。


 空が、少し明るくなり始めている。


「戦争か……」


 セリアが呟いた。


「ついに、来るのね」


「ええ」


 六人は、宿へ戻った。


 部屋で、今後のことを話し合った。


「戦争になったら、どうする?」


 リーナが尋ねた。


「戦うしかないわ」


 セリアが答えた。


「私たちは、自由都市連合の市民」


「この街を守る義務がある」


「でも、エルドランド王国は……」


 あかねが言いかけた。


「大丈夫」


 セリアが、あかねを見た。


「私たちは、正しいことをしてる」


「エルドランド王国が間違ってる」


「だから、堂々と戦える」


「そうね……」


 あかねは、少し安心した。


 でも、不安は完全には消えなかった。


 戦争。


 大きな戦い。


 自分たちは、その中でどう生きていくのか。


 答えは、まだ出ていない。


 でも、一つだけ確かなことがある。


 仲間と一緒なら、どんな困難も乗り越えられる。


 あかねは、そう信じた。

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