表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/97

第18話 ⑤——「これぞまさに、完璧に演出された最高の勝利なり……!」



 一面真っ白の雪原を進んでいた馬車が、襲い来るモンスターを迎撃するためにその場に止まると——すかさず飛び出したヴンオケのメンバーたちが、すぐさま馬車の前方に広がり戦闘陣形をとる。


 そんな彼女たちに続くように、私たちも馬車から外に出ていく。

 ——ヴンオケの戦闘シーンを(ナマ)で観られる機会(チャンス)とくれば、重度のファンを自負する私が、まさか馬車の中で待っていられるはずもない。

 これから始まる戦闘の邪魔にならないよう、馬車を引いている一角獣(ユニコーン)の〝乙女号(ヴィルゴー)〟のすぐ近くに並び、それ以上は前に出ないようにしておく。


「セバス——敵の数と種類を」

雪原狼(スノーウルフ)の群れ、数は18です。お嬢様」

「それなら、前衛が()()だけで十分ですわね。とはいえ、|今は能力制限があり《普段とは少し、勝手が違い》ますから、何かあったらすぐに言うのでしてよ」

「「かしこまりました(ん、おけ、りょー)」」


 さすがのチームワーク(信頼関係の深さ)というか——阿吽(あうん)の呼吸で手短に最低限の確認を済ませたところで……恒例の始まりの合図を奏でるのは、我らがお嬢様だ。


「では、いきますわよ……天御神楽(あめのみかぐら)、〝戦いの調べ(バトルソング)——『戦闘曲・序(プレリュード)』〟!!」


 プロ顔負けの演奏の腕前を持つお嬢様が、その天御神楽(ヴァイオリン)を優雅にかき鳴らし——

 さらには、自前の能力(ギフト)も同時に発動させると……


『“戦闘強装曲ウォークライ・コンチェルト五重奏(クインティプル)——豪華絢爛ゴージャス・ラグジュリアス”』


 超一流の作曲家に依頼して作曲してもらったという……壮大な曲調(ハーモニー)戦闘曲(BGM)が——天御神楽(ヴァイオリン)主旋律(コンマス)だけでなく——()()()()()()()()()響き渡り……

 それに合わせて、〝魔提琴(まていきん) 天御神楽(あめのみかぐら)〟の持つ能力が——【豪華絢爛ゴージャス・ラグジュリアス】による大伴奏(フルオーケストラ)を受けて、さらに大幅に効果を増幅された上で——惜しげもなく発揮され……聴いたものに特殊な効果を発揮させる音色の力で、味方には強化(バフ)を、そして敵には弱体化(デバフ)の効果を与える〝魔法の旋律〟となって、周辺一帯を大いに席巻(せっけん)する……!


 〜〜♪

 〜〜〜♪♪

 〜〜〜〜♪♪♪


 んおおおぉぉぉぉっ……!!

 な、生音(なまおと)ハンパないってェッッ……!!

 ——すっっっご……さすがぁ、お嬢様が()()()()()()()()を披露するチャリティーライブを開催したら、我先にと詰めかけた聴衆で特大の箱(コンサートホール)がソッコーで埋まったという逸話があるのも納得しかない迫力と腕前っ……!

 いやホント……【豪華絢爛ゴージャス・ラグジュリアス】なんていう——名前に反して、初めはただ「()調()()()()()()()()()()」だった……とかいう——ふざけたハズレ能力を授かったというのに……

 それでも決して、腐ることも諦めることもなく、ただひたすらに能力を鍛え上げた結果が、この素晴らしき大合奏エレガント・オーケストラなんだよね……っ。

 本当に……一体どれほどの覚悟と努力でもって研鑽(けんさん)すれば——最初はただショボい音が鳴るだけだった能力を使って——たった一人で、これほどまでに壮大な音楽の総合芸術を演奏できるまでになるというのだろう……っ!

 曲を通して伝わってくる——お嬢様がこれまで積み重ねてきたもの……その努力の軌跡、たゆまぬ研鑽(けんさん)の証、ほとばしる情熱の輝き…………!!!

 

 ……気づけば私は、戦闘が始まる前から早くも、大きく目を見(ガンギマリの)開いたままに(眼光を晒して)滂沱(ぼうだ)の涙を流していたのだった……。


「うおぉぉ……これは普通に感動するレベル。マジで最高にイカしてるわ、お嬢様……ってソラちゃん泣いてる?! ヤバぁ……w」

「……分かるよソラち。その、推しに捧げる涙……いと(とうと)きカナ」

「いいねぇ〜……いかにも戦闘曲って感じで、めっちゃテンション上がるぅ〜! やるねぇ〜、お嬢様くん……!」


〈ラブ夜叉姫@好き好き大好き♡ズッキュン♡キュン♡:超素敵な音楽に合わせて踊るっ、天使な夜ちゃんも最高だよっ!〉


〈もっこり助兵衛(スケベえ):あまりにも素晴らしいBGMにノッて踊る、天使なやっきゅんが観られるなんて…………もう少しだけ、そのままでいて。おねーさんも、少し泣く〉


〈やが灰のファンである:ソ、ソラちゃんが……泣いてるっ!!?〉


〈やが灰のファンである:いや分かるよ……画面越しでも伝わるもん、なんというか、〝凄み〟みたいなのがさ……そりゃあ、これを生で聴いたら泣いてもおかしくねぇよ……!〉


地上の視聴隊グランド・オーディエンス:お嬢様の生演奏を聴けるなんて、すごく羨ましい……と思って、ソラさんには少しばかり嫉妬していましたが……なんということ、わたくしが浅はかでしたわね。ソラさん——いえ、ソラ様。貴女様も、もうすでに立派な我々の同志でしてよ〉


地上の視聴隊グランド・オーディエンス:たとえ——今さらの中層で、ザコ敵が相手で、もう何百回と繰り返して()き慣れた曲だろうとも……いつだって本気の全力が当たり前で(いつ聴いても、すべてを一人でやっているなんて凄すぎて、もはや言葉も出ないくらいに素晴らしすぎる伴奏も含めて)演奏には決して手を抜かないお嬢様のプロ根性には、いつもいつも感服させられますわ……!〉


 お嬢様のコメント欄を見ても、仲間(同志)と認められた嬉しさと全面的な同意しか湧いてこない……!


〈ニートの無職ん:お嬢の演奏がマジでプロ顔負けってのは理解したが……肝心の敵はどこなん? いなくね?〉


〈アンチ太郎:おい夜叉公、不細工な動きで踊るくらい暇なら、実況解説の一つくらいやったらどうなんだ?〉


「チッチッチッ——分かってないなぁ……彼女たちの戦いに、不粋な実況だなんて、それこそが不作法……ただの野暮ってもんさ。あと、この階層の敵は、だいたい全部真っ白だから、雪に(まぎ)れてて見えにくいんだけれど……そろそろ出てくるよ」


 そう言ったやっさんの(げん)は、まさにドンピシャで——


『“豪華絢爛ゴージャス・ラグジュリアス——敵影捕捉エネミー・ハイコントラスト”』


 ちょうどその時、いよいよ敵モンスターが、雪の中から()()()()()()()()()、その姿を現した。


「いきますわよ……まずは、白鳥! 派手に舞い踊って、優雅に蹴散らしなさい!」

(おお)せのままに、お嬢様——!」


 白雪(はくせつ)見紛(みまが)うばかりに真っ白な毛並みの狼たちが、白銀の雪原から次々に飛び出してくるのに合わせて、お嬢様がそう命じると——

 二つ返事で(うけたまわ)ったメイドの彼女と二人で、さっそく息のあった共闘共演(コンビネーション)を繰り広げる……!


『“豪華絢爛ゴージャス・ラグジュリアス——天上照明(シーリングライト)——突華演出アディショナル・エフェクト”』

『“花形踊子ブリリアント・プリンシパル——天光強化(シャイニングブースト)——一天突化ハイクオリティ・スラスト”』


 まさに本場のバレエダンサーのように、伸び伸びと美しい動きで舞うような蹴り技を次々に放っていく白鳥さんに合わせるように……お嬢様はお嬢様で、自らの能力(【豪華絢爛】)を駆使して、常に彼女を注目の的として際立たせる。

 ——明るい雪原の上にいてもなお、周囲から浮き上がるように天上より差し込む光(スポットライト)を浴びせて輝かせ、さらには、攻撃動作に合わせるように派手な光と鋭い(ダメージ&サウンド)音の演出(・エフェクト)を能力で(えが)(かな)でることで、その威力と見栄えの両方を劇的に向上させる……!

 これぞまさに、光と音で派手に(ゴージャス・)演出できるだけの能力(ラグジュリアス)と、見栄えが良いほ(ブリリアント)ど強くなる能力(・プリンシパル)との、奇跡的な運命の出会いミラクル・コラボレーションによる、素晴らしき相乗効果(エレガント・シナジー)……!


 その(たく)みな連携による戦いぶりは、中層級に実力が抑えられていてもなお圧倒的であり……美しく舞い華麗に目立つ彼女に引き寄せられるように集まっていく雪原狼(スノーウルフ)は、しかし鎧袖一触(がいしゅういっしょく)に文字通り蹴散らされていく。


 そんな一方的な蹂躙劇(じゅうりんげき)を見せられては、雪原狼(スノーウルフ)()が悪いと感じたのか、白鳥さんを大きく避けて、こちらに来ようとする個体も現れ始めるのだけれど……

 そんな、はぐれ雪原狼(スノーウルフ)を遊撃として次々に狩っていくのは——雪の上を、まるでスケートリンクのように自在に()()()動き回っている——ギラさんだった。


 そう……彼女の使う武器である〝魔刀(まとう) 光刃靴(こうじんか)〟は、まさにあんな感じに——靴のブレードが発する()()()()()()()()()ことで——どんな場所でもスイスイ滑って移動できるという能力を持っているのだ。


 そんな彼女の戦いぶりを一言で表すなら、まさに「戦うアイススケーター」だ。

 それも——白鳥さんに負けず劣らずの——優美さと洗練された動きで滑る彼女だから……スケートはスケートでも、フィギュアスケーターと呼ぶのがもっとも相応(ふさわ)しいことだろう。

 ——あれぞまさに、氷上ならぬ雪上の妖精……! 壮大なクラシック調の音楽に合わせて舞い踊る姿は、まさに大舞台のショートプログラムが(ごと)し!

 蹴りやスピンによって斬撃を放つ刀刃靴(ブレードシューズ)使いの彼女が、華麗に踊り抜けていく後には——盛大に斬り裂かれた雪原狼(スノーウルフ)が、真っ白な雪の上に鮮烈な()を撒き散らしていくのであった。


 そんな二人の戦う踊り子(バトルダンサー)の活躍により、さっそく敵の大部分が早くも倒されてしまっていた……のだけれど。

 しかし、相手の数が数なので、中には二人の攻撃を()(くぐ)って、その先へと進み出る個体もわずかに散見される。

 そんな雪原狼(スノーウルフ)が標的として定めたのは、他でもない、今も戦場を支配する荘厳(そうごん)なる楽曲を奏でるお嬢様だった。


 近づくにつれ、より一層〝弱体化の旋律〟の効果が大きくなるのか、明らかに動きを(にぶ)らせながらも、しかし諦めることなく突き進む雪原狼(スノーウルフ)たちがいよいよお嬢様に(せま)る——その直前に、立ち塞がる影が二つ。


 それは、立派な〝長槍〟を構えた大柄の〝鎧騎士〟と——

 スラリとした体躯ながら、まるで巨木のように不動なる迫力を体現した武闘派執事……!


 騎士が長槍を軽々と振り回せば、たちまちのうちに倒された狼たちは、その身を(ちり)へと変えていき……

 それすら抜けて、唯一セバス様に肉薄(にくはく)した幸運な個体は——しかしどうやら、すべての運をそこで使い果たしたようで、後はなんの大番狂わせもなく——セバス様の放った(洗礼されていて(スタイリッシュ)かつ()力強く豪快(エレガント)な)拳の一撃でアッサリと(ほうむ)られたのだった。


 さすがは、お嬢様を守護(まも)る鉄壁の二枚看板。

 セバス様はもちろん、〝槍騎士(マルスロット)〟の戦いも、迫力あってカッコいいなぁ……。

 ——セバス様の使役獣(テイモン)である、自動鎧(リビングメイル)の〝騎士鎧(マルス)〟と、自動槍(リビングランス)の〝騎士槍(ランスロット)〟の鉄板コンビを指して、誰が呼んだか「槍騎士(マルスロット)」とは、言い得て妙だ。

 本来はここに、まだまだ他の使役獣(テイモン)たちも控えているのだけれど……今回の敵くらいなら、本当に前衛の五人(+α(アルファ)「演奏」)だけで勝てたね。


 さすがは、指揮官としても優秀なお嬢様の見立てだ。

 単に後方支援役(バフ・デバッファー)として活躍するだけじゃなく……かのお嬢様は、指揮者(リーダー)としても確かな実力を持っているのだから。


 まるで(はか)ったかのように、流れていた曲が一段落ついたところで、すべての敵が倒されて終わった、ヴンオケによるコラボ初戦闘は……

 仕上げとばかりにお嬢様が、戦いの勝利を祝した戦闘勝利曲(ファンファーレ)を高らかに響かせるという完璧な演出にて、盛大に幕を閉じたのだった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ