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第18話 ⑩——「色とりどりの実演解説!」



 御剣(みつるぎ)姉妹が颯爽と馬車(トレビアーナ)から出陣していくのを見送りつつ……私たちはこの室内に残っておく。


「まあ、あのお二人の実力でしたら、加勢などなくともまったく問題無いでしょうから……ここはお言葉に甘えて、映像越しにじっくり解説させてもらうといたしましょう」


 そう——そっちの方が都合がいいということで、今回はここで映像越しに観戦することになったのだ。


「では——紳執事(ジェントル)、映像の準備を」


 そう声をかけると、あれよあれよと映像機器が一人歩き(空中浮遊)していき——壁にはデカデカとしたスクリーンが現れたり、おそらくは超高級品の専用の映写機(プロジェクター)も登場したりして——あっという間に、ホームシアターもびっくりな本格的な鑑賞体制が構築されたのだった。

 そしてそこに——御剣(みつるぎ)姉妹が持参した一台に加えて、ヴンオケが所有している追加の撮影機器(ドローンカメラ)からの映像も含めた——いくつもの画角から撮られた、複数の映像が同時に映し出されていく。

 ——それら一つ一つの画面は、スクリーン上に大小様々な規模で投影されており……(おそらくは、搭載されたAIによるものだと思われるのだけれど)より見やすいように、そして何より一番盛り上がるように、(各映像の、それぞれの配置や大きさが)常に自動的に切り替えられていくことで、最上の映像体験ができるように調整されているのだった。

 オウッフ……さすがはヴンオケの設備だ……もはや、下手な映画館も顔負けの高級設備なんよ。


「さて、敵の種類と数は——雪原狼(スノーウルフ)が18、雪達磨(スノーメン)が12、雪大男(イエティ)が7、雪精霊(スネグーラチカ)が3……なかなかの規模の群れですわね」


〈やがてファンになる:……すまんお嬢、そう言われても……さっきからずっと、雪の白しか見えねぇんだわ?〉


地上の視聴隊グランド・オーディエンス:お嬢様がそう言うのですから、そうなのでしょうけれど……そんな大群をたった二人でなんて、少しだけ心配ですわね〉


〈流浪の探索者:お嬢が紹介する時にも軽く言ってたけど……御剣(みつるぎ)姉妹は、実弟の勇者にも引けを取らない実力って話だから、まあ……って思ったけど、そういや、なんか今回は実力制限してるとかって言ってたっけ? ……んー、ほんまに大丈夫なんやろか?〉


 私が映像設備自体に驚き(おのの)いている間にも、お嬢様はスラスラと解説を進めてくれていた。

 ——ホロスクで表示している方の配信画面を見てみれば、コメント欄にも様々な反応が……

 慌てて私も、スクリーンの映像に意識を向ける——けれど……うん、私も全然(わか)らない……マジで、敵も地面も背景もっ、全部が全部っ、真っ白すぎるっ……!


「……まずもって、こういった場合に、敵を捕捉するのに役に立つのが——先ほどソラ様が挙げてくださった——魔功術(まこうじゅつ)の『基本三項(きほんさんこう)』が一つ、【魔力感知(まりょくかんち)】ですわ。

 これを発動して、魔力を視覚化することによって……魔物(モンスター)がその身に宿す魔力が光って視えるようになりますから、あのように背景色と同化されていても、問題無く捕捉できるようになりますの。

 ——ちなみに、魔力は映像越しにも感知できますから、初めから実戦で試すよりも、最初はこうした映像相手に練習するのがよろしいかもしれないですわね。

 他にも……それこそ、透明になる能力を持つ敵なんかも、ある程度は捕捉できるようになりますから、やはり魔力感知は、もはや索敵だけでなく戦闘にも必須級の技能(スキル)なのですわ」


 な、なるほど……!

 魔力感知を使えば、見え(づら)い敵も視えるようになるのかぁ……!

 ——透明化も見破れるんだ……だったらマジで必須じゃん……!?

 なんて衝撃を受けている間にも、御剣(みつるぎ)姉妹とモンスターの群れとの戦いは始まっていた。


 映像の中の光刃(ミツバ)さんは魔刃剣(まじんけん)を、鳳刃(アゲハ)さんは例のデコ刀を使い……()み居る敵をばっさばっさと、危なげなくも豪快に斬り倒している。

 ——これだけの数の差があって……中には氷属性の遠距離攻撃を放つ後衛もいるのに、まるで相手にもなっていない。

 何がすごいって……本当に中層級の実力に制限されていることが、見ている私にも(わか)るというところだ。

 ——つまりはそれだけ、常識的な範疇(はんちゅう)の身体能力しか発揮していないのである。

 しかも今は、それに加えて、使える能力にさらなる追加の制限をかけるという——縛りプレイまでしている。

 だというのに……圧倒的な数の差をものともせず、逆に二人が相手を圧倒してしまっている。

 ——その戦いぶりの、凄まじいことと言ったら……! 素人目に見ても、その卓越した技量の高さを感じ取らずにはいられない……!

 美しいのだ……ひたすらに。一切の無駄がない、止めどなく流れるような、それでいてどこまでも力強い一連の動きは、まさに流麗という一言で表すのが相応(ふさわ)しい……!


〈探索兵長:強い……っ! そして、す、凄いっ……本当に、能力らしい能力をまるで使っていないように見えるのに、この数を余裕で(さば)きますか……っ!〉


〈やが灰のファンである:やぁやぁやぁ、これはこれは……まさに、御剣(みつるぎ)の名に(いつわ)りなし……ですな。弟さんの勇者や、その仲間の雪華ちゃんを見た時にも思ってたけど、ガチで武術を修めてる人の動きって、一目で違いが分かるんよね〉


地上の視聴隊グランド・オーディエンス:上級探索者で魔功術を使えるワタクシ、御剣(みつるぎ)姉妹が魔力を制御する技量の、そのあまりの高さに、もはや戦慄を覚えますわ……というか、下手するとこれ、普通にウチのお嬢様たちよりも——??〉


〈流浪の探索者:魔功術——か……なるほど、確かに……やはり、この二人、並の実力者じゃあないな……その魔力の〝色〟は、一流を超えた超一流の証やで……?〉


「お二人の動きをご覧になって、皆様驚かれているようですわね。しかし——おやまあ、中にはすでに、気がついている方もいらっしゃるようですわ。

 ええ、お二人はすでに、魔功術を使っておりますわ。それも……()()()()魔功術——すなわち、『基本三項(きほんさんこう)』だけではなく、それを超えた、次なる段階……『覚醒三功(かくせいさんこう)』までもを、ご披露してくださっていますのよ。

 そう……あれこそが、『覚醒三功(かくせいさんこう)』の一つ——【魔功装色(まこうそうしょく)】っ!! なのですわ!」

「っ! 魔功そうしょく、ですか……?!」

「ええ、ええ……それがどういうものなのか、さっそく説明してさしあげましょう——と、言いたいところなのですが……このままですと、ちょっと差し(さわ)りがありますから……ここは一つ、お二人に〝お願い〟してみるといたしましょう」


 そう言うなりお嬢様は——おそらくは、ご自身が装備中の〝照面鏡(ホロスク)〟を操作することで、音声入力を馬車の外にある拡声器(スピーカー)へと繋いだようで——画面の向こうで戦う二人に聞こえるよう、大きな音量で(スピーカーから)声をかける。


「お二人とも! 可能なようでしたら、()()()()()()()()、いま使っている魔功術を分かりやすくしていただけませんこと?!」


 すると、画面の向こうからも——スピーカーから聞こえる分と合わせて、お嬢様の声が二重に聞こえてから——二人の了承の声が返ってくる。


『——していただけませんこと?!』

『ん、オッケー! 了解の(すけ)!』

『はいはーい! バッチリ視えるようにしちゃるけんねー、まかしとき〜』


 すると、変化は劇的だった。

 先ほどまでは、何も見えなかったのに……今は二人の体から、立ち(のぼ)魔力(オーラ)がはっきりと見てとれるようになった。

 ——足元に橙色(オレンジ)の魔力、全身には黄色の魔力を、そして……武器の剣と刀には、赤い魔力がまとわりついている……っ!

 これはっ……魔力の〝色〟を、変えている……?!


「さて、これで随分と分かりやすくなりましたでしょう。

 ——それにしても、器用なものですわね……体の各部で個別に三色、いえ、可視化のための〝白〟を加えて、四色同時に使い分けるとは……さすがと言うほかないですわ。

 では、それぞれの効果をご説明いたしましょう。

 まず足元の橙色(オレンジ)、これは〝橙魔(とうま)〟といって、足元を万全にするために使用していますわ。

 そう……そもそもが、あの厚く積もった雪の上では、通常は足を取られてしまうので、どうしても動きを(にぶ)らせてしまいますから……不動の防御を可能とする〝橙魔(とうま)〟の効果によって、足元の雪を瞬時に固めた上で、さらには滑らないように、接地面と靴底とを、踏み込みの一瞬だけ固定しているんですのよ。

 ——とまあ……(あたくし)、さらっと言ってますけれど……実はこれ、かなり熟練の(わざ)なのですわ。

 そしてお次に、速度向上に優れる黄色の魔力——〝黄魔(こうま)〟によって、身体能力を強化していますわ。

 ——初歩の身体強化に比べたら、こちらはまさに別格の性能を発揮できるのですけれど……しかしまあ、あの様子を見るに、今のお二人に関しては、強化しているのは思考速度や反射神経をそれなりに、というくらいで、どうやら膂力(りょりょく)は据え置きみたいですわね。

 そして最後は、武器に(まと)わせた赤い魔力——〝赤魔(せきま)〟なのですけれど……これは見た目の印象(イメージ)通りというか、炎属性を持ち、熱を帯び、また、攻撃の威力自体を大きく強化できますわ。それこそ、敵が氷属性ばかりの雪原(ここ)で使うには、まさに打ってつけということですわね。

 さっきから、攻撃された相手が一撃で倒されているのは——まあ、お二人の剣術の業前(わざまえ)や、武器の性能(威力)もありますけれど——この〝赤魔(せきま)〟によるところも大きいのですわ」


 なんて解説が終わる頃には——数の多さもなんのその、もはや倒すのが早過ぎて——二人の実演も終わりに差し掛かっており……

 あっという間に数を減らして、残りわずかになった敵の生き残りが、勝ち目が無いと悟ったか、いまさらながらに戦闘を放棄して逃走を(はか)ったところだった。


『逃がさんよいっ』

『あーしちゃん右! クロスで飛び(ざん)しよーや、みっちゃん!』

『それ採用! いちにのー——』

『——(ざん)!』『そい!』


 画面左の鳳刃(アゲハ)さんが右に、画面右の光刃(ミツバ)さんが左へ逃げゆく狼に追撃を放つ——!


『“魔功波動(フォースブラスト)——魔功装色(オーラドライブ)——赤熱剛破レッドホット・ブレイキングバースト”』


 交叉するように()()()()、〝赤い魔力の斬撃〟が——狙い(あやま)たず、逃げゆく狼を斬り裂き、一撃にて仕留めてしまったところで……二人の配信初戦闘は、あっさりと完勝にて幕を閉じたのだった。


 

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 色の付いた魔力か~。雑に全体強化ではなくそれぞれの色に分散→各効果に特化させることで、全体強化より総合的に上回る…って感じですかね? 無論各色全てを使いこなせる前提の話でしょうけ…
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