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第18話 ⑪——「まさか、あれがすでに修行だったなんて……! ——ってヤツ」



 御剣(みつるぎ)姉妹の戦闘が終わってすぐに——ドロップ回収などの戦後処理もそこそこに——〝馬車(トレビアーナ)〟の中へと撤収してきた二人と合流してから……

 ふたたび移動を開始した、素晴らしき(エクセレントな)乗り物である〝快優邸(トレビアーナ)〟の豪華な室内にて、お嬢様の〝魔功術(まこうじゅう)〟講義は、いよいよ締めに入っていた。


「——さて……お二人の活躍、ここから映像越しに、しかと観戦させていただきましたけれど……いやはや、とても見事で素晴らしい(エクセレントな)健闘振りでしたわ!」

「んっふふ〜、ま、これくらいはねー」

「お二人がばっちりと実演してくださったので、お陰様で残りの説明も(はかど)りそうですわね。

 というわけで……先ほども(あたくし)、ちらっと申し上げましたけれども、実は魔功術(まこうじゅつ)には、一般に知られている『基本三項(きほんさんこう)』に(とど)まらず、さらにその先があるのですわ。

 それこそが、(あたくし)が『覚醒三功(かくせいさんこう)』と名付けたところの——次の三つ。

 一つ……魔力を、実体を持つ波動(エネルギー)として放つ技術である——【魔功波動(まこうはどう)】!

 二つ……魔力を込めた、あるいは(まと)った対象物を念じて浮かせ、操ることができる——【魔功念力(まこうねんりき)】!

 三つ……魔力の色を変化させ、その特色に応じた様々な効果や特性を発揮させられるようになる——【魔功装色(まこうそうしょく)】!

 ……これら三つは、いわば魔功術の覚醒進化——あるいは、第二段階(フェイズ2)と呼ぶべきものですわ。

 魔功術を(おお)いに研鑽(けんさん)し、探索者としての位階(レヴェル)も上げ、魔力の総量と出力が共に充実し……さらにはその上で、魔力を扱う技量が、一定の高い水準を超えた場合にのみ発現する……いわば、魔功術の真骨頂——それこそが、(くだん)の『覚醒三功(かくせいさんこう)』なのですわ。

 ——事実、この『覚醒三功(かくせいさんこう)』に(いた)る目安としては、()()()()〝深層〟に到達すること……すなわち、特級探索者であることが必要になりますのよ。

 しかしその分、この『覚醒三功(かくせいさんこう)』を会得(えとく)した(あかつき)には、それまでとは隔絶した実力を身につけることができますわ。

 (あたくし)に言わせれば……〝深層〟より()()()()に挑んでいくのであれば、魔功術の覚醒は、もはや必須の条件になると言ってもよろしいものと存じておりますわ」

「……まー、アタシもお嬢の意見に全面的に賛成かな」


 そう言って(うなず)光刃(ミツバ)さんに同調するように——見れば、鳳刃(アゲハ)さんはもちろん、なんとやっさんすらも、うんうんと首を縦に振っている。


 ま、マジか……魔功術って、そんなに重要な技術なの……?!


「それについては、先ほどの御剣(みつるぎ)姉妹の戦闘をご覧になった皆様なら、(おの)ずと理解していただけることと存じますわ。

 なにせ、あの時のお二人は、従来の実力——あるいは、魔力と言い換えてもいいですが——それを大きく制限された上で、さらには、天恵(ギフト)や装備の能力もまったく使わないようにしていたのですから……それでもなお、あれだけの強さを発揮できるという事実。これこそが、魔功術がどれほど重要なのかを証明していると言えるのですわ」


〈探索兵長:確かに……先ほどの戦いを見せられた後では、もはや納得するしかないですね……〉


〈やがてファンになる:やー、確かに、さっきの戦いは凄かったっすよー。いやでも、ちょっと気になったんすけど……あの戦いには能力まったく使用してなかったってホントなんすか? や、途中まではまだしも、最後とか普通に斬撃飛ばしてたし……アレとかはぶっちゃけ、アーツとか使わないと無理なんじゃー??〉


〈ニートの無職ん:そもそも、実力制限があっても魔功術って使えるもんなん? それこそ、覚醒段階とかいうのとかは、制限あったら使えなくなりそうな気もするが〉


「——うぅん……さすがはお嬢様くん、分かりやすくてスマートで、実にいい名付け(ネーミング)じゃん……これはもう、さっそく使わせてもらうしかないね……!

 ん? おっ……いくつか質問きてるね。せっかくだから、ボクもちょっと答えてみようじゃないの。

 おほん……えっとね、さっきの二人が魔功術以外の能力を使っていないってのは本当だよ。

 それこそ、最後に飛ばしてた斬撃も……あれはそれこそ——お嬢様くんが言うところの——【魔功波動(まこうはどう)】と【魔功装色(まこうそうしょく)】を組み合わせただけだからね。

 そう……【魔功波動(まこうはどう)】が使えるようになれば、斬撃を飛ばしたりする程度の単純な遠距離攻撃くらいなら、アーツとか無しでも放てるようになるんだよ。

 それと……これも補足しておくと——今の二人にかけられた制限は、あくまでも魔力の最大値や出力を抑えて中層レベルにしているだけだから、使える能力についてはそのままなんだよね。だからもちろん、魔功術の習熟度も据え置きなのさ。

 ただ、魔功術の〝覚醒〟については確かに——霊杯器(ソウルグレイル)が二つ以上に増えてないと、発現しないだろうから——最低でも、深層以降に到達した探索者でないと覚醒しないってのは、その通りだよ。

 まあ、それでも一度覚醒したら、魔力制限くらいで習得済みの技術が逆行することはないから……今の二人でも、問題無く使えるってことなのさ」

「——っ! ……さすがは夜叉姫様、素晴らしい慧眼(けいがん)と博識でいらっしゃいますのね。

 どうやら夜叉姫様は、魔功術が覚醒段階(フェイズ2)(いた)る条件にも詳しそうですが……やはり、それも見越して、ソラ様のあの装備を選ばれたんですの?」

「あー、いやぁ……ボクの場合は、ただの自分の実体験ってだけだから、そんなに詳しいってほどでもないと思うんだけれど……まあ、それはともかく——

 それで、そう、ソラの装備についてだけれど……ソラが探索者として上を目指すなら、魔功術は決して避けては通れない技術だからさ。ソラがいずれ〝覚醒(フェイズ2)〟を目指すのかは、ともかくとして……現段階でも、初歩の——『基本三項』だっけ。それくらいは、習得しておいた方がいいだろうと思ってね」

「なるほど、ですわ。……やはり、そこまでの先を見越してのことでしたのね」

「……あ、あの、やっさん。私の装備に込められた思いというか、意図っていうのは……その、一体どういうものなんでしょうか」

「ん、それ、知りたい……?」

「はい……お願いできますか?」

「まあ、ソラも十分に魔功術について理解できたであろう今なら……いいよ、ちゃんと教えておくね」

「あ、ありがとうございます!」

「う、うん。まあ、簡単に言うと、ソラの装備はね、普通に使っているだけで、自然と魔功術を習得できるというか——その下地が(はぐく)まれるような、そういう能力を持った装備を選んでおいたんだよね。えっと、具体的にはさ————」


 それからやっさんが——私の装備のそれぞれを具体例として——話してくれたところだと、どうやらこういうことらしかった。


 そもそも、今の私の装備の内約は、次の通りなのだけれど——これらにはそれぞれ、私(の魔功術)を成長させる隠された意図が、それぞれ存在していたのだという。

 私の装備それぞれに対して——一気に話していくやっさんの話をまとめると、こういうことになった。


 ・頭防具

 名称『鋭敏の兜ビビットセンサー・ヘルム

 形状「猫耳(っぽい飾りが付いた)カチューシャ」

 能力(アビリティ)波紋感知(リップルソナー)

 効果「魔力波を周囲に放ち、その波に接触した〝魔力を有する対象〟の位置を感知する」

 備考——能力を使用していくことで、それがそのまま、魔功術の【魔力感知】を習得するための修練になる。


 ・腕防具

 名称『力の手袋(パワーグローブ)

 形状「革の手袋」

 能力(アビリティ)筋力向上(パワーアップ)

 効果「魔力を消費することで、筋力を向上させる」

 備考——使用していくうちに、自然と魔功術の【身体強化】を習得することができる。


 ・胴防具

 名称『透甲の鎧インビジブル・アーマー

 形状「金属製で蛇腹状の腰帯メタル・ストレッチ・ベルト

 能力(アビリティ)波動装甲(ブラストアーマー)

 効果「頭部を含む全身を(おお)う〝見えない鎧〟のような力場装甲を発生させ、攻撃を受けた際は、その装甲の耐久値が減る代わりに受けるダメージを無効化する」

 備考——能力を使用していくことが、そのまま魔功術の【武装強化】を習得する一助になる。


 ・足防具

 名称『不倒の靴(ステーブル・ブーツ)

 形状「膝下までの革のブーツ」

 能力(アビリティ)万地不倒(アンフェイリング)

 効果「どんな足場でも滑らず、(ころ)ばず、倒れない」

 備考——あくまでも、足が地面から意図せず動いたり離れないという意味であり、攻撃を受ければ倒れることもある。


 ・背装備

 名称『隠密迷彩の外套ステルスカモフラージュ・マント

 形状「足首まで届く長さのフード付きマント」

 特性『同化迷彩シンクロカモフラージュ

 内容「マントの布自体が、周囲の環境色に同化した色へと自動的に変化する」

 能力(アビリティ)気配遮断(ハイドオーラ)

 効果「着用者が発する気配——すなわち、音・熱・匂い・魔力等が周囲に発散するのを抑制する」

 備考——使い続けることで、魔功術の応用編である隠密系の技術を習得する下地を(はぐく)む。


 ・装飾品(※秘密(オフレコ)情報)

 名称『壁道の足環ウォールストリート・アンクレット

 形状「金属製のアンクレット」

 能力(アビリティ)壁面歩行(ウォールストローク)

 効果「壁や天井に立って歩ける」

 備考——元々は黒套(こくとう)が最初から装備していた品であり、夜叉姫が下見の際に倒した個体からドロップしていたものを、ついでだからとソラに(こっそり)渡しておいたもの。そもそも本来は、黒套(こくとう)を初日の最後に始末することでドロップして入手できる手筈だったが……予想外に続投することになり、そのままメンバー入りしてしまったので、やむなく水面下で渡して誤魔化すことになった。


 私が今も装備している(一部の装飾品を(のぞ)く)防具たちを、一つ一つ挙げていきながら……やっさんが説明してくれる話を聞いていくことで、私は驚きと感謝を同時に感じることになった。

 まさか……最初の時点で、やっさんがそこまで考えてくれていただなんて……っ!

 それも、何より嬉しいのは……やっさんが、私がそこまで成長できると信じて期待してくれていたということだ。

 私なら、必ず出来る——魔功術を習得できる、と……

 そうだ、これは……きっと、やっさんからの——やっさんなりの激励なんだ……!


「——まあ、そういうわけでさ……ソラのその防具たちは、普通に使っているだけで、自然と魔功術の『基本三項』くらいはいつの間にやら習得できちゃうような装備だったんだよね。

 それに、防具だけじゃなくて、武器の『七矢の弩(クロス・レインボウ)』もね……あれはまあ、基本三項のさらに先——『覚醒三功』だったっけ? そっちを見据えた装備なんだよね。

 いやまあ、ソラが覚醒するまでには、まだまだ道のりは長いと思うけれど……だとしても、今から少しずつやっておくに越したことはないわけだしさ。

 それこそ、【魔功装色】なんかはまさにそうでさ——アレって、色々な属性や特性を持つ技を使うって経験をそれなりに積んでないと、なかなか発現しないと思うんだよねぇ……

 ——それでいくと、『七矢の弩(クロス・レインボウ)』の武技(ウェポンアーツ)である【七矢魔弾(セヴンス・レインボウ)】なんかは、まさに最適なワケだよ。七つの色ごとに、それぞれ別の属性や効果があるだなんて……こんなんほぼ【魔功装色】そのものだし、だからこそ、【魔功装色】を覚える訓練として最適なのさ。

 この『七矢の弩(クロス・レインボウ)』を使って、もう今からガンガン経験を積んでおけば、来たる時にはアッサリと覚醒段階すら習得できちゃう——かもしれないよね、って話なワケ」

「……本当に、ありがとうございます、やっさん……。私なんかのために、そこまで……!」

「いやいや……ソラだからこそ、だよ。他の誰でもない——ボクのオリメンの、ソラのためだから……ボクにできることは、なんだってしてあげたいのさ」

「やっさん……!」


 なんだろう……胸が熱い……っ!

 ——かつてないほどに、〝やる気〟という名の炎が燃え上がっている……!

 うおおおっ——やってやるっ! 私っ、必ず魔功術を習得して、もっともっと強くなってみせる!


 強い決意を新たに胸に宿して……コラボ配信は、まだまだ続く——!


 

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